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報告書&レポート

2011年8月4日 ジャカルタ事務所 高橋健一
2011年40号

Mines and Money 香港 2011参加報告

 2011年3月22日~25日の4日間、今回で第4回目を数えるMining Journal社主催の「Mines and Money 香港」カンファレンスが香港で開催された。「Mines and Money」と題する会議は2003年の第1回以降、毎年ロンドンで開催されているが、鉱業投資が世界的に注目を集めてきている中、この会議は世界数カ所での開催に拡がってきている。2011年においては今回の香港を始め、北京(6月)、シドニー(10月)、ロンドン(11月)の4カ所での開催が予定されている。なお、「Mines and Money 香港」は、第1回(2008年)と第2回(2009年)は「Mines and Money Asia」とのタイトルで開催された。

 以下、本カンファレンスでのトピックスとして、香港証券市場の現状とインドネシア鉱業の投資環境に関連した講演を紹介する。

1. 資源産業と香港証券市場

 香港証券取引所(HKEx)のEric Landheer上席副社長がグローバル証券市場におけるHKExのポジション、及び資源産業セクターにとっての役割について講演した。
 HKExは、2010年末時点における時価総額が世界第7位となる27,113億US$となるものの、新規株式公開(IPO)による資金調達が過去最高額となり、世界の証券市場の中で、2009年に続き2年連続で世界第1位となった。

図1. 世界の証券市場におけるIPOによる資金調達額(2010年)

図1. 世界の証券市場におけるIPOによる資金調達額(2010年)

 IPOによる資金調達額に関しては、これまで世界の株式市場をリードしてきた欧米主要3市場(NYSE、NASDAQ、LSEの合計)の調達額合計621億US$に対し、香港を含む中国証券市場(香港、深圳、上海の合計額)が1,308億US$と2倍を超える額となり、中国マネーを中心に市場が拡大していることを顕著に表す結果となった。
 また、投資家の内訳は、香港内投資家はもちろんのこと、中国本土からのQDII(中国指定国内機関投資家)ファンドを通じた投資が拡大しており、加えて2010年には海外からの投資が全体の46%を占めるなど、成長著しい中国を始めとするアジア経済圏への窓口としての魅力が高まってきていることを背景とし、投資家のグローバル化も進んでいる。

 このような香港証券市場が拡大する中、鉱業セクターの資金調達先としても重要な位置付けとなってきており、2010年にはRusal、Mongolian Mining、Sateri、South Gobi、IRCなどの国際的な資源関連企業の大型IPOもあった。以下、2010年における主な国際的な大型新規上場の状況である。

表1. 国際的な主要大型IPO企業の資金調達(2010)

企業 業種 資金調達額
(百万US$)
AIA 金融 20,395
Sands China サービス 2,489
Rusal 資源 2,230
Wynn Macau サービス 1,858
Want Want 消費材メーカー 1,045
L’Occitane 消費材メーカー 783
Mongolian Mining 資源 745
Sateri 資源 467
South Gobi 資源 393
IRC 資源 240

 その他、ブラジルValeは、IPOではないが預託証券を上場しており、このような香港市場への新規上場の増加は、次のような企業がキードライバーとなり、そのような動きになっていると、同氏は捉えている。
 ① 中国・アジアを拠点とする、又は事業展開する企業
 ② その他の地域の新興国をベースとする企業
 ③ 金融、資源関連、高級ブランド関連企業
 ④ 中国、アジア企業の分離、独立会社

 また、例えば、Rusal、 South Gobiは他の証券市場にも上場しているが、その上場額及び取引額の市場別の割合は、RusalにおいてはHKEx 92%:Euronext 8%、South GobiにおいてはHKEx 61%:TSX 39%と、この点においても資源関連企業にとっての香港証券市場のウェイトが高くなってきており、重要度が増している。2011年1月時点での資源関連セクターの時価総額は以下のとおりである。

