閉じる

報告書&レポート

2012年7月5日 金属企画調査部 渡邉美和
2012年38号

中国鉛蓄電池産業に関わる2012年の政策動向

 中国の非鉄金属産業では、2009年に、鉛・亜鉛製錬企業の環境汚染に対して民衆抗議行動が多発した(「中国の鉛製錬-環境問題と生産への影響」金属資源レポートVol.40 No.2、2010.7)。これに対して、2010年5月以降、環境保護部門による環境汚染物質排出状況検査活動が、各地で大規模に実施されている。
 しかし、状況は、それまでの非鉄金属製錬産業から、加工産業への広がりを見せた。2010年6月12日には湖北省咸寧市崇陽県青山鎮の湖北吉通蓄電池有限公司で、同社員や付近住民ら30人に血中鉛濃度の基準値超過が見られたことを現地紙が報じ、これに続くように鉛蓄電池関連企業などでも同様な事件が発生した。このような状況を受けて、2011年3月、中国国務院、環境保護部など政府9部門は「2011年、民衆の健康を保障し環境を保護するために違法汚染排出企業の整理を展開する活動の通知」を発表し、各省区に命じて鉛蓄電池関連企業の環境等に関する検査を実施し、この頃から、企業閉鎖を含む中国鉛蓄電池産業全般への影響に関して鉛蓄電池の供給不足と価格上昇への懸念が広がった。この間の事情は、拙稿「中国鉛蓄電池企業の環境検査による生産停止動向」(カレント・トピックス2011年45号、平成23年9月8日)で既報した。
 2011年の鉛蓄電池産業に関わる検査は、今も継続している。2011年の検査が対症療法的な暫定的なものであったのに対して、2012年の検査は産業構造転換も見据えたものとなっている。ここでは昨年に引き続き、最近の中国の鉛蓄電池産業の環境検査とその影響について概観する。なお、本稿の法規等の和訳はJOGMECによる仮訳である。

1. 中国の鉛蓄電池生産と鉛需要

 中国には鉛蓄電池(以下、「蓄電池」と略す)産業に属する企業は2,000社あるいはそれ以上あるとされている。蓄電池産業には、極板などの部材加工メーカー、回収企業、蓄電池組立メーカーを含む(2011年時点でそれぞれの社数を639社、186社、1,105社とする報道もある)が、組立メーカーが部材製作を兼ねているケースもある。
 それら企業で製造される蓄電池の推移を、関連する自動車生産台数と蓄電池として消費された鉛量を合わせて図1に示している。2011年の鉛蓄電池生産量は14,230万kVAh(VAhはボルト・アンペア・アワーと読む電池容量)となり、2010年の14,417 kVAhと比べると1.3%の減少であった。これは2011年夏以降に行われた環境検査に伴う影響である。自動車生産量とほぼ同傾向が現れているが、実際には蓄電池はいわゆる自動車だけでなく、バイク、鉄道車両、電池駆動フォーク、無停電電源装置、そして中国特有の電動自転車などでも多用されている。

図1. 中国の蓄電池生産量等の推移

出典;蓄電池生産量は報道から抽出、自動車は国家統計局、鉛量は安泰科による

図1. 中国の蓄電池生産量等の推移

 なお、この容量を個数に換算すると2011年の生産量は約2億1,500万個と推定される。
 中国の鉛の生産と消費の最近の推移を図2に示す。2010年の対2005年に増加率でみると、生産は76%増加、消費は114%増加と大幅な上昇を示している。消費に占める蓄電池用途の割合も2005年の70%から2010年には80%に上昇。図1で見た自動車と、ここには示されていないが電動自転車の生産と保有の急激な上昇(中国の電動自転車の抬頭についてはカレント・トピックス2009年第30号、「急増した電動自転車用鉛消費―中国の鉛需要動向」、平成21年6月11日を参照されたい)が背景となっている。蓄電池の動向がますます鉛産業に対する影響度を強めていることが、改めて認識できる。

図2. 中国の鉛の生産量と消費量の推移

出典;ILZSG

図2. 中国の鉛の生産量と消費量の推移

 図3に中国の鉛消費量の分野別内訳の推移を示す。「自動車向け蓄電池」にはいわゆる自動車のほか、電池駆動フォークリフト等やバイクなども含む。「その他蓄電池」には電動自転車用やUPS用などを含んでいる。「自動車向け蓄電池」の割合は2005年の27%から2010年には34%に増加している。

