閉じる

報告書&レポート

2011年11月25日 ロンドン事務所 小嶋吉広
2011年62号

国際非鉄研究会参加報告(3)2011年秋季国際ニッケル研究会(INSG)参加報告-2011年、2012年とも供給超過の予測-

 国際ニッケル研究会(INSG)は、国際非鉄金属3研究会の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2番目に古い歴史を持つ研究会であり、1990年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、16の国・地域が加盟しており、事務局はポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。
 2011年9月27日~28日、リスボンにてINSGの秋季定期会合が開催された。本会合には、INSG加盟国、及び、オブザーバー国として中国、ベルギーの政府関係者、産業団体、企業関係者の総勢約50名が参加した。以下、本稿では本会合の概要について報告する。
 なお、講演資料はINSGのホームページに掲載されている。
 http://www.insg.org/presents_2011.aspx

1. 2011年及び2012年ニッケル需給予測

1-1. ニッケル鉱石生産量
 2011年における世界のニッケル鉱石生産量は、対前年比13.8%増の1,816.6千tと予想している(表1参照)。
 国別に見るとこれまでロシアが1位であったが、2011年はインドネシアがロシアを抜いて1位になる見込みである。インドネシアは中国向け需要に支えられる形で鉱石生産を拡大し、2011年は対前年度比23.4%増の290.0千tとなる見込みである。これに続くロシアは285.0千t(対前年度比1.8%増)、3位はフィリピンであり、インドネシア同様、中国への鉱石輸出拡大により230.0千t(同21.1%増)と予想されている。4位の豪州は215.5千t(同19.1%増)、5位はカナダで、Voisey’s Bayのストライキが終結したことから生産が回復し215.0千t(同191.1%)と予測されている。インドネシアは2009年の鉱業法改正に伴い2014年より鉱石輸出が禁止されるが、中国のステンレスメーカーの投資によりインドネシア国内でニッケル銑鉄工場を建設する動きがあり、引き続き中国への主要な供給元になると見込まれている。
 また2012年については生産拡大のスピードが若干減速し、対前年比6.4%増の1,933.2千tとなる見込みである。

1-2. ニッケル地金生産量
 2011年における世界のニッケル地金生産量は、対前年比10.9%増の1,595.8千tと予想している。
 国別で見ると、中国は2010年にロシアを抜いて1位になって以来、着実に生産を増やし、2011年は対前年比23.5%増の410.0千tを予想している。2位はロシアであり268.5千t(対前年比2.4%増)と、ここ数年生産量は横ばいを続けている。3位の日本は震災の影響により一時的に生産が減少し対前年比6.4%減の155.3千tと見込まれている。4位のカナダは2010年にSadbury鉱山のストライキにより生産を大きく減少させたが、2011年は生産を回復し145.0千t(対前年比38.1%増)と見込まれている。
 2012年は、マダガスカルのAmbatovyプロジェクト等の新規プロジェクトの操業開始、ブラジルのBarro AltoやOnca Pumaプロジェクトでの生産拡張により、1,739.8千t(対前年比9.0%増)と着実な増加を予想している。

1-3. ニッケル地金消費量
 2011年における世界のニッケル地金消費量については、Q2までの世界的な景気拡大傾向を受け、ステンレス鋼の生産が伸びていることを背景に、対前年比6.3%増の1,571.9千tと予想している。
 2010年からの増加分(78.5千t)のうち6割以上は中国による消費量の増加であり、中国の2011年消費量は625.0千t(前年比8.7%増)と、世界全体の消費量の約40%を占める見込みである。
 第2位の日本は対前年比1.5%減の146.3千t、第3位の米国は対前年比6.7%増の128.0千tとなっている。なお、日本での震災の影響及び中東・北アフリカ諸国における民主化の動向により、消費量の見込みは変動し得るとINSGはコメントしている。

表1. ニッケルの鉱石・地金生産及び地金消費量

(単位:千t)

