閉じる

報告書&レポート

2012年1月6日 金属企画調査部 調査課
2012年01号

2011年金属鉱物資源分野の10大ニュース

 JOGMEC金属企画調査部は、2011年の世界の金属鉱業情勢を概観し、金属鉱物資源分野における10大ニュースを次のとおり選定し、それらについてまとめた。

No. 1 東日本大震災と生産障害
No. 2 福島第一原発事故とウラン海外資源開発
No. 3 中国レアアースの価格高騰
No. 4 日本企業とJOGMECの海外資源開発事業の拡大
No. 5 改正鉱業法とJOGMEC新海洋資源調査船「白嶺」の進水
No. 6 金属価格の高騰
No. 7 資源ナショナリズムの高まり
No. 8 資源消費国や資源メジャーによる直接投資の活発化
No. 9 ストライキと反鉱業運動の活発化
No. 10 紛争鉱物に対する規制の進展

1. 東日本大震災と生産障害

 2011年3月11日に発生したM9の東北地方太平洋沖地震は、国内の銅、鉛、亜鉛、ニッケルの製錬所に大きな被害をもたらした。これらの製錬所では直接人的な被害はなかったものの、いくつかの製錬所では地震の揺れや津波により配管や港に被害を受け、修復するまで操業停止となった。また、被災しなかった製錬所でも地震による停電により東北地方から関東地方に位置する全ての製錬所が一時的に操業停止となった。操業停止となった製錬所の生産能力の損失を合わせると、国内銅生産の26%、鉛生産の20%、亜鉛生産の72%に達し、国内ユーザー等への地金供給に支障が出たため、操業が軌道に乗るまでの間、銅、亜鉛は緊急に地金を海外から輸入して対応することとなった。
 停電のみで直接被災しなかった製錬所は4月までには順次操業を再開した。被災した製錬所は再開が遅れたが、7月には全製錬所の再開、9月には震災前までの操業状態に回復し、国内地金供給が正常化した。
 製錬所の他にも数多くの金属加工工場や部品工場が被災したため、自動車を初めとする国内の最終製品製造に支障を来たし、その影響は海外工場などでの製品生産までに及んだ。今回の大震災により改めて上流部門から下流部門までのサプライチェーンの重要性が浮き彫りとなった。

2. 福島第一原発事故とウラン海外資源開発

 中国の旺盛なウラン需要によりウラン価格は2010年6月の40 US$/lb台から徐々に高騰を始め、2011年2月には73 US$/lbの最高値を付けた。ウラン価格が下落を開始した直後の3月11日、東北地方太平洋沖地震に伴い福島第一原子力発電所で事故が発生した。その後、ウラン価格は更に下がり続け2011年末時点で50 US$/lb台となっている。主要ウラン生産国(カザフスタン、カナダ、豪州等)は、福島第一原発事故の後、ウラン生産体制に変化なしと述べた。
 主要ウラン生産会社を見ると、ウラン生産第1位でCigar Lake, Kintyre, Talvivaara等のプロジェクトを有するカナダCamecoは、生産体制を2010年の8,700 tから2018年までに2倍以上の18,000 tに拡大する戦略を継続している。さらにCamecoは、カナダ・アサバスカ盆地でRoughriderウラン鉱床等を保有するカナダHathor Exploration Ltd.に対し2011年8月に5.2億C$で買収提案した。ウラン生産第4位のRio Tintoは開発中の豪州JabilukaプロジェクトのNPVが下がったことを受け開発計画を慎重に進めると宣言する一方で、Hathor社に対し10月に5.8億C$で買収提案した。2011年5月に西豪州裁判所は、ロシアARMZによるタンザニアMkuju Riverウラン・プロジェクト(Nyota鉱床の資源量は約46,000 t)を有する豪州Mantra Resourcesの買収を承認した。このように、各社はウラン資源確保戦略を継続している。
 中国は2010年に引き続きウラン権益取得に力を注いだ。2011年2月にカザフスタン・ナザルバエフ大統領が訪中しウラン約55,000 tを供給することで合意した。また、ナミビアHusabプロジェクトを有するExtract Resourcesの42.8%株式を保有する英Kalahari Minerals買収提案を中国広東核集団が約12億US$で行う等、活動を継続している。

