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報告書&レポート

2011年10月6日 ボツワナ・地質リモートセンシングセンター 久保田博志
2011年49号

セミナー参加報告 ZIMBABWE MINING INDABA 2011

 2011年9月14日から16日までの日程で、ジンバブエ共和国の首都ハラレにおいて、鉱業投資セミナー「ZIMBABWE MINING INDABA 2011 Mining, Infrastructure and Financing」が開催された。鉱山鉱業開発大臣をはじめ関係大臣、政府高官、資源メジャー、鉱山サービス会社、投資・金融機関など多数の参加者があった。
 セミナーでは、最近発表された外資鉱山等の現地化(権益51%を国内の企業等に移転することを義務付ける法律の制定・施行)に対して政府関係者がどのような見解を示すかが話題の中心となった。

1. 全体概要

 「ZIMBABWE MINING INDABA 2011」は、今回で3回目となるジンバブエでは最大の鉱業投資セミナーであり、Obert Moses Mpofu鉱山鉱業開発大臣(Minister of Mines and Mining Development)、Tapiwa Mashakada経済計画投資大臣(Minister of Economic Planning and Investments)、Saviour Kasukuwere青年開発・現地化・経済権限拡大臣(Minister of Youth Development Indigenisation and Enpowerment)、Winston Chitandoジンバブエ鉱業協会会長(President of Chamber of Mines)など同国の主要鉱業関係者が参加した。
 また、Zimplats、Zimascoなど現地系企業のほか、Anglo Platinum、Rio Tinto等の資源メジャー、Srtanbic Bankなどの金融機関など50社以上がスポンサーに名を連ね、展示ブースも野外も含め約60件出展されるなど同国の鉱業への関心の高さを示していた。

写真1. 講演会場
写真1. 講演会場
写真2. 展示ブース
写真2. 展示ブース

 セミナーは、鉱山鉱業開発大臣の基調講演に始まり、2日間に、
1) 鉱業の概観(An overview of Mining Activities in Zimbabwe)、
2) 鉱業投資とインフラ開発(Investments in Mining and Infrastructure Development in Zimbabwe)
3) 付加価値化(Beneficiation)
4) ファンド(Innovation Funding)
5) 世界の鉱業の趨勢(Global mining trends and developments;Whats makes a country?)
6) 鉱山の国有化(Nationalisation of Mines)
7) インフラストラクチャー(Infrastructure)
8) 鉱山保安(Health, Safety and People)
9) 鉱害防止(Environmental and Regulation Issues)
などの分野で約30件の講演が行われた。

写真3. 鉱山鉱業開発大臣講演
写真3. 鉱山鉱業開発大臣講演
写真4. 南アフリカ鉱業協会講演
写真4. 南アフリカ鉱業協会講演

2. 注目される話題

 本セミナーでの同国鉱業関係者の講演・発言から注目を集めたものを以下に記す。

(1) ジンバブエの鉱業投資の現状
 ジンバブエ鉱業協会長は、2011年上期の鉱山プロジェクト投資は260百万US$(前年同期80百万US$)で、その価値は941百万US$(前年同期131百万US$)に達したと報告し、今後5年間に80億US$の鉱業投資が必要であると述べた。また、資金調達が操業資金に回る短期金融であり、資本投資が困難な状況にあるとの問題を指摘した。

表1. ジンバブエの経済指標(実績及び予測)

  2009実績 2010推定 2011 2012 2013 2014 2015
名目
GDP(US$百万)
5,623 6,716 8,998 9,959 11,297 12,711 14,195
成長率(%) 5.7 8.1 9.3 7.8 6.6 6.4 5.4
鉱業成長率(%) 8.5 47 44
インフレ率(%) -7.7 3 4.5 5 5.5 5.7 6

