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報告書&レポート

2011年11月10日 希少金属備蓄部 北 良行、山本 耕次 ロンドン事務所 小嶋 吉広
2011年59号

南アフリカ・フェロアロイ会議参加報告

写真1. フェロアロイ会議講演会場
写真1. フェロアロイ会議講演会場

 南アフリカのヨハネスブルグSandton Hilton Hotel にて、2011年9月15日~16日Metal Bulletin主催で開催された南アフリカ・フェロアロイ会議に参加した。南アにおける合金鉄生産状況と生産に関連するインフラ状況などについて中心に講演が行われた。特に、Eskom(南ア電力公社)の電力供給問題とマンガン輸送インフラが注目された。
 以下、会議で得られた情報を中心に報告する。

1. 南アフリカのマンガン生産

 南アフリカでは、多くの鉱産物が生産されているが、白金の80%など特にレアメタルの世界生産シェアは高い。クロムではNST FerroChrome(日本電工)、Hernic(三菱商事)、マンガンではAssomang(住友商事)、バナジウムについてはSAJV(日本電工)が邦人企業として進出・投資している。今回の会議ではこのうちクロムとマンガンについての報告が中心となった。
 南アは、CIS(140百万t)に次いで世界第2位のマンガン埋蔵量を誇る(130百万tで世界の埋蔵量の24.1%)。南アのマンガン鉱石生産量はここ10年で年率7%成長しており、2010年は7.12百万tとなった。うち97%が輸出に回っている。南アで生産されるマンガンの最大の輸出相手先は中国である。中国は南アからのマンガン鉱石輸入を急拡大させており、南アからの輸入量の直近5年間の伸び率は年率約50%と驚異的な勢いである。2010年、中国におけるマンガンの輸入相手先第1位は豪州であるが(3.16百万t)、南アが肉迫しており(3.12百万t)、2011年は南アが豪州を抜いて1位になる可能性が高い。

2. 南アフリカの鉱業関係インフラ事情

2-1. 電力問題
 南ア電力公社Eskomは、世界でも最も安価な電力料金で鉱業をはじめとする産業界に電力を供給し続けた。1980年代に南ア経済は縮小傾向に転じ、しばらく新規電力供給プロジェクトは凍結されていた。ところが、1994年の黒人政権発足で黒人層への新たな電力供給ニーズが発生した。南アの経済発展に伴って2007年に電力不足になるとの警告が1998年に出されていたにも拘わらず、Eskomの新規開発を認めてこなかったため、2007年10月頃から小規模な停電が発生し始めていた。2008年には政府が「国家的緊急事態」と声明を出し、鉱山会社等はとりあえず90%の電力供給を受けることで政府・Eskomと合意した。
 2011年の冬(6~8月)にも電力不足による停電が予測されたが、停電は発生しなかった。しかし、今後3年間は電力需給の逼迫した状況が続くとみられている。
 南アでは2011年3月末現在、27か所の発電所が稼働し、41,194 MWの発電能力となっている。電源別の内訳としては、石炭火力発電84.9%、ガス火力発電5.8%、原子力発電4.4%となっている。Eskomは南アの電力の95%を供給し(残りはIPP)、アフリカ大陸における発電の40%を担っている。電力供給のうち最も大きなシェアを占めているのは鉱工業部門(27%)であり、鉱工業部門の中ではフェロマンガンとフェロクロムが53.4%を占める大口需要先となっている。
 現在建設中のMedupi石炭火力発電所は、2013年から2015年にかけて供用開始予定。供用開始時の発電能力は2,100 MW、フル稼働時には4,200 MWとなる。また、Kusile石炭火力発電所は4,200 MW規模であり、2018年にフル操業開始予定である。(詳細は講演報告 ”What is the outlook for electricity supply and the impact cost on the ferroalloy sector?”(p 10「3-6」)に記載)

