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報告書&レポート

2012年11月22日 メキシ事務所 高木博康
2012年68号

メキシコ合衆国・ソノラ州の鉱業の概要について

 ソノラ(Sonora)州は、2011年の金属鉱物生産額が州別で第1位で、649.2億ペソ(約46.5億US$)とメキシコ全体の金属鉱物生産額2,078億ペソ(約148.7億US$)の約31%を占めている。また、銅、金及びモリブデンの生産量が州別でトップ、銀及び鉄の生産量が州別で第4位となっている。
 2012年10月20日~23日に州都エルモシージョにおいてソノラ州鉱業大会(Minero Sonora 2012)が開催され、Piedras Verdes銅鉱山、Alamo Dorado金・銀鉱山、El Volcán鉄鉱山・Obregón選鉱プラント等を訪問するとともに、ソノラ州鉱業部、メキシコ鉱業センター(SGM)エルモシージョ事務所、Grupo Mexico社関係者、Peñoles社関係者、Guaymas港関係者等から情報を得る機会を得たので、ここに報告する。

図1.ソノラ州位置図

図1.ソノラ州位置図

1.ソノラ州の地理、地形等

 ソノラ州の東部は、チワワ州の国境にかけて3,000 m級の山が連なる西シエラマドレ山脈の一部となっており、西部及び中央部は、標高200~500 mの台地となっている。また、北部の米国境付近は標高1,000 m級の山が連なっている。気候は、南部のシナロア州国境付近を除き、米国アリゾナ州、バハ・カリフォルニア州とともにソノラ砂漠に位置しており、高温小雨であるが、7~9月に狭い地域に短期間の集中豪雨が降ることがある。なお、降水量は少ないが、地下水は西シエラマドレ山脈の影響で比較的豊富である。

2.ソノラ州の金属鉱業の概況

 2011年のソノラ州の金属鉱石生産量は、銅がメキシコ全体の79%、金が31%、モリブデンが100%で州別でそれぞれ1位となっており、銀が4%、鉄が8%でそれぞれ4位となっている。モリブデンは、メキシコにおける生産の全量がLa Caridad銅鉱山の副産物である。なお、鉛及び亜鉛の生産は無い。

表1.ソノラ州の主要金属鉱石生産量と国内シェア(2011年)

鉱種 ソノラ州 メキシコ計 国内シェア 国内順位
金(kg) 27,560 88,649 31% 1位
銀(t) 329.2 4,777.7 7% 4位
銅(t) 348,884 443,621 79% 1位
鉛(t) 0 223,717 0%
亜鉛(t) 0 631,859 0%
鉄(t) 972,780 12,805,778 8% 4位
モリブデン(t) 10,787 10,787 100% 1位

(出典)メキシコ国立地理情報院(INEGI)

3.ソノラ州の銅鉱石等の生産の現状及び今後の見通し

(1) 銅鉱石生産量の推移

図2.ソノラ州及びメキシコ全体の銅鉱石の生産量の推移(単位:千t)

(出典)INEGI

図2.ソノラ州及びメキシコ全体の銅鉱石の生産量の推移(単位:千t)

 メキシコの銅の生産量は2011年が過去最高であるが、ソノラ州の銅の生産量の推移をみると2005年が過去最大となっている(図2)。これは、2007年~2010年5月までGrupo Mexico社のCananea(現Buenavista)銅鉱山でストライキが行われ、同鉱山がフル操業を回復したのが2011年6月であること及び2006年~2007年にGrupo Mexico社のLa Caridad銅鉱山でストライキが行われた影響である(表2)。なお、両鉱山のストライキを行ったメキシコ鉱山冶金労働組合(STMMRM)は、Cananea銅鉱山のストライキの長期化の中でのGrupo Mexico社の強固な対応により4つに分裂し、弱体化している。

表2.ソノラ州の鉱山毎の銅の生産量の推移

(単位:千t)

鉱山名 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
Buenavista銅鉱山(注1) 175.0 163.8 136.9 15.6 0.0 20.7 172.4
La Caridad銅鉱山(注2) 147.0 69.3 98.5 118.9 125.7 117.8 113.7
Milpillas銅鉱山 (注3) 6.4 14.3 20.3 21.8 26.4
Piedras Verdes銅鉱山 (注4) 24.4 19.1 7.9 11.0 22.8
María銅鉱山 非公表 非公表 非公表 非公表 非公表 8.8 11.5
Alamo Dorado金銀鉱山 0.2 0.1 0.7
その他(注5) 49.1 40.8 5.1 9.3 7.0 0.0 1.4
合計 371.1 273.9 271.3 177.2 160.8 180.2 348.9