出典:Minister of Economic Planning and Investments講演資料に加筆

表2. ジンバブエの主要鉱産物の生産予測

  2011 2012 2013 2014 2015
金(kg) 13,000 15,000 18,000 21,000 25,000
ニッケル(t) 7,675 8,842 10,611 12,733 15,279
石炭(t) 3,000,000 6,360,000 7,146,000 7,146,000 7,146,000
クロム(t) 610,000 700,000 700,000 700,000 700,000
白金(kg) 12,000 13,287 15,751 19,721 19,666
パラジウム(kg) 9,600 10,630 12,601 15,776 15,732
ダイヤモンド(カラット) 8,065,651 12,111,867 14,837,797 18,443,797 21,463,054
成長率(%) 44 20 18.3 19.4 8.0

出典:Minister of Economic Planning and Investments講演資料に加筆

(2) 現地化(Indigenisation)
 現地化法(Indigenisation and Economic Empowerment Act)は、外資が保有する鉱山又はプロジェクトの権益の51%以上をジンバブエ企業(個人)に移転させることを定めた法律であり、産業界を中心に実質的な国有化との批判がある。
 鉱山鉱業開発大臣は、同法は歴史的に不利益を被ったことに対して鉱山権益を適正な所有状態に戻すこと、地方の利益を確実なものにすることが目的であり、既得権益者から鉱業権を奪い取るものではない。パートナーシップを構築するための交渉の場を設けたもので、これまでに鉱業権を剥奪したこともない。この法によって現地資本への鉱山権益の移転が進むことを期待しているが、ライセンスを付与するのは政府なので、権益の移転は政府を通じて行ってもらいたいと同法の趣旨を説明するとともに、各方面からの批判をかわす発言をした。
 青年開発・現地化・経済権限拡大臣は、現地化政策は経済発展の柱となる政策であり、政府と企業とのパートナーシップ、Win Winのアウトカムを目指すものであること、複数の外資からの現地化の提案を却下したが、その後の各社の見直しの結果、交渉に進展があったと述べた。また、なぜ国内化の権益移転を51%としたのかとの質問に対して、交渉余地がある可能性を匂わせる発言をした。
 鉱業協会会長は、鉱業協会は政府と外資鉱山会社との話し合いの場を設ける役割があるとして、同政策を支持する姿勢をみせたが、同協会幹部の中からは政府と鉱業協会との間の意思の疎通が十分とは言えないとの発言もあった。
 本セミナー初日、白金鉱山大手のZimplats社(Impala Platinum(南ア)の87%権益を保有)が投資額460百万US$、年間生産能力を90,000 oz増加の270,000 ozとする拡張計画を同社会長と青年開発・現地化・経済権限拡大臣との共同記者会見で発表した記事が現地有力紙の経済面トップで報じられた。同大臣はZimplats社が国内化の対象となることに合意したことに満足し、同社会長は先日、却下された国内化提案に変わる修正提案を期限とされる2011年11月15日までに提出する用意があると発表した(後日、同社は権益を地域社会に移転するための基金(Community Share Ownership Trust)の設立準備に着手することが報じられた)。
 また、セミナーに参加する外資系鉱山関係者からは、国が鉱業から利益を得ようとするのであれば、ロイヤルティや税制など他にも方法はある。鉱山経営は技術と経験が必要で、過去に国営鉱山が成功した例は殆どない。市況には波があり、いずれ資源ブームが去れば、経営力に劣る国営鉱山会社は破たんするだろう、との厳しい意見も聞かれた。

