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報告書&レポート

2013年2月21日 サンティアゴ事務所 縫部保徳
2013年08号

本格運用段階に入ったチリ共和国の閉山法~閉山法施行細則の概要~

 鉱業プロジェクトに対して閉山計画の提出や履行保証の積み立てなどを義務付けるチリ共和国の閉山法は2011年11月11日に官報に掲載され、1年後の発効とそれまでの必要な規則の策定が定められた。そして、2012年11月22日、閉山法施行細則(Reglamento de la Ley de Cierre de Faenas e Instalaciones Mineras)が官報に掲載され、閉山法はいよいよ本格運用の段階を迎えたと言える。

 粗鉱生産量10,000 t/月を超える鉱山には閉山計画の提出及び履行保証の積み立てが求められるほか、粗鉱生産量が10,000 t/月以下の鉱山及び環境影響評価システム(SEIA:Sistema Estudio Impacto Ambiente)対象の探鉱プロジェクトにも簡易手続きが求められており、同法の適用となるプロジェクトは非常に多い。

 本稿では今般発効となった閉山法施行細則の内容を紹介するとともに、閉山法運用体制に関するSERNAGEOMIN(チリ地質鉱業局)との面談結果について報告する。

1. 閉山法の目的

 2005年から制定に向けた動きが始まったチリ共和国の閉山法(Regula el Cierre de Faenas e Instalaciones、法律第20,551号)は様々な議論を経て、2011年10月28日に公布され、同年11月11日に官報に掲載された(『チリ閉山法』2012年10月に解説・仮訳をJOGMECから刊行)。

 閉山法の目的は以下にまとめられる。
  ・ 人の生命、健康、身体の保全と環境保護
  ・ 現行の環境基準に基づいた鉱山開発現場で生じうる影響の軽減
  ・ 上述の影響を軽減するために鉱山会社が操業中に行わなければならない対策の把握と経済的費用の算出
  ・ 鉱山及びその関連施設の閉鎖時に必要な技術的要請事項の明確化

 鉱業は将来の閉鎖が前提となっている数少ない産業分野であり、閉山を規制する重要性は閉山作業を鉱山開発の一環として義務付けることにある。また、鉱山会社が事前に閉山計画を立案することで、鉱山の立地する地元コミュニティが将来的な展望を得やすくなるメリットも指摘することができる。

2. 閉山法施行細則の概要

 閉山法を運用するためには、同法の規定を補う細則が必要であった。また、閉山法第60条には官報掲載の1年後とされた同法発効日よりも前に必要な細則を定めるとされていた。冒頭で述べたとおり、閉山法施行細則は2012年9月4日に公布され、同年11月22日に官報に掲載された。施行細則の目的は次のとおりである(第1条)。

・ 閉山法の定めるところに従い鉱山及びその関連施設の閉鎖に適用される規則を制定する。

・ 閉山法の履行にあたり、同法に関連して制定された他の特別規則に影響を与えることなく閉山法が定めた規制の枠組みを補完する。

・ 鉱山及びその関連施設の閉鎖手続きのための認可基準及び閉山法で定められ施行細則で規制されることが求められている事項の基準を制定する。

 以下では閉山法施行細則の概要を紹介する。

2-1. 閉山計画
 鉱山とその関連施設の閉山計画はマインライフの一部であり、鉱山操業現場の物理化学的安定性を確保できる方法で鉱山会社が操業を終了する前に実行しなくてはならない(第4条)。

 閉山計画は適切な環境基準に準じて鉱山操業現場の物理学的安定性を維持するため、当該地域で生じる影響を軽減する一連の対策と活動の包括的な実施を目的としたものである。前述の対策及び活動の実施は、法に基づいた人の生命、健康、身体の保全と環境保護のためのものでなければならない(第5条)。

 閉山計画には、閉山法及びその施行細則で要求されている技術的・経済的な内容を記載し、全ての鉱山施設に対する閉山計画を提出しなければならない。同一鉱山プロジェクトでは、閉山計画を施設毎に分割することはできない(第10条)。