区分 鉱石生産量 地金生産量
2010年実績値 2011年見込み 2012年予測 2010年実績値 2011年見込み 2012年予測
  世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア
欧州 342.9 21.5% 363.2 20.0% 378.9 19.6% 498.4 34.6% 521.1 32.7% 530.0 30.5%
アフリカ 83.1 5.2% 90.0 5.0% 110.0 5.7% 36.0 2.5% 39.5 2.5% 56.0 3.2%
米州 354.7 22.2% 434.9 23.9% 480.0 24.8% 229.6 16.0% 280.9 17.6% 335.0 19.3%
アジア 505.0 31.6% 607.0 33.4% 625.0 32.3% 536.5 37.3% 600.3 37.6% 626.3 36.0%
※(内、中国) 80.0 5.0% 85.0 4.7% 90.0 4.7% 332.0 23.1% 410.0 25.7% 410.0 23.6%
オセアニア 311.0 19.5% 321.5 17.7% 339.3 17.6% 138.8 9.6% 154.0 9.7% 192.5 11.1%
世界計 1,596.7   1,816.6   1933.2   1,439.3   1,595.8   1739.8  

区分 地金消費量
2010年実績値 2011年見込み 2012年予測
  世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア
欧州 359.5 24.3% 367.4 23.4% 372.4 22.4%
アフリカ 23.9 1.6% 21.8 1.4% 23.9 1.4%
米州 160.7 10.9% 157.9 10.0% 162.1 9.7%
アジア 932.0 63.0% 1,022.0 65.0% 1103.9 66.3%
※(内、中国) 575.0 38.9% 680.0 43.3% 750.0 45.0%
オセアニア 2.7 0.2% 2.7 0.2% 2.8 0.2%
世界計 1,478.8   1,571.9   1665.1  


(出典:INSG会議資料から作成)

1-4. ニッケル需給バランス
 2010年の需給バランスは39.5千tの供給不足であったが、2011年は23.9千tの供給超過と見込まれている。各年につき予測の変化を詳しく見ると、2010年の供給不足については2010年より予想されていたが、2010年9月の予測時では1.6千tの供給不足、2011年4月時点では27.1千tの供給不足であり、結果的には中国等でのステンレス鋼の生産増加により当初想定を大幅に上回る供給不足(39.5千t)となった。2011年については、2010年9月時点での予測では90.5千tの供給超過を予測していた。その後、2011年4月時点での予測では、中国での需要が当初想定より拡大するとの予測から需要が上方修正され、供給超過量は55.7千tに圧縮された。今回の予測ではさらに供給超過量が圧縮され、23.9千tとなった。
 2012年は需要の伸び以上に供給の増加が予想されていることから、74.7千tの供給超過になると研究会は予測している(表2参照)。

表2. 世界のニッケル需給バランス

(単位:千t)

区分 2009年実績 (参考)2010年予測値 2010年実績
(今回発表)
(参考)2011年予測値 2011年見込み
(今回発表)
増減
2011/10
2010年9月時点 2011年4月時点 2010年9月時点 2011年4月時点
ニッケル供給合計(①) 1,318.2 1,427.6 1,438.9 1,439.3 1,615.5 1,600.2 1,595.8 10.9%
ニッケル供給合計(②) 1,248.3 1,429.2 1,466.0 1,478.8 1,525.0 1,544.5 1,571.9 6.3%
需給バランス 69.9 ▲ 1.6 ▲ 27.1 39.5 90.5 55.7 23.9  

区分 2012年予測 増減
2012/11
ニッケル供給合計(①) 1739.8 9.0%
ニッケル供給合計(②) 1665.1 5.9%
需給バランス 74.7  


(出典:INSG会議資料から作成)