(3) 南アフリカの鉱業の国有化の議論
 南アフリカ鉱業協会(The Chamber of Mines South Africa)CEOのBheki Sibiya氏は、同国で議論されている国有化の問題について講演した。同氏は、鉱業は同国の基幹産業であるが(直接間接を合わせて100万人の雇用、GDPの18%、外資投資額の20%、法人税収入の18%、鉄道及び港湾利用の50%を占める等)、他方、同国は、失業(失業率26%、18~35歳の若年層の失業率は50%)、貧困(人口の20%以上が貧困層、政府の貧困手当てが毎月1,400万人に支給)、格差社会、資源の損失(資源が年間230億ランド(約28億US$)以上失われていること)、公立校の教育水準の低下、BEE(Black Economic Empowerment;黒人経済力強化措置)の成果の遅れなど、様々な困難に直面していると国有化の背景を説明した。
 そのうえで、国有化を実現するためには既得権益者への補償が必要であり、その資金をどこから捻出するのかが重大な問題であること。既得権益者が補償されなければ、政治リスクが高まり、外資直接投資、鉱山の維持管理、生産、鉄道輸送量の落ち込み、失業率上昇、外貨獲得減少、金融機関の破たん、税収減少、不法採掘の横行が起こる恐れがあることを指摘した。
 また、同氏は、産業界は失業、貧困、不平等などの国家的危機はナショナリズムでは解決しないとの考えを示しており、与党ANC(The African National Congress;アフリカ民族会議、議長:Jacob Zuma南ア大統領)の幹部からも、国有化はANCの政策ではないとの発言もあり(ANC青年同盟;ANC Youth LeagueリーダーJulius Malema氏が中止になって推進しているだけである)、南アの鉱業国有化は議論の途上にあり、今後、2012年12月に予定されているANC総裁選挙も睨んで様々な動きがあるだろうと述べた(2011年11月までに研究会の作業を完了し、2012年7月までに政策会議の開催等が予定されている)。

(4) インフラ整備
 ジンバブエのインフラ整備の最大の課題は電力供給であり、Harare(100MW)、Bulawayo(90MW)、Munyati(100MW)の各発電所の改修、Kariba(300MW)とHwange(600MW)の各発電所の拡張の他、小規模水力発電が計画・検討されている。その費用は4,329百万US$(内訳;国営企業1,377百万US$、援助876百万US$、民間2,076百万US$)と見積もられている。
 他方、輸送インフラでは、同国の道路は南部アフリカでも整備されていると言われており、その道路を使って自国及び内陸国からの物資をDurban(南ア)Beira(モザンビーク)に輸送しているが、都市部以外の道路整備と既存の道路のメンテナンスが課題とされている。また、鉄道は総延長3,077 kmのうち2,759 kmは国営会社(National Railways of Zimbabwe)が管理運営しており、信号・通信系の整備、軌道の修復、機関車・貨車の輸送能力の向上等の改修が必要であるが、その費用はPPP(Public-Private Partnership;官民連携)による調達が検討されている。

表3. ジンバブエの電力供給状況

発電所 種類 計画能力(MW) 発電量(MW) 稼働率(%)
Kariba 水力 750 750 100%
Hwange 石炭火力 920 225 24%
Harare 石炭火力 100 0 0%
Bulawayo 石炭火力 90 0 0%
Munyati 石炭火力 100 0 0%
合計   1,960 975 50%

出典:Minister of Economic Planning and Investments講演資料に加筆

(5) ジンバブエにおける鉱害の懸念
 ジンバブエでは6,000ヶ所の鉱床が知られており、そのうち4,000ヶ所が金鉱床である。鉱山における小規模採掘者の割合は、1978年の10%から独立(1980年)以降、飛躍的に伸び2011年には90%を占めるに至っており、特に、砂金を採取する小規模採掘者が使う水銀やシアン汚染、堆積場やその排水などによる鉱害の懸念がが指摘されている。
 小規模採掘者は、鉱害の原因となる有害物質に関する知識に欠け、鉱害防止技術、鉱害防止のための資金力にも欠けるなど問題が多い。
 解決方法として、水銀を用いない回収方法(直接製錬法)の採用、小規模採掘のための技術開発、環境修復、有害物資管理施設、大規模採掘者との連携、国による技術支援(現地における技術指導、ワークショップ)や資金面での支援を挙げている。

3. おわりに

 今回のセミナーでは、ジンバブエの鉱業の現状、経済状態、インフラ整備、人材育成、鉱害などの同国が直面する諸問題に関して報告・議論が交わされたが、それぞれの問題が個々に独立しているのではなく、互いに関連しているとする見解が多く、その中心に現地化(Indigenisation)があるとの印象を受けた。
 この現地化政策は、独立以来の問題である黒人の経済的地位の向上に根差しており、南アをはじめ、南部アフリカ諸国に共通した問題と言える。ジンバブエと南アは極端な事例ではあるが、近隣諸国への影響を考えると看過することはできない重大な問題である。

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