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報告書&レポート

2012年8月23日 メキシコ事務所 高木博康
2012年49号

メキシコ合衆国の銅鉱石の生産の現状と今後の見通しについて

 メキシコの2011年の銅鉱石の生産量は44万tと世界10位にすぎないが、埋蔵量は世界第4位に位置しており、埋蔵量を年間生産量で割った数値は86.3年と豪州に次ぐ世界第2位となっており、銅生産拡大の余地が大きいことを示している(表1)。なお、2011年の生産量44万tは、対前年比で17万tの増加となっている。これは、メキシコ最大のBuenavista(旧Cananea)銅鉱山におけるストライキが解決したことによるものであるが、メキシコ最大の産銅会社であるGrupo Mexico社は、2015年までにメキシコにおける銅の年間生産量を更に34万t増産する計画を有しており、メキシコの銅の生産量の増加が今後の世界の銅の需給に少なからぬ影響を与える可能性がある。
 そこで、政府統計、各社HP及びこれまでのメキシコ政府関係機関、企業等からのヒアリング結果等を基に、メキシコの銅鉱石の生産及びプロジェクトの現状並びに今後の銅鉱石の生産の見通しについてまとめたので、ここに報告する。

表1. 世界の銅の埋蔵量

国 名 埋蔵量
(千t)
2011年生産量
(千t)
埋蔵量/年間生
産量(年)
チリ 190,000 5,262.8 36.1
ペルー 90,000 1,235.2 72.9
豪州 86,000 957.0 89.9
メキシコ (注1) 38,000 440.3 86.3
米国 35,000 1,138.4 30.7
ロシア 30,000 724.8 41.4
中国 30,000 1,267.2 23.7
690,000 16,242.4 42.5

(出典)埋蔵量:MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2012
生産量:World Metal Statistics Yearbook 2012


(注1) メキシコの銅の埋蔵量を5,740万tとする米USGSの調査もある。

1. 鉱石生産の現状

 表2は、メキシコ全体及びその内訳(メキシコ企業、外資系企業、主な企業毎)の銅鉱石の生産量の推移をまとめたものである。なお、メキシコ統計地理情報院(INEGI)の統計は、銅精鉱中の銅含有量とSX-EWによる銅カソードの生産量を合計したものとなっており、メキシコのSX-EWによる銅カソードのみの生産量は掲載されていない。また、メキシコ資本の企業の中には情報開示をほとんど行っていないところがある。
 2011年の銅鉱石の生産量は、Grupo Mexico社が66%を占めており、外資系企業による生産量は13%に過ぎない。貴金属や鉛、亜鉛については、外資系企業による生産量が急激に増加しているが、銅については、外資系企業による生産量は2007年の11%から2%増えただけである。

表2. メキシコ銅鉱石生産量とその内訳の推移(単位:千t)

資本別・企業名 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
メキシコ銅鉱石生産量 337.5 246.6 240.6 270.1 443.6
メキシコ企業計 301.6 212.3 210.2 234.4 387.9
 うちGrupo Mexico 232.6 139.9 131.3 144.1 291.7
 うちSX-EW 57.3 31.4 23.2 43.6 43.9
 うちPeñoles(含Fresnillo) 18.7 27.2 34.2 36.0 40.3
 うちSX-EW 6.4 14.3 20.3 21.8 26.4
 うちFrisco 非公表 非公表 非公表 16.8 21.4
 うち NEMISA 非公表 非公表 非公表 17.7 19.8
 うち上記4社以外(注2) 19.8 14.7
 うちGrupo Mexico、Peñoles以外 50.3 45.2 44.7 54.5 55.9
外資系企業計 35.9 34.3 30.4 35.7 55.7

(出典)INEGI、各社HP、NEMISAについては同社からのヒアリング


(注2) INEGIの鉱石生産量の確報値は、鉱業法に基づく経済省への報告義務により補正されており正確性は
    高いと言われているが、統計誤差はここ及びこの下の欄に含まれる。

 表3は、2011年の銅鉱石の生産量トップ10鉱山の生産量の推移である。

表3. メキシコの2011年の銅の生産量トップ10鉱山における生産量の推移

(単位:千t)

