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報告書&レポート

2011年12月1日 メキシコ事務所 高木博康
2011年65号

第29回メキシコ国際鉱業大会(Expomin México 2011)報告

 メキシコ国際鉱業大会(Expomin México)は、1993年までは毎年1回、それ以降は2年に1回開催されているメキシコ最大の鉱業イベントである。第29回大会は、2011年10月26日から29日の4日間、ゲレロ州アカプルコ市のMundo Imperialにおいて開催された。
 今回の大会は、メキシコ鉱業の好調さを背景に過去最大の約900ブースの企業・団体が出展し、過去最大の約1万人が参加した。開会式にはカルデロン大統領が出席し、祝辞を述べた。関係者の話によると、1990年以降大統領が参加するのは初めてということで、経済省の調整官(局長級)が大統領の祝辞を代読するというのが通例であっただけに、関係者も驚きを見せていた。

1. 開会式

写真1. 開会式で挨拶をするカルデロン大統領

写真1. 開会式で挨拶をするカルデロン大統領

 10月26日の開会式にはカルデロン大統領が出席し、祝辞を述べた。その概要は、以下のとおりである。
 「メキシコにおいて鉱業は目覚ましい発展をとげており、外貨獲得において、石油、観光に次ぐ第3位の位置を占めている(注1)。今後も鉱業の発展に期待しており、そのために鉱業活動に関わる全ての者に対し治安を確保することを約束したい。また、2005年の鉱業法改正が法的効力を持つように、鉱業法施行規則を2011年度中に公布することを約束する(注2)。今後ともメキシコ経済を牽引する鉱業関係者の活躍に期待したい。」


(注1)製造業を自動車産業、電気産業等に細分化している。2009年は外貨送金に次ぐ第4位であったが、金属価格の上昇、金属生産の伸びにより、2010年は第3位になっている。

(注2)2005年鉱業法改正法の付則において、「政府は速やかに施行規則を公布、施行させるものとする。それまでの間は1999年鉱業法が効力を持つ。」と記されている。


2. 展示会場

写真2. 展示会場

写真2. 展示会場

 過去最大の900ブースの企業・団体等が展示を行った。しかし、そのほとんどが鉱山用の機械、機具等のメーカーや地質調査会社であり、鉱山会社の展示は極めて少なかった。メキシコ国内鉱山会社としては、ペニョーレスの子会社の製・精錬企業であるMet-Mex Peñoles社が、海外鉱山会社としてはGordcorp社等2~3社がブースを出しているだけであり、それらのブースにはコンパニオンしかいなかったり、無人でパンフレット等が置かれていたりといった状態であった。会場周辺では、個人鉱区所有者が商談を行う風景も見られたが、メキシコに進出する多くの外国企業は、カナダ・トロントで毎年3月に開催されるPDAC等のより規模の大きい国際鉱業大会において商談を進めているためではないかと思われる。
 メキシコ鉱業センター(SGM:2010年10月カレント・トピックス10-50号を参照)のブースにおいては、2012年Q1に入札を行う予定のソノラ州のElenaプロジェクトのPRを行っていた。同プロジェクトは、La Herradura金鉱山(メキシコの2010年の金生産量第2位)の北西近傍に位置し、ボーリング探査の結果、金品位41~155g/tとのことであった。入札情報は、官報(Diario Oficial)に掲載されるとともに、SGMのHPのトップページでも告知するとのことであった。また、SGMによれば、大会期間中に中国企業20社と面会し、国有鉱区等について情報提供を行ったとのことである。
 その他、メキシコの州政府では、ソノラ州、チワワ州及びシナロア州がブースを出していた。このうち、今回初めて展示するシナロア州は、太平洋に面した港、道路等のインフラ整備に力を入れており、アジアへの輸出拠点を目指しているとのことであった。