表2. HKExの資源関連セクター株式時価総額

業種 上場企業数 時価総額2011/01末
(百万US$)
1日平均取引額
2011/01(百万US$)
石炭及び金属鉱業 82 121,274 469.4
石炭 20 44,570 217.9
15 16,668 54.5
8 9,588 41.5
アルミ 7 31,027 47.6
4 4,878 56.8
その他 28 14,545 51.0
エネルギー 71 263,790 596.2
石油・ガス 32 170,578 434.3
ユーティリティー 30 85,981 139.9
新エネルギー 9 7,231 22.1
合計 153 385,065 1,065.7
株式市場シェア 10.8% 14.1% 11.1%

 以上のような状況は、2010年6月に資源関連企業のための上場基準が改定され、内容が明確になり、資源関連企業にとっても上場しやすい環境になったことも大きな要因となっている。現在の資源関連企業に関連した上場に必要となる主な条件は次のとおりとなる。

① 第三者によるJORCコード、又はNI43-101などの国際的標準に基づいた鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の評価を記載したレポートの提出

② ただし、最低でも概測鉱物資源量(Indicated Resources)以上が、JORCコード、又はNI43-101などの国際的標準に基づいた評価により確認されていること

③ 生産実績は上場条件とはならず、Scoping Studyなどにより客観的なデータコストを明記した将来における開発計画の提出

 しかしながら、現時点では、探鉱初期段階でのジュニア企業は、②の条件を満たしていない場合、上場はできないものとなっており、この点は今後の課題であるとしている。

2. インドネシア鉱業投資サミット

 初日にプレ・カンファレンス・ワークショップの一つのテーマとして標題のプログラムが行われた。その中で、外国企業によるインドネシア鉱業への投資に関し、新鉱業法に係る講演と、関連外国企業によるパネル・ディスカッションの内容を以下に紹介する。

2-1. インドネシア新鉱業法における投資のポイント
 その中で、資源産業分野で法律コンサルティングを手掛けるBlake Dawson社(豪ベース)が、現在のインドネシアの投資環境に関し、2009年に制定された新鉱業法におけるポイントを軸に講演を行った。
 今後、インドネシアに鉱業投資を行ってゆく上で、ポイントとなる主なものは以下のとおりである。

① インドネシア国内鉱山企業の株式を直接保有することが可能

② 従来のContracts of Work(COW:鉱業事業契約)は今後発行されず、探鉱又は生産ライセンス(IUP)に移行。探鉱IUPは原則7~8年、生産IUPは20年となる。

③ 20%の権益を生産開始から5年以内にインドネシア資本への売却が必要

④ 鉱業サービスに関し、インドネシア企業に実施させる必要あり。ただし、施行できる国内企業がない場合、外国企業が実施することも可能。

⑤ 2014年から製錬が義務付けられることになるが、論点は次のとおり。

   ★ 未処理鉱石の輸出は禁止となるが、国内の第三者が製錬することは可能
   ★ 輸出可能となるのは銅純度99%などが検討されているが、国内マーケットは輸出マーケットに比べ極めて小さい。
   ★ 製錬所建設は経済性に問題あり

★ 電力インフラにも問題があるが、必要な発電整備には、2010年~2019年までに年間平均約70億US$要するとも言われている。

 新旧鉱業法の違いの主なものは次表のとおり。

表3. インドネシア新旧鉱業法対比表

事項 旧鉱業法(1967~) 新鉱業法(2009年~)
鉱業事業契約

外国企業による投資はCOWのみによる

 COWは廃止

既存COWは期限まで有効。一方でいくつかは新制度に移行

鉱業ライセンス

KPライセンス(主に国内企業向け)
 外資のKPホルダーは無し

 IUPライセンス:Uniform Mining Right
  1社につき1IUP
  外資もIUPライセンスによる
行政手続

場所により、県、州、中央政府がライセンスを発行

 旧KPと同様
  新IUPの発行は、原則入札による
資本移譲

COWに条件を規定
 資本移譲を課されていないケースもあり

生産開始から5年以内にインドネシア国内資本に20%移譲

鉱業サービス

実質制限無し

国内事業者を優先し、入札・承認プロセスにより決定

 インドネシアにおいて、資本移転取引する場合の主要な検討課題は以下のようにまとめることができる。

① 契約において適用する法律
   外国企業は一般的に、不明瞭なインドネシアでの法廷闘争を避ける目的で、シンガポール法の適用や紛争の解決をSIAC(シンガポール国際仲裁センター)に求めるケースが多い。

