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報告書&レポート

2013年2月7日 リマ事務所 岨中真洋
2013年06号

ペルー鉱業を巡る最近の争議の動向-オンブズマンレポート第104号(2012年10月)より-

 ペルーの公的仲裁機関であるオンブズマン(Defensoria del Pueblo)※1は、ペルー国内の社会争議の動向を常時モニタリングし、毎月、調査報告書を公開している。

 2012年10月の争議レポートにより報告されたペルー国内の争議状況、特に鉱業関連の争議の実情や特徴を以下にまとめる。

1. ペルー国内の争議の状況

 オンブズマンレポート第104号(2012年10月号)によると、2012年10月末時点で確認された全国の争議件数は233件であり、その内167件(72%)が顕在状態※2 、66件(28%)が潜在状態※3 であった。これら争議の内、新たに発生した争議が6件、潜在状態から再び顕在化した争議が3件、一方、顕在状態から潜在化した争議が4件であった。また、対話・協議中の争議が86件、解決された争議が4件と報告されている。

 なお、争議とは別に、一時的に発生したデモ、ストライキ等の集団抗議行動(デモ、ストライキ等)が71件確認されている。

 最近1年間の争議件数の推移を見ると、争議件数は2012年6月にかけて増加し、それ以降減少傾向にあるものの、依然として230件程度の争議が存在している(図1)。

図1.全争議件数の最近1年間の推移

図1.全争議件数の最近1年間の推移

 争議要因をタイプ別にみると、全争議233件のうち149件(64%)が社会・環境争議となっており、次に郡・区行政を取り巻く争議が20件(9%)、中央政府行政を取り巻く争議が14件(6%)、労働争議が13件(6%)の順となっている(図2)。

 なお、2011年7月との比較では、中央政府行政に関する争議が22件から14件へと減少した一方、社会・環境争議が118件から149件に(26%)増加し、更にコミュニティ間の争議が新たに8件発生する等、全争議件数では214件から233件へ19件(9%)増加した。

図2.全争議のタイプ別比率

図2.全争議のタイプ別比率

 また、争議の発生状況を県別にみると、争議件数の多い順にAncash県(32件)、Puno 県(20件)、Apurimac県(18件)、Ayacucho県(14件)、Piura県(14件)Cajamarca県(13件)などとなっている(図3)。

図3.県別争議件数

注:( )は顕在化している争議件数

図3.県別争議件数

 一方、顕在争議の件数の推移を見ると、この1年間で154件から167件へと1割程度増加し、減少傾向は見えない(図4)。タイプ別では社会環境争議が123件で全体の74%を占めている(図5)。

図4.顕在争議件数の最近1年間の推移

図4.顕在争議件数の最近1年間の推移
図5.顕在争議(計167件)のタイプ別比率

図5.顕在争議(計167件)のタイプ別比率

※ 1: オンブズマン(Defensoria del Pueblo)

1993年に憲法に基づき設立された独立・自立的監査官並びに機関であり、憲法が国民や共同体に対して保障する権利の保護、行政の監査、市民への支援サービスの提供等を行う。オンブズマンの代表は国会の3分の2以上の賛成をもって選出され、任期は5年である。オンブズマンは、係争案件に関して、憲法によって定められた完全に中立的な立場から、民事的・刑事的責任を負うことなく意見や推奨を提案することができる。ただし、裁判官や判事、その他の権威機関の代理となるものではなく、判決や刑罰、罰金等を定める役割は負わない。

※ 2、※ 3: 顕在状態と潜在状態

オンブズマンでは、争議全体を顕在状態、潜在状態に分けて把握している。この内、顕在状態は、争議の当事者あるいは第三者による抗議行動が公の場で発生したケースを示す。一方、潜在状態は、一見隠れた状態又は静止状態にある争議であり、軋轢や対立が存在しているが、表立った抗議行動には至っていない場合や、抗議行動が収まった後、一定の年月が経過しているケースを言う。

2. 鉱業関連争議の動向

 顕在状態にある争議167件の内、約52%に相当する87件が鉱業関連争議であり、ペルー国内に顕在する争議の約半数が鉱業を取り巻くものである。更に、鉱業関連の争議をタイプ別に分類すると、社会・環境争議に属するものが84件(97%)と支配的である(図6)。

図6.顕在争議に占める鉱業関連争議の割合とタイプ別内訳

図6.顕在争議に占める鉱業関連争議の割合とタイプ別内訳

 一方、鉱業関連争議を原因別に分類したものを図7に示す。原因が重複しているものもあるため、総件数は114件となっている。

 これら114件の内訳を見ると、環境汚染や鉱害が争議の原因となっているケースが56件と最多で、鉱山側の地元自治体やコミュニティ等に対する約束不履行を原因とするケースが15件、近年特に深刻化している違法金採掘問題が争議の発端となっているケースが13件、地元支援や利益還元(インフラ整備要求やカノン税還元)及び鉱業による被害(水銀や鉛による健康被害、道路破壊)に対する補償要求の問題が12件、水資源問題(鉱山における水使用による水不足への懸念)が8件、土地問題(土地や鉱区の所有権争い、境界線問題)を原因とするケースが6件、雇用問題が原因のケースが4件であった。

