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報告書&レポート

2011年11月17日 バンクーバー事務所 片山弘行
2011年61号

非鉄金属鉱山の開発が期待される米国ミシガン州

 米国・ミシガン州は五大湖畔に位置し、米国の基幹産業である自動車産業の中心地デトロイト市を抱えるなど製造業が盛んであるとともに、鉄や銅を始めとする鉱産物のポテンシャルが高いことでも知られている。しかしながら、同州の人口や経済活動はデトロイト市を擁するLower Peninsula地域(以下、LP地域)と呼ばれる南部地域に集中し、北部地域であるUpper Peninsula地域(以下、UP地域)での経済振興が課題となっている。このような背景からミシガン州では、鉱業を始めとした投資促進を図っており、近年、UP地域ではKennecott社を始めとして金属鉱業活動が活発化している。
 本稿では、米国西部地域とは異なる鉱業投資環境である米国中西部ミシガン州(特にUP地域)に焦点を当て、同州の金属鉱業投資環境の概要及び開発が期待される進捗中のプロジェクト等について報告する。

1. ミシガン州金属鉱業概要

 ミシガン州は、米国中西部の五大湖畔に位置する。州都はランシング市(人口109,563人)で、州内最大都市はデトロイト市(人口713,777人)である。州全体の人口は9,883,640人(2010年統計、全米第8位)であるが、スペリオル湖とミシガン湖に挟まれたUP地域は約31万人と全体の約3%を占めるにすぎない。
 ミシガン州の2010年鉱産物生産高は19.6億US$であり、生産物としては鉄鉱石、セメント、建設資材用砂礫、岩塩、砕石である。全米の鉱産物生産高の約3.07%を占め、第10位に位置付けられる(USGS Mineral Commodity Summaries 2011)。鉄鉱石生産は全米でミネソタ州に次いで第2位を誇り、2007年の鉄鉱石生産総額は3.94億US$である(USGS 2007 Minerals Yearbook, Michigan)。
 Fraser Institute社による2010/2011年投資環境評価では、ミシガン州は調査対象である79の国・地域中42位(Policy Potential Index)となっており、調査対象となっている米国諸州の中では第9位となっている。これはペルー(48位)やブラジル(49位)よりも高く、加ブリティシュコロンビア州(36位)や豪クイーンズランド州(38位)よりやや低いだけである。このように資源投資の盛んな資源国と比較しても、ミシガン州の鉱業投資環境は決して見劣りするものではなく、その証左として、現在Kennecott社を始め複数の企業が探鉱・鉱山開発に取り組んでいる。

表1. Fraser Institute社による2010/2011年投資環境評価(米国諸州)

Policy Potential Indexによる順位
(79か国・地域中)
操業中の主な鉱山(鉱種)
ネバダ 2 Carlin Trend(Au), Silver Peak(Li)
ユタ 6 Bingham Canyon(Cu,Mo)
ワイオミング 10 Smith Ranch(U)
アラスカ 21 Pogo(Au), Red Dog(Zn)
アリゾナ 25 Morenci(Cu), Silver Bell(Cu)
アイダホ 33 Thompson Creek(Mo), Lucky Friday(Zn,Pb)
ニューメキシコ 34 Chino(Cu), Tyrone(Cu)
サウスダコタ 41 Wharf(Au)
ミシガン 42 Empire(Fe), Tilden(Fe)
ミネソタ 45 Minntac(Fe), Hibbing(Fe)
コロラド 46 Henderson(Mo), Colorado Plateau(U,V)
モンタナ 50 Stillwater(PGE), Troy(Ag)
カリフォルニア 56 Mt. Pass(REE), Mesquito(Au)
ワシントン 59 Kettle River(Au)
ウィスコンシン 72  

 ミシガン州は発達した道路網、鉄道網に加え、大きさに制限はあるものの五大湖からセントローレンス川経由で大西洋までの海運が可能であり、またデトロイト市のみならず、シカゴ等の他州の工業都市にも近く、付近一帯は鉱工業の一大中心地でもあることから、これら市場への至便なアクセスは有利である。

図1. 米国・カナダ諸州の2007年鉱工業名目GDP
図1. 米国・カナダ諸州の2007年鉱工業名目GDP
(出典:US Bureau of Economic Analysis; Statistics Canada)