  鉱山名(企業名) 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
1 Buenavista(Grupo Mexico)(注3) 136.9 15.6 0.0 20.7 172.4
   うちSX-EW 34.6 9.4 0.0 20.7 20.7
2 La Caridad(Grupo Mexico) 98.5 118.9 125.7 117.8 113.7
   うちSX-EW 22.7 22.0 23.2 22.9 23.2
3 Milpillas(Peñoles)(SX-EW) 6.4 14.3 20.3 21.8 26.4
4 Piedras Verdes(米Frontera)
 (SX-EW)(注4)
24.4 19.1 7.9 11.0 22.8
5 Santa María de la Paz (NEMISA) 非公表 非公表 非公表 17.7 19.8
6 COZamin(加Capstone Mining) 9.2 12.0 16.4 16.1 18.7
7 María(Frisco)(SX-EW) 非公表 非公表 非公表 8.8 11.5
8 Sabinas(Peñoles) 6.5 6.7 7.6 8.6 8.3
9 Tayahua(Frisco90.2%) 非公表 非公表 非公表 6.7 7.6
10 Campo Morado
(ベルギーNyrstar)(注5)
0.3 3.2 4.0 5.2

(出典)各社HP、Santa María de la Paz 鉱山についてはNEMISA社からのヒアリング


(注3) 2010年9月にCananea鉱山から名称変更。2007年7月から2010年6月までストライキ。2009年はストライキにより生産無し。2010年9月からSX-EWの操業開始、2011年6月にフル操業に回復。

(注4) 2009年半ばから2010年途中まで休山。

(注5) 2011年1月に加Farallon社を買収することにより入手。2010年までの生産量はFarallon社による。買収後にG-9鉱山から名称変更。

(1) Buenavista(ブエナビスタ)(旧Cananea(カナネア))鉱山
 ソノラ州北部Cananea郡に位置し、メキシコ最大の2,698万t(注6)の銅の埋蔵量を持つGrupo Mexico社所有の露天掘の銅鉱山で、SX-EWも加え18万tの生産能力を有しているが、2007年7月から2011年6月までのストライキの影響で生産量が減少していた(注7)。2010年9月からはSX-EWの操業を開始し、2011年6月からフル操業に回復している。なお、ストライキ終了後にCananea鉱山から名称変更をしている。
 同社は、2011年8月に発表した2015年までの5カ年計画において、銅(注8)の生産能力18万8,000 t/年の新規選鉱プラントを増設し、選鉱プラントによる生産量を現在の12万5,000 t/年から31万3,000 t/年に増産するとともに、8万2,000 t/年の新規SX-EWプラントを増設し、銅カソードの生産能力を5万5,000 t/年から13万7,000 t/年に増産するとしている。これにより、同鉱山の銅の生産能力は18万t/年から45万t/年となり、世界的にも生産量の大きな銅鉱山になる見通しである。2012の投資計画によれば、2014年上半期に新規SX-EWプラントを稼働せ、2015年上半期に新規選鉱プラントを稼働させるとしている。
 この他、モリブデンの生産も開始し、2013年Q1から2,000 t/年、2015年上期からは4,600 t/年の生産能力とする計画である。


 (注6) Grupo Mexico社及びPeñoles社の鉱山の埋蔵量については、いずれも2011年末現在。
 (注7) 詳細は、平成22年11月18日付けカレント・トピックス(10-56号)「Cananea銅鉱山のストライキ終焉と今後の見通し」を参照されたい。
 (注8) 銅精鉱中の銅含有量。

写真1. Buenavista鉱山(2011年4月)
写真1. Buenavista鉱山(2011年4月)

(2) La Caridad(ラ・カリダ)鉱山
 ソノラ州北部Nacozári郡に位置し、メキシコ第2の997万tの銅の埋蔵量を持つGrupo Mexico社所有の露天掘の銅鉱山である。2011年6月に同鉱山Quintanaオペレーション部長から聞いたところでは、マインライフは約50年であるが、銅の品位が低下傾向にありSX-EWによる生産の比重が高くなっており、選鉱プラント用の高品位硫化鉱が不足してきているため、同鉱山から約10km離れたPilares鉱床の開発を急いでいるとのことであった。2007年からの生産量の推移を見ても、SX-EWによる生産量が増加する一方で、銅精鉱の生産量は2010年以降減少傾向にある。同社の2012年投資計画によると、2013年Q3にPilares鉱床から4万t/年の銅の生産を開始することを予定している。
 なお、銅の品位が低下傾向にある一方で、モリブデンの品位は上昇傾向にあり、モリブデンの生産量の増加が見込まれている(注9)