(出典)INEGI、各社HP


(注1) 2007年~2010年9月、ストライキにより生産中止。フル操業再開は2011年6月。2011年8月にCananea鉱山から名称変更。
(注2) 2006年及び2007年、ストライキにより生産量減少。
(注3) 2006年6月に生産を開始しているが、この年の生産量は非公表。
(注4) 2006年10月に試験操業を開始しているが、この年の生産量は非公開。
(注5) INEGIの鉱石生産量の確報値は、鉱業法に基づく経済省への報告義務により補正されており、正確性は高いと言われているが、統計誤差はこの欄に含まれる。

(2) Buenavista(ブエナビスタ)(旧Cananea(カナネア))銅鉱山
 ソノラ州北部Cananea郡に位置し、メキシコ最大の2,698万t(注6)の銅の埋蔵量を持つGrupo Mexico社所有の露天掘の銅鉱山で、SX-EWも加え18万t/年の生産能力を有しているが、2007年7月から2011年6月までのストライキの影響で生産量が減少していた(注7)。2010年9月からはSX-EWの操業を開始し、2011年6月からフル操業に回復している。なお、ストライキ終了後にCananea鉱山から名称変更をしている。
 同社は、2011年8月に発表した2015年までの5か年計画において、銅(注8)の生産能力18万8,000 t/年の新規選鉱プラントを増設し、選鉱プラントによる生産量を現在の12万5,000 t/年から31万3,000 t/年に増産するとともに、8万2,000 t/年の新規SX-EWプラントを増設し、銅カソードの生産能力を5万5,000 t/年から13万7,000 t/年に増産するとしている。これにより、同鉱山の銅の生産能力は18万t/年から45万t/年となり、世界的にも生産量の大きな銅鉱山になる見通しである。2012年の投資計画によれば、2014年上半期に新規SX-EWプラントを稼働させ、2015年上半期に新規選鉱プラントを稼働させるとしている。
 この他、モリブデンの生産も開始し、2013年Q1から2,000 t/年、2015年上期からは4,600 t/年の生産能力とする計画である。
 2012年10月現在、これらの拡張計画は予定通り進められている。


(注6) Grupo Mexico社及びPeñoles社の鉱山の埋蔵量については、いずれも2011年末現在。
(注7) 詳細は、平成22年11月18日付けカレント・トピックス(10-56号)「Cananea銅鉱山のストライキ終焉と今後の見通し」を参照されたい。
(注8) 銅精鉱中の銅含有量。

(3) La Caridad(ラ・カリダ)銅鉱山
 ソノラ州北部Nacozári郡に位置し、メキシコ第2の997万tの銅の埋蔵量を持つGrupo Mexico社所有の露天掘の銅鉱山である。2011年6月に同鉱山Quintanaオペレーション部長から聞いたところでは、マインライフは約50年であるが、銅の品位が低下傾向にあり、SX-EW用の鉱石の比重が高くなっており、選鉱プラント用の高品位硫化鉱が不足してきているため、同鉱山から約10 km離れたPilares銅プロジェクトの開発を急いでいるとのことであった。2007年からの生産量の推移を見ても、SX-EWによる生産量が増加する一方で、銅精鉱の生産量は2010年以降減少傾向にある。同社の2012年投資計画によると、2013年Q3にPilares銅プロジェクトから4万t/年の銅の生産を開始することを予定している。
 しかしながら、Grupo Mexico社及び州政府関係者によると、2012年10月現在、エヒード(土地を保有する農業共同体)との交渉が難航しており、同プロジェクトの生産開始には見通しが立っていない。
 なお、銅の品位が低下傾向にある一方で、モリブデンの品位は上昇傾向にあり、モリブデンの生産量の増加が見込まれている(注9)