図3. 中国の鉛消費の内訳推移

出典;安泰科 2011年は推定値

図3. 中国の鉛消費の内訳推移

2. 2012年の中国の蓄電池産業に関わる政策動向

 中国環境保護部は「鉛蓄電池と再生鉛企業に対する環境検査実施の通知」(環弁函[2012]325号)*1を2012年3月19日付けで発行し、蓄電池企業(極板製造、組立、関連鉛部品製造)と再生鉛生産企業を対象とする検査の実施とその対象企業リストを公布した。同時に「環境検査実施要綱」を配布し関連事項を指示した。
 この検査は、2010年に蓄電池産業に関わる環境事故が続発したことを受けて2011年5月18日に環境保護部から発行された「鉛蓄電池及び再生鉛産業の汚染防止工作強化の通知」*2による一斉検査に引き続く、2012年の環境検査である。
 この要綱では、対象企業がまず自主検査を実施した上で地域の環境保護部門に受検を申請、同時に自主検査資料を送付することなどが述べられている。法規違反や、不合格の場合などは、今後の設備拡充や上場等に当たっての事前環境評価が受理されなくなる。
 また、併せて、工業情報化部は、「2012年旧式設備の生産能力淘汰目標計画報告送付と中央財政の奨励資金申請に関する工作の通知」(工信庁連産業[2012]8号)*3を配布、2012年の旧式生産設備の淘汰が「一部工業産業の淘汰すべき旧式生産技術設備と産品の淘汰指導目録(2010年版)」(工産業[2010]第122号公告)*4に基づくことを改めて示している。
 2012年3月1日、工業情報化部と環境保護部は「鉛蓄電池産業参入条件」(意見を求めるための原案)」*5を公表した。ここでは、「カドミウムを0.002%以上含有する鉛蓄電池」もリストアップされている。このリストに掲げられた品目は遅くとも2013年末までに淘汰の対象となり、一律にその製造・販売・利用そして採用が止められるとしている。

3. 「鉛蓄電池産業参入条件(意見を求めるための原案)」

 工業情報化部と環境保護部が発表した「鉛蓄電池産業参入条件(意見を求めるための原案)」の部分仮訳は以下に掲げる通りである。「産業参入条件」とは産業ごとに、必要に応じて作成される当該業界で事業を行う場合の条件である。「参入条件」となっているが、既に参入済みの企業もこの条件に拘束される。また「意見を求めるための原案」は、案に対する意見を広く求める意だが、今回の「鉛蓄電池産業参入条件」(意見を求めるための原案)」に関しては、賽迪顧問有限公司(CCID Consulting)は「意見を求めるためのものにせよ、この原案が大きく変更されることはない」と見なしている(上海証券報、2012年4月20日)。
 なお、前文では以下のように述べられている。
 「我国の鉛蓄電池及びその部品生産産業の持続性、健全性、協調と発展のために産業と投資行為の規範について、中華人民共和国環境保護法、重金属汚染総合防止に関する”第12次五カ年計画”(国函〔2011〕13号)、産業構造調整指導目録(2011年本)(発展改革委令2011年第9号)等の関連する法律、法規と産業政策に従って、合理的な産業配置、総量規制、秩序ある競争、環境保護などの原則を参照しつつ、鉛蓄電池産業参入条件を制定する。」

3-1. 企業立地

(一) 新たな建設プロジェクトは法に基づき設立が承認された県級以上の工業園区内の相応の機能を有する地区に建設され、「鉛蓄電池廠衛生防護距離標準」(GB 11659)の要求に符合しなければならない。工業パーク外の条件を満たす地区に建設されようとしている現有プロジェクトは逐次工業パークへ移すものとする。重金属汚染防御重点区域への鉛蓄電池及びその部品生産プラントの新建設、拡充建設は禁止する。

(二) 「プロジェクト建設環境評価分類管理目録」(環境保護部令第2号)の第三条に規定した各級各類の自然保護区、文化保護地等の環境を厳しく管理すべき区域や土地利用相対計画が耕地と基本農田保護範囲として確定している区域内では、鉛蓄電池及びその部品生産プラントの新建設、拡充建設は禁止する。

3-2. 生産能力

(一) 鉛蓄電池企業(プラント)を新建設、拡充建設する場合、建設後の当該工場での生産能力は50万kVAh(1日の稼働時間を8時間とする、以下同)を下回らないこと。

(二) 年間生産能力が20万kVAhを下回っている現有の鉛蓄電池企業(プラント)で、商品の極板(電池用部品として鉛蓄電池極板を外販している場合)を扱っている企業の場合は、当該地区で極板生産能力が100万kVAhを下回らないこと。