図7.鉱業関連争議の原因

図7.鉱業関連争議の原因

 表1に鉱業関連争議の個別の事例を県別、タイプ別に整理したものを示す。

 Ancash県における鉱業争議件数は20件で全国最多となっており、Puno県(11件)、Apurimac県(11件)、Cajamarca県(8件)と続いている。

表1.鉱業関連の顕在争議64件の詳細

県名
(争議件数)
タイプ 一次的当事者 内容
Amazonas(1) 社会・環境(1) Afrodita社、違法鉱業、Cenepa先住民コミュニティ、その他市民団体 事前協議が行われなかったことや河川汚染を理由に、Condor山脈における正規及び非正規鉱業活動に反対。
Ancash(20) 県政府行政(1) 県政府、Cajacay農民コミュニティ、Antamina社 Cajacay農民コミュニティが、県政府及びAntamina社に対して2000年の取り決めに基づく灌漑用ダム建設を要求。
社会・環境(19) Dynacor Exploration社、Malaga社Pampas村長、環境保護団体 Pampas村と環境保護団体は、Dynacor Exploration社及びMalaga社によるLa Plata川とHuaura川の鉛、ヒ素、油汚染を指摘。
Antamina社、Ancash村落自治体連合(AMUCEP)、Nyrstar社、Catac農民組合、Ancash県農業連合(FADA) Ancash村落自治体連合(AMUCEP)は、約束不履行と環境汚染を理由に、Huari郡に対してAntamina社及びNyrstar社に対する抗議行動実施を呼びかけ。
Antamina社、San Antonio de Chipta村民、Chavez組合、Juprog社会環境開発委員会 Chipta村は、Antamina鉱山直接影響下にあるとし、土地所有権を巡る問題や同社による約束の不履行、さらに鉛汚染による健康被害の存在を主張。政府による保健/環境対策を要求。
Exploandina社、Virgen del Rosario Quillo村民、インフォーマル鉱業従事者 Virgen del Rosario Quillo村民は、Exploandina社の鉱区においてインフォーマルな鉱業開発・採掘が行われていると主張。
Antamina社、Huarmey開発対話・合意形成委員会、漁業者連盟、零細船主組合 漁業者連盟、Huarmey港の零細船首ら、また同地域住民らは、Antamina社による支援の約束不履行を主張。
Centauro社、Pativilca、Santa、Fortaleza川流域住民代表、その他多数の住民団体 Pativilca、Santa、Fortaleza川流域住民らは、Centauro社の探鉱活動による河川流域及び、河川の水源であるConococha湖の環境汚染を懸念。
Barrick社、Cuncashca村、ESMAC村立公社 Cuncashca村は、Barrick社に対し旧道閉鎖に対する代償や、約束履行を要求。
Antamina社、Ayash Pichiu村、Santa Cruz Pichiu村、Ayash開発連合(ASODESO) Ayash川流域住民は、Antamina社に対し、廃さい流入による川の汚染に対する健康・環境を主張、鉱山による対応を要求。
Antamina社、Racrachaca村、Racrachaca農民コミュニティ 操業影響下地域にあるとして鉱山からの支援を受けるための合意書締結を要求。
Antamina社、Ango Raju農民コミュニティ、Carhuayoc村 操業影響下地域にあるとして鉱山からの支援・補償を要求。
Antamina社、San Antonio de Juprog村 Antamina社による約束不履行と環境汚染の可能性を主張。
Brrick Misquichilca社、Atupa村・Antauran村灌漑利用者組合 Atupa村、Antauran村は、Brrick Misquichilca社の鉱業活動によりYarcok水源が枯渇したとして水源の返還を要求。同社はEIAの時点から水源は枯渇していた旨記載してあることを主張。
Brrick Misquichilca社、Mareniyoc村排水サービス管理組合(JASS) Mareniyoc村排水サービス管理組合(JASS)は、Shulcan水源が枯渇した時点からBrrick Misquichilca社と水資源利用を巡る問題を抱えていると主張。また同社は組合への水提供を約束したが次第に規制が加えられ、現在は雨水のみしか利用できない状況にあると主張。
San Luis社、Casma利権保護団体、Anash県農業連合 Yautan、Pariacoto、Casmaの住民や農民は、San Luis社の鉱業活動による農業への悪影響を危惧。また影響下地域として考慮されず、情報共有ワークショップの対象外だったと主張。
Antamina社、Tupac Amaru農民コミュニティ、San Marcos村 Tupac Amaru農民コミュニティは、Antamina鉱山へのサプライヤーであるAcoinsa社タンクローリーからの石油漏洩とConococha支流の汚染責任の究明を要求。
Fortaleza社鉱区、Macate村長、Quilhay、Huanca住民ら Macate村Quilhay集落Huancaの住民らは、EIA未実施のインフォーマル鉱業活動の実施を告発。
Antamina社、Santa Rosa村、Cajacay農民コミュニティ、Cajacay村長 Cajacay農民コミュニティは、Antamina社による鉱物漏えいの責任を追及。
Toma la Mano社、Yanacancha、Buenos Aires等の自治体代表、住民等 Yanacancha集落の住民らがToma la Mano社による約束不履行を主張。また労働者への待遇改善を要求。