2. 地質概況

 ミシガン州の地質は、UP地域中部に分布する主に変成岩から成る始生代~中期原生代の基盤岩、UP地域西部に分布する後期原生代のリフト帯であるMidcontinent Rift帯、UP地域東部およびLP地域に分布するカンブリア紀~ジュラ紀のMichigan Basinの3地域に大別される。
 UP地域中部には、北米でも最古の部類に属する前期始生代(約36億年前)の花崗岩、花崗片麻岩が認められ、これらは最も古い大陸を形成していたものと考えられている。これら最古の岩体の周囲には後期始生代(約25億年前)の変火山岩、変堆積岩が認められるが、これらは古大陸周辺の島孤の一部と考えられている。
 約11億年前頃に始まったプリューム上昇による大陸分裂で、本地域にリフト帯が形成され、溶岩が噴出した。リフト帯は現在のスペリオル湖を中心として三方に延び、北方のリフト帯は発達しなかったが、南東と南西のリフト帯は発達し、特に南西のリフト帯は今日のミシガン州からミネソタ、ウィスコンシン、アイオワ、ネブラスカ、カンザス州の約1,500kmにわたってその存在が把握されている。南東のリフト帯はLP地域のMichigan Basinに被覆され、北方のリフト帯はカナダ・オンタリオ州のニピゴン湖にその形跡が認められる。大陸分裂は約10.5億年前に始まったGrenville造山活動による東側からの圧縮作用の影響を受けて海洋底形成まで至らずに中断、その後砕屑岩等により覆われた。
 544~286 Maの間、本地域は海洋底にあり海底堆積物に覆われていた。これがMichigan Basinを形成し、石油、天然ガス、岩塩、石膏等の産出地域となっている。

図2. ミシガン州基盤地質(出典:ミシガン大学;一部加筆)
図2. ミシガン州基盤地質(出典:ミシガン大学;一部加筆)

3. 鉱業関連法

3-1. 鉱物採掘権リース
 ミシガン州全土の面積146,435.1 km2のうち約20%が連邦・州・地方自治体所有の公有地となっている。州政府は約16,200 km2の土地に関して地表の所有権とともに地下の鉱物資源の権利(鉱物採掘権)を所有し、約9,300 km2の土地に関しては鉱物採掘権のみを所有している(地上の所有権はなし)。
 ミシガン州天然資源局(Department of Natural Resources)は、同州法である天然資源及び環境保護法(Natural Resources and Environmental Protection Act, Act No. 451 of the Public Acts of 1994)のPart 5, Section 502において、一部州有地の地表権及び鉱物採掘権の取り扱いに関する権限を与えられており、同法及び省令27.23-12(Metallic Minerals Leasing Policy – State-Owned Lands)に基づき、民間に鉱物採掘権のリースを行っている。
 鉱物採掘権のリースに当たっては入札が実施され、リース期間は10年(最長20年まで延長可能)、リース料は1エーカー(0.4 ha)・1年あたり3 US$から始まり、20年目には最大で1エーカー当たり55 US$となる。2011年3月現在、リースされている州の鉱物採掘権は合計130を数え、29,852エーカー(約120.8 km2)に及ぶが、現在、同州内で操業されている金属鉱山は全て私有地で行われており、州政府とのリース契約は締結されていない。

3-2. 鉱業法
 ミシガン州には、連邦鉱業法(USC Title 30, General Mining Act of 1872)の適用を受ける連邦土地管理局(US Bureau of Land Management)管轄の連邦用地は存在しない。したがって、州内での金属鉱業は、天然資源及び環境保護法のPart 631(Reclamation of Mining Lands)及び2004年12月に制定されたPart 632(Nonferrous Metallic Mineral Mining)の規制を受ける。また、In-Situリーチングによる金属鉱物回収に対しては、同法Part 625(Mineral Wells)が追加適用される。
 同州で非鉄金属鉱業を営むには、ミシガン州環境品質局(Department of Environmental Quality, DEQ)によるPart 632に基づく採掘許可(Mining Permit)が必要である(鉄鉱山の場合はPart 631、In-Situリーチング鉱山の場合はPart 625)。ミシガン州鉱業法は、採掘許可に係る審査期間が明確に定められており、その点で米国諸州の鉱業法の中でも評価が高い。

図3. 採掘許可(非鉄金属鉱業)に対する審査期間(Part 632による)
図3. 採掘許可(非鉄金属鉱業)に対する審査期間(Part 632による)

3-3. ロイヤルティ
 州政府からリースされた土地で鉱物が生産された場合、その生産物の価値に応じたロイヤルティを州政府に四半期ベースで支払う。ロイヤルティ料率は、採掘された鉱石1 t当たりの(インフレ等調整後)販売額に応じて、坑内採掘鉱山の場合は2%から最大10.0%まで、露天採掘鉱山の場合は2.5%から最大10.5%まで変動する。

