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報告書&レポート

2012年12月6日 ロンドン事務所 小嶋吉広
2012年71号

国際非鉄研究会参加報告(3)2012年秋季国際ニッケル研究会(INSG)参加報告-2013年も供給過剰が継続-

写真 会合の様子

写真 会合の様子

 国際ニッケル研究会(INSG)は、国際非鉄3研究会の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2番目に古い歴史を持つ研究会であり、1990年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、16の国・地域が加盟しており、事務局はポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。
 2012年10月8日~10日、リスボンにてINSGの秋季定期会合が開催された。本会合には、INSG加盟国や産業団体、企業関係者の総勢約60名が参加した。以下、本稿では本会合の概要について報告する。
 なお、講演資料はINSGのホームページに掲載されている。
 http://www.insg.org/presentations.aspx

1. 2012年見込みと2013年予測

1-1. ニッケル鉱石生産量
 2012年のニッケル鉱石生産は、Barro AltoプロジェクトやOnca-Pumaプロジェクト等の新規大型プロジェクトが生産開始を迎えたことで生産は順調に拡大し、対前年比10.0%増の2,011.1千tが見込まれている。2013年は、中国等新興国での景気減速により需要の軟化が予想され、また、2012年より開始されたインドネシアでの鉱石輸出規制の影響が出始めると考えられることから、同5.2%増の2,114.7千tと生産拡大のペースがやや鈍化すると予想されている。
 2013年の予測生産量を国別に見ると、2010年まではロシアが鉱石生産量の1位であったが、近年、中国のニッケル銑鉄(NPI)生産拡大を受ける形でインドネシアとフィリピンの生産拡大が顕著となっている。インドネシアの2013年生産量は330.0千tであり、鉱石輸出禁止の影響が顕在化するとの予想から2012年と同水準になっている。第2位のフィリピンは310千t(対前年比6.9%増)と予測され、インドネシアに肉迫する勢いである。第3位のロシアは285.0千tであり、近年、生産が横ばいとなっている。以下、4位カナダの210.0千t(同2.4%増)、5位豪州の211.0千t(同5.8%減)となっている。
 またAmbatovyプロジェクトが2012年に操業開始を迎えることから、マダガスカルの2013年のニッケル鉱石生産量は20千t(対前年比233%増)と見込まれている。

1-2. ニッケル地金生産量
 2012年の世界のニッケル地金生産量は、2009年から続く生産拡大傾向を引き継ぐ形で、対前年比5.7%増の1,687.3千tと見込まれる。
 2013年も生産量拡大の勢いは継続すると見込まれ、対前年比5.5%増の1,779.5千tを予測している。
 2013年の予測生産量を国別に見ると、中国が2010年以来世界第1位の座を維持してきているが、生産量は頭打ちとなってきており、予測値では430.0千t(対前年比1.2%増)となっている。2位のロシアも2009年以降生産量は横ばいとなっており、2013年の予測生産量は265.0千t(同2.3%増)となっている。以下、日本172.5千t(同2.4%増)、豪州131.5千t(同2.8%増)が続いている。

1-3. ニッケル地金消費量
 世界のニッケル地金消費量は、中国でのステンレス生産が2012年Q1まで堅調に推移したことから2012年は対前年比3.6%増の1,644.5千tとなる見込みである。2012年は、中国での景気減速懸念によりステンレス鋼生産がやや鈍るもののインド等他の新興国の下支えにより、同3.8%増の1,707.4千tが予想されている。
 2013年の予測消費量を国別に見ると、第1位の中国は世界全体の44%を占める765.0千t(対前年比4.8%増)となっている。第2位の日本は対前年比0.3%増の145.5千t、第3位の米国は対前年比5.9%増の144.0千tとなっている。なお上記予測は、今後の世界経済の動向如何によっては修正もありうるとINSG事務局はコメントしている。

表1.ニッケルの鉱石・地金生産及び地金消費量

(単位:千t)