2-2. 鉱石の輸送問題
 アフリカで鉱産物を生産する場合、積出港までの内陸輸送が大きな問題となる。南アフリカでも基本的には鉱産物は内陸部で生産され、RechardBay港、Port Elizabeth港、Saldanha港などに鉄道で輸送・輸出されている。たとえば、鉄鉱石はSishen地域で採掘されSaldanha港に鉄道で運ばれる。石炭は、石炭鉱山の中心地であるErmeloとRichards Bay港をつなぐ鉄道が輸出向けの基本で、一部がDurban、Maputoに送られる。マンガンについてはKarahari Manganese Fieldで採掘され、輸出用鉱石がPort Elizabethに、国内加工向けはMetalloys、Transalloy、Cate Ridgeまで鉄道輸送されている。これまでも、石炭輸送では脱線などメンテナンス関係で問題が生じてはいたが、2007~2008年にかけてKarahari Manganese FieldからPort Elizabethのマンガン鉱石輸送能力不足の問題が生じ、関係者の注目を集めていた。
 南アフリカの鉄道輸送、港湾設備などはTransnet社が独占している。2010年時点で20,500 kmの線路を有する。貨物輸送は石炭が最も多く約3割を占め、鉄鉱石、コンテナがこれに続いている。マンガン鉱石はKalahari Basinで採掘された後、Port Elizabethへ運搬されるが、現在の港湾処理能力は4.2百万t/年である一方、鉄道の運搬能力が4.0百万t/年しかない。マンガン鉱石の生産は今後も堅調な増加が予想され、2016年には12百万t/年に上ると見込まれている。このような需要増に対応するため、短期的には機関車数を増やすこと、中期的な対応として軌道や信号系統の改良に取り組む予定であるが、改良工事が終わる2016年までは需給の逼迫した状況は解消されない。また、Transnet社はDMR(南ア鉱物資源省)との連携を強化し、ライセンス発行状況の情報を入手することで、将来予測をより正確に予測するよう努めている。(詳細は講演報告”Transnet rail infrastructure” p 7「3-4」に記載)

3. 南アフリカ・フェロアロイ会議

 南アフリカ・フェロアロイ会議は、2011年9月15日~16日、Metal Bulletinの主催で南アのヨハネスブルグSandtonのHilton Hotelで開催された。今回が4回目となる。特に、南アにおける合金鉄生産状況と生産に関連するインフラ状況などについての講演が行われた。参加者は企業関係者が殆どで、地元南アの他、アフリカでは隣国ジンバブエ、またアジアからは、中国、インドなど多数の参加があった。配布された名簿からはおよそ200名(150人程度は参加者が会場にいたと思われる)、日本からは、JOGMECの3名の他、三菱商事、双日からの参加があった。また多国籍鉱山会社ではBHP-Billiton社や Xstrata社、南アベースの企業としては African Rainbow Minerals社、 Samancor社、 Assomng社、 Exxaro社などが参加した。また、南ア鉄道公社Transnet、同電力公社Eskomや各種プロジェクトのコンサルタント会社から多数参加があった。
 会議は7セッションから構成されており,主な講演は以下のとおり。
 ● How will Asia affect demand and will investment in South Africa continue?
 ● High Carbon Ferro Manganese.The Preferred Manganese Alloy for SA Producers
 ● What is the outlook for energy supply in SA and the impact cost on the ferroalloys sector?
 ● Spot or Benchmark -How will ferrochrome market dynamics affect the operations?
 ● The Integrated Resource Plan: How will this affect your electricity supply?
 ● Transnet rail infrastructure:An update on new developments and the affect on ferroalloy producer.
 ● Ferrochorme, Continuing Bullish Outlook? A South African View.
 ● Domestic stainless steel demand: Where is the market heading in South Africa?
 ● 2011 will investment continue in chrome ore production in SA?
 ● How will reductants continue to affect ferrochrome producers?
 ● The Maputo Corridor : A Viable Option For Ferro Exports?
 注目された講演の内容は概略以下の通りである。