② デューディリジェンス
   インドネシア国内で実施能力を備えた企業は存在せず実施困難。また、中央政府及び地方政府の双方において鉱区、データのクロスチェックによる確認が必要

③ 資本移転
   資源量を把握する前の探鉱段階での資本移転は、原則許可されない。その他、鉱業サービスやインフラ関係の資本移転の検討が必要な点に留意

④ 行政許可
   許可に要する期間の予測が立たないため、内容によってはそれ相当の期間を織り込むことが肝要

⑤ その他
   森林法による制限、代替地補償、港湾等の輸送インフラのローカル所有制限に留意

2-2. インドネシア鉱業投資に関するパネル・ディスカッション
 「インドネシア鉱業投資における成功の鍵」をテーマとした、企業、金融関係者らによるパネル・ディスカッション。参加者は以下のとおり。
 ● 司会:Greg Terry, Oentoeng Suria & Partners(ジャカルタベースの法律事務所)
 ● パネラー;
   ☆ Peter Albert, CEO, G-Resources社(香港上場、探鉱会社:北スマトラMatabe金・銀プロジェクト)
   ☆ Karsten Fuelster, CIO, 国際金融公社(IFC)
   ☆ Alberto Migliucci, Credi Suisse

 新鉱業法に基づいた一般的な投資概況に関し、各レベルの政府関係者との交渉はし易くなっており、全体的にインドネシアの投資環境は10年前に比べ良好となっている。以前のCOW、KPに比べ新たなIUP制により地方政府の受けるメリットは大きい。一方で、鉱山地域におけるインフラ未整備の問題や、産業政策も含めた国全体の政策方針の見極めが必要となるなどの投資リスクも存在する。
 インドネシアの政策全般については、透明性の確保などの点において正しい方向付けがなされているものであり、現在のリスクは中長期的には改善されていくものと受け止めている。新鉱業法は投資家にとって良い印象を与えており、持続的に鉱業投資を行っていくためには、インドネシアの国情を良く理解し、これに協調してゆくことが重要である。具体的に求められ点は以下のとおり。
 ★ 地方政府と中央政府との行政内容のギャップへの対応
 ★ 能力レベルを考慮したローカル企業への配慮
 ★ NGO対策
 ★ 中央政府・地方政府を問わず、汚職対策。
 ★ 投資に関する国内政策の理解と支援
 今後の投資の対象としては、鉄鉱石を含む鉄鋼原料、PGM、一般炭、銅などが注目され、また、ウラン開発は今後2年間で発展すると予想する意見もあった。

まとめ

 本Mines and Moneyカンファレンス・シリーズの香港での開催の意義は、香港証券取引所を中心とし、経済が拡大するアジア・大洋州の鉱業セクターに対する金融センターとしての役割に加え、大消費地中国のお膝元として、中国の投資家とグローバル市場との接点として、香港の役割が増大してきていることと捉えることができる。その表れとして、参加者が昨年から314%増の2,132人に、探鉱ジュニア及び中堅鉱山企業のブース出展数は昨年から300%増となる160に規模が拡大している。また、参加者の内訳に関しては、金融関係者について382の機関から800人以上の参加があり、その全体に占める割合が2010年の35%から39%に増加している。
 参加国別では、アジア・大洋州を中心としながらも、南米、アフリカなどを含めた42か国から参加があり、第1回目が開催された2008年当時の参加国が19か国であったことからすれば、飛躍的に拡大している。冷え込む先進国市場とは対照的に、経済成長を背景としたアジア地域が投資の対象として世界的規模で関心が高まっていること、重要度が増しきていることが、実際に感じられるものであった。

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