(注9) 詳細は、平成23年7月22日付けカレント・トピックス(11-38号)「メキシコのモリブデン生産及び輸出入の動向について」を参照されたい。

写真2. La Caridad鉱山(2011年6月)
写真2. La Caridad鉱山(2011年6月)

(3) Milpillas(ミルピージャス)鉱山
 ソノラ州北部Santa Cruz郡(Cananea郡と米国境の間)に位置し、Peñoles社が保有するSX-EWによる露天掘の銅鉱山である。2011年4月に同鉱山Ortiz所長から聴取したところ、以下のとおりである。
 同社は貴金属部門に強いが、多角化を図るために米企業より購入し、2006年8月から操業を開始した。当初の開発計画では、粗鉱処理量9,000 t/日、銅の平均品位2.1%以上、銅カソード生産量5万6,000 t/年、マインライフ12年となっていた。しかし、実際の銅の品位は1.4%程度であったこと、ピット内湧水等により採鉱が困難であったことから、当初計画を見直し、粗鉱処理量8,000 t/日、銅カソードの生産展望として、2011年2万2,000 t、2012年~2015年2万4,000 t/年、2016年~2023年3万1,000~3万2,000 t/年と目標を下方修正した。また、鉱山周辺で探鉱を行っており、新たに3つの鉱床を発見しているので、今後、これらの鉱床の更なる探鉱及び評価を行う予定である。
 なお、2011年の銅鉱山の生産量は、2万6,400 tであり、当初計画の5万6,000 tには遠く及ばないものの、修正目標の2万2,000 tを上回る結果となっている。銅の埋蔵量は、42万5,000 t。

写真3. Milpillas鉱山(2011年4月)
写真3. Milpillas鉱山(2011年4月)

(4) Piedras Verdes(ピエドラス・ベルデス)鉱山
 Sonora州南部Alamos郡に位置し、米Frontera Copper社が2006年に操業を開始したSX-EWの露天掘の銅鉱山である。2007年に2万4,400 tの銅カソードの生産を記録したものの、2008年からBuenavista鉱山のストライキに起因する硫酸不足による影響を受けたのに加え、2008年後半からの銅価の下落もあり、2009年半ばに休山した。その後、メキシコの投資会社Grupo Invectureから2010年2月に操業再開後の経済性分析が公表され、2010年半ばから操業を再開している。

(5) Santa María de la Paz鉱山
 サン・ルイス・ポトシ州北部に位置するメキシコ資本のNegociación Minera Santa María de la Paz y Anexas, S.A. de C.V.(NEMISA)社が所有する坑内掘の銅鉱山である。同社は、株式を上場していないため、HP等での情報公開は行っていない。2012年6月に同社Manuel González探鉱地質部長等から聞いたところ、以下のとおりである(注10)

 同鉱山は1864年から操業が行われ、同社は1970年から同鉱山を保有している。同鉱山はスカルン型鉱床で、1992年までは現在の本社ビルの下に位置するLa Paz鉱床を採掘してきた。1993年からは、近傍にあるDolores鉱床の坑内採掘を開始し、2011年からはその北側にあるCobriza鉱床の採掘も開始した。2011年は、粗鉱処理量5,400 t/日であったが、増産計画を実施中であり2012年10月までに段階的に粗鉱処理量を8,650 t/日まで引き上げる。これにより銅の生産量は、2011年の約2万tから2013年には約3万tとなる。現在の精測資源量(Dolores鉱床:27.5百万t、平均品位 銅0.97%、金1.82 g/t、銀48 g/t、Cobriza鉱床:40.0百万t、平均品位 銅1.46%、金0.74 g/t、銀61 g/t)等からするとマインライフは6~7年となるが、鉱化作用が発見されているが資源量評価を行っていない地区が複数存在しており、20年は継続できると考えているとのことであった。


 (注10) 詳細は、平成24年8月2日付けカレント・トピックス(12-46)号)「メキシコ・サン・ルイス・ポトシ州の鉱業事情」を参照されたい。

写真4. Santa María de la Paz鉱山(2012年6月)
写真4. Santa María de la Paz鉱山(2012年6月)