3-1. How will Asia affect demand and will investment in South Africa continue?
 (Kobus van der Wath,The Beijing Axis)
 2010年の世界GDPのシェアはアジア25%、欧州30%、米国26%で、日本を除いたアジアでは中国が主な成長地域となった。中国はあらゆる金属に関して生産・消費で世界1位になっている。フェロアロイにとってもアジアが最も有望な成長地域である。しかし、中国を見てみると、たとえばアルミニウムであれば需要430百万tに対して国内調達は202百万t、以下、ニッケル50万tに対し34万t、鉄鉱石17億tに対して11億t、クロム鉱石911万tに対して46万t、マンガン1,500万tに対して260万t等国内調達資源量と需要は全くバランスしていない。特にクロムとマンガンは、南ア、中東、ブラジルからの輸入に頼っている。
 中国の2010年ステンレス需要構成は、建築32%、インフラ建設24%、機械関係18%、自動車6.4%であった。また、マンガンの消費は2000年の2百万tから2010年14百万tまで伸びた。主に合金と電機用に使われている。クロムについても2010年の需要は2009年の6,756 ktから8,665 ktと大幅な増加となり、2010年には輸入比率が97.8%となった。特に、南ア、トルコからの輸入が顕著に増加した。2010年の輸入シェアは南ア36%、トルコ22%である。中国におけるクロムの用途は66%がステンレスに27%が合金に使われている。
 鉱業に関する中国の海外投資については、3年前から顕著となってきた。中国の海外への直接投資額(FDI Outward)は増加傾向にあるが、需要を満たすためには投資をさらに強化する必要がある。ちなみに中国のFDI世界ランキングは2004年に27位であったが、2010年には18位で、2015年には11位になると見込まれている。特に豪州、カナダ、アフリカ並びに南米の鉱業、石油ガスが重要なファクターと認識されて、アフリカではStandard bank south Africaのシェア20%(ICBC)、CML Nigeriaのシェア45%(CNOOC)、CNPC Agadem Oil Niger(CNPC)、Bong iron mine Liberia(China Union)、などが20億US$を超える案件として知られている。中国は鉱業投資としてSADC地域にも焦点を向けている。
 中国が最近獲得している主な案件は表1のとおりである。

表1. 最近の中国によるアフリカにおける主な投資案件

Date Acquirer Target Country Industry Value USD
Aug₋11 China African Precious
Metals Ltd.
Pamodzi Gold Orkney South Africa Mining 22mn
Jul₋11 Jinchuan Group Metorex South Africa Mining 1.3bn
Nov₋10 Yingli Solar (South Africa developer) South Africa Energy 435mn
Jul₋10 Jidong Develoment WIPHOLD,Continential
Cement
South Africa Cement 218mn
Jun₋10 Wuhan Iron and Steel Riversdale Mozambique Mining 800mn
May₋10 Jinchuan Group and
CAD Fund
Wesizwe South Africa Mining 878mn
Jan₋10 Jinchuan Group Tanzanian Royaity
Exploration
Tanzania Mining n/a
Dce₋09 Jinan Yuxiao Group Mining assets Mozambique Mining n/a
Aug₋09 Jinchuan Group Munali Zambia Mining 37mn
Jul₋09 Sinopec & CNOOC Oil field(Marathon Oil) Angola Energy 1.3bn
May₋09 CNMC Luanshya Copper Mines Zambia Mining n/a
Apr₋09 Minmetals Mining assets South Africa Mining 81mn
Jan₋09 Minmetals Vizirama South Africa Mining n/a
Jan₋08 Northonhe Holdings Mining assets Namibia Mining 50mn
Dec₋07 Sinosteel Zimasco Zimbabwe Mining n/a
Oct₋07 CNMC Chambishi West orebody
Project
Zambia Mining 100mn

 中国最大のニッケル企業である金川公司をみると、南ア1件(Wesizwe Platinum 2010年5月に878百万US$で51%のシェア獲得、)、ザンビア1件(Munali Nickel Mine 2009年7月に37百万US$52%のシェア獲得)、タンザニア1件(Kabangaニッケルプロジェクト)の投資を実施している。
 クロムに関しては鉱石権益確保とフェロクロムプラントへの投資等を通じて資源獲得に努力している。クロムに関する中国による海外投資案件は以下の通り。
 ● Joint Venture by TISCO and CVK Group(トルコ)
 ● Long₋term off₋take agreement by Sinosteel with Muscat Overseas Group(オマーン)
 ● Long term off₋take agreement with India FACOR Group by Baosteel(インド)
 ● Acquisition of 92% stake in Zimasco by Sinosteel(ジンバブエ)
 ● Minmetal’s 70% stake acquisition in Vizirama(南ア)
 ● Sinosteel’s local Chrome JV Plant₋ASA Metals(南ア)
 ● Minmetal’s acquisition of Townlands chromite mine(南ア)
 ● Minmetal’s acquisition of Naboom ferrochrome mine(南ア)
 ● Sinosteel’s 50% stake acquisition in SamancorJV(南ア)