区分 鉱石生産量 地金生産量
2011年実績値 2012年見込み 2013年予測 2011年実績値 2012年見込み 2013年予測
  世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア
欧州 359.4 19.7% 363.2 18.1% 377.7 17.9% 521.7 32.7% 521.9 30.9% 529.0 29.7%
アフリカ 78.0 4.3% 82.0 4.1% 101.0 4.8% 36.0 2.3% 39.5 2.3% 56.5 3.2%
米州 437.9 24.0% 465.0 23.1% 490.0 23.2% 285.1 17.9% 322.0 19.1% 342.0 19.2%
アジア 609.8 33.4% 712.0 35.4% 740.0 35.0% 603.4 37.8% 631.0 37.4% 650.5 36.6%
※(内、中国) 89.8 4.9% 90.0 4.5% 90.0 4.3% 410.0 25.7% 425.0 25.2% 430.0 24.2%
オセアニア 343.0 18.8% 388.9 19.3% 406.0 19.2% 150.7 9.4% 172.9 10.2% 201.5 11.3%
世界計 1,828.1   2,011.1   2114.7   1,596.9   1,687.3   1779.5  

区分 地金消費量
2011年実績値 2012年見込み 2013年予測
  世界におけるシェア   世界におけるシェア   世界におけるシェア
欧州 365.5 23.0% 366.9 22.3% 374.9 22.0%
アフリカ 23.9 1.5% 25.6 1.6% 27.2 1.6%
米州 166.3 10.5% 170.7 10.4% 180.3 10.6%
アジア 1,028.9 64.8% 1,078.5 65.6% 1122.2 65.7%
※(内、中国) 680.0 42.8% 730.0 44.4% 765.0 44.8%
オセアニア 2.8 0.2% 2.8 0.2% 2.8 0.2%
世界計 1,587.4   1,644.5   1707.4  

(出典:INSG会議資料から作成)

1-4. ニッケル需給バランス
 2010年は世界経済の回復を受け、中国等でのステンレス鋼の生産増加により需要超過となった。2011年はほぼ需給が均衡したが、2012年は複数の新規鉱山が生産開始を迎えたことから、需要の伸び以上に供給が増加し、供給超過となる見込みである(表2参照)。2013年もこの傾向は続き、72.1千tの供給超過が見込まれている。

表2.世界のニッケル需給バランス

(単位:千t)

区分 2011年実績 (参考)2012年見込み 2012年見込み
(今回発表)
2013年予測
(今回発表)
増減
2013/12
2012年4月時点
ニッケル供給合計(①) 1,596.9 1,693.9 1,687.3 1,779.5 5.5%
ニッケル需要合計(②) 1,587.4 1,640.0 1,644.5 1,707.4 3.8%
需給バランス 9.5 53.9 42.8 72.1  

(出典:INSG 会議資料から作成)

1-5. LMEニッケル価格と在庫
 2012年は年初来の価格下落傾向が継続し、5月14日に17,000 US$/tの大台を割り込んだ。17,000 US$/tを割り込んだのは、2009年12月以来である。その後も市場において好材料が乏しい中、17,000 US$/tの天井を窺いながら16,000 US$/t台を推移した。6月に入り、他のベースメタル価格はスペイン国債格下げを受けて全面安の展開となるが、ニッケルは底堅い動きをし、7月3日には17,105 US$/tと17,000 US$/t台を回復することとなった。その後、米国の追加金融緩和策の実施見送りが報道されると、一転してニッケル市場は弱含みの展開となり、7月12日には16,000 US$/tを割り込み、15,840 US$/tにまで値を落とした。その後も15,000 US$/t台後半の小幅な値動きとなり、8月16日には15,190 US$/tにまで値を下げ、2009年7月以来の安値となった。8月後半からは米国経済の景気回復に支えられ、急速に価格は回復し、9月14日には前日比7%の高の17,955 US$/tにまで持ち直した。9月上旬には中国政府が1,500億US$規模のインフラ整備を発表したことで、中国の景気減速懸念は薄らぎ、9月21日には4月以来の18,000 US$/t台を回復した。
 この期間の在庫量は若干の振幅はあるが総じて見れば上昇傾向にあり、7月中旬までは100千t台で推移した後は、急速に在庫が積み上がり、9月には120千t台となっている。
 10月2日には18,840 US$/tまで上がり、19,000 US$/tに届くかと思われたが、インドの景気減速懸念が広まり、価格は再び下降局面に入った。10月末時点では16,000 US$/t前後で推移している。

図1 ニッケル価格推移

(出典:LMEホームページ)

図1 ニッケル価格推移

2. 各委員会における主な講演

2-1. 第45回統計委員会(2012年10月10日9:00~11:45)
 ① 講演『ニッケル市場の見通し』(Macquarie Commodities Research社、Jim Lennon氏)

