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報告書&レポート

2012年2月9日 ジャカルタ事務所 高橋健一
2012年08号

第4回ASEAN+3鉱物協力協議会合(ASOMM+3)概要報告

 2011年12月8日、ベトナムの首都ハノイで、ASEAN 10か国に、日本、中国、韓国の3か国を加えた、ASEAN+3鉱物協力協議会合(ASEAN Senior Officials Meeting on Minerals:ASOMM+3)が開催された。今回のハノイでの会合は第4回目で、前回2010年2月の第3回会合開催後、2年弱の期間が経過した後の開催となったが、2007年6月の第1回会合以来、ほぼ毎年定期的に開催されている年次会合となる。
 会合の主な目的は、ASEAN側から日中韓3か国(以下「プラス3」)に対し、鉱物資源分野での支援プロジェクトを正式に要請する場である。今後、プラス3側は個別に実施可能性の検討を行うこととなる。今回、日本側代表として本会合に参加したので、以下、概要を紹介する。

写真1. 各国代表団集合写真
写真1. 各国代表団集合写真
写真2. プラス3代表団席(中央が日本代表)
写真2. プラス3代表団席(中央が日本代表)


1. ASOMM+3とは

 初めに、本「ASOMM+3」の設立の背景及びこれまでの活動概要を以下に紹介する。
 ASEANには、鉱物資源分野の専門会合となる「ASEAN鉱物高級事務レベル会合(ASEAN Senior Officials Meeting on Minerals:ASOMM)が設置されており、ASEAN各国の鉱業関係省庁やその他の政府関係機関関係者がその構成メンバーとなる。ASOMM+3の設立に関しては、2005年8月、マレーシアのクチンで開催された第7回ASOMMで、ASEAN+3の枠組みの中での協力を推進するための組織として、プラス3側との協議の場を設置する決議がなされ、同会合後に開催された第1回ASEAN鉱物閣僚会合(ASEAN Ministerial Meeting on Minerals:AMMin)で認められ、ASOMM+3の設立・開催に至ったものである。
 ASOMM+3の第1回会合は2007年6月、ミャンマーの首都ネーピードで開催された。これまでの全開催実績は以下のとおりである。

  第1回 2007年6月ミャンマー・ネピドー (同時期に第8回ASOMM開催)
  第2回 2008年10月フィリピン・マニラ (同、第9回ASOMM開催)
  第3回 2009年2月タイ・バンコク (同、第10回ASOMM開催)
  第4回 2011年12月ベトナム・ハノイ (同、第11回ASOMM開催)

 上記のとおり、これまでのASOMM+3はASOMM 開催時に関連会合の一つとして開催されている。
 ASOMM定期会合では、ASOMM傘下に設置されている4~5の各分野別ワーキンググループ(以下「WG」)において、ASEAN加盟各国がそれぞれASOMM+3で提案するプロジェクト案を審議し、採択する。各WGで採択されたプロジェクトは、その後開催されるASOMM総会で審議され、ASOMM+3会合の場で正式に提案されるプロジェクト案を最終的に決定することとなる。
 ASOMM+3会合において、ASEAN側からプラス3側に対し、国別(又は複数国)宛に要請されたプロジェクト提案は、プラス3関係者が実施可能性を検討するため母国に持ち帰り、その結果を、ASEAN側に回答することになる。
 これまで、日本側は、第1回会合から経済産業省・資源エネルギー庁鉱物資源課及びJOGMECが参加しており、ASEAN側から提案されたプロジェクトを何件か実施してきた。具体的な主なプロジェクトとしては、2008年に金属リサイクルに関するASEAN諸国関係者の研修を実施し(実施主体は財団法人海外技術者研修協会:AOTS)、これがASEAN側から好評を得たため、2010年3月に2回目の研修を実施した。さらに、2010年度、2011年度には、ベトナム、カンボジアの関係者を対象とし、持続可能な鉱山開発に関する研修を実施した(実施主体:AOTS)。

2. 第4回ASOMM+3概要

2-1. 全体日程及び各国参加機関
 2011年12月8日にハノイMeliaホテルでASOMM+3は開催されたが、その他の一連の関係会合も同時期に前後して開催されている。全体の開催日程は以下のとおりであった。
  12月6日 第8回ASOMM ワーキング・グループ会合
  12月7日 第11回ASOMM会合
  12月8日 第4回ASOMM+3会合
  12月9日 ASEAN鉱物閣僚会合(AMMin)
 第4回ASOMM+3会合の各国の主な参加機関及び参加人数は表1のとおりである。