(三) 巻繞式、双極性、鉛炭素電池(注;いずれも原文表記のまま)等の新型鉛蓄電池を生産する建設プロジェクトにあっては生産能力の制限は受けない。

3-3. 建設を禁止するプロジェクト

(一) 開口式普通鉛蓄電池(注;原文表記のまま)は生産を禁止する。現有の生産ラインは淘汰される。

(二) 商品としての極板生産の生産プロジェクトについて新たな建設又は拡充を禁止する。

(三) 商品としての極板を購入しての鉛蓄電池組立の生産プロジェクトの新たな建設又は拡充を禁止する。

(四) 乾式荷電鉛蓄電池(注;原文表記のまま)(内部に電解質を含まず、極板が乾いた状態で荷電状態である鉛蓄電池)の生産プロジェクトについて新たな建設又は拡充を禁止する。

(五) カドミウム含量が0.002%を超える(電池質量百分比、以下同)あるいは砒素含量が0.1%を超える鉛蓄電池及びその鉛部品の生産プロジェクトについて新たな建設又は拡充を禁止する。

(六) 現有のカドミウム含量が0.002%を超える或いは砒素含量が0.1%を超える鉛蓄電池及びその鉛部品の生産プロジェクトについては2013年12月31日までに生産を停止する。

3-4. 技術と設備
 (略)

3-5. 環境保護
 鉛蓄電池企業に対する環境検査の展開を組織し、重点検査は以下の事項とする。

・ 法に基づき建設プロジェクト(新建設と拡充を含む)の環境影響審査と環境保護設備の“三同時”検収制度により(注;“三同時”とは設計・施工・稼働の三段階で環境保護の確認を実施することを指す)、厳格な廃棄物汚染物質についての申告と費用負担と排出許可制度を実施し、主要汚染物質排出が総量規制の要求に達していること、主要排出物質と特定汚染物質が排出基準を満たすこと、強制的なクリーン生産審査を実施しその評価を経て検収されること。

3-6. 職業衛生と安全生産、省エネと回収利用、管理監督、附則
 (略)

4. 鉛蓄電池と再生鉛企業への環境検査実施要綱

 2012年4月13日、現地メディアは「環境保護検査に合格しない鉛蓄電池関連企業は業務上の申請受け付けず」と報道した。
 更に、カドミウムを含む鉛蓄電池の生産ライン淘汰に関連して、電動自転車関係者による「2012年9月末にはカドミウムを含む鉛蓄電池の電動自転車搭載をやめねばならない」との認識も、以下のように報道している。

―「今年9月30日以降にカドミウムを含む蓄電池を動力とする電動自転車の販売を行ったなら、それは消費者の信頼を損なうことになる」と2012年4月13日に行われた2012年鉛蓄電池産業国家標準普及検討会の席上、関係者は語った。また、今回の検討会を主催した山西省電動自転車産業協会の張暁南副秘書長は、「2011年末までに山西省での電動自転車保有台数は350万台に達している。2012年末には400万台となる見込みで、これらの自転車の耐用年数を5年と仮定するとその間に電池セットの更新は4~5回となる」と数値を示した。現在販売されている電動自転車の90%前後はカドミウムを含有した鉛蓄電池車である。これらの数値に基づき、先日来、工業情報化部は、淘汰すべき旧式生産技術と品目を公布、その中に「カドミウムを0.002%超含有する鉛蓄電池」もリストアップされている。このリストに掲げられた品目は遅くとも2013年末までに淘汰の対象となり、一律にその製造・販売・利用そして採用が止められる。現在の蓄電池の中国内の使用期間は15カ月ほどであり、これを考慮すると今年9月末が電動自転車にカドミウムを含む蓄電池を利用できる限度月となる。―

 また、賽迪顧問有限公司(CCID Consulting)は、最近発行した「中国電池産業の投融資と併合戦略研究(2012)」の中で以下のように発表していることも4月20日に報道されている。
 「国家環境保護部門の産業構造転換の強化に基づき、同産業に新参入又は参入継続に関する標準の程度が高められるよう変更され、これにより将来3年間で鉛蓄電池産業のメーカーは約2,000社から300社程度に削減され、産業の集中度は高められる。
 2012年3月1日に公表された「鉛蓄電池産業参入条件(意見を求めるための原案)」の適用が進めば、恐らくは多くの鉛蓄電池生産企業が生産停止に追い込まれることになろう。加えて、鉛蓄電池業界にとってはニッケル水素電池やリチウムイオン電池への代替の趨勢もあり、鉛蓄電池の生産量はこれまで続けてきた成長度が鈍化するものと見られる」