 最近のニッケル市場は供給過剰により2009年以来の低い価格水準となっているが、足許1~2ヶ月は徐々に回復傾向が見られる(筆者注:本プレゼンがなされた10月以降価格は再度下げ基調となり、2012年11月9日時点では15,960 US$/t)。ニッケル市場に影響を及ぼすファクターとしては、中国の需給動向や新規プロジェクトの生産開始の進捗状況、中国以外の国のニッケル需要の動向がある。特に中国国内の需要に左右されるところが大きく、減速が懸念される中国の景気の動向は注視が必要である。また、供給サイドにおいては、インドネシアでの鉱石輸出の制限措置により、NPIの生産にどのような影響を与えるのか、特にRKEF(Rotary Kiln Electric Furnace)方式採用によるコスト削減の効果が、鉱石への関税賦課によってどの程度競争力阻害に作用するか分析する必要がある。中国の在庫量の増減も市場予測の不確実性を増加させる一因となっている。
 欧米と日本のPMI(製造業購買担当者景気指数)を見ると、2011年7月以降急速に悪化しているのが分かる。米国の9月のPMIは51.5と辛うじて50を上回ったが、欧州と日本は既に50を下回っており、景気後退の様相を呈している。
 中国のPMIも2012年8月は49.2となり、景気後退が懸念される。また、中国の設備投資の伸び率はこれまで2桁台で拡大してきたが、2011~2015年は6.7%、2016~2020年は4.4%に減速すると予想される。この影響で、中国のステンレス生産も成長鈍化が予想され、今後4~5年は7%前後の成長率に落ち着いていくものと見込まれる。このため、ニッケルの需要拡大もこれまでのような勢いは期待できない。
 サプライサイドに目を転じると、2000年~2011年までの間でニッケル需要は517千t増加したが、増加量のうち74%は中国によるものである。インドネシアとフィリピンからのラテライトニッケルが中国の需要増加分を補う主な供給ソースとなった(図2参照)。豪州、ロシア、ニューカレドニア、カナダといった従来の主なニッケル生産国の生産量はここ5年間ほとんど増加していない。他方、インドネシアとフィリピンの直近5年間の生産量は急激に拡大している。

図2 従来の生産国とインドネシア・フィリピンの生産量推移

(出典:講演資料)

図2 従来の生産国とインドネシア・フィリピンの生産量推移

 2013年までに予定されている新規・拡張プロジェクによる生産量増加は2013年では200千tが予定されている。しかしながら、Onca PumaプロジェクトやBarro Altoプロジェクトでは電気炉に不具合が見つかったため、生産量が下方修正された。VNC(Goro)でもプラントに問題が発生し、フル生産への移行が6ヶ月遅延する見込みである。また既存のプロジェクトにおいても、Loma de Niquelプロジェクト(ベネズエラ)でフォース・マジュールが発動され、16千tの生産障害が発生する見込みであり、生産量の増加が予定通り進捗するかどうかは予断を許さない状況と言える。

表3 主な新規、生産拡張プロジェクト(中国以外)

プロジェクト 方式 生産能力
(千t)
生産開始 2010年
生産量
2011年
生産量
2012年
生産量
(見込み)
2013年
生産量
(見込み)
VNC (Goro) HPAL 60 2011年Q1 0.2 7.7 5.5 19
Onca Puma FeNi 53 0 7 6 11
Ravensthorpe HPAL 39 2011年H2 0 5.7 33.9 38
Kevista Concentrate 10 2012年Q2 0 0 2.5 8.5
Koniambo FeNi 60 2012年H2 0 0 0 13
Talvivaara Bioleach 30 2009年Q4 10.4 16.1 17 28.5
Barro Alto FeNi 40 2011年Q1 0 6.3 22 30.5
Ambatovy HPAL 60 2012年Q2 0 0 5 22
Taganito HPAL 30 2013年H2 0 0 0 1
Ramu HPAL 32 2012年H1 0 0 4 18
Tagaung Taung FeNi 23 2011年H2 0 0 1 14
10.6 42.8 96.9 203.5

(出典:講演資料を基にJOGMEC作成)

