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報告書&レポート

2012年4月5日 ロンドン事務所 北野由佳
2012年17号

「クリティカルな原材料会議」参加報告

 2012年3月9日、欧州の鉱業産業団体であるEuromines主催の「クリティカルな原材料会議」がEU政府本部のあるベルギー・ブリュッセルで開催された。本会議は、欧州委員会が2010年6月に定めたクリティカルな原材料に関して技術的、産業的、財政的及び政策的観点での情報交換を行うことを目的としており、欧州委員会を始めとした政府機関、産業団体、下流企業を含む民間企業等から約100名超が参加した。また日本からは日本メタル経済研究所(MERI/J)の岡田駿上席主任研究員が参加し、講演を行った。
 以下で、本会議で行われた講演の概要を報告する。

Session 1: 「クリティカル」の定義

1-1. 不可欠な(critical)原材料と必須な(essential)原材料

Vasili Nicoletopoulos氏、Euromines & Natural Resources

 不可欠な(critical)原材料とは、医療、防衛、航空、ハイテク、グリーンなエネルギーといった分野で使用される原材料であり、供給面で政治的リスクが存在するものである。一方、必須な(essential)原材料とは、農業や建設といった日常生活に深い関わりがある分野で使用され、またその供給に関して顕著な政治的リスクがない原材料を意味する。歴史的に見ても、原材料供給の安全保障に関して何らかの問題が浮上する、つまり売り手市場になるたびに、原材料確保が重要な政策として話し合われてきた。欧州連合(EU)では欧州鉱物資源戦略であるRaw Material Initiative(RMI)を策定し、2010年6月にはEUにとってクリティカルな14鉱種の鉱物資源を選定した。Eurominesはこの戦略を歓迎するが、全ての鉱物資源が調査対象になっていないこと(注:調査対象となったのは41鉱種)、不可欠と必須の定義の違いが明確ではないこと、規制による将来的なクリティカル性(criticality)への影響の調査が行われていないこと、政治的なリスクの特定がされていないこと、また政治的リスクに対するEU政策の影響が考慮されていないこと等を指摘している。

1-2. クリティカル性の分析

Patrice Christmann氏、BRGM(仏地質鉱山研究所)

 ある特定の国にとってのクリティカルな鉱物資源は、国内需要、価格のボラティリティ、供給国に対する地政学的なイメージ、代替品の利用可能性といった様々な要因によって変化し得る。クリティカル性の分析は、EU、米イエール大学T. E. Graedel教授を始めとする研究チーム、国連環境計画(UNEP)等によって行われてきたが、これまでの分析は既存のデータに基づくもので、将来を見通した分析ではない。また現在の探鉱出資が将来の生産量に与える影響、新しいプロジェクトの詳細、供給チェーン全体での供給リスク、鉱山関連技術の喪失、原材料価格のボラティリティといった重要な要因がクリティカル性の分析の際に十分に考慮されていないという課題がある。EUは、クリティカル性の分析方法を向上させるためにも、関係者と共同でEUレベルでの情報及び知識共有の努力を強化するとともに、米国地質調査所(USGS)、イエール大学のクリティカリティ調査プロジェクトチーム、JOGMECといった他国の関連機関との協力も検討するべきである。

Session 2: 政策面での現状

2-1. 欧州原材料戦略

Mattia Pellegrini氏、欧州委員会、Cabinet DG Enterprise

 欧州原材料政策は①国際市場における原材料へのアクセス、②EU域内での持続可能な原材料供給、③リサイクルと省資源化の促進、の3つを柱としている。最近の動向としては、2012年2月29日に、原材料に関する欧州イノベーションパートナシップ(EIP)プログラムを発足した。同プログラムの下、EU加盟国と民間企業、NGO団体、研究機関といった利害関係者間での共同プロジェクトが実施され、原材料の持続可能な供給確保におけるイノベーションが促進される。なお、EUが選定しているクリティカルな原材料14鉱種に関しては、現在、見直し作業が進められている。