表1. 第4回ASOMM+3各国の主要参加機関及び参加人数

主な参加機関 参加人数 主な参加機関 参加人数
ブルネイ 開発省 7名 シンガポール 国際企業庁 2名
カンボジア 工鉱業エネルギー省 3名 タイ 工業省一次産業鉱山局、鉱物資源局 7名
インドネシア エネルギー鉱物資源省 23名 ベトナム 地質鉱物総局、
天然資源環境省
10名
ラオス エネルギー鉱山省 5名 中国 国土資源部 3名
マレーシア 天然資源環境省 8名 日本 経済産業省、
JOGMEC
7名
ミャンマー 鉱山省 6名 韓国 地質資源研究所 1名
フィリピン 環境天然資源省 2名 ASEAN事務局 4名

2-2. 会合概要
 開催国ベトナムの地質鉱物総局(General Department of Geology and Minerals)THUAN総局長の議長の下、開会され、冒頭、共同議長となる中国、日本、韓国のプラス3側から、それぞれオープニング・ステートメントが述べられた。
 最初に、中国からは、中国-ASEANのFTA発効後においては、特に両者間の鉱物資源分野を含む友好・協力関係基盤はさらに強固になっており、さらに、継続した協力を通じ、両者の持つポテンシャルを最大限生かし、同分野においてのwin-winの関係を拡大することを確信している旨、述べられた。
 日本からは、資源エネルギー庁鉱物資源課初谷係長より、東日本大震災による日本の被害に対し、各国からの多大な支援があったことについて謝辞が述べられた後、日本としては、この分野において、環境に優しく、安全かつ経済的な資源開発を主眼に、ASEAN各国に支援及び投資を進めてゆく方針である旨示された。
 韓国からは、鉱物資源分野での協力は、韓国-ASEAN両者間の経済発展において重要事項の一つであり、引き続きこのASOMM+3の枠組みを活用し、協力していく旨示された。
 会合は、この後、前半部においては、ASOMM+3の枠組みでこれまで実施されてきたプロジェクトの報告と、後半部においては、ASEAN側からの新たな支援プロジェクトの提案がなされた。

(1) 実施プロジェクトの報告
ASOMM+3の枠組み等でこれまで実施されてきた以下のプロジェクトについて、各国から報告があった。

① 鉱物資源の資源量、埋蔵鉱量の分類に関するUN国際フレームワーク研修:中国報告
 ・2010年11月に中国・昆明で開催された本件に係るミーティングの内容が報告された。研修コースは拡張され、3つの段階に分類し実施される。

② ASEAN鉱物情報データベースの開発:日本・インドネシア報告
 ・2010年2月に、AOTSにより東京で実施された研修について、(独)産業総合研究所の脇田地質調査情報センター長より報告。ASEAN 7か国(カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)、計20名が参加。2011年6月にインドネシアで追加研修を実施。今後も継続する用意あり。

③ 坑廃水処理を含む休廃止鉱山の現状回復等の人材育成:韓国報告→発表がキャンセルされた。

④ ASEAN加盟国地質担当者向け地質図作成に関する研修:中国報告
 ・地質図作成に関するスキル向上などを目的とした研修。研修は、2010年10月と2011年10月の2回に分けて、それぞれ3週間、昆明で開催された。

⑤ 鉱物・金属開発における環境配慮への貢献(リサイクル研修):日本報告
 ・2009年2月に実施した研修が好評であったため、引き続き、2010年3月にAOTSにより横浜市、秋田県小坂町で実施された研修について、JOGMEC金属企画調査部濵井職員より報告。シンガポールを除くASEAN 9か国から33名の参加があった。
 ・特に、本研修に対しては、カンボジア、タイ及びベトナムTHUAN議長から、有意義なものであったとのコメントがあり、継続実施の要望が示された。

⑥ 鉱物資源の持続可能な開発に関するワークショップ:インドネシア報告

⑦ 鉱山保安トレーニングコース:インドネシア報告

⑧ 鉱山環境管理トレーニングコース:インドネシア報告
(以上、⑥から⑧の内容は省略)

(2) 新規プロジェクトの提案
新規プロジェクトの提案については、まず、プラス3側からの提案の後、ASEAN側から、前日のASOMMで採択された案件についての説明がなされた。

① 中国からの提案:地下水資源・環境セミナー
 ・ASEAN向け2011年12月下旬に南寧で開催予定のセミナー。セミナーの目的は、技術協力の一環として、水理地質学及び環境地質に関する学術的なプラットフォームの提供。