3-2. The Preferred Manganese Alloy for SA Producers
 (Jaco Venter, Senior Sales Manager & Director,Manganese Ore and Metal Company Ltd.)
 Assomang 社はマンガン、クロム、鉄鉱石を取り扱っている。マンガンはGloria & Nchaning鉱山で採掘され、鉱石はPort ElizabethとCata Ridgeプラントに輸送され、前者はそのまま輸出、後者はDurban並びにRichards Bayに再輸送・輸出されている。クロムはNachadodorpからRichards Bayへ、鉄鉱石はKurumanからSaldanha経由で輸出されている。Assomang社は北米、欧州を始めアジアに向けてマンガンを供給している。
 フェロマンガン関係では高炭素フェロマンガンとシリコマンガンが一般的な中間素材となるが、世界の需要は各々2004年の343万t、579万tから2010年には420万t並びに857万tまで伸びている。特に同期間の中国の伸びは144%で、2010年の消費量は世界の53%に達している。これに対して欧州、米国、中国以外のアジアは需要がほとんど増加していない。高炭素フェロマンガンも同様に中国の伸びは100%であるが、その他の地域では需要がほとんど増加していない。市場寡占率については、高炭素フェロマンガンが上位5社で67%、上位10社で91%、シリコマンガンが上位5社で62%、上位10社で81%である。
 鉱石生産の面ではアフリカにおける高品位マンガン鉱石の生産が減少しており、アフリカ・中東で中品位マンガン鉱石が増加している。これは中品位鉱石開発で新規参入会社が急増していることが一因である。
 電気料金については2011年時点で南アフリカは58 US$/MWhであり日本。中国に比べて安価となっているが、2012年には2009年から96%の料金値上、2015年には73 US$/MWhと中国、日本に比肩すると見込まれている。
 フェロアロイ生産の電力消費については、一般にシリコマンガン4-5Mwh/ton、フェロマンガン2.5-3 Mwh/ton、フェロクロムは3-4Mwh/tonといわれている。南アでは生産コストに占める電気料金は2009年の23%から2013年には32%で、フェロマンガンでは14%から23%に増加する。フェロクロム生産の電力消費では南アは世界水準より低いが、フェロマンガンではそれほど優位性がなく、2011年には世界平均を上回る可能性がある。
 結論として、シリコマンガン生産は中国需要に牽引され、これからも市場が拡大すると思われる。シリコマンガンとフェロマンガンの価格差を決定する要因は鉱石価格、電気料金で、出荷する市場・需要もその次に注視する必要がある。鉱石は現在の高品位から中・低品位が主流となり、電気料金は特に南アフリカ生産者にのしかかり、トン当たり換算で30~40%の負担増となる。高品位のマンガン鉱石の手当てが可能であれば、南アフリカの生産は高炭素フェロマンガンが最良となる。

3-3. Domestic stainless steel demand:
 Where is the market heading in South Africa?
 (Michel Basson, Southern Africa Stainless Steel Development Association)
 南アはクロム鉱石の世界生産の50%を供給している。しかしステンレスの生産は3.5%にとどまっている。利用率を計算すると0.6%という低さになるとしている。これは南アの製造業における大きな問題である。ステンレスの供給については、2004年には国内需要の43%を賄っていたが2008年には29%まで低下している。ステンレス国内市場はこれからも大きな伸びが期待されているため、雇用拡大で重要な分野である。政府のアシストが必要となる。