California社、Tumpa農民コミュニティ Tumpa農民コミュニティは、環境基準違反等を理由にCalifornia社の鉱業活動に反対。
Apurimac(11) 社会・環境(11) 県農業保護委員会、農民コミュニティ利権団体、灌漑利用者組合、鉱山省地方局等 Andahuaylas郡内の様々な組織が、伝統的な農牧への影響を恐れて鉱業活動に反対。
Southern Copper社、Tiaparo村 Southern Peru Copper社による環境汚染への危惧と同社への情報公開要請。
Suyamarca社(Areas社、Hochschild Miningグループ子会社)、Iscahuaca農民コミュニティ Iscahuaca農民コミュニティは、Suyamarca社による合意事項の不履行や河川・土壌汚染、不当な対応、不適切な廃さい堆積場利用、村の石切り場の無許可利用を理由に同社を拒否。
Chalhuahuacho農民連盟、Chalhuahuacho区利益戦線、Xstrata社 Chalhuahuacho農民連盟等が、Xstrata社による17項目の約束の不履行を主張。また同社による地域雇用を要求。
Southern Copper社、Tapayrihua村 村の土地の利用に関する合意がないことや、極端な水利用を理由に同社の鉱業活動に反対。
Apurimac県小規模零細鉱業従事者連盟代表、Andahuaylas郡等の零細鉱業従事者連盟 インフォーマル鉱業従事者らの様々な組織が、小規模零細鉱業の生産・売買・輸送を規制する県条例の廃止を要求。
Anabi社、周辺の多数の自治体、集落 Anabi社のUtunsaプロジェクトは探鉱段階であるにもかかわらず、開発を行っており周辺河川を廃さいで汚染していると告発されている。
Xstrata社、Calhuahuaho周辺地域住民、Choaquere農民コミュニティ等 Las Bambasプロジェクト周辺住民は、同社と水資源庁(ANA)の透明性の不足と、水資源の減少を危惧。
Xstrata社、Huancuire農民コミュニティ、零細鉱業従事者組合等 Huancuire農民コミュニティはXstrata社による環境への影響を主張し、約束の履行を要求。また零細鉱業従事者による一部鉱区の利用を要求。
First Quantum社、Tambulla集落、エネルギー鉱山省 Tambulla集落は、昨年までオペレーターはAres社だったが、地元への協議や情報提供なく権益がFirst Quantem社に譲渡されたと主張。さらにFirst Quentem社へ支援を要求。
Tocctopata農民コミュニティ、Cotahucho等 Pacucha村の一部が、環境汚染を理由に、Tocctopata農民コミュニティによる零細鉱業実施に反対。
Arequipa(1) 社会・環境(1) Arequipa県零細鉱業従事者連盟、閣僚評議会、エネルギー鉱山省、環境省 インフォーマル鉱業従事者らが、零細・インフォーマル鉱業規制法令に反対し、合法化プロセス途上における操業許可を要求。
Arequipa/Ayacucho(1) 社会・環境(1) San Pedro de Lucanas農民コミュニティ、Acari村、Caraveli郡 San Pedro de Lucanas農民コミュニティは、コミュニティ内における事前承認を受けていない鉱業活動の取締りを政府に要請。
Ayacucho(5) 社会・環境(5) Pomacocha農民コミュニティ、Santiago03社、違法鉱業従事者 Pomacocha農民コミュニティは、Santiago03社鉱区内におけるインフォーマル鉱業従事者の活動が環境汚染を引き起こしていると主張。
Santa Lucia農民コミュニティ、小規模零細鉱業連盟、Virgen Santa Lucia請負業者 Santa Lucia農民コミュニティ、小規模零細鉱業連盟、Virgen Santa Lucia請負業者らが、Casco de Oroと呼ばれる鉱業エリアを巡って争議。
Rio Plata社、Chuschi農民コミュニティ、農民コミュニティ連盟、農業連合、労働総連等 Chuschi村住民らは、水源の汚染を危惧してRio Plata社の鉱業活動に反対。
Catalina Huanca社、Taca農民コミュニティ Taca農民コミュニティは、社会・労働・環境関連の約束不履行を理由に、土地利用契約の再交渉を要求。
Barrick Misquichilca社、Umasi集落住民、Umasi農民コミュニティ Umasi農民コミュニティ等は、Tajada湖への影響を理由に、Barrick Misquichilca社に付与された鉱区に反対。
Cajamarca(8) 社会・環境(8) Yanacocha社、La Encañada村民、村役場 La Encañada村や村民らは、Yanacocha社に対して、約束の履行と、村の実施するプロジェクトへの融資に関する社会的合意書への署名を要求。
Yanacocha社、Celendin郡住民 Celendin郡住民らは、環境汚染及び4つの湖の消失を理由にMinas Congaプロジェクトへ反対。
Chuquibamba、Condebamba村、インフォーマル鉱業 環境被害を理由とするインフォーマル鉱業への反対。
Gold Fields La Cima社、Hualgayoc村 Hualgayoc村はGold Fields La Cima社に対して一連の約束履行を要求。
Coimolache社-Tantahuatayプロジェクト、El Tingo農民コミュニティ El Tingo農民コミュニティ住民らは、Coimolache社に対する地元住民の雇用と土地売買の正当性の証明を要求。
La Zanja社Pulan区民 環境汚染を理由にLa Zanjaプロジェクトに反対。