1-5. LMEニッケル価格と在庫
 2011年Q2及びQ3のニッケル価格は、若干の上下はあったものの総じて下降基調で推移した。2011年2月下旬に29,030 US$/tの高値を付けた後は下降局面に入った。3月11日の日本での震災発生により、3月中旬には25,080 US$/tまで値を落とした後、中国での好調なステンレス鋼生産を受け価格は一時上向き27,000 US$/t台まで回復したが、最終的には26,800 US$/tで3月を終えた。4月に入ってからは、4月7日に27,130 US$/tを付けたものの勢いが無く、26,000 US$/tラインを挟んでもみ合う形が続いた。5月に入り、Q3に向け需要が鈍るとの観測やニッケル鉱山での増産により、ニッケル価格は調整局面に入った。5月23日には22,610 US$/tまで下げ、月初と比べ14.4%下落した。中東での政情不安や新規プロジェクト(Barro Alto、Onca Puma、Tagaung Hill)の立ち上げ、また中国でのニッケル銑鉄の生産拡大の影響により6月に入っても下落傾向は続き、6月20日には月中最安値の21,410 US$/tにまで値を下げた。
その後、7月8日には一旦24,060 US$/tまで反発するも、24,000 US$/t前後で7月は推移した。8月1日には25,080 US$/tを付け(25,000 US$/t台を付けたのは約3か月ぶり)たものの、欧州でのユーロ危機の影響により、ニッケル価格は大幅に下落し、21,000 US$/tで低迷するようになった。その後、市場においてはユーロ危機拡大の懸念や米国での雇用不安等による大幅な景気後退の観測から、約1年2か月ぶりに20,000 US$/tを割り込み、9月22日には19,505 US$/t、翌23日には17,925 US$/tにまで値下がりした。その後は、19,000 US$/t前後で推移している。
 2011年Q2及びQ3における在庫については概ね減少傾向をたどっており、4月時点では約120,000 tであったが、10月時点では約88,000 tに減少している。

図1. LME価格推移(2011年1月~2011年11月8日)

(出典:LMEホームページ)

図1. LME価格推移(2011年1月~2011年11月8日)

2.各委員会における講演

2-1.第43回統計委員会(2011年9月28日9:00~11:45)
①講演『ニッケル市場の変化-1999年と2010年の比較』(INSG Chief Statistician、Mr. Sven Tollin)
 ニッケル鉱石の生産量は、1999年は1,058千tであったが、2010年には約500t増加し1,577千tとなっている。地域別に見ると(図2参照)、1999年時点での第1位は米州(33%)、次いで欧州(24%)、大洋州(22%)、アジア(14%)、アフリカ(7%)の順となっていた。しかし2010年ではアジアが第1位(32%)となり、次いで米州(23%)、欧州(21%)、大洋州(19%)、アフリカ(5%)となり、アジアが大幅にシェアを拡大する代わりに、他の地域は軒並みシェアを縮小している。特にここ数年は、インドネシアとフィリピンの生産拡大によりこの傾向が顕著になってきている。

図2. ニッケル鉱石生産の比較(1999年と2010年)

(出典:第43回統計委員会講演資料)

図2. ニッケル鉱石生産の比較(1999年と2010年)

 次に、ニッケル地金の生産状況の変化を見ると、1999年では1,023千tであったが2010年には約40%増加し1,444千tに拡大した。地金生産を地域別に見ると(図3参照)、鉱石生産での変化と同じようにアジアの躍進ぶりが目立つ。1999年は第1位が欧州(42%)、次いで米州(23%)、アジア(18%)、大洋州(12%)、アフリカ(5%)の順となっていたが、2010年ではアジアが首位(37%)に立ち、次いで欧州(35%)、米州(16%)、大洋州(10%)、アフリカ(2%)となっている。鉱石生産での変化と同様、アジア以外の各地域はシェアを落としているのが特徴的である。アジアが第1位となった大きな要因は、2005年以降の中国でのニッケル銑鉄の生産拡大にある。

図3. ニッケル地金生産の比較(1999年と2010年)

(出典:第43回統計委員会講演資料)

図3. ニッケル地金生産の比較(1999年と2010年)