2-2. クリティカルな原材料に関するEUの貿易政策

Petros Sourmelis氏、欧州委員会、Cabinet DG Trade

 新興国経済の発展による原材料需要の増大や国家間での相互依存性の高まりに加えて、原材料の賦存が不均等であることから、原材料の貿易は必然的であると考えられる。しかしながら、世界市場を歪曲させるような貿易障害の例が増加しており、限りある資源の分配が最適に行われていないこと(suboptimal allocation)から、経済的コストが発生している。貿易は、欧州の原材料戦略の重要政策の一つであり、欧州委員会は二国間及び多国間貿易における貿易障害に関する交渉、原材料に関する貿易の監視やWTO規則の執行、他国政府との対話といった役割を担っている。中国によるレアメタル等の鉱物資源に対する輸出制限に関しては、WTOの協定に違反しているとして訴えた結果、2012年1月に、WTO上級委員会は中国のWTO協定違反を認める判決を下した。また、EUとしては、貿易政策に関して二国間協議(中国、インド、日本、米国)、OECDやG20等の多国間協議の場を今後とも活用していきたい。

2-3. クリティカルな原材料の入手困難度増加と政府の役割

Michael Silver氏、American Elements

 石油価格が中東で決定されているように、豊富な資源によって中国といった資源国が世界の原材料価格を決定できるようになった。資源のある産業国は、国内経済の利益を最優先にして行動するため、輸出価格を国内価格より高く設定するという二重価格構造を持ち、国内の製造業者に価格面での競争有利性を提供し、また外国企業は資源国国内での製品製造を強いられることとなる。資源国によってこのような戦略が実施されている中、西洋先進国政府は、国内での鉱業支援、海外で残されている資源の獲得、鉱業分野での教育の促進、クリティカルな金属に対する関税の撤廃といった対策を取って対応していく必要がある。

2-4. フィンランドの原材料戦略

Tom Niemi氏、フィンランド地質調査所

 欧州の原材料戦略においてフィンランドの鉱業は大きな役割を担っている。2004年以降、フィンランドにおいて新しい鉱業プロジェクトが次々と開始され、同国の鉱業は大きく回復した。レアアースに関しては、1963年に最初の商業規模の採掘が開始されており、現在も同国の数箇所でレアアース鉱床の存在が確認されている。同国の雇用・経済省は、欧州の鉱業においてフィンランドが先導的立場を取れるよう、鉱業プロジェクト発足の支援、フィンランド地質調査所の支援、インフラの整備、鉱業分野の教育の促進といった対策を講じている。また2010年11月には、「VISION 2050 フィンランド鉱物資源戦略」を作成し、鉱業政策の強化、原材料の安全供給、鉱業による環境への負荷軽減、生産性の向上、R&D能力の強化といった同国の鉱業分野発展を目的とした行動計画を立てた。

Session 3: 欧州におけるクリティカルな原材料の需給状況

3-1. アパタイト処理とレアアース生産

Göran Bäckblom氏、LKAB社

 LKAB社(本社:スウェーデン)は鉄鉱石ペレットの生産では世界第2位で、欧州鉄鉱石生産量の90%を占めている。中国やその他の新興経済の発展により、鉄鋼の需要及び供給は共に増加することが考えらえる。LKAB社では顧客のニーズに応えるため、鉄鉱石の探鉱活動や企業の合併・買収によって鉄鉱石生産量を増大する計画に加えて、リン含有鉄鉱石(apatite iron ore)からのリン(apatite)及びレアアース酸化物(REO)の回収を検討しており、現在、FSを行っている。スウェーデン北部のKiruna鉄鉱石鉱山及びMalmberget鉄鉱石鉱山から計80万tのリン生産が可能と見積もっており、80万tのリン生産に基づくレアアース酸化物の生産量は、図1のとおり推計されている。FSの結果により、レアアース酸化物の生産は早ければ2016年を予定している。