Yanacocha社、Baños del Inca区、水資源政策委員会、条例特別委員会 Baños del Inca区と区民は、Yanacocha社に対し、Quinuario川、Grande川、Mashcon川流域を保護する条例の遵守と、これら地域における探鉱の停止を要求。
Aguila Dorada社、San Jose de Lourdes先住民コミュニティ San Jose de Lourdes先住民コミュニティは、環境汚染を理由にAguila Dorada社の活動を拒否。
Cusco(5) 社会・環境(5) Camanti村、インフォーマル鉱業従事者、合法鉱業従事者、金採掘業者連合、Camanti村民、エネルギー鉱山省、環境省 Camanti村やQuincemilの住民らは、環境汚染や林業・農業への打撃を理由に、政府に対してインフォーマル鉱業の取締りを要求。
Anabi社、Pumallacta農民コミュニティ Pumallacta農民コミュニティは、約束不履行や環境への影響を理由にAnabi社の撤退を要求。
Hatun Rumi社、Vicho村住民 Vicho村住民らは、Quispe氏所有の非金属鉱区Hatun Rumiで同氏が実施する採石活動が環境汚染を引き起こしているとして抗議。
Xstrata Tintaya社、Espinar農民連合、Espinar郡役所 Minera Tintaya社に対し、Espinar郡開発への貢献拡大と、Huanipampa廃さい堆積場の移転を要求。またAntapaccayプロジェクト、Tintaya拡張による環境被害への懸念を主張。
Nazareno Rey社、Lutto Kututo村、エネルギー鉱山省 Nazareno Rey社によるインフォーマル鉱業の中止をめぐる争議、農業・遺跡地域における全ての鉱業活動の拒否。
Huancavelica(2) 社会・環境(2) Caudalosa社、Huachocolpa村 Huachocolpa村及びLircay村住民らは、Caudalosa社に対し、鉱害対策及びOpamayo川汚染対策の実施を要求。
Buenaventura社、Ocoyo農民コミュニティ Ocoyo農民コミュニティは、Buenaventura社に対し、環境汚染の代償としての経済・社会・環境支援に関する約束の履行を要求。
Huanuco(1) 社会・環境(1) Raura社、Lauricocha郡内の複数の農民コミュニティ Lauricocha郡の農民コミュニティは、血中の鉛被害に対する補償を要求し、Lauricocha川の水源の迂回を主張。
Junin(5) 中央政府(1) Doe Run Peru社、エネルギー鉱山省、鉱山労働者、Yauli郡、市民団体、La Oroya精錬労働者組合等 La Oroya精錬所近隣住民、市民団体、自治体は、精錬所オペレーターに対し、環境・健康の保全を目的とした環境適正化計画(PAMA)の履行と、労働者の雇用継続を要求。
社会・環境(4) San Ignacio de Morococha社、中央アマゾンコミュニティ本部、Chinango社等 中央アマゾンコミュニティ本部は、San Ignacio de Morococha社や、Chinango電力会社による河川汚染に関し、国による仲介を要求。
Azulcocha Mining社、San Jose de Quero村、Concecion郡、Chupaca郡役場、県協議会等 San Jose de Quero村や周辺住民ら、またChupaca郡役場は、Cunas川への影響を危惧しAzulcocha Mining社の探鉱活動に反対。
Pukar Mining社、Paraiso Perdido社、San Jose de Apata農民コミュニティ San Jose de Apata農民コミュニティは、環境や伝統産業、また児童の健康等への影響を危惧しPukar Mining社及びParaiso Perdido社の活動に反対。
Chinalco Peru社、Morococha村 Toromochoプロジェクトの実施に必要なMorococha居住地移転に伴い、住民側は可能な限り最良の条件を要求。
Junin/Pasco(1) 社会・環境(1) Admimistradora Cerro社、Aurex社、ElBrocal社、Activos Mineros社、Pan American Silver社、Chungar社、SN Power社、Electroandes社、Electroperu社、Junin県政府、郡役場、San Pedro de Huari他多数の農民コミュニティ、環境省 Chinchaicocha周辺の複数の農民コミュニティは、鉱業や炭化水素事業を実施する企業に対し、Chinchaicocha湖の浄化と、環境破壊に対する補償を要求。
La Libertad(3) 社会・環境(3) Barrick Misquichilca社、Santiago de Chuco村、Quiruvilca村、農業団体等 Barrick Misquichilca社Laguans Surプロジェクトの周辺住民らは、水源として考えられる5つの湖や農業・牧畜業への影響を危惧し、同社の撤退を要求。
Sayapullo社、San Manuel社、Milpo社、Sayapullo鉱業活動環境委員会、エネルギー鉱山省 Sayapullo住民及び市民団体は、環境被害を理由に同地区における鉱区の取消と、Sayapullo社の残した鉱害の対策を要求。
Corporacion del Centro社、Coygobamba、Shiracmaca、El Toro農民コミュニティ Coygobamba、Shiracmaca、El Toro等の農民コミュニティは、合法・違法・インフォーマル鉱業活動による社会・環境問題に対する政府介入を要請。