3. 中国レアアースの価格高騰

 2011年、中国のレアアースは前年に引き続き世界の注目を集めた。中国の2011年のレアアース政策に関する主な動向は図1に示した通りである。2011年の特徴は、環境面からの規制が大きく取り扱われたことである。ただし、中国の環境面の規制は産業構造転換と表裏一体の関係にある。違法採掘とその摘発も続き、いたちごっこの様相を呈している。また、5月19日に工業情報化部が「レアアース業界の持続的かつ健全な発展の促進に関する若干の意見」を公布したが、これに基づく江西省など南方のレアアース企業の再編については、2011年末現在、大きな進捗は見られていない。
 レアアース価格は夏に高騰し、その後反落したものの依然高いレベルにある。図2に中国国内で公表されているレアアース酸化物価格を集約し、2010年1月を100とする指数で推移を示した。2011年は一時、20倍(指数で2,000)にも達した。日本の輸入価格では30倍以上の鉱種もあり、内外価格差は広がったが、価格反落に伴いその差も縮小しつつある。内外価格差の原因として、中国での輸出枠売買も推定されている。報道によれば、輸出枠売買価格のピークは2011年4月で、1tの輸出枠売買価格は40~50万元(6.3~7.9万US$)にも達したとのことである(この時点で中国国内で公表されていた価格は例えばネオジム酸化物で約18万元/t(約2.8万US$/t))。その後、輸出量の減少などから輸出枠売買価格は急速に低下したと伝えられている。
 なお、2011年12月27日、中国商務部は2012年第1回輸出枠を24,904 t(予想通年輸出枠31,000 t)と発表した。

図1. 中国の主なレアアース政策等の2011年の動向
図1. 中国の主なレアアース政策等の2011年の動向
図2. 中国国内のレアアース価格(2010年1月を100とする指数表示)と日本の輸入量(t)
図2. 中国国内のレアアース価格(2010年1月を100とする指数表示)と日本の輸入量(t)

4. 日本企業とJOGMECの海外資源開発事業の拡大

 2011年は歴史的円高が継続し、大手商社など日本の資源関連企業による海外鉱山権益拡大に拍車をかけた。住友金属鉱山と住友商事によるチリSiera Gorda大規模銅鉱山開発プロジェクトへの参画や丸紅によるチリAntucoya銅鉱山プロジェクト権益の取得など、中国を始めとした新興国の堅実な需要増を見込んだ銅案件への大規模投資が目立った。さらに、Anglo Americanのチリ子会社株式取得を巡る三菱商事及び三井物産の投融資額(三菱商事54億US$、三井物産68億US$)は銅鉱山案件では過去最大となり、オプション権行使を表明しているCODELCOとAnglo Americanとの係争の動向は世界の注目を集めている。
 JOGMECの金融支援制度は、2010年7月のJOGMEC法改正により開発・生産段階の鉱山権益(資産)買収に係る出資機能が新たに追加され、図3のとおり探鉱から生産までの全ての段階に対して金融支援が可能になった。新規の資産買収出資案件として、2011年にはニオブ及びレアアースの2件を採択し、世界最大のニオブ生産企業ブラジルCBMM社の株式取得により日本の総輸入量の9割に当たるニオブ引取権を確保した他、豪州レアアース開発案件への出融資により日本の総輸入量の3割に当たるレアアース引取権を獲得している。
 さらに、日本企業が100%権益を有する大型銅案件のチリCaserones鉱山開発プロジェクトについては、探鉱資金融資から開発資金に係る債務保証までJOGMECが一貫して金融支援を行うとともに、JBIC及び日本貿易保険(NEXI)が協調支援する初の案件となった。

図3. JOGMEC金融支援制度
図3. JOGMEC金融支援制度

 2011年の主なJOGMEC金融支援プロジェクトは次のとおりである。

 <2011年の主なJOGMEC金融支援プロジェクト(鉱種)>
 ・ブラジル・CBMM社への出資(ニオブ)
 ・豪州・Lynas社への出融資(レアアース)
 ・米国・Salton Seaリチウム回収案件への融資(リチウム)
 ・インドネシア・Tayanプロジェクトへの債務保証(アルミニウム)
 ・チリ・Caserones鉱山開発プロジェクトへの債務保証(銅・モリブデン)
 ・カナダ・Endako鉱山拡張プロジェクトへの債務保証(モリブデン)
 ・南ア・Platreef探鉱開発案件への出資(白金族金属・ニッケル)
 ・カナダ・Gibraltar鉱山拡張プロジェクトへ債務保証(銅・モリブデン)