(注9) 詳細は、平成23年7月22日付けカレント・トピックス(11-38号)「メキシコのモリブデン生産及び輸出入の動向について」を参照されたい。

(4) Milpillas(ミルピージャス)銅鉱山
 ソノラ州北部Santa Cruz郡(Cananea郡と米国境の間)に位置し、Peñoles社が保有するSX-EWによる露天掘の銅鉱山である。2011年4月に同鉱山Ortiz所長から聴取したところ、以下のとおりである。
 同社は貴金属部門に強いが、多角化を図るために米企業より購入し、2006年8月から操業を開始した。当初の開発計画では、粗鉱処理量9,000 t/日、銅の平均品位2.1%以上、銅カソード生産量5万6,000 t/年、マインライフ12年となっていた。しかし、実際の銅の品位は1.4%程度であったこと、坑内湧水等により採鉱が困難であったことから、当初計画を見直し、粗鉱処理量8,000 t/日、銅カソードの生産展望として、2011年2万2,000 t、2012年~2015年2万4,000 t/年、2016年~2023年3万1,000~3万2,000 t/年と目標を下方修正した。また、鉱山周辺で探鉱を行っており、新たに3つの鉱床を発見しているので、今後、これらの鉱床の更なる探鉱及び評価を行う予定である。
 なお、2011年の同鉱山の生産量は、2万6,400 tであり、当初計画の5万6,000 tには遠く及ばないものの、修正目標の2万2,000 tを上回る結果となっている。銅の埋蔵量は、42万5、000 t。

(5) Piedras Verdes(ピエドラス・ベルデス)銅鉱山
 ソノラ州南部Alamos郡に位置し、米Frontera Copper社が2006年に操業を開始したSX-EWの露天掘の銅鉱山である。2006年10月に商業生産を開始し、2007年に2万4,400 tの銅カソードの生産を記録したものの、2008年からCananea鉱山のストライキに起因する硫酸不足による影響を受けたのに加え、2008年後半からの銅価の下落もあり、2009年半ばに休山した。その後、メキシコの投資会社Grupo Invecture社(Azteca銀行を有するSalinasグループ傘下)に買収されている。2010年2月に操業再開後の経済性分析が公表され、2010年半ばから操業を再開している。2012年10月現在、銅の平均品位は0.40%で粗鉱処理量66.6千t/日となっている。当初は酸化鉱であったが、硫化鉱が増えてきていることから2013年2月の稼働を目指し選鉱プラントを建設中である。現在のピット2 km×500 mによるマインライフは残り7年であるが、その延長を目指し鉱化作用の延長線上でボーリング探査を実施している。

写真1.Piedras Verdes銅鉱山(2012年10月)

写真1.Piedras Verdes銅鉱山(2012年10月)

(6) María(マリア)銅鉱山
 ソノラ州北部Cananea郡のBuenavista鉱山の北直近に位置するFrisco社所有の露天掘の銅鉱山である。同社は、世界的な大富豪Carlos Slim氏の財閥Grupo Carsoの鉱山企業で、2011年1月にメキシコ株式市場に上場した。なお、同社の鉱山の生産量等が公表されるようになったのは、株式公開後であり、2009年までの生産量は非公表である。

(7) その他の銅プロジェクト
 前述のとおり、La Caridad銅鉱山の衛星鉱山として期待されているGrupo Mexico社のPilares銅プロジェクトはエヒードとの交渉に難航しており、生産開始の目途がたっていない。
 加Mercator社のEl Pilar銅プロジェクトは当初2012年中の生産開始を予定していたが、資金調達に目途がたっていない。同社は、資金調達に目途がたてば、15か月で操業が可能としている。また、加Zaruma Resoure社のLuz de Cobre銅プロジェクトも資金調達に目途がたっていない。これらのプロジェクトの進展は、今後の銅価の推移によるところが大きいものと思われる。

(8) Empalme銅製・精錬所
 Grupo Mexico社は、Cananea銅鉱山のストライキ終了後の2010年8月、2015年までにCananea(現Buenavista)銅鉱山の生産量を18万t(精鉱によるものは12.5万t)から45万t(精鉱によるものは31.3万t)に拡張するとともに、Guaimas港に面した鉄道の終点Empalmeに粗銅生産能力35万t、銅地金生産能力33万tの銅の製・精錬所を建設する計画を発表した(注10)
 しかしながら、Grupo Mexico社関係者、州政府関係者等によると、2012年10月現在、Empalme銅製・精錬所で精鉱を製・精錬する予定のバハ・カリフォルニア州のEl Arco銅プロジェクト(2016年から銅精鉱15.8万tの生産を予定)がエヒードとの交渉の難航により目途がたっていないことから、Grupo Mexico社は、同製・精錬所のための400 haの用地の買収は終了しているものの、建設の開始は見送っている状況にある(建設の延期は未公表。)。
 Grupo Mexico社は、同社の鉱山による銅精鉱は原則として同社の製・精錬所で処理する方針であるが、Buenavista銅鉱山の生産量回復により、既にLa Caridad銅製・精錬所及び米・アリゾナ州の同社の製・精錬所ではまかなえなくなっており、Guimas港から年間6万tの銅精鉱をアジア向けに輸出しているとのことである。さらに、今後、Buenavista銅鉱山の銅精鉱の生産量が伸びる予定であり、製・精錬所の処理量が現状のままであることから、銅精鉱のアジア向け輸出が今後更に増加する見通しとなっている。なお、Grupo Mexico社以外の銅精鉱を生産するメキシコの企業は、製・精錬所を保有していないことから、これまでも銅精鉱を輸出している。