 中国のNPI生産は、当初は鉄やグレードの低い200シリーズのニッケル生産向けの高炉で行われてきたが、最近では電気炉やコストの低いRKEF方式が用いられるようになってきており、ニッケル純分比率も増加してきている。また、RKEF方式では、電力使用量が従来の方式に比べ3~5割削減されているため、今後、中国国内の電力価格が上昇し、人民元が増価したとしても国際競争力は確保できると見込まれている。
 2014年にインドネシアでの鉱石輸出禁止措置が予定されているが、それにより鉱石価格が若干上昇することはあったとしても、実際に中国への鉱石輸出が停止するとは現状考えにくい。ただ一方で、鉱石輸出禁止措置を受けて2015年以降、中国企業はNPI生産プラントをインドネシア国内に建設すると見込まれる。

2-2. 第37回産業諮問委員会(2012年10月9日13:45~15:15)
 ① 講演『Running up that hill-長期的視点から見たニッケルの供給リスク-』(Wood Mackenzie、Sean Mulshaw氏)

 ニッケルの需給ギャップを長期的に見ると、世界の年平均経済成長率を4.4%と仮定した場合、2020年以降に供給不足が深刻化し、2024年では500千tの供給不足に陥る可能性がある。これは、ニューカレドニアのKoniamboプロジェクトの年産量の約10倍に相当する量である。このため新規鉱山の開発が不可欠であるが、現状の価格水準では新規鉱山開発への投資は進まないであろう。
 2020年以降に顕在化する供給不足を補うことのできる、開発の可能性のあるプロジェクトとしては、インドネシアのWeda BayプロジェクトやTsingshanプロジェクト等があるが、これらの開発可能性のあるプロジェクトによる生産量の増加は不足分の約4割(200千t)を補うに過ぎない。Mindoro(フィリピン)やFenix(グアテマラ)、Jacare(ブラジル)等のF/S段階のプロジェクトの早期生産開始、あるいはNPIの生産増を期待するしかない状況である。
 鉱山開発(探鉱から生産開始まで)に要する期間は一般的に8~10年と言われているが、最近は期間の長期化の傾向が見られる。GoroやAmbatovy、Koniambo、Onca Puma等のプロジェクトでは、生産開始が当初の予定より2~4年遅れた。また、生産開始後に生産を拡大する過程においても、特にHPAL方式のプロジェクトでは技術的なトラブル等により生産拡大が思うように進まないケースも多い。HPALの場合、操業が進むに従いラテライトの品位低下が発生するため、CAPEXと生産コストの上昇を引き起こしている。AmbatovyプロジェクトのCAPEXは当初、約25億US$と見込まれていたが、その後、年率約10%でCAPEXが増大し、現在のところ50億US$となった。今後もこの勢いでCAPEXが増大した場合、2019年には最大80億US$にまでCAPEXが増大する可能性もある。Goroも同様であり、2001年時点では15億US$と見込まれていたが、2010年では50億US$にまで増大した。
 このように、ニッケル鉱山の開発は、鉱山会社にとってリスクの高いビジネスになってきており、将来の供給不安を解消するためには、価格が上向くことが必要と言える。

 ② 講演『ラテライトニッケル鉱石の取引と製錬』(Asian Organization for Laterite-Nickel-Ore(APOL)、Grant Wu氏)

 APOLは業界団体であり、会員会社への情報提供が主な業務である。現在、12か国から200社が会員企業として登録されている。
 現在、中国で採用されているRKEF方式では、130 mのロータリーキルンにより乾燥を行い、33~76 MVAの電気炉でNPIが生産されている。RKEF方式で生産されるNPIのニッケル純分は9~15%と比較的純分が高いのが特徴である。高炉を用いた生産は引き続き行われており、生産されるNPIのニッケル純分は5~8%である。2010年の中国のNPI生産量は、対前年比80%増の204.7千tであり、2011年は282.4千tにまで生産が拡大している。生産量のうち、ニッケル純分が10%以上のNPI生産が急速にシェアを拡大し、2011年ではNPI生産量の65%を占めている。
 NPIの原料となるラテライト鉱石の水分は、通常35%以上である。うち、付着水分(free moisture)が25~40%、吸着水(fixed water)が8~10%となっている。水分が35%を超える場合、IMOの規定では荷主は運搬を拒否することができるため、現在開発中のプロジェクトでは付着水分を下げる試みがなされている。
 ラテライト鉱石の運搬コストはt当たり30 US$~45 US$となっており、内訳としては、バージ船への積み込み費用5 US$、船舶での運搬費15 US$、港での陸揚げ費6 US$、港から製錬所への運搬費5~20 US$である。