図1. LKAB社のレアアース酸化物の推計生産量(出典:LKAB社講演資料)
図1. LKAB社のレアアース酸化物の推計生産量(出典:LKAB社講演資料)

3-2. Norra Karrレアアースプロジェクト

Mark Saxon氏、Tasman Metals社

 加Tasman Metals社は、レアアースを含むハイテク金属に特化しており、主要プロジェクトであるスウェーデン南部のNorra Karrレアアースプロジェクトでは、世界で4番目に大きいHREE(重希土類)鉱床が確認されている。TREE(総希土類)に占めるHREEの割合は50%以上と大変高く、特にジスプロシウム及びイットリウムが多く含まれており、鉱化は地表部分から確認できる。また他社のレアアースプロジェクトと比較してウラン及びトリウムの含有量が極めて低いことも特徴的である。Norra Karrプロジェクトは現在プレFS段階にあり、2014~15年に鉱山開発を行い、生産開始は2015年末~16年を予定している。同プロジェクトによって、欧州は2016年から世界有数のHREE生産地域となることが可能であると考えられる。

3-3. 製造業における資源不足の認識

Rob Mathlener氏、PWC

 PWCでは製造業における資源不足に関する調査を、7製造業分野の69社を対象に行い、2011年12月に『製造業における鉱物資源と金属の不足:音を鳴らす時限爆弾』1と題した報告書を発表した。同報告書によると、51%の回答者は鉱物資源及び金属の不安定な供給に現在影響を受けていると回答し、67%は次の5年間(2016年まで)も不安定な供給の問題が継続すると考えている。資源不足の要因としては、54%の回答者が地政学的要因の影響が「大きい~大変大きい」と回答した一方、資源が枯渇すると答えたのは30%のみであった。資源不足の影響を軽減するための準備度(preparedness)に関する質問では、準備度が「高い~大変高い」と答えたのは、産業別では、再生可能エネルギー産業が67%、ハイテク産業が33%、自動車産業が64%、また地域別では、欧州が58%、アジア環太平洋が42%となっており、産業と地域で回答に差異が見られた。資源不足の問題の対応策としてどのような手段を適用するべきかを聞いたところ、上位から「資源利用の高効率化」が75%、「供給者との戦略的提携」が68%、「供給チェーンの多様化」が67%、「更なる研究開発」が65%、「更なる再利用」が64%、「更なる資源外交」が61%、「更なる代替化」が61%、「製品の再設計」が57%となっており、「更なる資源探鉱・開発」は55%、「生産拠点の変更」は42%という結果であった。

3-4. 鉱業とクリティカルな金属の供給

David Humphreys氏、DaiEcon Advisors

 金属供給の利用可能性に関する懸念があるが、その供給を安定させるために何が必要であるかを理解できていないという状況が伺える。鉱業界は金属不足の状況に自然に反応するようにできており、それが市場の正常な機能である。しかしながら、探鉱への投資から鉱山生産開始までには時間を要するため、結果をすぐに確認したい政府の政策立案者はしびれを切らしている。鉱物資源の供給に関するほとんどの問題は、新しい生産能力への投資と既存の供給量の管理で解決することができる。政策面では、生産性の高い資源へ自由に投資資金が流入されるよう、国内の鉱山会社の奨励政策と、鉱山会社の海外での活動の支援政策を実施することが効果的である。鉱物資源は豊富に存在しているため資源量自体は問題ではなく、資源ナショナリズムといった形式的問題が投資に影響を与えることによって、資源不足への鉱業界の自然な反応が制約されることが問題となり得る。

3-5. 欧州原材料政策と欧州の合金産業

Inès Van Lierde氏、Euroalliages(欧州フェロアロイ生産者協会)