図4. 中国の自動車の波(2010年、北京)

図4. 中国の自動車の波(2010年、北京)

5. 最近の蓄電池・鉛製錬産業の環境関連報道

 最近報道された中国国内の鉛蓄電池産業を中心とした環境関連報道は次の通りである。2011年末から2012年初にかけては落ち着きを見せていたが、3月以降、報道が多くなっている。

5-1. 四川省攀枝花市隆鑫冶煉廠の生産停止と鉛残渣
 1998年に生産開始された四川省攀枝花市西区の隆鑫冶煉廠は2011年3月に汚染問題からその生産を停止した。この工場は廃棄蓄電池から再生鉛を生産し、停止に伴い生産過程で生じる廃棄物残渣の処理が問題となり、固化等の処理が行われることになり、3月31日に着工した。ただし、このプロジェクト実施後もまだ3,400 tの鉛を含む残渣が堆積されたまま残る。

5-2. 上海江森自控国际蓄电池有限公司の環境対応調査継続
 上海市の大手外資企業の上海江森自控国际蓄电池有限公司(Johnson Controls, Inc.生産能力は374万kVAh/年)は、2011年9月に上海市から鉛汚染物質排出の疑いをもたれ、調査が継続されている。同社は2012年2月、「当社の環境対応は中国の法規に完全に符合し、上海康橋地区で発生している鉛汚染問題と児童の血中鉛濃度異常事件について当社は何ら関連しない」としている。

5-3. 広東省東莞市の欧雷瑪電源公司、鉛汚染嫌疑で5月末まで生産停止
 2011年4月、広東省環境保護庁は監督対象となっていた東莞市塘厦鎮の欧雷瑪電源公司について鉛汚染嫌疑で5月末まで生産停止とした。欧雷瑪電源公司の蓄電池生産量能力は5万kVAh/年で、大きな影響はないと見られる。

5-4. 湖南省駱駝集団股分有限公司MFタイプ蓄電池生産
 2011年4月11日に発表された駱駝集団股分有限公司(湖南省襄陽市)の年報によると、同社はグループ内関連企業の駱駝集団華中蓄電池有限公司に建設する新型低鉛メンテナンスフリー型の蓄電池生産ラインを2012年に生産投入するとのこと。新ラインは2ラインで生産能力は400万kVAh。MF(メンテナンスフリー)タイプの鉛カルシウム型の蓄電池かと思われる。400万kVAhの能力を普通自動車蓄電池換算すると約600万個になるか。

表1. 中国の代表的な鉛蓄電池生産企業

企業名 省区 年産能力 備考
天能動力集団 浙江省 湖州市 6,500万個(2011年) その他江蘇・安徽省内に拠点
超威集団 浙江省 湖州市 5,600万個(2011年)  
風帆股份 河北省 保定市 1,600万個(2012年計画) 唐山市にも別企業、中国船舶重工集団
光宇集団 黒竜江省 哈尔濱市   グループ企業が不明で能力に未算入
双登集団 江蘇省 泰州市    
南都電源 浙江省 杭州市 1,720万個(2012年計画)  
駱駝集団 湖北省 襄樊市 1,400万kVAh(2012年計画) 湖北省内にグループ企業
ST渝万里 重慶市   1,700万個 万里集団
天津杰士 天津市   1,000万個以上 日本の技術導入
淄博火炬能源 山東省 淄博市 100万kVAh? 1944.1創立、中国船舶重工集団
安徽迅启 安徽省 安慶市    
江蘇華富集団 江蘇省 高邮市 4万個/日  
浙江諾力 浙江省 湖州市    
海久電池 浙江省 杭州市   極板メーカー?
雄韬電源 広東省 深圳市    

* 中国の鉛蓄電池産業でリストアップされている主な企業(外資は除かれている模様)
* 市場販売額の30~40%を天能動力集団と超威集団2社が占めるとの報道もある(2012/4中国内報道)

5-5. 寧夏回族自治区の寧夏華夏電源有限公司、蓄電池ライン完成
 2011年4月13日、寧夏回族自治区の寧夏華夏電源有限公司が自動車始動用蓄電池プロジェクトの一部を完成、生産に投入したとも報道されている。このプロジェクトは3ラインで年産250万個の蓄電池生産を目指すものだが、今回生産投入されたのはその内の1ライン。ただし、どのような種類の蓄電池を生産するラインであるかは不詳。