2-3. 第30回環境経済委員会(2012年10月9日8:45~10:15)
 ① 講演『ニッケルの人体及び環境影響に関する調査の取組』(NiPERA、Dr. Adriana Oller氏)

 NiPERAはニッケルの適切な使用をサポートするための機関であり、Nickel Instituteの研究部門を担っている。ニッケル業界では現在、REACHにおいてニッケル含有物が「類推方式(Read-across)」の適用により毒性物質に分類されてしまうことを懸念している。「類推方式」は人体及び環境影響についてのデータが少ない物質について適用される方式であり、物質の特性が似ており、かつデータが比較的整っている他の物質の影響度を便宜的に用いる方法である。NiPERAはニッケル金属と10種のニッケル含有物に係る情報をREACH事務局に提出し、現在のところニッケル化合物は比較的人体影響の少ない物質と認識されている。しかしながら、ニッケル化合物の毒性分類を行うにはさらなる分析が必要であるため、NiPERAはECHA(欧州化学品庁)やEU加盟国と協力し、ニッケル含有物に適した「類推方式」の研究を進めているところである。

② 講演『Socio-economic Study of Impact of EU Nickel Compounds Classification on APEC Economies』(Metalytics、Mr. John Barkas氏)

 Metalytics社はコンサルタント企業であり、Nickel Instituteからの委託により標記調査を行っている。調査の趣旨は、2009年にEUのREACH規則において138種のニッケル含有物がカテゴリー 1Aに分類されたが、このことが、APECの加盟国においてどのような影響を及ぼすのかを調べることである。カテゴリー1Aに分類された138種のニッケル含有物のうちEU内で取引されているのはわずか21種しかなく、また、分類検討の過程において社会経済的影響への配慮が十分でないことから、ニッケル生産国や消費国はREACHによる分類に懸念を示した。
 APECは世界の2/3のニッケル鉱石を生産し、ニッケルの最大の需要者であることから、まずは2009年のEUの決定に対し懸念を表明し、EUとの対話を要求した。2010年7月に、ロシアがAPEC加盟国への影響について調査を行うことを提案し、2011年1月に調査が開始された。調査結果は2012年6月にサンクトペテルブルグで開催されたAPEC会合で公表された。
 調査においては3つのシナリオが想定された。ケースA1は、138種のニッケル含有物に対する規制はEU域内のみ適用。ケースA2は、規制はAPEC加盟国を含め世界的に適用されるが、ニッケル含有物に対する代替が中程度になされるケースを想定。そしてケースBは、規制はAPEC加盟国を含め世界的に適用され、さらにニッケルとニッケル合金に対する強い偏見が支配的になるケースである。
 分析の結果、2025年時点でのAPEC加盟国のGDPにおける経済的損失額としては、ケースA1では31億US$、ケースA2では240億US$、ケースBでは713億US$の損失が発生すると予測している。この結果を踏まえ、2012年に開催されたAPEC鉱山大臣会合では、分類に当たっては産業界との対話が不可欠であり、引き起こされる結果を十分想定した上で分類・決定がなされることが必要であるとのジョイントステートメントが発表された。

3. INSG各委員会のプロジェクト進捗報告

 産業アナリストからの講演発表の後、各委員会に関する活動内容報告、作業プログラムの動向と進行状況についての報告がなされた。特記事項のみ以下に報告する。

3-1. 統計委員会
 ① 現在進行中のプロジェクト
  ・ 2012年に「World Directory of Nickel Producing Facilities」を発行予定
  ・ ステンレスの情報をシェアするためISSF(国際ステンレスフォーラム)とのパートナーシップ強化

 ② 新規プロジェクト
  ・ 中国でのニッケル需要動向に係る情報収集(Chief Statisticianが中国を訪問予定)
  ・ 中国におけるニッケル銑鉄の生産状況に係る調査

3-2. 産業諮問委員会
 特になし。

3-3. 経済環境委員会
 ① 現在進行中のプロジェクト
  ・ ニッケルの環境や人体に対する影響の調査
  ・ リサイクルに関する調査

 ② 新規プロジェクト
  ・ アジアでのラテライトニッケルに係る調査(検討中)

4. 2013年春季会合の日程

 次回の国際ニッケル研究会は、2013年4月22日より23日までポルトガル・リスボンにて開催予定である。

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