 欧州原材料政策の3本柱のうちの1つは、第三国が有する資源へのアクセスに関する公平な条件(level playing field)を確立することである。この目標を達成するためにEUは中国の輸出制限に対してWTOの紛争処理委員会へ提訴し、勝利した。しかし、この判決は原材料へのアクセスを確保し、他国の資源に関するEUの依存度を軽減するという欧州原材料政策の利益にかなっているのだろうか。過去、フランスのMarignacプラントではEUのマグネシウム消費量の15%にあたる1.8万tを生産していたが、中国産マグネシウムの輸入によるダンピング(不当廉売)によって閉鎖に追い込まれた。現在EUは世界のマグネシウム生産量の47%を輸入しており、中国が世界生産量の93%を占めている。公平な条件が存在しない状況で、無条件に自由貿易を擁護することは、欧州が原材料確保と輸入依存度軽減を達成するための正しい解決策であるとは考えがたい。欧州原材料政策は、欧州のコモディティ生産者の生存を危機にさらすことのない持続可能で公平な貿易政策を策定すべきである。

Session 4: クリティカルな原材料のEU域外での需給状況

4-1. バーゼル条約のパラダイム・シフト

Katharina Kummer Peiry氏、Basel Convention

 2011年10月21日、コロンビアのカルタヘナでバーゼル条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、結果として、廃棄物の扱いに関する歴史的なパラダイム・シフト(重大な変化)があった。COP10で、バーゼル条約は廃棄物の管理と違法な処理の禁止だけを扱うのではなく、廃棄物の発生防止、最小限化そしてリサイクルにも取り組むことが決定した。廃棄物の発生を防止または最小限化したうえでも発生してしまった廃棄物は、「費用のかかる負担」ではなく「価値のある資源」として扱うべきである。特に電気電子機器廃棄物(E-waste)から価値の高い金属を環境に優しい方法で回収することを促進していく。廃棄物からの資源回収が国際法の正式な一部として認められた今、産業界が中心となってそれを実践することで、グリーンな経済の発展に貢献していくことができる。

4-2. カナダ:責任ある資源開発において最適なパートナー

Patrick Chevalier氏、カナダ天然資源省

 カナダにはクリティカルな原材料に関する特定の政策はないが、市場の需要に敏感に応じて新しい資源の開発を行っている。カナダ国内には多様な鉱種が豊富に賦存しており、欧州でクリティカルな原材料として選定されたPGM、コバルト、インジウム、ニオブ、タングステン、ゲルマニウムといった鉱種も生産している。カナダには鉱業を促進するような政策枠組みが存在しており、外国投資を歓迎している。一方で、カナダの鉱山会社はカナダ国外でも活発に活動しており、2010年にはカナダ企業が国外に有する鉱山資産の総額は約1,290億C$であった。EU域内では、スペイン、フィンランド、ポルトガルを始めとした12か国でカナダ企業46社が鉱山資産を有している。
 またカナダは、海外で活動を行っているカナダ企業によるCSR活動の促進を行うとともに、持続可能な開発における鉱業界の貢献を高めることにも専念している。今後、EUとの関係をより強化して、CSRや持続可能な開発といったテーマに共に取り組んでいきたい。

4-3. 中国の視点からみるレアアース2

Cindy Hurst氏、U.S. Foreign Military Studies

 中国ではレアアースの販売に関して3段階(three-tiered)の構造を持っている。最優先されるのは中国企業であり、最安値でレアアースが売却される。次に優先されるのは中国で製造を行う外国企業である。最後がその他の国々で、レアアースの販売価格は最も高く設定される。中国が抱える最大の問題は、経済的及び環境的なものではなく、社会的な問題である。13億という巨大な人口の中で、労働者層と高年齢者層との間の不均衡が広がっており、中国政府への将来的な負担を軽減するためには雇用を創出する必要がある。その解決策としてレアアースが役割を果たすと考えられる。レアアースの輸出枠を削減し、中国国内で最終製品の製造を行うことで何百万という雇用を創出できる。中国政府は単に中国を守っていると言える。中国にしがみつきたくない国々はレアアースの使用削減技術の開発等を行っているが、当面の間は、中国からのレアアース供給に頼らざるを得ない状況である。