2-2. 閉山法施行細則の適用範囲
 閉山法施行細則第2条に同細則が適用される会社の条件が述べられている。

a. 閉山法が発効となった日(2012年11月11日)以降に鉱山操業を開始、または再開しようとする全ての鉱山会社。該当鉱山会社は、環境基本法(Ley sobre Bases Generales del Medio Ambiente、法律第19,300号)に準じて得た環境認可(Resolución Calificación Ambiental)に沿って作成した鉱山及びその関連施設の閉山計画をSERNAGEOMINの認可を得るために提出しなければならない。

b. 閉山法及び同法暫定条項に定められた条件の下、同法の発効された時点で操業を行っていた全ての鉱山会社。

 閉山計画の承認を得るための手続きには一般申請手続き(Procedimiento de Aplicación General)と簡易手続き(Procedimiento Simplificado)の2つがある。前者は粗鉱生産量10,000 t/月を超える鉱山に適用され(第12条)、後者はそれ以下の鉱山及び探鉱活動が対象となる(第28条) (簡易手続きの対象となる探鉱活動の詳細については後述)。

2-3. 閉山計画の承認
 閉山計画は探鉱または採掘、製錬所または鉱石処理プラントの操業開始前にSERNAGEOMIN局長の承認を得なければならない(第8条)。以下には閉山計画に記載が必要な事項などについて、一般申請手続きと簡易手続きに分けて記述する。

(1) 一般申請手続き

 閉山計画は土木工学基準(nivel de ingeniería conceptual)に基づき作成しなければならず(第13条)、以下に関する記載を盛り込まねばならない(第14条)。

a .  要旨(Resumen Ejecutivo)
b .  目次(Índice)
c .  全般情報(Antecedentes Generales)
d .  環境影響調査で課された義務(Compromisos de la evaluación ambiental)
e .  鉱山施設の記載(Descripción de las Instalaciones de la Faena Minera)
f .  周辺記載(Descripción del Entorno)
g .  有効山命予測(Estimación de la Vida Útil)
h .  閉山段階のリスク評価(Evaluación de Riesgos de la Etapa de Cierre)
i .  閉山対策と作業(Medidas y Actividades de Cierre)
j .  閉山計画実施費用(Costo de la Implementación del Plan de Cierre)
k .  閉山後対策実施費用(Costo de la Implementación de las Medidas de Post Cierre)
l .  保証(Garantías)
m .  戦略情報(Información Estratégica)
n .  コミュニティへの情報提供プログラム(Programa de Difusión a la Comunidad)
o .  添付資料(Anexos)


 施行細則第17条には、露天採掘鉱山、坑内採掘鉱山、廃滓堆積場など、各鉱業施設で考慮すべき技術的対策リストが示されている。

 コミュニティへの情報提供プログラムは、コミュニティに対して閉山対策、対策実施時期及びその実施期間を周知するためのものである(第19条)。このプログラムは、最終閉鎖(Cierre Final)の場合は閉山対策実行開始の少なくとも2年前、部分閉鎖(Cierre Parcial)の場合は閉山対策実行開始1年前、一時停止(Paralización Temporal)の場合は同じく30日前に実施しなければならない(第21条)。

 閉山計画案申請時にはSERNAGEOMINが閉山法及び同法施行細則に定められている要求事項を満たしているかを検証する。閉山計画案に誤りまたは欠落があった場合、SERNAGEOMINは申請日から5日以内に修正あるいは補完を要請する。鉱山会社は、その通達日から10日以内に修正を行わなければならない。期限内に閉山計画を修正または補完しない場合は、閉山計画案は申請されなかったものと見なされる(第22条)。

 閉山計画案受理審査の後、SERNAGEOMINは技術的・経済的な評価を行う。同局は閉山計画案申請日から30日以内に説明、訂正あるいは補完を要求することができる。当該鉱山会社はその通達日から30日以内に要求された情報を提出しなければならない。鉱山会社がSERNAGEOMINからの要求に対する回答期限延長を求めた場合、同局は新たな期限を設定する(第24条)。

 上記手続きを全て終えると、SERNAGEOMIN局長は十分な根拠を示した上で閉山計画案の認可または却下を公表する(第25条及び第26条)。この裁定の期限は閉山法施行細則中には定められていないが、閉山法第12条で閉山計画案申請日から60日以内に裁定を下さなければならないとされている。

(2) 簡易手続き

 簡易手続きは、1つあるいはそれ以上の鉱床から10,000 t/月以下の粗鉱採掘あるいは鉱石処理を行う鉱山及びその関連施設、さらに環境基本法に基づいて環境影響評価システム(Sistema Estudio Impacto Ambiente)の対象となる初期探鉱(exploración)及び本格探鉱(prospección)プロジェクトに適用される(第28条)。