Lambayeque(1) 社会・環境(1) Candente Copper社、Cañaris村、Cañaris農民コミュニティ Cañaris村やCañaris農民コミュニティは、環境汚染の可能性や約束不履行を理由にCandente Copper社のCañariaco銅プロジェクトに反対。
Lima(1) 社会・環境(1) Minera San Juan社、San Mateo de Huanchor住民、San Mateo環境委員会 住民らは、崩落の危険があるCoricancha鉱山廃さい堆積場の危険性を訴えると共に水資源供給プロジェクトを提案。
Madre de Dios(1) 社会・環境(1) 零細鉱業従事者連盟、環境省、エネルギー鉱山省、防衛省、内務省 Madre de Dios県内における違法鉱業根絶対策への反対。違法鉱業従事者らは緊急政令の廃止、採掘船解体の中止、同エリアからの軍隊の即時撤退を要求。
Moquegua(1) 社会・環境(1) Southern Copper社、Moquegua県政府、その他自治体、灌漑利用者組合等 近隣農民らが、Cuajone鉱山操業をはじめとする開発を原因とする長年の環境汚染への補償を要求。
Moquegua/Tacna(1) 境界線抗争(1) Moquegua県、Tacna県政府。問題発生地域の自治体 鉱物資源の存在を理由とした、Moquegua県、Tacna県の境界線争議。
Pasco(1) 社会・環境(1) Minera Cerro社、内閣官房、Pasco県政府、郡役場、Chaupimarca村、Yanacancha村 Chaupimarca村民らは、環境や住民の健康への影響を理由に、Minera Cerro社によるピット拡張に反対。
Piura(2) 社会・環境(2) Piura県政府、Lomas、Tambogrande、Suyo、Paimas村役場、農民、零細鉱業連盟等  Piura県政府以下自治体が、環境汚染を理由にインフォーマル鉱業に反対。
Huancabamba農民連合、Majaz社、地元ラジオ局、地元教会、鉱山省 Sechura村民らが、American Potash社の実施するかん水の採取に反対。同社のダムによる水の停滞、既存灌漑・排水設備の破壊を懸念。
Puno(11) 県政府行政(1) La Rinconada、Cerro Luna、Tapiche等の集落住民、Puno県政府(エネルギー鉱山省地方局) 金採掘を行うインフォーマル鉱業従事者らが、県政府に対し、道路、水、保健、教育等の公共サービスの充実を要求。県政府の管轄外の要求も含まれる。
社会・環境(10) Minsur社、Antaura村・Ajonyani村利益保護委員会、Queracucho農民コミュニティ等 Antaura村利益保護委員会は、Minsur社に対して、同社の活動を原因とする損害の補償と協定書への署名を要求。
CIEMSA La Poderosa社、Melgar郡多セクター委員会、Orurillo村、環境汚染対策委員会 Orurillo村住民らはCIEMSA La Poderosa社の鉱業活動を住民総会で拒否。
Sillustani社、Condoraque農民コミュニティ Condoraque農民コミュニティが、Sillustani社の廃さいによる水資源の汚染を告発。
Aruntani社、Jilatamarca農民コミュニティ Jilatamarca農民コミュニティは、Surani湖の環境汚染を理由に、Aruntani社の活動停止を要求。
Arasi社、Ocuviri村、Ocuviri農民コミュニティ Ocuviri村民らは、廃さい流入によりChallapalca川の鱒が死亡しているとして、Arasi社に対し約束の履行を要求。
Ayllu社、Capazo村、Rosario農民コミュニティ等 Ayllu社が複数河川を汚染しているとして、周辺の複数コミュニティが同社の探鉱活動に反対。
Patagonia Minerals社、Tambillo農民コミュニティ、Pomota等複数区、 Tambillo農民コミュニティやPomota村等が、観光地及び自然保護区である同地域における、Patagonia Mierals社への鉱区申請に反対。
Cojata村、鉱山省、INGEMMET、外務省、Peluchuco村(ボリビア)、SERGEOTECMIN(ボリビア) Cojata村のアルパカ牧畜業者らが、汚染を理由にSuches川におけるインフォーマル鉱業に反対。また、ボリビア人のインフォーマル鉱業従事者の存在を告発。
Crucero村利益保護団体、Ananea鉱業地区、Crucero村環境監視委員会、地域住民 自治体及び住民らが、Ramis川流域の汚染を理由に、Ananea村、Cuyo村、Crucero村等におけるインフォーマル鉱業活動に反対。
Bear Creek社、Huacullani村、Quelluyo村、農民コミュニティ等 Chucuito内の複数の村が、環境汚染と共有地の減少を理由に、Santa Ana社の鉱業活動に反対。またPuno南部における鉱業活動全般を拒否。
Tacna(4) 社会・環境(4) Southern Copper社、灌漑利用組合、Tacna県政府以下自治体等 Tacna県灌漑利用組合の農民らは、農業用水の減少を理由に、Southern Copper社のToquepala選鉱プラント及びQuebrada Honda廃さい堆積場拡張に反対
SRML Norteamericana XXI社、Ticaco村、Ticaco灌漑委員会 Ticaco農民コミュニティは、農業との共存不可能であり健康や水質被害をもたらしうる鉱業活動に反対。
Minsur社、Tacna環境保護団体、下水サービス局 Tacna環境保護団体その他市民団体は、水資源への汚染を理由にMinsur社の鉱業開発に反対。
Candarave郡、Southern Copper社、市民団体 Candarave郡その他市民団体らは、Toquepara鉱山やCuajone鉱山での水資源利用に反対。