(6) Cozamin(コサミン)鉱山
 サカテカス州サカテカス市近郊に位置し、加Capstone Minerals社が保有する銅を主体とする坑内掘の多金属鉱山である(2011年の生産量は、銅1万8,700 t、亜鉛8,200 t、鉛1,800 t、銀49 t)。2011年9月に同鉱山Ibarra地質部長から聴取したところ、以下のとおりである。
 2004年に地元資本企業から100%権益を取得し、2006年から操業を開始した。買収時の鉱区は5 km×2 kmであったが、鉱脈延長上の2 kmを個人鉱区所有者から買収し、現在の鉱区は7 km×2 kmとなっている。同社は、今後更に鉱脈延長上の鉱区の買収を検討している。なお、同社は、契約に基づき買収した企業や個人鉱区所有者に対し3%のロイヤルティ(Net Smelter Royalty)を支払っている。概測・精測資源量は、地表下600 mまでを対象に800万t(平均品位 銅2.0%、亜鉛1.7%、鉛1.5%、銀70 g/t)であるが、地表下1,000 mまでの鉱化作用が確認されている。

写真5. Cozamin鉱山(2011年9月)
写真5. Cozamin鉱山(2011年9月)

(7) María(マリア)鉱山
 ソノラ州北部Cananea郡のBuenavista鉱山の北直近に位置するFrisco社所有の露天掘の銅鉱山である。同社は、世界的な大富豪Carlos Slim氏の財閥Grupo Carsoの鉱山企業で、2011年1月にメキシコ株式市場に上場した。なお、同社の鉱山の生産量等が公表されるようになったのは、株式公開後であり、2009年までの生産量は非公表である。
 2011年4月に同鉱山Hernandez所長から聴取したところ、以下のとおり。
 1980年から銅精鉱の生産を開始し、1999年からはSX-EWによる銅カソードの生産を行っている。これまで採鉱を行っていた3鉱床は2011年中に終了するため、今後は西側に隣接するVerde鉱床(資源量2,500万t、銅の平均品位0.40%、マインライフ5年)の採鉱を行うとともに、鉱山近隣での探鉱活動を行う。鉱山北西部でPeñoles社のMilpillasdou銅鉱山の東端に隣接するLucy露天掘鉱床(資源量100万t、銅の平均品位0.80%、マインライフ2年)の用地買収交渉を実施している。

写真6. María鉱山の大量の廃さい(2011年4月)
写真6. María鉱山の大量の廃さい(2011年4月)

(8) Sabinas(サビナス)鉱山
 サカテカス州のサカテカス市北西のドゥランゴ州との州境付近に位置し、Peñoles社が保有する亜鉛を主とする坑内掘の多金属鉱山である(2011年の生産量 銅8,300 t、亜鉛2万3,700 t、鉛7,800 t、銀55 t)。歴史のある鉱山で1555年から操業し、1994年にPeñoles社の所有となっている。銅の埋蔵量は7.5万t。

(9) Tayahua(タヤウア)鉱山
 サカテカス州北部のコアウイラ州との州境付近に位置し、Frisco社が保有する坑内掘の銅鉱山である。1997年から操業を行っており、1998年にFrisco社が51%の権益を取得し、2011年5月に90.2%まで権益を増加した。

(10) Campo Morado(カンポ・モラド)鉱山
 ゲレロ州北部に位置し、ベルギーNyrstar社が保有する亜鉛を主とする坑内掘の多金属鉱山である(2011年の生産量 銅5.2千t、亜鉛4万6,000 t、銀57 t、金530 kg)。2008年11月に操業開始、2009年4月に商業生産開始。2011年1月にNystar社が加Farallon社を買収することにより入手し、G-9鉱山から名称変更している。

2. 主要な銅プロジェクト

 主要な開発段階又は探鉱が進展している銅プロジェクト又は銅が主体の多金属プロジェクトとしては、以下のようなものが存在している。

(1) El Arco(エル・アルコ)プロジェクト
 バハ・カリフォルニア州南部のバハ・カリフォルニア・スル州との州境付近に位置するGrupo Mexico社所有の銅プロジェクトである。マインライフ30年間の銅の平均年間生産量は19万tと見積もられている。銅精鉱は、バハ・カリフォルニア湾に面した新設の港を経由し、ソノラ州のGuimas港へ船によって運搬される予定である。同社の5カ年計画に基づき、2015年までにGuimas湾に面した鉄道の終着駅Empalmeに銅の製・精錬所を建設することとなっており、現在La Caridad製・精錬所で処理しているBuenavista鉱山の銅精鉱(一部精鉱は従来どおりLa Caridad製・精錬所で処理される見通し)とともにここで処理されることとなる。Grupo Mexico社の5カ年計画に基づき、2015年にSX-EWプラントによる銅カソードの生産(3.2万t/年)を開始し、2016年に銅精鉱(銅含有量15.8万t/年)の生産を開始する予定となっている。