4-4. 日本のクリティカルな金属の需給状況

岡田駿上席主任研究員、日本メタル経済研究所(MERI/J)

 過去20年間での消費量の増加、世界の消費量に占める日本の消費量の割合及び中国からの供給リスクの観点から考えて、弊所として、クリティカル性を評価すべき10種の重要鉱物(In, REO, Co, Li, Nb, Ga, Ta, Ti, W, Mg)を独自に選定した。選定した重要鉱物を、ハーフィンダール・ハーシュマン・インデックス(HHI:Herfindahl-Hirschman Index)、世界ガバナンス指標(WGI: Worldwide Governance Indicators)、代替可能性、価格のボラティリティ等の点から評価した結果、日本にとってクリティカル性が高い金属は、インジウム、レアアース、コバルト、タングステン、マグネシウムであると考えられる。産業国である日本にとって原材料の確保は必須である。日本政府は、①原材料の使用量削減と代替に関する研究開発、②資源確保、③リサイクルの向上、④備蓄、の4本柱からなる原材料政策で原材料の確保に取り組んでいる。

写真1. 講演を行う岡田上席主任研究員
写真1. 講演を行う岡田上席主任研究員

Session 5: 技術

5-1. リサイクルと代替

Christian Hagelüken氏、Umicore社

 電気自動車、燃料電池、太陽電池、LEDといった新しい技術分野での金属の使用が増加している。金属のリサイクルによる循環型の金属利用の利点は広く認識されてはいるものの、新技術に必要とされるような金属のリサイクルが十分には行われていないのが現状である。代替に関しては、同族の金属を利用した場合では根本的な解決にはならず、またハイテク分野で利用される金属は、その金属が有する特別な性質が重要であるため、代替は困難である場合が多い。代替はリサイクルに競合するものではなく、補完的な手段であると考えるべきである。リサイクルに関する今後の課題としては、使用済み金属の回収の向上、違法な輸出の防止、リサイクル技術の向上、使用済み金属の在庫や流れに関するデータの向上、高等教育機関での教育促進、といったことが挙げられ、適切な政策枠組みを策定して課題に取り組んでいく必要がある。

5-2. オフィス機器産業におけるクリティカルな原材料の役割

Klaus Hieronymi氏、Hewlett Packard

 オフィス機器産業は供給チェーンの川下にあり、原材料の問題に関する認識は薄いと言える。例えばHPのプリンターの原材料費のうち、プラスチックが約60%を占めており、金属は約16%にとどまっている。またプリンターの生産費用の内訳では、原材料の占める割合はわずか5~20%であり、オフィス機器等のIT業界では、原材料の費用に対する関心はほとんどない。しかし、今後、中級階級層の拡大によるオフィス機器需要の増大や鉱石の低品位化による金属生産費用の上昇によって、クリティカルな金属の価格が上昇することが考えられ、それによってオフィス機器産業も影響を受ける可能性がある。また紛争鉱物の問題によって、オフィス機器の製造に必要な金属の短期的な供給不足が発生する可能性がある。今後、オフィス機器産業の企業は、クリティカルな原材料の供給戦略により重点を置く必要がある。