3. 鉱業関連争議の様相

(1) Minas Conga金プロジェクトに対する抗議行動

 Minas Conga金プロジェクト(Cajamarca県)は、鉱業関連争議のうち、特に大規模かつ象徴的な事例として挙げられる。

 Minas Conga金プロジェクトは、Yanacocha社によって実施され、2010年末にEIAが承認された。しかし、政権交代後の2011年10月、本プロジェクトによる水資源の汚染と枯渇を危惧した地元地域住民らによる反対姿勢が明確になった。2011年11月には、Giesecke前環境大臣が、既に承認済みのEIAは「プロジェクトにより枯渇する可能性がある4つの湖の経済的、環境的価値について十分検討したとはいえない」との見解を示した一方、Humala大統領がプロジェクト支持を表明するなど、政権発足後まもない政府内の方針や意見調整がまとまらない印象も与えた。

 これに対してCajamarca県のSantos知事は、大統領によるMinas Conga金プロジェクトの支持表明が取り消されない限り無期限デモを開始すると発表、抗議行動が開始された。

 Humala大統領は「水(資源)か、金(開発)かではなく、両方を取る」との方針を示したが、これに対して「水にYesを、金にNoを(Agua Sí, Oro No)」のスローガンを掲げた反対運動は、地域住民だけでなく労働総連や教職員組合等の様々な政治団体や組織を巻き込みながら全国的規模で展開された。

 その後抗議行動は収束する気配を見せず、2011年12月にはCajamarca県内の一部に対して非常事態宣言が発令され、さらに内閣総辞職やエネルギー鉱山大臣、環境大臣の交代を招いた。

 新内閣のValdez首相によるSantos知事との交渉も難航する中、2012年2月末、政府によって海外から招聘された3名の専門家が、Minas Conga 金プロジェクトEIAの水資源に関する記述内容の評価を開始した。これら専門家は現地視察も含めた調査を行い、2012年4月には様々な改善勧告を盛り込んだ報告書を提出した。そして2012年6月、Yanacocha社は専門家らの指摘に基づき、まずは貯水池の建設を行った後にプロジェクトを実施するとの考えを示すなど、譲歩の姿勢を示した。

 一定の譲歩を見せた鉱山企業に対し、Cajamarca県側はあくまでもプロジェクト中止を要求する姿勢を崩さなかった。抗議運動は激しさを増し死者5名が発生する事態となり、その後聖職者を仲介とした対話が行われたが、2012年7月末から8月にかけて、Yanacocha社側はプロジェクトの実質的な中断を発表することとなった。

 現在、Yanacocha社は貯水池建設作業のみを実施している。

(2) Xstrataに対する抗議行動

 Cusco県Espinar郡では2012年5月20日よりXstrata Tintaya社による河川汚染に対する抗議行動が開始され、警官隊との衝突により死者2名が発生した。さらに非常事態が宣言され、Espinar郡の知事が煽動の容疑で当局により身柄を拘束されるなど緊張感が高まった。

 Espinar郡知事はその後政府や企業側との対話に応じ、2012年6月21日にはCusco県知事やEspinar郡知事とエネルギー鉱山省、環境省、保健省の大臣らや企業代表者による対話が開始された。この対話協議会は現在まで定期的に開催されており、水質汚染を始めとする環境モニタリングや協定内容の見直し作業等が行われている。

(3) Cañariaco銅プロジェクトに対する抗議行動

 Candente Copper社の実施するCañariaco銅プロジェクトでは、2012年7月8日にボーリングの実施に必要な地表権の取得に関し、住民の意思を問う住民総会が約400名の出席の上法律の規定に基づいて実施され、同社の活動受け入れが決定された。

 しかし2012年9月末、プロジェクト実施地域の住民らによる住民投票が別途実施された結果、投票者約1,900名のうち、9割以上がプロジェクトに反対票を投じる結果となった。反対派は、プロジェクトが水源に位置していることや、同地で盛んなコーヒー栽培をはじめとする農業への影響を主な反対理由に挙げている。この結果について、同プロジェクトが位置するLambayeque県政府は、住民投票の結果に法的拘束力はないものの、大多数が反対した事実を考慮すべきだとの見解を示した。