写真7. El Arcoプロジェクトのサイト(2011年7月)
写真7. El Arcoプロジェクトのサイト(2011年7月)

表4. El Arcoプロジェクトの概測資源量

  概測資源量
(百万t)
平均品位 含有量
銅 (%) 金 (g/t) 銅(千t) 金(t)
酸化鉱 288 0.35 1,008
硫化鉱 1,033 0.498 0.125 5,144 130.2
1,321 6,152 130.2

(出典)Grupo Mexico社HP

(2) El Boleo(エル・ボレオ)プロジェクト
 バハ・カリフォルニア・スル州に位置し、加Baja Mining社70%、KORES(韓国鉱物資源公社)を筆頭とする韓国企業団が30%の権益を保有する銅、コバルト、亜鉛等のJVプロジェクトである。マインライフ23年間の平均生産量は、銅3万8,100 t、コバルト1,600 t、亜鉛2万9,500 tと見込まれている他、2012年からマンガン生産のためのエンジニア及び商業化調査を開始している。既に2011年6月からは露天採掘、2011年9月からは坑内採掘を開始しており、2012年中のプラントの完成を待って、2013年Q1から精鉱の生産を開始する予定となっている。しかしながら、選鉱プラントの設計変更、鋼材、燃料等の値上げにより開発コストが当初計画より2億4,600万US$増の11億4,300万US$になることから(2012年5月公表)、資金調達の懸念によりプロジェクトの継続を危ぶむ声も聞かれている。

表5. El Boleoプロジェクトの確定・推定埋蔵量

確定・推定鉱物埋
蔵量(百万t)
平均品位(%) 金属含有量(千t)
Cu Co Zn Mn Cu Co Zn Mn
85 1.33 0.08 0.55 2.92 1,131 68 468 2,482

(出典)Baja Mining社資料

(3) Bahuerachi(バウエラチ)プロジェクト
 チワワ州に位置しており、中国Jinchuan(金川)グループが100%権益を保有する銅、亜鉛等のプロジェクトである。同グループは、2008年3月に1億9,300万US$で加Tyler Resources社を買収することによって、本プロジェクトを入手している。このプロジェクトは、メキシコ最大級の銅・亜鉛・モリブデン鉱山の一つとなるポテンシャルを有している他、副産物として、金、銀の生産も可能と見られている。
 中国企業による買収以降、情報公開がほとんど行われていないが、経済省鉱業振興総局によると開発中のプロジェクトとされている。また、メキシコ鉱業センター(SGM)チワワ事務所によると2012年4月現在、インフラ工事を実施中とのことである。
 なお、買収前の2007年9月にTyler社が行った予備FS調査によると、マインライフ12年間の平均年間生産量は、銅8万3,400 t、亜鉛14万1,200 t、モリブデン1,100 t、銀86 t、金441 kg、総資本コストは6億1,900万US$と試算されている。
 概測及び精測資源量は、5億2,500万t、平均品位は、銅0.4%、亜鉛0.55%、モリブデン0.008%と見積もられている。

(4) El Pilar(エル・ピラール)プロジェクト
 ソノラ州に位置し、加Mercator Minerals社が100%権益を持つSX-EWのプロジェクトである。マインライフ12年間の銅カソードの平均年間生産量は、3万3,400 tを予定している。2012年1月に開発工事の全ての認可手続きを終了しており、地表権についてもエヒード(農業共同体)と合意に至っている。同社は、2012年中の操業開始を予定していたが、2012年5月に資金の不足を理由に開発の延期を発表している。