3-4. Transnet rail infrastracture:
 Anupdate on new developments and the affect on ferroalloy producers
 (Siyabonga Gama, CEO, Transnet Freight Rail)
 Trnasnetは南ア国内の鉄道貨物、港湾、海運を運営する国営企業であり、今回の講演では鉄道貨物について報告があった。
 Transnetは2010年時点で20,500 kmの線路を有し、うち重量物運搬用の鉄道は1,500 kmである。2011年現在、Trnasnetの鉄道貨物輸送は年間80百万tであり、うち石炭が最も多く約3割を占め、鉄鉱石、コンテナがこれに続いている。マンガンはKalahari Basinで採掘された後、Port Elizabethへ運搬されるが、現在の港湾処理能力は4.2百万t/年である一方、鉄道の運搬能力が4.0百万t/年しかないため、港湾の改良が急務となっている。マンガンの生産は今後も堅調な増加が予想され、2016年には12百万t/年と見込まれている。このような需要増に対応するため、短期的には機関車数を増やすことで、5.5百万t/年まで能力を上げる予定である。さらに中期的な対応として、今後5年間で6,000億円を投じ軌道や信号系統の改良に取り組む予定であるが、改良工事が終わる2016年までは需給の逼迫した状況は解消されない。
 Port Elizabethへのルートだけでなく他の路線でも貨物運搬の需要が見込まれており、今後、Transnetによる積極的な投資が不可避な状況となっている(将来の需要予測については図1参照)。今後、貨物輸送の割り当てをめぐっては、各鉱山会社とEskomとの間での調整が難航することが予想されることから、EskomはKPMGや法律会社とアドバイザリー契約を結び、適正な割り当てができるよう検討している。また、DMR(鉱物資源省)との連携を強化し、ライセンス発行状況の情報を入手することで、将来予測をより正確に予測するよう努めている。

図1. 貨物輸送の需要予測(投資を行わない場合)

(出典:フェロアロイ会議講演資料)

図1. 貨物輸送の需要予測(投資を行わない場合)

3-5. Mozanbique and the Maputo Corridor:
  A Real Alternative for exporters?
 (Baebara Mommen,CEO Maputo Corridor Logistics)
 マプート港はモザンビークの首都で、人口127万人(2007年)を擁する同国最大の都市マプートに位置する港湾である。南アにとっての主要港湾はRichards Bay(バルク)とDurban(コンテナ)が双璧をなしているが、両港湾とも増大する貨物需要に十分対応できず処理能力が限界に達しつつあるため、マプート港は南アにとって「第3の主要港湾」としての重要性が近年増大してきている。マプート港は両港湾よりもハウテン州に80 km近いという立地の優位性も有している(図2参照)。

図2. マプート回廊周辺図

(出典:Maputo Corridor Summary Report, *USAID)

図2. マプート回廊周辺図

 南部アフリカ地域における回廊整備計画は、1980年代のアパルトヘイト実施下の南アに対抗するため、SADC諸国が南ア以外の外港を確保する目的で作られた構想である。南アの民主化後、当初の政治的な意義は薄れ、経済開発に焦点が絞られた。マプート回廊計画は、南ア通産省(DTI:Department of Trade and Industry)の主導による空間的開発構想(SDI:Spatial Development Initiative)に基づき、整備資金に民間資本を効率的に呼び込んだ結果、他の回廊整備計画よりも速いスピードで実現された。マプート回廊整備は、他の回廊計画の成功モデルとして位置付けられている。
 MCLI(Maputo Corridor Logistics Initiative)は2004年に設立されたNPO団体であり、マプート回廊の利用促進や物流効率化に向け、関係政府と民間企業との連絡・調整を行っている。メンバーは、関係国政府(モザンビーク、南ア、スワジランド)や物流関係企業、マプート回廊地域への投資家など計170社・機関が加盟している。MCLIによる官民連携の取り組みは、世銀からもベストプラクティスとして認められている。
 南アから運び出される貨物は、国境のKomatiの税関(ボーダーポスト)を通ることとなるが、これまで夜間を除く12時間しか開いていなかったため、物流の支障となっていた。MCLIが南ア・モザンビーク政府に働きかけた結果、2011年からは18時間体制(ピークシーズンには24時間体制)に改善された。
 マプート港は官民共同出資の企業体であるMPDC(Maputo Port Development Company)がコンセッション契約に基づき運営を行っており、コンテナターミナルについてはMIPS(Maputo International Port Services)が運営を行っている。現在、定期コンテナ船はMitusi OSK等の7航路を有しており、欧州、インド、東アジアを結んでいる。MPDCは港湾の処理能力向上に向け、225百万US$の投資を行っており、拡張後のコンテナ処理能力は400,000 TEU/年(現状、100,000 TEU/年)、石炭や鉄鉱石等のバルクものは26百万t/年に増強される見込みである。また現状の水深は11mであるが、浚渫により12.8mまで増深する計画である。