5-3. ルノーにおける原材料の調達と資料

Philippe Schulz氏、Renault

 自動車産業界にとって、原材料は費用面及び技術面で大変重要である。電気自動車やハイブリッド車といった新しいタイプの自動車が流通するにつれ、レアアース、リチウム、銅、グラファイトといった特殊な性質をもった金属の需要が高まっている。
 クリティカルな原材料に関する自動車産業界の懸念事項としては、原材料のクリティカル性や今後予想されるシナリオに関する信頼できる情報の共有、原材料の使用量の削減(Reduction)、代替(Replacement)、リサイクルと再利用(Recycling & Re-use)の3Rに関する革新的な技術開発、より効率的で環境に優しい原材料加工技術の開発、供給チェーンへの継続的なアクセス確保等が挙げられる。今後、原材料のクリティカル性に関する共有データベースや3Rの技術開発等において、官民が一体となり取り組んでいくことが重要である。

5-4. ProMineプロジェクトに関して

Daniel Cassard氏、BRGM

 ProMineプロジェクトはEUの第7次研究枠組み計画(FP7)の一部として資金提供を受け、2009年5月に発足した4年間のプログラムである。フィンランド地質調査所(GTK)主導のプロジェクトで、EU加盟11か国から27団体が参加している。ProMineプロジェクトの主な目的は、EU域内に賦存する鉱物資源のGISデータベース化、より効率的な採掘・加工技術の開発、環境面で責任のある鉱業管理の促進等が含まれている。同プロジェクトの作業項目(WP:work package)1は「自然及び人工的な鉱物資源賦存に関する汎欧州(Pan-EU)でのGISデータの管理とデータの視覚化」であり、汎欧州の鉱床データ図3やEUが選定した14種のクリティカルな原材料の鉱床データ図4(図2)が既に発表されている。
 今後の課題としては、鉱物資源に関する欧州全体でのデータ管理のため、フィンランド地質調査所及び仏BRGMに加え、欧州の主要な産業団体や企業がデータベースの更新及び向上のために協力していく必要がある。

図2. 14種のクリティカルな原材料の鉱床(出典:BRGM講演資料)
図2. 14種のクリティカルな原材料の鉱床(出典:BRGM講演資料)

Session 6: 結論と提案

6-1. 結論

Thomas Drnek氏、Euromines and RHI AG

 今回の会議を企画したEurominesとして総括すると、現在の欧州原材料政策の欠点としては、選定された41種の重要鉱物から金やカリといった大変重要な鉱種が正当な理由もなく除外されていること、経済的重要性が過去のデータに基づいて評価されており将来を見据えていないこと、原材料へのアクセスに関する将来的なリスクが考慮されていないこと、国別リスクが鉱業法ではなく全体的な法制度に基づき評価されていること等が挙げられる。クリティカルな原材料の見直しの際には、より効果的な方法を用いるとともに、クリティカル性だけではなくエッセンシャル性(essentiality)の面も考慮に入れるべきである。また作業の重複がないように、国連やOECDレベルで既に行われている対策を考慮する必要がある。

7. 所感

 現在の欧州原材料政策に関しては、欧州の産業界からは改善を求める声が多く上がっており、欧州委員会からの参加者に対しては積極的に質問が行われていた。クリティカルな原材料の安定供給を実現するための対策の1つとして、欧州の鉱物資源に関する全体的なデータの共有が既に進められているという点では成果が見られたが、鉱物資源外交に関しては、無条件な自由貿易は欧州経済の競争性に悪影響を与える可能性があるという懸念も聞かれ、意見の相違が見られた。
 2012年3月20日には、ブリュッセルで欧州委員会だけではなく、米国、日本の政府関係者も参加する「第2回欧州原材料会議」が開催される予定であり、欧州において原材料に対する関心がますます高まっていることが感じられる。今後も欧州原材料政策の動向に注目していきたい。


1 http://www.pwc.com/en_GX/gx/sustainability/research-insights/assets/impact-of-minerals-metals-scarcity-on-business.pdf
2 講演内容はHurst氏の個人的見解であり、米国政府の意見を代表していないとの冒頭説明
3 http://promine.gtk.fi/documents/Main_mineral_deposits_of_Europa.pdf
4 http://promine.gtk.fi/documents/Promine_RCMEurope.pdf

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