5-6. 天能集団、第五・六の生産基地
 市場の拡大に応じるため、天能集団はこれまでの4か所の生産基地の生産能力を拡充するとともに、新たな生産拠点の立ち上げを急いでいる。これまで同集団が要していた浙江省長興煤山、安徽省蕪湖、安徽省界首そして江蘇省沭陽の生産拠点では、2010年の4,900万個/年の生産能力を6,500万個まで引きあげる予定。また、新たな生産と回収の拠点として建設していた長興呉山の年内試験生産を目指している。このプラントは15万t/年の廃棄蓄電池を回収処理し、年産10万tの再生鉛を生産するもの。また、この他、2011年9月には河南省濮陽市に第六番目となるプラントを着工した。このプラントは2013年のその第一期建設分の稼働が計画されている。

5-7. 山西省陽泉市で鉛蓄電池クリーン生産クローズド一貫プラント着工
 2012年5月11日、中国報道によると、国家開発投資公司に所属する中国電子工程設計投資公司が計画設計した中国で初となる鉛蓄電池クリーン生産クローズド一貫プラントが山西省陽泉市で着工した。総投資額14億元で、完成すれば、20万t/年の廃棄鉛蓄電池を処理し、新品の同電池500万kVAhを生産する能力を持つ。このプラントは中国で初の蓄電池生産-廃棄蓄電池回収-無害化処理-資源化利用のクローズド循環プラントである。
 このプラントは国の「資源総合利用全国モデル」に列し、国の「排気鉛蓄電池回収再利用体系」の試験モデルの任務も負っている。

5-8. 江西省最大の鉛蓄電池用極板製造工場取り壊し開始
 2012年4月26日、「京九電源の蓄電池用部品生産ラインはその使命を全うした」との江西省南昌市南昌県環境保護部門関係者の宣言により、江西京九電源科技有限公司の15台の鉛蓄電池用極板生産ラインの全部が排除された。これにより南昌県では鉛関連汚染の発生源がなくなる。
 全国でひろがった血中鉛濃度異常事件後の鉛蓄電池企業の環境対応政策に基づく整理が始まっているが、西京九電源科技有限公司のある南昌県でも同社が重点的な汚染防止対象となり、年生産能力で900万台以上の蓄電池製造を行ってきた同社も、昨年10月に新たにpH自動管理設備などの導入を行い、生産回復を目指してきたが、その望みがかなうことはなかった。

5-9. 蓄電池業界での始動動力用と固定型での明暗
 同じ蓄電池でも、始動動力用蓄電池メーカーと固定型を主とするメーカーにより、動向が分かれているとの以下のような現地報道もある。
 始動動力用蓄電池を製造している企業では2012年4月の販売量が前月に比べて弱いのに対して、固定型の製造企業では却って2012年4月も安定しているか好調さを見せている。始動動力蓄電池の主用途は自動車などであり、この分野では4月は季節的に販売が落ち込む時期でもある。だが、2012年は3月から販売が減少している。
 始動動力用鉛蓄電池業界の先行きは楽観できない。というのも、小型排気量自動車の優遇税制や「以旧換新」(古いものの廃棄と新型の購入)の補助などの優遇政策が2011年から取り消され、このことで2009~2010年に好調に伸びた自動車販売が安定期に入ったからだ。2012年4月の自動車の生産量と販売量はそれぞれ164.76万台と162.44万台で、前月比12.4%と11.7%の減少を示している。モーターバイクも前年同期比・前月比で減少を見せている。こうした状況下、始動動力用鉛蓄電池が5月にプラス転換する見込みは小さい。
 一方、固定型にとっては、中国内の移動通信基地や鉄道設備などの需要がまだまだ伸びている。2008~2011年の4年間で移動通信基地設備は69.72%増加の成長を示した(注;原文では年平均成長率となっている)。これに加えて、中西部での大規模なインフラ設備建設が加速されている。固定型蓄電池の需要は安定していて、多くのメーカーで5月受注状況は前月より増加している。

図5. 電動自転車の鉛蓄電池交換所

図5. 電動自転車の鉛蓄電池交換所

このような店でも蓄電池交換を扱っている(2010年北京市)