 最後にニッケル需要を見ると、1999年では1,081千tであったが2010年には35.3%増加し1,463千tとなった。地域別に見ると(図4参照)、1999年はアジアが僅差で1位(40%)、次いで欧州(39%)、米州(18%)、アフリカ(3%)、大洋州(0.2%)となっている。2010年にはアジアがシェアを大幅に拡大し64%で第1位、欧州は大幅にシェアを縮小し24%で第2位、3位以下は米州(10%)、アフリカ(2%)、大洋州(0.2%)となっている。
 このように、直近10年でアジアは鉱石の生産、地金生産、需要のいずれにおいても首位となり、ニッケル市場における重要性が飛躍的に増大した。

図4. ニッケル需要の比較(1999年と2010年)

(出典:第43回統計委員会講演資料)

図4. ニッケル需要の比較(1999年と2010年)

②講演『世界のステンレス市場』(International Stainless Steel Forum、Mr. Peter Kaumans)
 資料は公表されていないため、概要のみ以下に報告する。
 ニッケル価格の変動にも関わらず、2011年H1の世界のステンレス生産は16.5百万t(前年同期比3.8%増)となったが、地域及び国で成長のスピードにばらつきが見られる。2010年のステンレス粗鋼生産量は30.09百万t(対前年比24.8%増)の成長となり、これまでの最高値(2006年:24.7百万t)を超えた。地域別ではアジアが最大であり、次は欧州・アフリカ地域である。また品目別の内訳では、2010年はクロム・ニッケル系は前年に比べ58.3%から56.3%へ減少、クロム・マンガン系は同12.2%から12.0%に減少、クロム系は同28.3%から30.3%へ増加している。直近の2011年Q2は、クロム・ニッケル系58.4%、クロム・マンガン系13.5%、クロム系28.1%となっている。2012年の世界全体のステンレス生産量は2011年比で5%程度増加すると予想され、中国について見れば8.5%増と予測される。需要に目を転じると、2010年の増加率は対前年比13.8%、2011年は同6.7%、2012年は同6.3%と予測される。

写真1. 三井物産 宮島室長による講演
写真1. 三井物産 宮島室長による講演

③講演『日本のステンレス産業』
(三井物産株式会社金属資源本部新金属部ニッケル室 宮島室長)
 三井物産の2011年におけるニッケル取引量は約80,000 tを見込んでいる。形状は、ニッケル鉱石、フェロニッケル、ニッケル地金(カソード、ブリケット、ペレット)、焼結酸化ニッケル、ニッケルパウダー、ニッケル化合物を扱っている。当社はニッケル鉱山や製錬所にも参画しており、日向製錬所に15%、コーラルベイプロジェクト(比)に18%、タガニート(比)に15%、ゴロ(ニューカレドニア)に10%、Valeに5%出資している。
日本のクロム・ニッケル系ステンレス生産を2000年と2010年で比較すると、生産量は3,357千tから3,422千tとほぼ横ばいであるが、日本のステンレス生産における割合は68.5%から53.0%へ減少している。これはステンレスを形状別に見た場合、全体の7割以上を占める条(Strip)の生産において、クロム・ニッケル系ステンレスからクロム系ステンレスへのシフトが発生していることが原因である。
 ステンレスの形状別輸出入についてみると、輸出のうち最も大きいシェアを占めるのは条であり700千tとなっている。輸出に回る比率は全形態平均で41%、特に管形状のものは73%と輸出比率が高い。主な輸出先は中国、東南アジアである。逆に輸入は韓国、台湾からが多い。
 日本の主なステンレスメーカーは、新日鉄住金ステンレス、JFEスチール、日新製鋼、日本冶金工業、日本金属工業(日金工)の5社である。2010年の生産シェアで見ると、新日鉄住金ステンレス:29%、JFEスチール:19%、日新製鋼:18%、日本冶金工業:10%、日金工:9%となっている。
 日本の各メーカーはそれぞれに得意分野を持っており、例えば新日鉄住金ステンレスはニッケルを使用しないFW2の生産を得意とする。JFEスチールは、自動車用途のクロム系ステンレスの生産を主に行っている。日金工はニッケル含有量が少なくマンガンを添加するDシリーズの生産に優位性を持っている。日本冶金工業はニッケル純分の高いステンレスの生産を拡大している。日新製鋼は世界的なステンレスメーカーであるAcerinox社(本社:スペイン)に出資をしており、2008年にはAcerinox社と合同でマレーシアのステンレス工場へ投資している。
 日本のメーカーは他社と連携をし、生産の最適化に取り組んでいる。例えば、新日鉄住金ステンレスと日新製鋼は連携関係にあり、新日鉄住金ステンレスは日新製鋼にクロム系のステンレス供給を行い、日新製鋼は新日鉄住金ステンレスへクロム・ニッケル系の製品を供給している。さらに、日新製鋼は日金工より熱延コイルの供給を受けている。JFEスチールと日本冶金工業も連携を行い、製品につき相互に補完し合っている。
 2000年から2010年における日本のニッケル需要は、おおむね年間150千tから190千tの間で推移している。2010年の需要を形態別に見ると、ニッケル地金:53%、フェロニッケル:33%、焼結酸化ニッケル:11%、ニッケルパウダー:3%という内訳になっている。
 最後に、直近5年間の日本のステンレス・スクラップ価格とLMEニッケル価格を比べると、日本のステンレス・スクラップ価格は平均してLMEニッケル価格の80%~94%のレンジで安定的に推移している。中国のステンレス価格はLMEニッケル価格の50%~80%のレンジで推移していることを考えると、日本のステンレス(及びスクラップ)は国際競争力を有しているといえる(図5参照)。