(注10) 詳細は、平成24年10月18日付けカレント・トピックス(12-63号)「メキシコ合衆国のベースメタルの製・精錬事業の現状と今後の見通し」を参照されたい。

表3.メキシコの銅精鉱の輸出量の推移(参考)

(単位:グロス千t)

  2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
輸出量 計 57 199 242 374 440
うち中国向け 25 162 228 341 387

(出典)INEGI

4.ソノラ州のその他の金属鉱石の生産量の現状及び今後の見通し

(1) 金
 ソノラ州の金の生産量は、2005年から2011年で276%増と急増している。特に2010年以降に生産を開始した鉱山が多く、今後も生産量の増加が見込まれる(図3、表4)。

(出典)INEGI

図3.ソノラ州及びメキシコ全体の金の生産量の推移(単位:t)

表4.ソノラ州の主な鉱山毎の金の生産量の推移

(単位:t)

鉱山名(企業名) 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
La Herradura金銀鉱山
(Fresnillo56、米Newmont44)
6.12 6.81 8.09 9.05 10.20
Soledad-Dipolos金銀鉱山
(Fresnillo56、米Newmont44)
3.41 4.93
Mulatos金鉱山(加Alamos Gold) 3.30 4.70 5.55 4.85 4.76
San Francisco金鉱山(加Timmins Gold) 1.95 2.30
El Chanate金鉱山(加AuRico Gold) 1.54
Santa Elena金銀鉱山(加Silver Crest) 0.07 0.84
Cerro Colorado金鉱山(加Goldgroup) 0.78 0.62
Alamo Dorado金銀鉱山(加Pan American) 0.41 0.52 0.57 0.52 0.52
Buenavista銅鉱山(Grupo Mexico) 0.22 0.02 0.00 0.00 0.48
Lluvia de Oro金鉱山(加MWM Mining) 0.29
La Caridad銅鉱山(Grupo Mexico) 0.13 0.14 0.14 0.17 0.21
その他(注11) 2.05 2.44 3.21 1.74 0.84
合計 12.23 14.63 17.56 22.54 27.56

(出典)INEGI、各社HP


(注11) INEGIの鉱石生産量の確報値は、鉱業法に基づく経済省への報告義務により補正されており、正確性は高いと言われているが、統計誤差はこの欄に含まれる。

(2) 銀
 ソノラ州の銀の生産は、加Pan American社のAlamo Dorado金・銀鉱山が銀を主体として生産する他は、銅鉱山や金を主体とする金・銀鉱山の副産物として生産されている。同州の東部の西シエラマドレ山脈のチワワ州との国境付近には銀の賦存が確認されているが、アクセスの問題等から開発が進んでいない。
 Alamo Dorado金・銀鉱山は、マインライフが残り8年となっているが、鉱脈を露天掘により採掘しており、深くなるに従い露天採掘の条件が悪くなるので、今後、大きな生産量の増加は期待できない。ソノラ州には銀を主体とする進展したプロジェクトは存在せず、ソノラ州の今後の銀の生産量は、Pan American社が同鉱山の周辺で進めている鉱化作用の延長線でのボーリング探査の結果によるところが大きい。

表5.ソノラ州の主な鉱山毎の銀の生産量の推移

(単位:t)

鉱山名(企業名) 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
Alamo Dorado金銀鉱山(加Pan American) 118.5 190.2 165.5 209.1 164.8
La Caridad銅鉱山(Grupo Mexico) 58.9 55.9 63.8 57.4 55.2
Buenavista銅鉱山(Grupo Mexico) 24.8 2.5 0.0 0.0 45.5
La Herradura金銀鉱山
(Fresnillo56、米Newmont44)
7.8 6.9 9.5 11.9 12.7
Santa Elena金銀鉱山(加Silver Crest) 1.7 11.7
Soledad-Dipolos金銀鉱山
(Fresnillo56、米Newmont44)
1.6 2.9
その他(注12) 15.5 32.5 39.6 43.6 36.4
合計 225.5 288.0 278.4 325.3 329.2

