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報告書&レポート

2012年11月15日 ジャカルタ事務所 高橋健一
2012年67号

ミャンマー鉱業投資環境の現状-第1回ミャンマー鉱業サミット参加報告-

 ミャンマー鉱業に関する国際的なカンファレンスとしては初となる「第1回Myanmar Mining Summit」が、2012年7月22日~25日の4日間、ミャンマーのヤンゴンで開催された。ミャンマーの持つ資源ポテンシャルへの期待もさることながら、2011年3月のThein Sein大統領新政権誕生後の民主化の進展が、国際的に徐々に評価され、欧米諸国の経済制裁も緩和の方向にある中で、鉱業カンファレンスとしては初の開催となった。そのため、世界26か国から300人を超える大勢の参加者を集め、活況を呈したものとなり、日本からもJOGMECに加え、企業数社の参加があった。
 本稿では、講演概況及び講演されたミャンマーの鉱業政策や鉱業動向に関する内容を取りまとめ、同国の鉱業投資環境の現状について紹介する。

写真1. カンファレンス会場

写真1. カンファレンス会場

1.鉱業サミット概況

 本カンファレンスでは、民政政権による民主化、市場経済化促進政策への政策転換に合わせ、資源産業分野に外国投資を大きく呼び込むため、ミャンマー鉱山省が全面的に、積極的にPRを展開する姿勢が伺われる内容のものとなった。
 オープニングでは、U Thein Htaik鉱山大臣(当時。その後の内閣改造により現在はMyint Aung大臣)自身が基調講演を行い、その中で、ミャンマーの資源ポテンシャルの高さに触れ、外国投資家の先進的な技術により、特にグラスルーツ・プロジェクトへの投資に期待を寄せている旨示された。また、新政権による政策方針により、投資環境の透明性をより高めるため、政府は、外国投資法の改正や資源分野ではEITI(Extractive Industries Transparency Initiative:採取産業透明性イニシアティブ)の実施に向け、前向きに取り組んでいることも強調した。

写真2. U Thein Htaik鉱山大臣

写真2. U Thein Htaik鉱山大臣
写真3. 会場風景

写真3. 会場風景


 その他、欧米コンサルタントによる法律面、税制面などの投資環境や、投資リスク分析などの講演が行われた。
 JOGMECからも上田英之理事が「Japan’s Investment & Plans on Mineral Resources Mining Activities in Myanmar – JOGMEC’s Role and Activities – 」と題した講演を行い、JOGMECの各国での活動状況や、現在ミャンマーで鉱山省地質探査局と共同実施している探査プロジェクトを紹介した。

写真4. JOGMEC上田理事による講演

写真4. JOGMEC上田理事による講演

 なお、カンファレンス本体の講演は、7月23日及び翌24日午前中の開催であったが、24日の午後にミャンマーでのプロジェクト・ファイナンス、25日に地質に関するワークショップがそれぞれ開催され、両ワークショップともに引き続き多数の参加者を集めた。また22日には開催前日のセレモニーが開催された。
 次項以降は、鉱山省他政府関係機関により講演された内容を基に、投資環境に関連する項目毎に取りまとめたものである。

2.鉱業関連法制度・鉱業政策

(1) 鉱業関連法

 現在のミャンマーの鉱業に関連する法令は、1994年制定の鉱山法(Myanmar Mines Law – 1994)及びその詳細を規定した1996年制定の実施細則(Myanmar Mines Rules – 1996)から成る。
 個別鉱物に関する法令として、宝石法及び同法実施細則(Myanmar Gemstone Law – 1995及びMyanmar Gemstone Rules – 1995)、真珠法及び同法実施細則(Myanmar Pearl Law – 1995及びMyanmar Pearl Rules – 2000)などがある。また、環境関連では、環境法が新たに2012年3月に制定されている。
 現在、鉱山省で新鉱山法の草案策定作業に着手、専門家及び一般から広く意見を取り込む形で作業に取り組んでおり、「環境を重視した持続的鉱業開発保護」及び「市場経済原則に基づいた透明性の確保」を大きく盛り込む方針。

(2) 鉱業分野への外国投資
 1) 探鉱投資(予察、探鉱、FSまで)

・ 外国企業がミャンマーでの探鉱(予察、探鉱、FSまで)に投資する場合、まず、外交ルートにより、在ミャンマー各国大使館等から鉱山省へ、投資に関する関心レターの送付が必要となる。