3-4. 環境許認可
 新たな非鉄金属鉱床(硫化物鉱床)の開発にあたって必要とされるミシガン州DEQ発行の主たる許認可は以下の通りである。

表2. 主たるDEQ許認可及び根拠法

Part 31, Water Resources Protection 地表水または地下水の放出、雨水管理、氾濫原での建設
Part 55, Air Pollution Control 排気
Part 91, Soil Erosion and Sedimentation Control 1エーカー以上または水域から500ft以内での土壌の撹乱
Part 111, Hazardous Waste Management 危険物の取り扱い、廃棄
Part 115, Solid Waste Management ずり石及び尾鉱を除く固形廃棄物の取り扱い、廃棄
Part 201, Environmental Remediation 汚染の洗浄、修復及び移動、悪化の防止
Part 301, Inland Lakes and Streams 湖沼、河川におけるドレッジまたは堆積
Part 303, Wetlands Protection 湿原の撹乱
Part 625, Mineral Wells 試掘井、排水井の掘削
Part 631, Reclamation of Mining Lands 露天鉱山及び付随施設のリクラメーション

4. 米国のニッケル鉱山開発案件Eagleプロジェクト

 ミシガン州のEagleニッケル・銅鉱床は、Nickel Mountain鉱山(オレゴン州)が1995年を最後に生産終了して以降、約20年ぶりに米国内で開発・操業されるニッケル鉱山として、隣接するミネソタ州NorthMetプロジェクト(PolyMet Mining社所有)とともに期待されているプロジェクトである。複数の非鉄金属プロジェクトが進行中の同州において、本プロジェクトは新規鉱山開発(特に酸性鉱廃水が懸念される硫化物鉱床)に対する許認可プロセスの一つのモデルケースとして、その動向が注目されている。

4-1. Eagleニッケル・銅鉱床
 所有者:Kennecott Eagle Minerals Company(Rio Tinto社の100%米国子会社)
 可採鉱量:410万t @3.15% Ni, 2.68% Cu, 0.27g/t Au(推定)(Rio Tinto社2010年Annual Report)
 採掘方法:坑内採掘(longhole stoping法)
 生産開始(予定):2013年Q4
 マインライフ(予定):8年
 鉱石生産量(予定):最大約50万t/年(2,000 t/日)
 従業員数(予定):250人
 初期投資額:4億6,900万US$
 概要:
 Eagleニッケル・銅プロジェクトは、UP地域Marquette郡に位置する塊状硫化型ニッケル・銅鉱床であり、前期原生代タービダイト質シルト岩のBaraga層群に貫入する中期原生代の超塩基性岩に胚胎している。この超塩基性岩体はYellow Dog橄欖岩とも呼ばれ、Midcontinent Riftの活動よりやや早い約1,700~1,100Maに貫入したとされる。貫入岩は2つあり、東側の貫入岩は大きな露頭が認められていたために古くから探査対象とされている一方で、西側の貫入岩は河川北岸に小さな露頭が認められるのみであった。Eagle鉱床そのものは、この西側の貫入岩に胚胎している。
 鉱床は、鉱染状、準塊状、塊状の硫化物として認められ、鉱染状鉱体は貫入岩の縁辺部で磁硫鉄鉱を主とし、黄鉄鉱や硫鉄ニッケル鉱を含む硫化物(硫化物含有量3~15%)からなる。準塊状硫化鉱体は、30~50%の硫化物からなり、平均品位としてはNi 2.11%,Cu 2.19%,Co 0.06%,Au 0.27g/t,Pt 0.48 g/t,Pd 0.30g/tとされている。塊状硫化鉱体は厚さ数mで、平均品位としてはNi 6.11%,Cu 4.15%,Co 0.17%,Au 0.32g/t,Pt 1.14g/t,Pd 0.77g/tとされている。
 操業で発生するズリ石は、山元に設営された複数レイヤーのライナーと漏えい検知システムを備えた堆積場で貯石し、採掘後の坑内充填に供される。鉱山操業で使用された水は、逆浸透膜を利用した水処理プラントによる処理を経て、地下へと戻される予定である。
 DEQは、2007年12月14日にPart 632に基づく採掘許可(Mining Permit)をKennecott Eagle社に与えており、また同時に大気質許可(Air Quality Permit)と地下水放出許可(Groundwater Discharge Permit)も与えているが、Kennecott Eagle社はその後、付帯施設の計画変更に伴って受領したMining Permitの変更を申請している。連邦環境保護庁(US Environmental Protection Agency, EPA)は、2010年7月1日、地下注水許可(Underground Injection Permit)は不必要との判断を下している。
 National Wildlife Federation、Huron Mountain Club、Keweenaw Bay Indian Community、Yellow Dog Watershed Preserveの4つの環境保護団体及び先住民コミュニティは、2007年から認可取り消しを求めて複数回提訴しているが、いずれもKennecott Eagle社側の主張が認められ、現在の所、認可の取り消しには至っていない。