 環境影響評価システムの対象となる鉱業プロジェクトまたは活動は、環境基本法第10条i項において「石炭、石油及びガスを含む鉱業開発プロジェクトで本格探鉱、採鉱(explotación)、処理プラント(planata procesadora)、鉱滓(residuo)及び捨石(estéril)処分を含む」と規定されている。また、環境影響評価システムに関する規則令(Reglamento del Sistema de Evaluacion de Impacto Ambiental)第3条には、前述鉱業開発プロジェクトや本格探鉱についての定義が述べられており、それぞれ、「1つまたは複数の鉱床からの採掘または鉱石の選鉱を行う工事または活動であって、その月間の鉱石採掘能力が5,000tを超えるもの」、「初期探鉱の後に行う活動であって、鉱物の濃集した箇所を探すにあたって地質上不明確なことを最小限化し、鉱床の合理的な採掘を行うための採掘計画を立案するために行う一連の活動」とされている。

 一方、閉山法施行細則第7条には初期探鉱と本格探鉱に以下の定義が示されている。

初期探鉱: 鉱業プロジェクトを立ち上げることができるような鉱物の濃集の可能性を発見し、それを特徴づけ、予測しその範囲を決める一連の作業と活動。Arica及びParinacota州(第XV州)からCoquimbo州(第IV州)まではそれぞれの試錐孔(sondaje)を含む40試錐座(plataforma)より少ないプロジェクト、Valparaiso州(第V州)からMagallanes及びチリ南極領土州(第XII州)及び首都圏州においてはそれぞれの試錐孔を含む20試錐座より少ないプロジェクトが該当する(第7条m項)。

本格探鉱: 鉱業プロジェクトにおける鉱物の品位に関連して、地質学上の不確定要素を最小限に抑える目的で、初期探鉱の次のステージで実施される一連の作業や活動のことで、鉱床の採掘計画の基礎となる鉱山計画を策定するために必要なもの。Arica及びParinacota州(第XV州)からCoquimbo州(第IV州)まではそれぞれの試錐孔を含む40試錐座以上のプロジェクト、Valparaiso州(第V州)からMagallanes及びチリ南極領土州(第XII州)及び首都圏州においてはそれぞれの試錐孔を含む20試錐座以上のプロジェクトが該当する(第7条y項)。

 同じ試錐座から複数孔の試錐をした場合は1試錐座とカウントする。

 環境影響評価システムに関する規則令に基づけば、地域社会の生活に影響を及ぼす場合や文化遺産に変化をきたす場合など環境影響調査を義務付けられる状況を除き、基本的に初期探鉱は同システムの対象にならない一方で本格探鉱は対象となる。したがって、閉山法の適用においても本格探鉱では簡易手続きが必須である。

 簡易手続きでは、SERNAGEOMINが準備する手続き手引き書あるいは技術基準を満たさねばならず、一般申請手続きと同じ手続きと承認手順が取られる(第29条、第30条)。

 鉱山会社は閉山計画案に記載した全ての作業を完全に履行せねばならず、かつ、閉山計画実行中やSERNAGEOMINからの閉鎖証明書の発行までその効果を維持管理しなければならない(第71条)。

2-4. 監査(Auditorías de los Planes de Cierre)
 一般申請手続きが適用される閉山計画は5年ごとにSERNAGEOMINが作成した監査プログラムに準じた定期監査(Auditoría Periódica)を受けなければならない。これは鉱山会社の負担で実施される(第44条)。監査は閉山計画の実施及びその進捗状況を管理し、同計画とその更新に関する適切性と履行を認証するものである(第45条)。

 閉山計画に適合性が欠けていたり、適宜な実施がなされていなかったり、重大な変更が行われた場合には、SERNAGEOMINは正当な理由をもって特別監査(Auditoría Extraordinaria)を命じることができる。これも鉱山会社の負担である(第52条)。

 上述の定期監査、特別監査の他、鉱山会社が必要に応じて自主監査(Auditoría Voluntaria)を実施することができる(第53条)。

2-5. 閉山計画の更新(Actualización del Plan de Cierre)
 全ての閉山計画は、鉱山操業中に鉱山会社または鉱山会社の請負者によって漸次かつ完全に実施することによる定期的な更新が義務付けられている(第63条)。この更新は閉山計画の適性を検証し確認するのが目的である(第65条)。

 鉱山会社は5年ごとの定期監査とそれに付随するSERNAGEOMINの裁定に基づき、閉山計画を更新しなければならない(第66条)。さらに、特別監査や自主監査とそれによる裁定に従い閉山計画を更新しなければならない(第67条)。