図5. 日本と中国のスクラップ価格の比較

(出典:第43回統計委員会講演資料)

図5. 日本と中国のスクラップ価格の比較

2-2. 第35回産業諮問委員会(2011年9月27日1:45~3:15)
①講演『The short terms nickel outlook China and global』(Macquarie Commodities Research、Mr. Jim Lennon)
 ニッケル需給の将来予測をする上で重要なキーファクターは3つある。一つ目は中国の需給動向であり、具体的には中国の需要拡大、ニッケル銑鉄に代表される供給の状況、在庫積み増しと放出のタイミングが挙げられる。2つ目のファクターは中国を除く世界の需要動向であり、3つ目は新規プロジェクトの立ち上がりのスピードである。
 ここ10年の間、中国の見かけ需要の大きな振幅が世界のニッケル市場に大きな影響を及ぼしている(図6参照)。さらに近年、中国においては在庫積み増しと放出が行われ、今年に入りニッケル価格が下落してきたことを受け、ニッケル地金やフェロニッケル等のニッケル製品の輸入を増加させている傾向が見られる(図7参照)。

図6. 中国の見かけ需要と世界の比較図
(出典:第35回産業諮問講演資料)
図6. 中国の見かけ需要と世界の比較図
図7. 中国のニッケル地金の輸入量(ネット)
(出典:第35回産業諮問講演資料)
図7. 中国のニッケル地金の輸入量(ネット)

 供給サイドを見ると、ここ数年、供給の拡大を担ってきたのは中国のニッケル銑鉄である。ニッケル銑鉄の原料となるニッケルは、主にインドネシアとフィリピンのラテライト鉱石から手当てされている(図8参照)。

図8. 中国のラテライトニッケル鉱石の輸入

(出典:第35回産業諮問講演資料)