図4. 地域地質とEagleプロジェクト位置
図4. 地域地質とEagleプロジェクト位置
(出典:The Geology of the Eagle Nickel-Copper Deposit, Michigan, USA)
図5. Eagleプロジェクト遠景(2011年9月)
図5. Eagleプロジェクト遠景(2011年9月)
(出典:Kennecott Eagle社HP)

4-2. Humboldt選鉱場プロジェクト
 所有者:Kennecott Eagle Minerals Company(Rio Tintoの100%子会社)
 操業開始:2013年Q4
 鉱石処理量(予定):1,500 t/日
 選鉱実収率(予定):ニッケル60~90%、銅75~97%
 精鉱品位(予定):ニッケル10%、銅28%(含水率15%)
 従業員数(予定):50人
 概要:
 Humboldt選鉱場は、上記Eagleプロジェクトの南29.5 kmに位置する。1954年にCleveland Cliffs Iron Companyが近くのHumboldt鉄鉱山の低品位鉄鉱石を選鉱するために建設し操業していたが、その後複数の所有者を経て1990年代中頃から未使用であったものをKennecott Eagle社が2008年9月に取得したものである。
 現在、Kennecott Eagle社は約8,000万US$を投じて設備改修等を行い、Eagleプロジェクトの選鉱場として再稼働すべく準備中である。Eagle鉱床で採掘された鉱石はトラック輸送にてHumboldt選鉱場に持ち込まれ、同選鉱場で鉱石を破砕、磨鉱、選鉱し、銅精鉱及びニッケル精鉱を生産する予定である。
 トラックで輸送された鉱石は、3段のクラッシャーによる破砕後、ボールミルにより80μm程度に磨鉱され、粗浮選の後、まずは銅をラッファーとクリーナーにより浮選する。その後、ラッファーとクリーナーによる浮選でニッケルを回収する工程となっている。精鉱は、鉄道輸送にて3~5日おきに1,200~2,500 t出荷される。
 同選鉱場の再開に当たっては、2010年2月9日にDEQよりPart 632に基づく許可(Mining Permit)を取得している。

5. ミシガン州操業鉱山及びその他プロジェクト

5-1.操業鉱山
 ミシガン州には、現在、2か所で鉄鉱山が操業している。
 (1)Empire鉄鉱山
 所有者:
 Cliffs Natural Resources Inc.(本社:オハイオ州クリーブランド)(権益79%)
 Mittal Steel USA(本社:イリノイ州シカゴ)(ArcelorMittalの米子会社)(権益21%)
 鉱石:磁鉄鉱
 生産量:260万t(2009年実績)
 (2)Tilden鉄鉱山
 所有者:
 Cliffs Natural Resources Inc.(権益85%)
 US Steel Canada(加オンタリオ州ハミルトン)(US Steelの加子会社) (権益15%)
 鉱石:磁鉄鉱、赤鉄鉱
 生産量:560万t(2009年実績)

5-2. Copperwood銅・銀プロジェクト
 所有者:Orvana Resources US Corp.(加・トロント所在のOrvana Minerals Corp.の100%米国子会社)
 可採鉱量:30.0百万t @1.33% Cu, 3.95g/t Ag(確定+推定)
 採掘方法:坑内採掘(ルームアンドピラー法)
 生産開始(予定):2014年
 マインライフ(予定):14年
 鉱石生産量(予定): 240万t(10,000 t/日)
 従業員数(予定): 118人(通常の発破法を採用した場合)
 初期投資額(予定):1億9,751万US$(通常の発破法を採用した場合)(閉山費用:2億3,320万US$)
 概要:
 Copperwoodプロジェクトは、近傍に位置するWhite Pine銅鉱山(1952~1995)と同じく輝銅鉱を主たる鉱石鉱物とする堆積性層状鉱床であり、UP地域Midcontinent Riftに胚胎する。Midcontinent Rift帯は、リフト活動時のソレアイト質洪水玄武岩とリフト活動停止後の河成・湖成堆積物である砕屑岩から成るKeweenawan累層群を構成し、鉱床はその中の黒色~灰色~赤色のシルト岩、頁岩、積層炭酸塩岩から成るNonesuch累層に胚胎する。
 White Pine鉱床よりも層厚が大きく、平均で約1.6 mとされており、石炭採掘に用いられるコンティニュアスマイナー、もしくは通常の発破によるルームアンドピラー法を採掘方法として予定し、通常の発破による採掘の場合のNPVは1億9,450万US$(割引率8%、銅価US$3/lb、銀価US$30/oz)、税引き後IRRは26.4%と算出されている。
 2011年9月26日にPart 632に基づく採掘許可を申請しており、2012年許認可取得、建設開始を見込んでいる。