・ 以後、鉱山省とその内容(現地調査も含む)の協議・検討を行う。

・ 最終的に投資家が投資の実行を決定した場合、地質調査・鉱物探鉱局(DGSE:Department of Geological Survey and Mineral Exploration)に投資計画内容(区域、対象鉱物、探鉱、FS等の事業内容、投資額、適用する技術等)を記載した正式なレターにより投資計画の申請をしなければならない。

・ 当該申請の鉱山省内での審査を経て、省内で投資計画の内容が承認された後、その投資計画内容に基づいた契約案を作成する。

・ 契約案について、最終的にミャンマー投資評議会(MIC:Myanmar Investment Commission)及び内閣の投資許可を取得した後、改めて契約締結に至る。

・ 探鉱ステージでの各許可の条件は表1のとおり。

表1. 探鉱ステージ許可条件

許可区分 期間(延長) 面積
予察許可
Prospecting Permit
1年以内
(12月以内)
4,200km2以内
探鉱許可
Exploration Permit
3年以内
(1年以内。2回まで可)
3,150km2以内
Feasibility Study 1年以内

 2) 鉱山開発・生産

・ ミャンマーで鉱山開発・生産を行う場合、原則として各鉱山公社との生産分与契約(Production Sharing Contract:PSC)に基づき実施。PSCシェアは、基本的にLME価格をベースに、鉱物ごとに異なり、通例、金が50:50(企業側:公社側。以下同様)で、その他の鉱物は70:30などがあるが、最終的には鉱山省及び鉱山公社との交渉で決定される。なお、現在鉱山省では、その他の鉱物の一般的なPSCシェアを85:15に緩和する方向で検討中。

・ 鉱山開発・生産許可などは、鉱山省鉱山局(Department of Mines)が所管。

・ 鉱山生産ステージでの許可条件は表2のとおり。

表2. 鉱山生産ステージ許可条件

許可区分 期間(延長) 面積
大規模採掘許可
Large Scale Mining Permit
25年以内
(5年以内/回)
鉱床規模による
小規模採掘許可
Small Scale Mining Permit
5年以内
(1年以内。4回まで可)
1km2以内

 3) 税制等

 鉱業に関する税制として、鉱区料及び鉱業ロイヤルティが課される(表3及び表4)。その他、一般的な税として、法人所得税:25%、個人所得税:居住外国人1~20%、非居住外国人35%、キャピタルゲイン税:居住外国人10%、非居住外国人40%、物品販売税(鉱産物の場合):5%、輸入税などが通常課税される。外国投資法に基づき許可を受けた場合は、優遇税制を受けられる。(後述参照)

表3. 鉱業ロイヤルティ

区分
金属鉱物 3~4%
貴金属鉱物 4~5%
工業原料鉱物 1~3%
ルビー、サファイア、翡翠、ダイヤモンド 20%
その他の貴石 10%

(注)鉱産物売価に課税

表4. 鉱区料

(単位:Kyats/km2)

区分 金属鉱物 貴金属鉱物 工業原料鉱物
Prospecting
 1年目
 2年目
 
100,000
200,000
 
200,000
400,000
 
50,000
100,000
Exploration
 1年目
 2年目
 3年目
 4年目
 5年目
 
200,000
400,000
800,000
1,200,000
1,600,000
 
400,000
800,000
1,600,000
2,400,000
3,200,000
 
100,000
200,000
400,000
600,000
800,000
FS
 1年目
 2年目
 
1,600,000
1,600,000
 
3,200,000
3,200,000
 
800,000
1,200,000
Developing
 1年目
 2年目
 3年目
 
1,800,000
2,100,000
2,400,000
 
3,600,000
4,200,000
4,800,000
 
1,400,000
1,600,000
2,000,000
Production
 1~20年目
 
3,000,000
 
6,000,000
 
2,000,000

※ 851.00 Kyats/US$(10/19ミャンマー中央銀行為替レート)

 4) 外国投資法及び会社法

 鉱業関連法令以外に、ミャンマーで投資する場合に押さえておくべき主な法令は、会社法(1914年)及び外国投資法(1988年)、国営企業法(1989年)がある。
 会社法に基づく会社設立は必要となるが、外国投資法に基づく許可を必ずしも受ける必要は無い。ただし、外国投資法に基づく許可を受けた場合、3年間の法人所得税の免除・期間の延長、固定資産の加速減価償却、損失の繰越などの優遇措置が受けられる。
 外国投資法(1988年)に基づく許可権限は、ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission:MIC)が持つ。MICは工業大臣を議長とし、鉄道運輸大臣、財務歳入大臣、第1電力大臣、司法長官を評議員、国家計画・経済開発大臣及び鉄道運輸副大臣を事務局としたメンバー構成となる。
 その他、これら法令などに規定された投資条件としては以下のようなものがある。
 ・ 出資比率:

外資100%、ミャンマー企業等との合弁企業、国営企業との合弁などが可能。ただし、企業との合弁の場合外資35%以上、国営企業との合弁の場合同50%までの条件がある。

 ・ 最低出資額:

外資法では製造業50万US$、サービス業30万US$、会社法では製造業15万US$、サービス業5万US$

 なお、現在外国投資法の改正手続きが進められており、政府案では3年間の所得税免除期間を5年に延長する内容など、外国投資をより優遇・緩和する内容が盛り込まれていたが、国会では、外資を優遇し過ぎとの声が上がり、政府案に対して外資出資額の引き上げや特定分野での出資比率の引き締めなどの修正がなされ、今年9月に国会で可決された。これに対し、政府は修正案を不服とし、見直しを国会に求めるなど、現時点では少々難航した状況となっている。

 5) その他
   その他、鉱業投資を行う上で、留意すべき事項は次のとおり。

・ 未処理・未加工鉱石の輸出は不可:高付加価値処理が必要(具体的な基準は不明)。-政府は最新技術による国内での選鉱・製錬処理を奨励

・ ミャンマーでの土地私有は禁じられている(原則、全て国有地)ため、土地を利用する場合、使用権(リース)を得る必要がある。従来、外資の場合、政府からのみリースが可能であったが、2011年9月の大統領令(2011年第39号)により、民間企業からもリース可能となった。

・ 調査、操業地域での環境面、人権面での配慮。特に地方少数民族問題を抱える地域においては、地域コミュニティへのより一層の配慮が求められる。

3.鉱業行政組織

 鉱業を所管する行政組織は鉱山省(Ministry of Mines)となる。鉱山大臣の下、鉱山局と地質調査・鉱物探鉱局の2局と、6つの公社を傘下に置く。鉱山省の組織図は次のとおり。

図1. ミャンマー鉱山省組織図

(出典:講演資料からJOGMEC作成)

図1. ミャンマー鉱山省組織図

 それぞれの主な所管を以下に示す。なお、各公社による生産事業は、市場経済化及び民営化促進政策への転換に伴い、基本的に国内企業及び外国企業とのジョイント・ベンチャー(PSC形式)により実施される。

(1) 鉱山局
  鉱業政策・計画、規則の策定及び鉱山の監査、鉱山保安、鉱物資源の保護、鉱山環境に関する事項

(2) 地質調査・鉱物探鉱局
  国内全土の地質図作成、鉱物資源の予察調査、探鉱の実施並びに探鉱許可に関する事項

(3) 第1鉱山公社
  鉛、亜鉛、銀、銅、鉄、アンチモン、ニッケル、クロムの生産

(4) 第2鉱山公社
  錫、タングステン、金の生産

(5) 第3鉱山公社
  石炭、マンガン、工業用原料鉱物の生産。原則、生産物は国内市場向け。

(6) 宝石公社
  宝石採掘事業の許可・監督並びに宝石小売店舗の販売許可及び促進

(7) 真珠公社
  大規模・高品質な真珠の生産

(8) 製塩・海洋化合物公社
  食塩、ヨウ素添加塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム等の海水からの化合製品製造事業の許可・監督

4.外国企業による鉱業活動動向

(1) 鉱山生産

 主要な金属鉱産物は、銅、鉛・亜鉛、錫、タングステン、金、アンチモン、銀、ニッケル、鉄等。外資による鉱山投資は7件を数え、豪州、中国、ロシア、タイ、ベトナム企業により、亜鉛、鉄鉱石、ニッケル、金、錫、大理石鉱山への投資が行なわれている。
 ミャンマーでの大規模又は外資による主要な鉱山は、次のとおりである。

 ○ Monywa銅鉱山

 ミャンマーのMyanmar Yang Tse Copper社が操業。SX-EWにより銅地金を生産。年産能力は2.5万t。資源量は銅品位平均0.136%で約10億t。
 なお、同鉱山の権益の50%を保有していたIvanhoe Mines Ltdの撤退後、中国有数の軍需産業企業グループである中国北方工業公司(NORICO:China North Industries Corporation)がその権益を取得し、Sabetaung、Sabetaung South、Kyisintaungの3つの鉱床開発を目的としたPSCの下、2012年3月に鉱床開発及び建設に着手している。