5-10. 江西省上饒市で新たな蓄電池工場竣工
 中国での報道によると、2012年5月14日,江西舒楽新能源科技有限公司が江西省余干県工業パークに建設していた年産能力が蓄電池で500万個、極板製造で6万tの新蓄電池工場が竣工した。投資額は1.5億元(23百万US$)。製造する蓄電池は、鉛-カルシウムの密閉型MF蓄電池で、向け先は自動車、電動自転車、バイクそして固定型のUPS用などと報じられている。
 2011年の蓄電池生産企業の検査対象リストにはこの江西舒楽新能源科技有限公司の企業名は確認できないが、2012年1月には同社の投資に伴う環境対策承認が公示されている。

図6. 中国の代表的な鉛蓄電池生産企業所在地と2011年検査時の省区別関連企業数

図6. 中国の代表的な鉛蓄電池生産企業所在地と2011年検査時の省区別関連企業数

6. まとめ

 最近の中国の蓄電池産業に関わる政策動向等について概観した。
 一部では、前述のように「将来3年間で鉛蓄電池産業のメーカーは現在の三分の二が淘汰されるとの見通し」との報道もあるが、既に拙稿「中国鉛蓄電池企業の環境検査による生産停止動向」(カレント・トピックス2011年45号、平成23年9月8日)で分析したのと同様に、生産能力という点からはかなりの部分がカバーされることが予想され、むやみに企業数からの淘汰情報に懸念を拡大する必要はないと見られる。特に自動車向けに関しては、2011年の企業の環境検査が大々的に実施された際にも、特段のショートは発生していなかったと見られる。今後も動向の中止が必要な状況は変わっていない。
 一方で、報道されている動向からはうかがいしれない影響も以下のように考えられる。

① 廃棄蓄電池の回収再生に関する動向がまだ不明。
 一部では新たな回収基地や体制などの報道も見られるものの、今後の全体像がどのようになるか不明。特に2012年で淘汰の対象となっている小企業に多くの回収再生業者が含まれていると見られるが、大企業或いは他のシステムがこれをどのように代替していくかがよくわからない点である。とりわけ、今後は更新に関して廃棄蓄電池の発生の急増が予想される。この点に関しては、鉛製錬企業の回収再生とも併せて見ていく必要があろう。

② 今後増加するであろうMF蓄電池との関連
 MF蓄電池は、現在、日本でも乗用車用としては主たる鉛蓄電池である。このタイプの蓄電池では、電極にアンチモンと鉛の合金ではなく、鉛-カルシウム合金が用いられる。中国でもこの傾向が表れつつある。
 回収された鉛蓄電池から再生される鉛及び鉛-アンチモン合金は、これまでは中国ではその形態で新蓄電池製造に使用することも可能な部分があった。しかし、MF化により、回収再生と新蓄電池製造の成分に大きな差異が生じることになる。この点についての言及や政策動向はまだ不明である。

③ アンチモン需給への影響
 MF化に伴う鉛-カルシウム化はアンチモンの需給にも影響が予想される。中国アンチモン消費の内訳(2009年6.5万t)の内、蓄電池向けは17%(1万t)を占めている(拙稿、カレント・トピックス2011年56号「中国アンチモン産業の最近の動向」、平成23年11月4日)。
 日本の場合、アンチモンの総需要に占める蓄電池向けは、輸出を含まない消費量推定で2009年の値は、総消費量4,974 tの内277 t、5%であった(JOGMEC、「鉱物資源マテリアルフロー2011」、平成24年5月)。中国のアンチモン需要の内の鉛蓄電池向けが今後どのような傾向を見せるかは判然としないが、中長期的には減少も予想される。
 追記 「鉛蓄電池産業参入条件」は本稿に掲げた「意見を求めるための原案」を経て、2012年7月1日からの発効と、2012年6月26日に報道された。

参考 本文中に*で示した法規等の原文表記は次の通り。また、同時に掲載している以下のアドレスで中国語本文を読むことが可能である。

*1 关于开展铅蓄电池和再生铅企业环保核查工作的通知
   http://www.cnmn.com.cn/ShowNews1.aspx?id=234181
*2 关于加强铅蓄电池及再生铅行业污染防治工作的通知
   http://www.law-lib.com/law/law_view.asp?id=349273
*3 关于报送2012年淘汰落后产能目标计划和申报中央财政奖励资金有关工作的通知
   http://www.songling.gov.cn/ReadNews.asp?NewsID=1986
*4 部分工业行业淘汰落后生产工艺装备和产品指导目录(2010年本)
   http://www.miit.gov.cn/n11293472/n11293832/n12845605/13528159.html
*5 《铅蓄电池行业准入条件》征求意见稿
   http://stock.jrj.com.cn/2012/03/02070912388736.shtml

ページトップへ