3. 講演会

①特別講演
 特別講演として、「鉛、亜鉛、銅の受給見通し」(International Group of Lead and Zinc Resarch社)、「メキシコにおける鉱業のための資金調達の今後」(メキシコ証券取引所等)及び「中国とのビジネスの実施」(ProMexico)の3テーマの講演が行われた。
 「鉛、亜鉛、銅の受給見通し」は、国際的な研究会での報告を紹介するものであったが、開催国であるメキシコの供給面での影響についても言及があった。鉛、亜鉛については、サカテカス州のPeñasquito多金属鉱山が2010年、2011年と生産を拡大させ、2012年にフル操業になることが鉛及び亜鉛の国際受給に影響すること、2012年に加Teck Resources社が79%の権益を持つサカテカス州San Nicolas亜鉛(・銅)プロジェクトが生産を開始する可能性があることが紹介された。銅については、ストライキで生産を停止していたBuenavista(旧Cananea)銅鉱山がフル操業をしている影響で、2011年H1においてチリペルーが生産を減少する中、メキシコは前年同期比50%以上の伸びを示し、世界の供給を補っていること等の説明があった。
 「メキシコにおける鉱業のための資金調達の今後」では、メキシコ証券取引所(BMV)に上場している企業は、現在4社(Grupo Mexico、Peñoles、Minera Frisco及びMinera Autlan)しかないが、経済省がFIFOMI(メキシコ鉱業振興信託)の支援の下、上場企業を増加させようとしている取組が紹介された。これまで上場企業が少ないのは、ファミリー企業が多いことが一因であるが、会社の透明性が確保できれば、上場可能な企業は多く存在している。FIFOMIがBMVへの手数料、管理費等を補助したり、保証人になるといったスキームを現在検討しているとのことであった。
 「中国とのビジネスの実施」では、メキシコ人から見た中国投資環境、進出から企業設立、ビジネス契約成立までを実例を交えて説明があった。要点としては、中国でビジネスする場合には批判的な噂や既存の情報に頼らず、専門家を通じた事前調査を徹底すること、文化の違いに注意すること、市場の大きさはビジネスの保証にはならず、国際的な競争相手が存在することに気を付けること、現実的なプランを持ち、上手く行かない時のプランB(代替案)も用意しておくこと、特許、商標等に気を付けること、契約書作成においては言語の違いに注意することが挙げられ、英語を使った場合でも英語-中国語間の翻訳で問題になるケースがあること等の説明があった。中国で現在成功している代表的なメキシコ企業としては、Binbo社(中南米で広く生産・販売を行うパン類の会社)があり、鉱業関係では、SGMの支援の下で中国に石材を輸出する企業があるとのことであった。

②技術講演会
 約800ページの論文集が電子データで参加者に配布され、12の小会場に分かれて、地質40テーマ、冶金28テーマ、鉱業17テーマ、環境及び修復15テーマ及び一般19テーマの計119テーマの講演が行われた。

おわりに

 第29回メキシコ国際鉱業大会(Expomin México 2011)は、約900ブースの展示、約1万人の参加者といずれも過去最大であった。2005年の第26回大会が約280ブース、参加者数3,500人であったことから見ても、2011年の大会が如何に盛大であったかということが判る。これは、メキシコの鉱業の生産高が過去最大を記録していることに加え、資源価格の高騰から、如何に業績が好調であるかを示しているものと思われる。
 また、本大会会場には中国人の姿が多数見られた。在メキシコ中国大使館の支援の下、本大会期間中に中国企業20社がSGMと面会し、国有鉱区について情報提供を受ける等の動きを見せている。現在、メキシコにおける中国企業は、金川集団公司がチワワ州でBahuerachi銅・亜鉛プロジェクト(概測・精測資源量525百万t、平均品位 銅0.40%、亜鉛0.55%)を所有している程度であるが、今後の動向が注目される。