* 『USAID:United States Agency for International Development』

3-6. What is the outlook for electricity supply and the impact cost on the ferroalloy sector?
 (Johan Pfister,Regional Key Account Manager, Eskom)
 南アでは2011年3月末現在、27か所の発電所が稼働し、41,194 MWの発電能力となっている。電源別の内訳としては、石炭火力発電84.9%、ガス火力発電5.8%、原子力発電4.4%となっている。Eskomは南アの電力の95%を供給し(残りはIPP)、アフリカ大陸における発電の40%を担っている。
 電力供給のうち最も大きなシェアを占めているのは鉱工業部門(27%)であり、鉱工業部門の中ではフェロマンガン産業とフェロクロム産業が53.4%を占める大口需要先となっている(図3参照)。

図3. 電力需要の内訳

(出典:フェロアロイ会議講演資料)

図3. 電力需要の内訳

 南アの電力は、自国の安価な石炭で発電をしているため、これまで電力料金は世界でも有数の低い水準にあった。また、80年代~90年代、南ア政府は電力市場への新規参入を促進させる政策により、Eskomの新規設備投資を抑制し、設備容量の増設を認めてこなかった。この結果、2000年以降の急速な経済成長に伴う電力需要の増加によって、電力不足の問題が顕在化することとなった。
 Eskomは2009年以降、電力料金を毎年段階的に約25%引き上げており、2011年は約0.07 US$/KWhに値上げされる予定である。2012年もさらなる値上げが見込まれており、その結果0.1 US$/KWh程度まで上昇し、中国やインド(いずれも約0.08 US$/KWh)を超え、先進国並の水準となる恐れがある(図4参照)。Zuma大統領は2011年6月、高付加価値化政策を閣議決定しているが、電力価格高騰はフェロクロムの生産コスト増大を招くため、参加者の中からは電力料金値上げに対し反対する声が多く聞かれた。

(US$/kWh)

図4. 電力価格(産業用)の国際比較

(出典:資源エネルギー庁HP)

図4. 電力価格(産業用)の国際比較

 南アでは夏季よりも冬季(5月~9月)に電力需要が増すため、2011年冬季は停電の発生が危惧されたが、鉱山会社等大口需要家に対する10%の使用制限や大規模な節電キャンペーンが奏功し、ピーク時の電力需要は予想を下回る37,000 MWに抑えられ、停電の発生は避けることが出来た。Eskomは発電能力の向上に向け、現在、発電所の整備に取り組んでおり、大規模発電能力を有するMedupi石炭火力発電所(4,764 MW)は2013年に一部操業開始(800 MW)、2016年にフル操業となる見込みである。もう一つの大規模発電所であるKusile火力発電所(4,800 MW)は2014年に一部操業開始(800 MW)、フル操業は2019年の予定である。このため、2015年頃までは電力需給の逼迫した状況は継続するという見方が一般的である。

まとめ

 南アにおいては、2007年以降電力不足問題が顕在化しており、2011年も冬季に停電の発生が危惧されたが、節電対策により停電の発生は避けることが出来た。EskomはMedupi発電所、Kusile発電所などの建設に取り組んでいるが、2015年頃までは電力需給の逼迫した状況は継続すると見られている。電力料金も、毎年段階的に約25%引き上げており、2012年もさらなる値上げが見込まれ、その結果、先進国並の価格水準になる恐れがある。
 国内輸送については、特にマンガン輸送の整備問題が未解決で、今後も増加が予想されるマンガン輸送への短期的、中期的対応策が計画されているが、2016年までは需給の逼迫した状況は解消されないと考えられる。

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