図6. Copperwoodプロジェクト位置
図6. Copperwoodプロジェクト位置
(出典:Prefeasibility Study of the Copperwood Project, Upper Peninsula, Michigan, USA; July 2011)

5-3. White Pine精錬所(White Pine銅鉱山)
所有者:White Pine Copper Refinery Inc.(金属トレーダーTraxys Group傘下)
概要:
 1980年代後半に隣接するWhite Pine銅鉱山の製錬所として建設されたものであり、その後、Inmet、BHP(電解精錬設備のみ取得)を経て、2000年6月にConsidar White Pine Acquisition社(後にWhite Pine Copper Refinery, Inc.)に所有が移り、加Flin Flon銅製錬所(HudBay Minerals社所有)からの銅アノードを精錬し、電気銅を生産していたが、2006年1月にHudBay Minerals社による同社買収後、2010年後半に操業を停止していた。2011年6月にはTraxys Groupが隣接する発電所とともにWhite Pine精錬所を取得している。
 本精錬所は、電解工程で用いられた残電解液から再度銅を回収する工程(Electro winning plant, EMEWTM)やテルル回収工程を付設するなど、精錬所としての付加価値を高めている。
 隣接するWhite Pine銅鉱山は堆積性層状鉱床であり、砂岩または頁岩に自然銅、自然銀、輝銅鉱が胚胎する。1952年からルームアンドピラー法により坑内採掘されていたが、1995年9月に操業コストの高騰及び品位低下により操業休止した。採掘範囲は5 km×5 kmにも及び、現在はほとんどの坑道が水没している。操業休止に当たり、当時の所有者であるInmet社は希硫酸を使用したIn-Situリーチングによる銅回収を計画し、1996年5月にDEQから試験操業に係る許認可を取得した上で、パイロットスケールの試験を実施して経済性を確認した。当時、連邦環境保護庁(EPA)は許認可プロセスで果たすべき役割はないとしていたが、地元先住民であるChippewaインディアン部族の抗議活動を受けて、EPAは環境審査を実施する方針に転換、それにより許認可プロセスが不透明になったとして、Inmet社は1997年6月に計画を撤回した。なお、In-Situリーチング計画時点の埋蔵量は銅量で約54万tと算出されている。

図7. White Pine精錬所遠景
図7. White Pine精錬所遠景
(出典:Electrolytic Copper Refinery Sale Brochure; December 2009)

表3. White Pine精錬所2006~2008年の生産実績

2006 2007 2008
銅アノード処理量(t) 85,366 87,634 84,550
銅カソード生産量(t) 69,853 68,311 68,855

(出典:Electrolytic Copper Refinery Sale Brochure; December 2009)

まとめ

 ミシガン州は、非鉄金属鉱業活動が低調な米国東部~中西部にあって、金属鉱業を雇用促進のための一つの重要な産業と位置付けている希有な州である。現在ミシガン州の失業率は11.1%(2011年9月)と全米50州のうちネバダ州、カリフォルニア州に次いで高く、雇用確保が喫緊の課題であることから、雇用への波及効果の大きい鉱業に対する州政府の期待は大きい。
 州政府の金属鉱業に対する支援の一つとして、米国での鉱業活動に対する課題の一つである長期に及ぶ(かつ所要期間が明らかでない)許認可プロセスの(州政府が可能な範囲での)明確化、迅速化が挙げられるが、非鉄金属鉱山を規定するPart 632の制定から日も浅く、前例もない故、未だ様子見の所が多いのが実情である。その点でKennecott社のEagleプロジェクトの成否は、ミシガン州の非鉄金属鉱業の一つの試金石と言われている。
 鉱物資源ポテンシャルの高さと巨大市場へのアクセスの容易さという利点を活かし、環境と鉱山開発を調和させた本地域の金属鉱業を見極めるためにも、Eagleプロジェクトを始めミシガン州の今後の動向に注目していきたい。

謝辞

 本稿は、在デトロイト日本国総領事館主催、ミシガン州経済開発公社後援によるミシガン州UP地域金属鉱山調査での調査結果に基づいている。両機関にはこの場を借りて厚く御礼申し上げたい。

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