(参考)
技術講演会の主な講演題目(非金属関係、参加者全員に配布された電子データの論文集に載っていないものを除く。また、英語の表題は原文も表記した。)
(地質関係)
「25万分の1のメキシコ地質図の公認」(SGM)
「メキシコ鉱物鉱床に関係する火成活動」(メキシコ国立自治大学(UNAM))
「キューバにおける鉄・ニッケル・コバルト・ラテライト鉱床の特徴による物理探査方法の重要性」(コアウイラ州工業専門学校)
「国有鉱区Tauro:チワワ州西シエラマドレ山脈の金・銀鉱化帯探鉱プロジェクト」(SGM)
「メキシコ北東部における層状鉱床の分布」(SGM)
「メキシコ北東部:Piedras Negras地域La Peña層の岩石分類と地化学探査の研究」(コアウイラ州自治大学)
「バハ・カリフォルニア半島南部における微量元素の広域分布の地質統計解析」(バハ・カリフォルニア・スル州自治大学)
「サカテカス州Conceocion de Oro及びSan Tiburcio地区近傍における物理探査の進捗」(SGM)
「地質空間情報データの統合:Charcas鉱山への適用」(Grupo Mexico)
「Play分析による探鉱の地質リスク評価」(UNAM)
「サカテカス州のBilbaoスカルン鉱床の地質学と鉱物学;The geology and mineralogy of the Bilbao skarn deposit in Zacatecas State, Mexico」(Xtierra社)
「SGMの情報相談の新規フォーム」(SGM)
「Charcas鉱床集積地域の貫入岩の年代」(UNAM)
「GuaynopaとGuaynopia:クレーターの銅隕石と銅・鉄・金の鉱化作用の類型学」(UNAM)
「スペクトル空間イメージ装置の設置」(SGM)
「メキシコのアンチモン鉱床とアンチモン・鉄鉱化帯」(UNAM)
「ゲレロ州Teloloapan郡Rey de Plata鉱床のVMS鉱床地質学への貢献」(Peñoles)
「チワワ州Fernandez Leal Janos国有鉱区の金・鉛・亜鉛鉱化作用」(SGM)
「チワワ州Buenaventura郡のMinero Camarada鉱区の評価」(SGM)
「ドゥランゴ州Pitarillaプロジェクトの開発」(Silver Standard Resources社)
「ミチョアカン州におけるSIG及び遠隔探査機を用いた有望探鉱地域の位置」(ソノラ大学)
「Burgos盆地のウラン鉱床とテキサス州南部の鉱体との相関性」(SGM)
「グアナファト州北部のゼオライト鉱床の化学的・鉱物的特徴」(グアナファト大学)
「オアハカ州Yolomecatl-Tecomatlan2地域間の構造的地質及び地層」(Mixteca工科大学)
「ドゥランゴ州La Pitarrilla銀・鉛・亜鉛鉱体における多様な鉱化作用と変質作用」(Teck Resources社)
「ミチョアカン州San Diego Curucupatzeo地域の探鉱における地化学探査の適用」(SGM)
「ASTER衛星画像解析を用いた探査目標の決定」(Remote Sensing Geoimage社)
「メキシコにおけるウラン鉱床の主な特徴」(UNAM)
「世界のウラン主要鉱床とそのタイプ」(UNAM)

(冶金関係)
「Corrosion and active cathodic protection」(コンサルタント)
「新規鉱業プロジェクトにおける複雑鉱硫化物評価への冶金学の適用」(Peñoles)
「試験分析所における選鉱機器:16FP」(SGM)
「Santa Eulalia鉱山における浮遊選鉱による銀含酸化物精鉱の生産プロセスの開発と適用」(Grupo Mexico)
「冶金のためのセメント:GoldcorpのLos Filos鉱山のセメント工場」(Goldcorp)
「鉱業排水に含まれるシアン除去のための桃の種の使用」(コアウイラ州自治大学)
「メキシコ鉱業の亜鉛電気精錬におけるリーチサイクルデザイン」(Minera Mexico社)
「浮遊選鉱の中でのイオン浮遊選鉱」(グアナファト大学)
「ヒープリーチ改良のための新しい化学的手法;New Chemistry for improved heap leach control」(Ashland Water Technologies社)
「実験デザインに基づく亜鉛電気分解システムにおける陰極・陽極のポテンシャル評価」(サン・ルイス・ポトシ州自治大学)
「La Cienega鉱山の選鉱プラントにおける分析所及びパイロットプラントの重力選鉱の評価」(Peñoles)
「浮遊選鉱によるヒ素及びアンチモン高含有鉛鉱石の処理」(コリマ大学)
「サーキット最適化のためのモデル予測コントロール-Nkomatiニッケル鉱山でのケーススタディ-;Model predictive control to optimize circuits using Nkomati nickel mine as a case study」(F.L.Smidth社)
「鉱業におけるゼロ・ポテンシャル:モリブデンの場合」(サン・ルイス・ポトシ州自治大学)
「鉄の残渣からの銅の除去:実験室での試験」(コアウイラ州自治大学)
「イメージデジタルプロセスによる球状小片のサイズ測定システム」(サン・ルイス・ポトシ州自治大学)
「6SIGMA法を用いたミルの効率化」(Minera Sabinas社)
「鉱業排水に含まれるシアン除去のための製鉄業排水利用の可能性」(コアウイラ州自治大学)
「鉱業における化学リスクからの保護」(International Paint社)
「6SIGMA法を用いた亜鉛回収率の最大化」(Minera Bismark社)
「貴金属抽出プラントからのテルル回収」(ソノラ大学)
「La Negra鉱山における浮遊選鉱サークルの効率化」(Aurcana社)
「グアナファト州La Esperanza盆地の鉱業廃水の環境への影響」(グアナファト大学)
「高含有ヒ素金銀硫化物精鉱の酸化」(ソノラ大学)