 ○ Tagaung Taungニッケル鉱山

 中国有色鉱業集団公司(CNMC:China Nonferrous Metal Mining (Group) Co. Ltd.)と鉱山公社とのPSCによる操業。2011年3月に採掘を開始し、現在製錬プラントを建設中であり、ニッケル・マットを生産する計画。

 ○ Heinda錫鉱山

 タイ資本のMyanmar – Pongpipat社が第2鉱山公社とのPSCにより操業。

 ○ その他

 錫・タングステンはMawchi鉱山、Kanbauk鉱山などで、鉛・亜鉛はBaudwin鉱山、Yadanar Theingi鉱山などで生産されている。また、アンチモンは40カ所での小規模採掘が実施又は計画されており、そのうち、Thabyu鉱床及びLyhamyar鉱床は大規模開発となる期待が寄せられている。
 この他、外資によるものとして、ベトナム企業のSimco Songda社が第3鉱山公社とのPSCにより採石鉱山を操業している。

(2) 探鉱活動

 現在、中国、カナダ、ロシア、豪州、日本の企業が、DGSEとのJVによる探鉱プロジェクトを実施又は実施の申請を行っている。プロジェクト数は16件を数え、内訳は次のとおりであるが、これまでの経緯から中国の進出が目立つ(図2)。

① 探鉱実施中:2件
 ・ Nobel Gold Ltd(露):Banmauk地域金プロジェクト
 ・ North Mining Ltd(中):Mwe Taung地域ニッケル・プロジェクト

② 探鉱許可申請中:14件
 ・ Brila Corp. Ltd(加):Indainggyi地域石灰石プロジェクト
 ・ Singquest Ltd(加):Kani地域銅・金プロジェクト
 ・ Zhong Chuan Co. Ltd.(中):Ngaphe地域石炭プロジェクト
 ・ Xingye Gp Co. Ltd.(中):Heho地域銅・鉛・亜鉛プロジェクト
 ・ Poly mining Co. Ltd.(中):Dawei地域錫・タングステン・プロジェクト
 ・ De Rui Feng Co. Ltd.(中):Dawei River地域錫プロジェクト
 ・ 日鉄鉱業(日):Dawei River地域錫プロジェクト
 ・ Baoyi Gp Ltd(中):Marliphant地域鉄鉱石プロジェクト
 ・ NFC Ltd.(中):Panwa地域鉛・亜鉛・レアアース・プロジェクト
 ・ Guilin Research Co.(中):Wuntho地域ニッケル・クロム・プロジェクト
 ・ HeChiShengHong Co.(中):Mahochaung地域鉛・亜鉛プロジェクト
 ・ Asia Pacific Ltd.(豪):Namtu Bawdwin地域鉛・亜鉛プロジェクト
 ・ Guilin Research Co.(中):Tagaung地域ニッケル・クロム・プロジェクト
 ・ Guilin Research Co.(中): Monywa地域銅プロジェクト

 その他、鉱山省が発行した国内企業向け鉱業権は全1,355件(2012年7月現在)、内訳は、探鉱許可551件、小規模採掘許可520件、大規模採掘許可129件、零細採掘許可20件、小規模プロセス許可135件となる。このうち、主な生産企業は、銅3社、錫・タングステン8社、鉛・亜鉛20社、鉄鉱石6社、アンチモン12社などとなる。

図2. 探鉱プロジェクト位置図

(出典:鉱山省)

図2. 探鉱プロジェクト位置図

まとめ

 以上、現時点でのミャンマーにおける鉱業投資環境に関し、講演内容を基に概況をまとめてみたところであるが、大局的には、2011年3月の民政移管によるThein Sein政権誕生後、ミャンマーでは民主化、市場経済化が大きく進展し、それに伴う法整備も大がかり、かつ急ピッチで進められている。それが国際的な評価にも繋がってきており、欧米諸国による経済制裁解除の動きも進む中、投資環境は著しく改善する方向にあり、今後急激に拡大することは十分に予想される。
 一方で、法制度は全体的にまだまだ未整備な点が多いのも事実であり、また、外資法改正で見られるように、政府の急激な改革に対し、国会でも反対する声が上がるなどの動きや、地方少数民族問題などの課題もあり、新政権による改革は不安定な要素を抱えていることも否めない。
 これらの点を踏まえつつ、改革の進展や法制度の整備、特に鉱業投資では予定されている鉱山法の改正状況も注視しながら、同国での投資のタイミングを判断することが肝要であると思料する。

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