 2012年12月には、住民による地質技師らの一時的な身柄拘束事件も発生したが、同月のうちに関係者による協議会が開催されるなど、合意形成が模索されている。

 上記の争議は、いずれも環境や水資源への影響を原因としており、(1) Minas Conga金プロジェクトに対する抗議行動 (2) Xstrataに対する抗議行動 では、非常事態宣言や犠牲者の発生等も共通している。しかし対立の長期化・泥沼化の上、一時中止に追い込まれたMinas Conga金プロジェクトに対し、Xstrataへの抗議行動では1か月という短期間で合意形成の枠組みが出来ている。

 Minas Conga金プロジェクトの場合、まず当事者であるCajamarca県とYanacocha社が、過去にも争議を抱えたことのある因縁の間柄であり、抗議行動の先頭に立ったSantos知事やNGO団体のArana氏は、筋金入りの鉱業反対論者である。政府や企業側が一定の譲歩を示したのに対し、反対派は全ての条件を拒絶し、唯一の目的はプロジェクト中止であるとの姿勢を貫いた。

 一方で、新政権開始後まもない政府は、対応に一貫性が見られず手をこまねいていた印象が否めなかった。その間にも反対運動は、指導者の人気や政治的なつながり等により、労働総連・教職員組合等の社会団体や国中の世論を巻き込みながら、1件の鉱業プロジェクトの枠組みを超えた争議へと発展した印象がある。Santos知事は、Humala大統領に対する直接的な批判を行うなど、その言動に対しては、政治的な都合でいたずらに反対運動を長期化させているのではないか等の批判も多く寄せられた。長期にわたる抗議行動と非常事態宣言で、地元経済は大きく疲弊した。

 一方Cusco県Espinar郡の場合、Espinar郡知事は早期に政府や企業との対話に応じ、非常事態の解除を実現したことで、地元経済への影響を回避した。上述のとおり、順調に対話交渉は続いている模様である。

 このように、争議は直接的な原因はもとより、鉱業プロジェクトの規模、地域性や社会的・政治的な特徴、発生時期等が複雑に絡み合って、ケースごとに異なる様相を見せる。

 農業や牧畜等が盛んな地域では水や土壌の汚染、水資源不足を懸念して全面的な反対運動が展開される傾向があるのに対し、伝統的な鉱業地帯では、環境・健康被害への懸念と鉱業存続の要求が入り混じる。鉱業に関わる争議の行方には県知事や自治体指導者が鉱業推進派か反対派か、これら政治家の票田である住民の意向はどうか、環境保護団体の活動が活発か等をはじめ、政府や企業の対応の的確さや迅速性も当然関わってくる。

 Minas Conga金プロジェクトの事例は、元来鉱業に対する不信感が強い土地柄で争議が長期化した場合、反鉱業運動が政治色の強いものとなり、手のほどこしようがない事態へと発展しうることを示している。繰り返し言われていることだが、争議は防止・予防が第一であり、発生した場合にはできるだけ早期に適切な対処を行うことが最も重要である。

 そのような意味で、今後(3)のCañariaco銅プロジェクトがどのような経過をたどるのか、注視していく必要がある。

(4) インフォーマル鉱業問題

 深刻なレベルの環境汚染をもたらすインフォーマル鉱業※4や違法鉱業※5も、全国で争議の要因となっているものが見受けられる。政府はインフォーマル鉱業の合法化活動や、違法鉱業の取締りを実施しており、その成果に対して一定の評価はあるものの、前回カレントトピックスで取り上げたオンブズマンレポート(2011年47号)と比較しても、その数は8件から13件へと増加している。

 インフォーマル鉱業や違法鉱業に関しては、金価格の高騰も背景に、特に密林地帯のMadre de Dios県では大規模な違法操業が行われており、政府は軍隊の投入による違法鉱業根絶を試みている。しかし違法鉱業を収入源とする労働者からの反発は根強く、取締りや規制に対する抗議行動が展開されるなど、根絶作業は苦戦を強いられている。


※ 4、※ 5:インフォーマル鉱業と違法鉱業

政府は最高政令(006-2012-EM)でと「インフォーマル鉱業」と「違法鉱業」を定義している。政令によると「インフォーマル鉱業」は、鉱業活動の可能な地域において、必要な法的手続きを踏まずに行われる場合である。「違法鉱業」とは、鉱業活動の禁止地域において、行政・技術・社会・環境法規や手続きを守らず行われる鉱業活動である。

政府は、今後インフォーマル鉱業の合法化を促進支援する一方で、違法鉱業に対しては譲歩の余地なく規制取締りの対象とする方針を示している。

(5) その他の鉱業関連争議

 表1.に記載の争議とは別に、2012年10月時点で発生していた一過性の集団抗議行動(デモ、ストライキ等)は71件で、このうち鉱業関連ではYanacocha社のMinas Conga金プロジェクトからの重機撤収を求める抗議デモが1件、Shougan Hierro Peru社の労働者による賃上げ要求ストライキ2件の合計3件が確認された。