(鉱業関係)
「新しい採鉱法:Double post mining;A new mining method:Double post mining」(Peñoles)
「鉱業用エネルギーケーブルの技術、デザイン及び機能性」(Carsoグループ)
「保安と生産性改善のためのMilpillas鉱山方式:水平ボーリング探査による高生産性採鉱システム」(Peñoles)
「Peñoles社の鉱山における支保及び補強」(Peñoles)
「豪州の坑内採掘鉱山における現地感度型の感光乳剤爆薬の使用;Experience with the use of site sensitized emulsion explosives in underground mining operations in Austria」(Austin Power Internacional社)
「Sabinas鉱山における微震Viper6の使用」(Minera Sabinas社)
「Aranzazu鉱山の盛土安定評価のためのモデル」(Aranzazu Holding社)
「Downtime管理システム」(Buenavista de Cobre社)
「メキシコにおける閉山プロセス」(SGM)
「鉱山から選鉱プラントまでのプロセスの統合」(Metso社)
「坑内掘鉱山における岩石サイズ減少用の火薬」(Nusantara de Mexico社)
「坑内掘鉱山におけるコンクリートの製造、運搬及び設置のロジスティック」(Tuneles y Minas社)
「電気圧縮空気システムによるボーリング探査コストの削減」(Proyectos San Lorenzo社)

(環境・修復関係)
「イダルゴ州Tula de Allende郡のセメント工場用の砂の採掘と森林地区の環境保護」(La Cruz Azul社)
「油の混じった水を削減するための瀝青炭を基とした新しい磁気材料」(コアウイラ州自治大学)
「地域開発の選択:メキシコにおける閉山時の準備」(SGM)
「ソノラ州Santa Elena鉱山の道路及び斜面における単純な技術による生態系再生」(Mina Santa Elena社)
「国土を法令で守った上での鉱業の重要性」(SGM)
「鉱業による土壌汚染におけるヒ素及び鉛のバイオアクセス及び土壌入替」(SGM)
「サカテカス州、鉱業による地下水減少の疑い」(SGM)
「イダルゴ州ごみ集積場におけるメキシコ公式規格NOM-083-SEMARNAT2003の適用」(SGM)
「グアテマラ:鉱業から水棲昆虫の生物多様化の国へ」(Consultoria y Technologia Amniente社)
「イダルゴ州Pachuca de Sato郡の都市における人類学的リスク」(SGM)
「Met-Mex製錬所の残渣水の処理」(Met-Mex Peñoles社)
「粉塵抑制剤による作業現場の安全性向上;Dust suppressant improves work place safety」(Ashland Water Technologies社)

※上記の個々の講演(論文)にご関心がある方は、講演題目(論文名)をご指定の上、JOGMECメキシコ事務所(jogmec@prodigy.net.mx)までお問い合わせ下さい。

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