(出典)INEGI、各社HP


(注12) INEGIの鉱石生産量の確報値は、鉱業法に基づく経済省への報告義務により補正されており、正確性は高いと言われているが、統計誤差はこの欄に含まれる。

(3) 亜鉛
 現在、ソノラ州では、鉛、亜鉛の生産はゼロである。プロジェクトとしては、Grupo Mexico社のBuenavista亜鉛プロジェクトが唯一知られている。このプロジェクトは、Buenavista銅鉱山の敷地内に位置しており、用地買収の必要がないため、Grupo Mexico社は、今後の亜鉛の価格を見ながら、開発の判断を行うものと思われる。

(4) モリブデン
 現在、La Caridad銅鉱山の副産物として、モリブデンが生産されているが、前述のとおり、同鉱山のモリブデンの品位が上昇傾向にあること及び2013年からBuenavista銅鉱山においてモリブデンの生産を開始することから、今後のモリブデンの生産量の増加が見込まれる。なお、加Mercator社のEl Crestonモリブデン・銅プロジェクトは、同社が先行させているEl Pilar銅プロジェクトが資金調達の目途がたっていない状況にあるため、銅、モリブデンの市況が好転しない限り開発は困難なものと思われる。

(5) 鉄
 世界鉄鋼大手のArcelor Mittal社がEl Volcán鉄鉱山及びObregón選鉱プラントを保有している(同社はこの他コリマ州のPeña Colada鉄鉱山及びミチョアカン州のLas Truchas鉄鉱山・選鉱プラントを保有している。)。
 2012年10月に同社関係者から聴取したところ、以下のとおり。
El Volcán鉄鉱山は、2008年から生産を開始しており、2007年末の評価では、埋蔵量25.6百万t、平均品位 鉄53.96%、二酸化ケイ素 11.29%、硫黄 1.37%、リン 0.79%であった。粗鉱は、鉱山で破砕、磁力選鉱により規定の粒径にした後、ダンプで68 km離れたオブレゴン市にある選鉱プラントに運ばれる。選鉱プラントにおいては、破砕、磁力選鉱、浮遊選鉱を経て、鉄54%、二酸化ケイ素7.5%、硫黄2.5%、リン1.2%の鉱石を、鉄67.5%、二酸化ケイ素0.11%以下、硫黄0.15%以下、リン0.11%以下の鉄精鉱とする。この精鉱は、ガイマス港まで鉄道で運び、ミチョアカン州のラサロ・カルデナス港にある製鉄所に運ばれている。
 同鉱山のマインライフは、残り6年であるが、同社は同鉱山の周辺で同鉱山に代わり得る鉄鉱床の探査を進めている。

写真2.Obregón選鉱プラント(2012年10月)

写真2.Obregón選鉱プラント(2012年10月)

表6.ソノラ州の鉄鉱石の生産量の推移

(単位:t)

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
0 854 61,962 1,153,392 972,780

(出典)INEGI

5.ガイマス(Guimas)港

 2011年の貨物取扱量ではメキシコ第5位、太平洋側では、コリマ州マサトラン港、ミチョアカン州ラサロ・カルデナス港に次ぐ第3位である。Arcelor Mittal社の鉄精鉱及びGrupo Mexico社の銅精鉱を取り扱っている。後者は、現在、5,000 t/月でアジアに輸出している。鉄精鉱、銅精鉱の取扱能力は、それぞれ10万t/日、3万t/日である。

写真3.ガイマス港に入港する鉱石運搬船

写真3.ガイマス港に入港する鉱石運搬船
図4.ソノラ州の鉱山、鉱業プロジェクト及び製・精錬所位置図

(出典:SGM、各社HP)

図4.ソノラ州の鉱山、鉱業プロジェクト及び製・精錬所位置図

おわりに

 2012年10月のカレント・トピックス「メキシコ合衆国のベースメタルの製・精錬事業の現状と今後の見通し」(CT12-63号)において、Grupo Mexico社が2015年にEmpalme製・精錬所を建設する予定と記したが、今回、関係者から同製・精錬所の建設が遅れる見通しであること、それに伴い、Grupo Mexico社は銅精鉱のアジア向け輸出を増加させる見通しであるとの情報を得た。
 メキシコ事務所では、今後とも管轄国の鉱業関係者から情報を得て、積極的に情報発信していくこととしたい。

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