 オンブズマンが表1.に記載の争議とは別に動向を注視すべき案件として挙げる11件のうち、鉱業関連争議は以下の5件となっている。

① Huancavelica県:Queroco村は、Buenaventura社に対して、同社のAntapite鉱山が河川を汚染しているとして対応を要求

② Ayacucho県:San Pedro de Lucanas農民コミュニティは、環境汚染を懸念し、Peregrine社による開発開始に反対

③ Puno県:Santa Lucia村の村長らは、Ciemsa社に対して、同村内で操業開始したTacazaプロジェクトに関する協定書の締結を要求

④ Puno県:Partia村はCiemsa社に対して、El Cofre鉱山及び、Guadalupeプロジェクトに関する協定書の内容変更及び締結を要求

⑤ Cajamarca県:探鉱プロジェクトを実施中のHaquillas社に対して周辺住民が立ち退き要求

4. オンブズマンの取り組み

 オンブズマンでは、社会争議の解決や沈静化に向けて①防止・監査活動、②仲介、③法的擁護の3種類のアプローチを行っており、2012年10月の実績は下表のとおりである。

 なお、オンブズマンによる活動件数は161件であり、このうち防止・監査活動が142件で大部分を占めた。

表2.オンブズマンの取り組み実績

防止・監査活動 情報アクセス 2
立ち入り監査 2
当事者への意見聴取/会議・セミナー開催 136
法廷助言 0
注意喚起 2
仲介 仲裁/仲介 4
対話協議の設置 13
ハイレベル争議解決委員会の設置 0
法的擁護 逮捕者の拘束状況調査 1
警察、検査局、司法への監査 1
合 計   161

5. おわりに

 ここ1年間、争議件数は増加傾向にあり、また、2011年に引き続き、鉱業関連争議が大規模な抗議デモに発展し、最終的にプロジェクトの中断や延期となるケースが発生した。

 政府は、社会争議が鉱業投資に歯止めをかける最大のマイナス要因であるとの認識は有しており、長年にわたり対策を行っているとしているが、その効果は即座に表れてはこない。以前は、争議が道路封鎖等を伴う抗議デモに発展した際、政府が一時的な合意を取り付けてデモ行動を解除させ、問題解決としていた。しかし2012年のMinas Conga金プロジェクトや2011年のSanta Ana銀・鉛・亜鉛プロジェクト、Tia Maria銅プロジェクトの例に見られるように、抗議デモは目的(プロジェクト中止等)が達成されるまで長期間展開され、犠牲者が発生するケースが目立つようになっており、小手先ではない根本的な対策が必要とされている。

 2011年7月にスタートしたHumala政権は、鉱業や投資促進の方針は維持しつつも、争議の根本にある社会的不平等の解消の必要性を全面に打ち出し、鉱業界に対して社会対策への一層の経済的貢献を求めるという考え方のもと、鉱業ロイヤルティ改正や鉱業特別税、鉱業特別賦課金等の導入を実現した。

 さらに政権開始後まもない2011年8月、国会は先住民地域における鉱業や石油・天然ガス開発に関し、先住民の人々の意向を汲むことを目的とした「先住民事前協議法」(Ley de Consulta Previa)を可決、さらに2012年4月には同法の施行細則が公布された。本法に関しては、投資への歯止めを懸念する声がある一方で争議の解決に貢献するとの期待も寄せられている。なお、ペルー最初の事前協議は、2013年1月にLoreto県において、石油プロジェクトに関して実施される予定となっており、現在その準備が進められている。

 一方、ここ1年で争議をはじめとする鉱業への介入が目立つようになってきたのが環境省の存在である。既に記したように、鉱業争議の大半が環境への影響(或いはその危惧)を原因としている。さらには、鉱業を促進する立場にあるエネルギー鉱山省が審査・承認したEIAに対する不信感が争議を招くケース(Minas Conga金プロジェクト等)、遅々として進まない鉱害対策など、鉱業政策や制度そのものに対する疑念も出てきた。

 このような中、環境省は2012年8月、鉱業をはじめ、現在各産業を管轄する省庁で個別に行われている環境影響評価(EIA)の審査・承認業務を一括して担う、「持続的投資環境認証サービス局」(SENACE)の設立法案を国会に送付し、同法案は11月末に承認、12月に公布された。SENACEの本格的な業務開始後は、大規模・中規模鉱業プロジェクトのEIA審査がエネルギー鉱山省から環境省傘下のSENACEに移行する見通しとなっている。

 この他にも環境省は、環境法規違反の罰金の引き上げ等を実施しているほか、環境汚染を原因とする鉱業争議の対話の場にも積極的に関与している。このようにペルー政府は、鉱業を巡る争議解決を目指した根本的な政策を打ち出し始めている。

 事前協議法やSENACE設立等は、企業側から見れば更なる手続の増加を示しており、税率が増加したこともあいまって、鉱業投資への影響も懸念されてはいる。しかしながら、争議こそがプロジェクト中止にさえも発展しうる最大の弊害であるとして、有効な対策が待たれて久しい。これらの新たな対策は、今後機能を発揮してくると思われ、その運用と効果の動向が注目される。

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