表6. El Pilarプロジェクトの概測及び精測資源量

資源量(百万t) 銅の平均品位 (%) 銅の含有量 (千t)
359.3 0.281 1,008

(出典)Mercator Minerals社HP

(5) San Nicolas(サン・ニコラス)プロジェクト
 サカテカス州に位置し、加Teck Resources社79%、加Goldcorp社21%の権益保有の亜鉛、銅、銀及び金のJVプロジェクトである。かつては、Teck社76%、米Western Copper社24%の権益でSan Nicolas鉱床を含むEl Salvador亜鉛プロジェクトと探鉱が実施されてきたが、Goldcorp社がPeñasquito多金属鉱山(当時プロジェクト)の権益も持つWestern社を買収したことにより現在の権益比率となっている。2012年中にも操業開始するとの見方(注11)もあったが、2012年3月のPDAC 2012においてTeck社に操業開始の見通しを質問したところ、「操業開始の時期は未定である。いつでも開発を始められるようメインテナンスをしているが、銅及び亜鉛の国際的需給状況を見ながら、現在プロジェクトを休止している。」と語っていた。


 (注11) 2011年10月の第29回メキシコ国際鉱業大会(Expomin Mexico 2011)の特別講演「鉛、亜鉛、銅の受給見通し」において講演者が述
      べたもの。

表7. San Nicolasプロジェクトの精測及び概測資源量

資源量
(百万t)
平均品位 含有量

(%)
亜鉛(%)
(g/t)

(g/t)

(千t)
亜鉛
(千t)

(t)

(t)
80.0 1.33 1.84 29.01 0.48 1,062 1,474 2,245 38.5

(出典)Teck社及びGoldcorp社HP

3. メキシコの銅の生産の今後の見通し

 今後のメキシコの銅鉱石の生産量に影響を与える事項をまとめると以下のとおり。

① 2015年までにBuenavista鉱山の銅の生産能力が18万t/年から45万t/年に増産される計画である。

② 2013年Q3からLa Caridad鉱山のPilares鉱床4万t/年の生産開始が予定されている。

③ 2015年からEl ArcoプロジェクトのSX-EWの生産3万2,000 t/年が計画されている。

④ 同プロジェクト全体(2016年からSX-EWに加え銅精鉱の生産も予定されている。)の平均生産量は19万t/年と見積もられている。

⑤ 2011年の生産量トップ10鉱山を見ると生産量が上向きである。

⑥ なお、2013年から生産が開始される予定のEl Boleoプロジェクト(3万8,000 t/年)は資金調達の懸念によりプロジェクトの継続が危ぶまれている。

⑦ 銅の価格次第で不透明さはあるものの、Banuerachiプロジェクト(8万3,400 t/年)、El Pilarプロジェクト(3万3,400 t/年)、San Nicolasプロジェクト等も存在している

 これらのことから、大規模なストライキ、銅価格の暴落等が無ければ、メキシコの銅の生産量は、2010年の27万t、2011年の44万tから大きく増加し、2015年には80万t以上、2016年以降(El Arcoプロジェクトのフル生産時)には100万t前後まで増加する可能性があると考えられる。2011年の生産量(注12)で100万tを越えている国は、チリ(526万t)、中国(127万t)、ペルー(124万t)、米国(114万t)の4カ国であり、銅の埋蔵量が世界4位(注13)のメキシコがようやく埋蔵量に見合った銅の生産を行うようになると見ることも出来る。


 (注12) World Metal Statistics Yearbook 2012による。
 (注13) MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2012による。

おわりに

 メキシコでは、今回紹介した銅だけでは無く、生産量の増加が見込まれる又は今後増加する可能性のある鉱物資源が複数存在している。メキシコ事務所では、今後とも世界の需給に影響を与えるような動きやモリブデン、アンチモン、ビスマスといったレアメタルの現状を紹介していきたい。

図1. メキシコの銅鉱山、銅関連プロジェクト位置図
 1 Buenavista鉱山
 2 La Caridad鉱山
 3 Milpillas鉱山
 4 Piedras Verdes鉱山
 5 Santa María de la Paz鉱山
 6 Cozamin鉱山
 7 María鉱山
 8 Sabinas鉱山
 9 Tayahua鉱山
10 Campo Morado鉱山
(注) 鉱山の1~10は、2011年の生産量の順位を示す。
1 El Arcoプロジェクト
2 El Boleoプロジェクト
3 Bahuerachiプロジェクト
4 El Pilarプロジェクト
5 San Nicolasプロジェクト


図1. メキシコの銅鉱山、銅関連プロジェクト位置図

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