② 日本からの提案:持続的鉱物資源開発に関する研修
 ・鉱物資源課初谷係長から、2010年度・2011年度にベトナムとカンボジアに対して実施した前述の研修について報告した後、2012年度以降は前記2ヶ国に加え、ミャンマーとラオスに対しても研修を実施する用意がある旨提案した。
 ・本提案に対し、ベトナム、カンボジアからは、2年間の研修に対し謝辞が示され、継続実施の要望があった。また、ラオスからは、研修の対象国となったことについて感謝の意が表明され、日本の経験に基づく研修に期待する旨が示された。

③ 韓国からの提案:リモートセンシング及び地理情報システム研修
 ・リモートセンシング及び地理情報システム(GIS)に関する研修について、2012年2月に開催する用意がある旨提案。

④ ASEAN側からの提案:全19件
 ・ASEAN側から、ASOMMで採択された新規プロジェクト19件が提案され、各提案国よりそれぞれのプロジェクトに関する説明があった。表2がプロジェクトの一覧である。

表2. 提案プロジェクト一覧

No. プロジェクト 提案国
1 Seminar on Rules and Regulations in Mineral Sector among ASEAN Countries インドネシア
2 Assistance for Research and Development on the Demonstration of Tin Fuel Catalyst for Saving Energy and Reducing Air Pollution マレーシア
3 Capacity Building in Geo-Hazards and Risk Management マレーシア
4 Capacity Building on Cross Border Geological Correlation マレーシア
5 Capacity Building on Minerals/Metal Recovery and Recycling from Waste Electrical and Electronic Equipment (WEEE) タイ
6 Mineral Processing Course インドネシア
7 Capacity Building on Research and Basic Investigation of Marine Minerals ベトナム
8 Capacity Building in investigation and assessment of shale gas in organic rich schist formations in Vietnam ベトナム
9 Workshop on ASEAN Mineral Resources and Trade Database インドネシア
10 International Conferences on Geology and Natural Resources of ASEAN (GeoASEAN), ベトナム
11 Exchange of Geological Samples and Publications among ASEAN Countries ベトナム
12 Workshop Agenda of ASEAN Titanium ベトナム
13 Workshop on Mine Rehabilitation and Sustainable Mineral Development インドネシア
14 Training and Capacity-building Program Related to Reclamation and Rehabilitation of Abandoned Mine Lands (AML) Including Wastewater Management and Treatment マレーシア
15 Research on the Processing (Upgrading) of Low Grade Bauxite and Utilization of Tailing and Red Mud of Bauxite Processing インドネシア
16 Logistics and Supply Chain Management for Sustainable Development in ASEAN Mineral and Metal Industries タイ
17 Contribution to Sustainable Development and Effective Climate Change Mitigation by Geothermal Resource Development among ASEAN Countries ベトナム
18 Contribution to Sustainable Development in Karst Areas for Effective Climate Change Adaptation/Mitigation among ASEAN Countries ベトナム
19 Conservation of Geoheritage and Contribution to the Development of Asia Pacific Geoparks Network among ASEAN Countries ベトナム

(3) その他
 ASEAN側から提案された19件のプロジェクトに関しては、プラス3側が持ち帰り検討を行い、その実施の可否等について、2012年1月を目途にに回答することとなった。
 また、次回第5回ASOMM+3会合は、2012年12月にブルネイの首都バンダルスリブガワンで開催されることが決定された。

おわりに

 今回の会合におけるASEAN側の提案内容を見る限りでは、これまでの内容とは違った、例えば、地盤災害をテーマとしたものや、海洋資源を対象とした内容のものも含まれており、ASOMM+3会合が第4回目を数えるに至って、その領域も広範囲になってきたことが印象深いものとなった。
 また、プラス3側において、韓国は、従来、知識経済部、韓国資源公社(KORES)、韓国鉱害防止公団(MIRECO)からも複数人が参加していたが、今回は地質研究所(KIGAM)から1名のみの参加であり、会合での発言もほとんどなく、今回に限ってみれば韓国のプレゼンスは低下した感が否めないものとなった。
 一方、他国のプロジェクトに関する各国からのコメントがほとんどなかったのに対し、日本からのプロジェクト報告や提案に対しては、各国からのコメント・感想が多くあったことは特記すべき点であり、ASEAN諸国からの日本に対する期待の大きさの表れだと感じた。
 日本が現在積極的に展開している2国間協力をベースとした、具体性・速攻性のある資源外交に比べ、本会合のような国際会合における支援・協力は具体的な効果が見え難い点は否定できない。しかしながら、複数の国に対し同時に日本のプレゼンスを効率的に示すことができ、各国関係者との人脈を広く形成することも可能であることから、2国間協力を基本としながらも、それを補完するものとしてこのような全体会合を活用し、2国間協力と国際会合における支援・協力を相互に関連付けて進めることが肝要だと感じた。

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