2-6. 閉山証明(Certificado de Cierre)
 閉山計画の最終閉鎖(Cierre Final)または部分閉鎖(Cierre Parcial)の実施が確認された場合、SERNAGEOMINは当該監査の承認から30日以内に閉山計画履行に関する裁定を下す(第76条)。SERNAGEOMINは閉山計画の種類、すなわち、一般申請手続きまたは簡易手続き、最終閉鎖または部分閉鎖の別に準じ、履行証明を発行する(第77条)。

 最終閉鎖証明書(Certificado de Cierre Final)は、当該鉱業施設に関して鉱山会社が閉山法及びその施行細則が規定している全ての義務及び責務を完全かつ適宜に遂行したことを証明するもので、履行保証積み立て義務の終了を決定し、余剰があれば返却を求める権利を与えられる(第78条)。

2-7. 責任
 鉱山会社は直接または第三者を介するかによらず、閉山計画の履行責任を負う(第80条)。不履行の場合、鉱山会社の法的責任者及び閉山計画不履行に対する責任者へはともに100~1,000 UTM*1の罰金が科せられる(第81条)。

2-8. 管理と監督
 環境当局のような他の政府組織の法的権限にかかわらず、閉山法及びその施行細則遵守の管理・監督はSERNAGEOMINの独占的な権限である(第83条)。

 人の生命、健康、身体の保全ないし環境に対して明らかに危害を及ぼす可能性のある閉山計画の不履行についてはSERNAGEOMIN局長が根拠ある裁定に基づき矯正措置を命じることができる(第89条)。

 閉山法及びその施行細則に対する違反や違法行為は、環境基本法で環境当局に付与された法的権限に関係なく閉山法に従って罰せられる(第90条)。

2-9. 履行保証(Garantía de Cumplimiento)
 一般申請手続きの対象となる鉱山操業を行っている全ての鉱山会社は、閉山法及びその施行細則によって定められた閉山義務の完全かつ適宜な履行を国家に約束し保証するために金融保証を積み立てなければならない(第94条)。

 保証額は閉山までの操業期間を考慮し、全ての閉山対策実施費用の現在価値にかかる見積もりをもとに決定され、監査の結果を反映させ見直される。保証額には不測の事態が生じた場合も含んだ閉山計画全てを実施するための管理費の現在価値を含めなければならない。同様に、保証額には閉山後の期間に適切にモニタリング・管理する措置の現在価値にかかる見積もりを含めなければならない。水法(Codigo de Aguas)第297条に準じてすでに拠出された保証額は、履行保証から差し引かねばならない(第95条)。

 有効山命は鉱石の年間採掘量と鉱物資源・埋蔵量を評価する有資格者*2が保証した確定及び推定埋蔵量に基づき算出する(第96条)。

 鉱山会社は、保証する閉山費用、鉱山プロジェクトの有効山命に従ってそれを拠出する期間、及び使用する保証証券を閉山計画案に含めなければならない(第98条)。

 SERNAGEOMINは閉山計画の実施と鉱山会社からの要請に応じ、当該鉱山の1つあるいはそれ以上に対して積み立てられた保証を一部解除できる(第111条)。SERNAGEOMINは解除要請がなされたときから30日以内に、場合に応じ、保証を解除するかその残額を解除する(第112条)。

2-10. 閉山後のステージ
 閉山後のステージには閉山計画の作業の実施とともに、それに影響を受ける地域のモニタリングと管理も含まれる(第116条)。

 一般申請手続きの対象となる閉山計画案とその更新には閉山後対策のプログラムと費用見積もり及びその実行計画を組み込まねばならない(第117条)。閉山後対策プログラムには閉山計画の施策と活動で生じる全ての状況をモニターし検証する方策を提示なければならない(第118条)。

 人の生命、健康、身体の保全を図り、地域の物理化学的安定性を継続して保証するため、鉱山会社による閉山実施後の活動資金調達を目的とした閉山後基金(Fondo de Post Cierre)を創設する(第118条)。

 閉山後基金は、a) 鉱山会社の拠出金、b) 閉山法及びその施行細則の違反に対する罰金、c) 寄付金または割当金、d) 自然人、法人、市町村、国からの寄付金または助成金、で構成される(第119条)。

 最終閉鎖証明書の発行前に、その証明書発行の条件として、鉱山会社は第三者との契約の管理費及びその調整費をも含む閉山後の活動を賄うために必要な資金として、現金あるいは閉山法第52条に述べられている金融証券A1により、基金に対して返金不可の拠出をしなければならない。鉱山会社がそれまでに積み立てた履行保証を用いて閉山後基金への拠出を求めた場合、SERNAGEOMIN局長は拠出額と同額の保証金の現金化を許可する(第120条)。