図8. 中国のラテライトニッケル鉱石の輸入

 2010年、フィリピンからのラテライト鉱石輸入に関しt当たり平均価格が下落するという現象が見られた。この理由としては、2010年の鉄鉱石価格上昇を背景に、フィリピンのラテライト鉱石の品位がFe:45~50%、Ni:0.6~0.8%であり、鉄鋼原料としても利用可能であることから、中国の一部の製鉄会社がラテライト鉱石を鉄鋼原料の補完として用いたことが原因と考えられる。
 中国はこれまで、国内で生産されたニッケル銑鉄で、ステンレス生産拡大に伴うニッケルの需要の増加分を賄うことを政策として推し進めてきた。ニッケル銑鉄の生産は2007年では33千tであったが2011年には263千tにまで増加し、これによりニッケル製品(ニッケル地金、フェロニッケル、ステンレス・スクラップ)の輸入代替を推進してきた。しかしながら、2011年に入りニッケル価格が低迷してきたことを受け、ニッケル製品の輸入が徐々に増えてきた。これは在庫積み増しによるものか、あるいは何らかの国内的理由でニッケル銑鉄の生産コストが上昇したことによるものか、非常に興味深いところである。
 新規プロジェクトについて見てみると、いくつかのプロジェクトで立ち上がりの遅れが見られ、この結果2011年は当初想定より62千tの供給減となる見込みである。
 2012年の需要量は対前年比5.6%増の1,697千t、供給は同8.1%増の1,732千tになると予想され、バランスとしては35千tの供給過剰となると見込んでいる。

3. INSG各委員会のプロジェクト進捗報告

 各委員会に関する活動内容報告、作業プログラムの動向と進行状況についての報告がなされた。特記事項のみ以下に報告する。

3-1. 統計委員会

① 現在進行中のプロジェクト

 ・INSG統計月間報告書の作成、年2回の会合のためのニッケル市場調査

 ・「World Directory of Nickel Producing Facilities」を2011年に発行予定

② 新規プロジェクト

 ・米国でのニッケル需要に係る情報収集

 ・ニッケル銑鉄に係る調査の実施(2012年4月発表予定)

3-2. 産業諮問委員会
  特になし。

3-3. 経済環境委員会
① 完了したプロジェクト

 ・ニッケル鉱山の操業に係る環境・健康・安全面での規制動向について調査を実施。報告書を2011年6月に発行。

② 現在進行中のプロジェクト

 ・関係各方面より高い評価のあった「The Market for Nickel: The Fundamentals Driving Change」に関し、初版を2008年に発行し、その後2010年にリバイスを行ったが、2011年のデータを織り込んだ形で2012年版を発行するべく準備を行っている。

 ・ニッケルの環境及び人体への影響に係る調査報告書を2010年6月に発行。

 ・ニッケルリサイクル率の調査

 ・中国におけるスクラップ金属調査(ILZSG、ICSGとの共同プロジェクト)

③ 新規プロジェクト

 ・コバルト、スカンジウム、白金族金属等のニッケルの副産物に係る調査研究を実施。

5. 2012年秋季会合の日程

 次回の国際ニッケル研究会は、2012年4月23日より24日までリスボン(ポルトガル)にて開催予定である。

おわりに

 ニッケル価格及び在庫について前回開催時(2011年4月)と比較すると、価格については22.5%下落し(4月の月中平均26,328.89 US$/t、9月の月中平均:20,392.05 US$/t)、在庫は17.9%減少している(4月の月中平均120,317 t、9月の月中平均98,737 t)。1年前のニッケル市場は価格も在庫も増加傾向にあったが、現在は全く逆の様相を呈している。
 今回の会合は、欧州での政府債務問題に端を発するユーロ危機や、中国やインド等新興工業国での景気減速の兆候により、世界経済が予断を許さない状況下での開催となった。講演の中には、ニッケル価格は当面堅調な需要に下支えされ、底固い動きをするであろうという観測を示すもの(例えば、Macquarie Commodities Research社のJim Lennon氏の講演)もあったが、事務局が発表したプレスリリースにおいては、今後の世界経済の情勢如何によっては予測の修正があり得ることがコメントされ、眼前に立ちはだかる世界経済の不確実性をどのように認識するかによって、識者による見解の相違が見られた会合であった。

ページトップへ