5. 改正鉱業法とJOGMEC新海洋資源調査船「白嶺」の進水

 近年の世界における鉱物資源獲得競争の高まりの下、我が国の資源開発を巡る内外環境は大きく変化してきているが、戦後まもなくの1950年に制定された現行の鉱業法制は、能力に欠ける者等の適切でない主体により鉱区設定や出願がされたり、また近年、世界の排他的経済水域内の海底鉱物資源に対して本格的な探査活動が行われ始めた現状に対し、必ずしも対応できる制度となっていない。そこで、国内資源を適正に維持・管理しつつ、適切な主体による適切な開発が行われることを制度的に担保するため、61年ぶりに鉱業法を改正することとなった。
 改正鉱業法の改正ポイントは次の3点である。(1) 鉱業権の設定等に係わる許可基準の追加→適切な主体により合理的な資源開発が行われるよう、鉱業権の設定等における許可基準に、技術的能力及び経理的基礎を有する者であることや、鉱業権の設定を受けようとする者が実施する鉱業が公共の利益の増進に支障を及ぼす恐れがないこと等を追加。(2) 鉱業権設定に係わる新たな手続き制度の創設→特定鉱物については先願主義を見直し、国が、鉱物資源の開発を行うことが適切かつ有効な区域を鉱区の候補地として指定し、当該区域を公示した上で、一定の期間、出願者を募る制度とする。(3) 鉱物の探査に係わる許可制度の創設→鉱物資源の開発に必要な地質構造等の調査であって一定の区域を継続して使用する探査を行う者は、事前に許可を受けなければならず、その許可に際しては、技術的能力等、鉱業権の設定の際と同様の要件を課す。
 改正鉱業法は2011年3月に閣議決定され、4月に国会提出、7月に法案が成立し公布された。2012年1月に施行される見込みである。
 一方、JOGMECは海洋鉱物資源の探査・開発を加速するため、これまで運航してきた調査船「第2白嶺丸」に代わる新たな海洋資源調査船「白嶺」の建造を2010年1月より進めてきており、2011年3月23日に下関で進水式が行われた。「白嶺」(約6,200 t)は、船上設置型掘削装置、海底着座型掘削装置(BMS)、遠隔操作無人探査機(ROV)等の最新鋭の海底調査機器を搭載し、海底鉱物資源開発に繋がる高い水準の調査実施が期待される。調査航海は2012年2月に開始される予定である。

6. 金属価格の高騰

 ベースメタルの価格は2010年5月の欧州ギリシャの債務危機で大きく下落したが、それ以降、2010年11月の米国の金融緩和政策第2弾で膨らんだ投機資金の流入が続き上昇に転じ、2011年に入ってからも高値を維持した。銅は2月に10,148 US$/tの最高値を付け、その後、8,000~9,000 US$/tの間を推移したが、9月下旬、再び欧州政府債務危機への懸念から大きく値を下げ、10月3日には6,600 US$/t台となった。その後、銅価格は回復し10~12月は7,000~8,000 US$/tで推移した。2011年9月下旬、亜鉛は2,100 US$/tから下落し、2011年末は1,800 US$/t台で推移し、また、鉛は2,400 US$/tから下落し、2011年末は2,000 US$/t台で推移した。
 貴金属の価格も2010年からの上昇が2011年も高値で推移し、金価格は2011年9月5日には過去最高値の1,895 US$/ozを記録した。

図4. 銅:LME価格及び在庫の推移(2009年1月~2011年12月)
図4. 銅:LME価格及び在庫の推移(2009年1月~2011年12月)
図5. 金価格の推移(2009年1月~2011年12月)
図5. 金価格の推移(2009年1月~2011年12月)

7. 資源ナショナリズムの高まり

 金属価格の高止まりを背景にして、資源国では資源ナショナリズムがさらに高まっている。英国監査法人のErnst & Youngが2011年8月に鉱山開発リスクに関する調査の結果を発表したが、世界の鉱山会社へのアンケート調査によると、資源ナショナリズムが1位となり、鉱山開発の最大の懸念事項とされた。2010年と2009年はそれぞれ4位と9位であり、年々ランクアップしている。
過去18か月間で25ヶ国以上の資源国政府が、税金またはロイヤルティを通じて、鉱業における政府の収入を増加させる意向を示した。具体的には、豪州での鉱物資源利用税(MRRT)の導入、ペルーでの鉱業超過利益課税の実施、中国での資源税の引き上げのほか、タンザニア及びナミビアでの超過利潤税の導入検討、米国のロイヤルティ導入検討など税制やロイヤルティ改正の動きが挙げられる。また、ベネズエラではカナダ企業の鉱業権の取り消し、ジンバブエでは外国企業に対して現地資本比率51%引き上げを義務化、ギニアでは鉱業プロジェクトの政府権益拡大を目的とする鉱業法改正など、世界の資源保有国で外資鉱山企業への政府支配力が強化されている。このほか、インドネシアでは、鉱物資源高付加価値化政策により2014年から鉱石輸出の禁止を検討している。
以上のように、資源ナショナリズムは、世界中の資源国に広がりを見せており、各国の政策動向に注視していく必要がある。

8. 資源消費国や資源メジャーによる直接投資の活発化

 「豪州の子会社Perilya社を通じたカナダGlobe Star Mining Corpの株式完全取得が2011年1月上旬に完了」と発表した中国の中金嶺南股分有限公司による報道で、2011年の直接投資はスタートした。
 2011年の海外直接投資動向の特徴は次の通りである。
① 金価格の高騰を背景にした金生産企業の買収
  例)米NewmontによるカナダFronteer Gold社の23億C$での買収による金生産拡大
② 資源メジャーや中国による肥料関連(カリウムなど)企業への投資
  例)2011年6月、Valeは、同社が出資する肥料生産会社(Vale Fertilizantes Corp)を14億US$で買戻し子会社化
  例)2011年7月、中国寧波の春和集団は2億US$でカナダのカリウム企業(MAG Industries)買収
③ 中国による非鉄金属分野での対外投資は対前年比180%増加と見られるなど、引き続き大きく伸長
  例)2011年4月、湖南有色金属有限公司による豪Abra Mining Ltd.の完全買収
 PricewaterhouseCoopers社が発表した2011年H1の世界のM&Aの動向は表1の通りで、件数では前年同期比24%増の1,379件、金額では前年同期比2%増の710億US$となった。これは、鉄鉱石や石炭なども含んでいる。一方、JOGMECがまとめた非鉄金属分野に限定した状況は表2の通りで、中国の存在感が大きく認められる。また、インドが登場していることも2011年の大きな特徴と言える。
 中国の投資動向の推移を発生ベースで集計すると図6のとおりである。2009~10年に大きく伸びた対アフリカ投資は一段落しているかに見え、2011年にはかつての国有中央企業中心から民営企業や地方企業が主体となり、インドネシアのニッケルや豪州への投資の再拡大などが行われた。この中国の投資動向についてStandard BankのFang Qixue氏は2011年11月に天津で開催された第13回中国国際鉱業大会の席上次のようにまとめている。
・長期需要やマクロ的な投資環境などを考慮に入れ、より戦略的に変貌
・投資銀行や法律事務所、会計事務所、保険会社等の利用の拡大
・単独での投資からパートナーシップを組んだ投資の増加
 (例:DRCコンゴでは中国鉄道グループと複数の中国企業がパートナーシップを構築)
・ストライキなどの現地労働者問題等へのリスク認識の向上

表1. 2011年H1のM&A動向

金額単位;10億US$

買収方 被買収方
国名 金額 国名 金額
米国
カナダ
中国

その他
210
129
47
27
317
31
19
7
4
39
カナダ
米国

その他

284
142
99

185

40
20
14

26

710 100 その他 710 100

(出典;報道されたPricewaterhouseCoopers社データ集約による)

表2. JOGMEC集約による非鉄金属鉱業2011年のFDI動向

金額単位;百万US$

投資方 被投資方
国/地域 件数 金額 国/地域 件数 金額
中国
北米
インド

その他
22
7
2
1
4
17,298
3,775
894
654
748
73
17
4
3
3

東南アジア
北米
アフリカ
その他
9
4
9
8
7
7,119
6,009
5,583
3,302
1,356
30
26
24
14
6
36 23,369 100 37 23,369 100

図6. 中国の非鉄金属FDIの推移
図6. 中国の非鉄金属FDIの推移

9. ストライキと反鉱業運動の活発化

 2010年から継続した金属の高価格に伴い資源開発に対する意欲が活発になったことで、2011年は各国でのストライキや地元住民による反鉱業運動が顕著であった。
 ペルーでは、Puno県の60日間に及ぶストライキが端緒となり、地元住民による抗議運動が多発し、ペルー全土に広がり終息する見通しがつかない。元々、違法鉱業による河川への環境汚染被害が原因であったが、その後、労働者の賃金・待遇改善や住民への充分な生活保障にまで要求が広がり、その解決過程で、企業と住民との間で意思疎通ができなかったこと、さらに、死傷者の発生及び政府の対応のまずさがここまで問題を大きくしたと思われる。2011年7月のHumala新政権誕生まで政治に空白期間ができたこともあるが、環境への対応に係わる膨大なコストが企業側の重荷になっており、住民側の生活苦を含め政府機関が両者に対して良い解決策を提示できなかったことが原因と思われる。
 チリでは、主にCODELCOによる数回のストライキや抗議運動があったが、原因は労働者側の給料アップ要求や解雇への抗議であり、環境問題等で住民からの抗議運動があっても裁判所で訴えが却下された場合が多かった。一番大きかったのは7月のEscondida鉱山の2週間にわたるストライキであったが、チリ経済に対する損失も大きいとの事で、政府、鉱山会社、労組側が早期に妥結したこともあり、ペルーほどの混乱は見られなかった。
 経済的影響が大きかったのはインドネシアのGrasberg銅鉱山ストライキであると思われる。2011年9月より開始したストライキが3カ月という長期に亘ったことで、操業するFreeport-McMoRan Copperは銅の減産に追い込まれた。元々は労働者の賃上げ要求から始まったが、労働者の銃撃などの事件もあり、これが争議を長引かせた。
 フイリピンではTaganitoニッケル鉱山への武装勢力による襲撃及び占拠が起きた。日本企業も出資しているプロジェクトであるが、この襲撃による損害の立て直しを現在行っている。
 このように、鉱山経営をしていく上で多様な問題が噴出した年であった。資源保有国では、上記のような動きは今後活発化していくと思われる。海外の資源開発プロジェクトには、以前許可の下りた案件でも開発条件に見直しが入るものもあり、今後の資源投資に対し大きな懸念が生まれている。

10. 紛争鉱物に対する規制の進展

 DRCコンゴ及びその周辺国の紛争鉱物に関する情報公開義務を課す米国ドッドフランク(Dodd-Frank)法第1502条に関し、その詳細規則が2011年中に米国証券取引委員会(SEC)により公開される予定であったことから、産業界はその詳細発表を待ちながら対応を進めてきた。しかし、実際には2011年12月の時点でその前段階のパブリックコメントを募集しているところであり、実務上に不確定要素が残されたまま2011年を終えることとなった。
 2011年7月、DRCコンゴ政府は、この紛争鉱物に係る規則が中央アフリカ諸国に対する事実上の禁輸措置とならないよう、OECDが2010年12月に公表した「デューデリジェンス・ガイダンス」に準拠した規則制定をSECに要請した。
 11月には、紛争鉱物取り締まりの効果的実施及び情報交換を目的とした「責任ある鉱物貿易のための官民連携(Private-Public Alliance for Responsible Minerals Trade; PPA)」が発足し、現在ソニー、東芝といった日本企業を含めた民間企業、業界団体、政府機関、NGOなどの24組織がこれに加盟している。ソニーはまた、8月からEICC(Electronic Industry Citizenship Coalition)が作成した紛争鉱物報告用テンプレートを使い、仕入れ先約1,200社を対象とした紛争鉱物の使用有無の調査に取り掛かっている。日本企業ではこの他、パナソニックが上述したOECDの「デューデリジェンス・ガイダンス」実施プロジェクトに参加し、これに対応した社内マネジメントシステムの構築を進めている。また、監査法人であるトーマツは使用開示・報告義務への対応支援サービスを2011年7月から本格的に開始した。

ページトップへ