 基金への拠出を完了し、それに続く最終閉鎖証明書を得ることにより、鉱山会社は閉山後対策実施の責任から解放される。閉山後対策はSERNAGEOMINまたは同局が指名するものにより基金の資金を利用し実施される(第121条)。

2-11. 暫定条項
 暫定条項には、閉山法発効時に操業、中止、休止していた鉱山それぞれに対する同法の適用について述べられている。

 閉山法発効時に鉱山を操業しており一般申請手続きが適用となる鉱山会社は、閉山計画の履行保証額を決定し当局名義で提出しなければならない。その際、SERNAGEOMINが鉱山保安規則令第X篇に基づき認可した閉山計画とその見積もりを添付する。閉山法発効時に操業中の鉱山とは、同法発効時点で該当する閉山計画を実施していない鉱山を指す(暫定条項第1条)。

 閉山法暫定条項第2条には、鉱山保安規則令第X篇に準じてSERNAGEOMINの認可を受けた閉山計画は、対応する環境認可に沿って2年以内に価値を設定しなければならないと定められている。

 閉山法及びその施行細則が発効となった時点で鉱山保安規則令に準じた閉山計画がSERNAGEOMINに認可されていない鉱山は、閉山法発効から2年以内の閉山計画案提出が義務付けられている(暫定条項第3条)。

 鉱山保安規則令に準じたSERNAGEOMINの承認を受けた閉山計画を保有せず、閉山法発効前に操業を中止または停止し発効後に再開する鉱山は閉山法とその施行細則が定めるところにしたがい閉山計画を提出しなければならない(暫定条項第4条)。

 粗鉱生産量10,000 t/月以下の鉱山に対しSERNAGEOMINが鉱山保安規則令に従い承認した閉山計画は、当該プロジェクトが重要な変更の対象となるまでを有効と見なす。重要な変更の対象となった場合は、閉山法及びその施行細則の全ての義務を履行しなければならない(暫定条項第5条)。

3. 閉山法運用体制

 SERNAGEOMINは施行細則の発効に合わせ閉山法担当部署を新設し、担当の人員をそれまでの12名から30名に増員した。これらの人員は閉山法適用のための研修を受け、来るべき審査等に備えている。

 一般申請手続き適用の閉山計画案は鉱山が所在する地域を管轄するSERNAGEOMINの地方事務局へ提出され、全国に3箇所ある広域事務所において審査が行われる。簡易手続き対象の閉山計画案は同様に鉱山や探鉱プロジェクトが所在する地域を管轄する地方事務所に提出され、審査もその地方事務所で行われる。

 一般申請手続き対象の鉱山は現在チリ全土で約400存在すると言われており、これらの鉱山が閉山法発効の2年後に合わせ閉山計画案を提出すると事務手続きの過密化による混乱が心配されるところである。SERNAGEOMINは提出期限前後の混乱を避けるため、大規模鉱山については途中経過のデータを受領しながら審査を円滑に進めていく意向である。現時点ではまだ閉山計画案の提出はないが、各鉱山とも準備は順調に進めている模様である。

 現在、SERNAGEOMINは閉山計画作成のための手引き書を作成中である。一般申請手続きに関しては、保安リスク評価法、閉山コストの計算法、履行保証額決定法の3つの手引き書を外注で作成中であり、2013年7月~10月に順次発行される予定となっている。一方、簡易手続きに関する手引き書はSERNAGEOMIN自身で作成を行っており、2013年4月~5月に発行される予定である。これらの手引き書は全て無料配布される。

おわりに

 閉山計画策定のための中小規模鉱山への金銭的負担は、閉山法導入の際に大きな議論となっていた。最終的には粗鉱生産量10,000 t/月の閾値が設けられたものの、中小規模鉱山には大きな負担となる埋蔵量の見積もりを閉山法は義務付けている。これについて業界は強く反発しているとされ、鉱業省は閉山法及びその施行細則の改定を検討しているとの情報もある。一方、SERNAGEOMINでの聞き取りでは、埋蔵量の見積もりが中小規模鉱山会社に大変な負担であり、それに反対の声があることは承知しているが、法改正は非常に難しく、SONAMI(中小鉱業業者団体)などの援助制度が創設されるのではないかとのことであった。

 閉山法の運用は始まったばかりで今後様々な問題が出てくることが予想される。SERNAGEOMINから発行される閉山計画作成のための手引き書も含め、閉山法に関する継続的な情報収集を続けていく所存である。

 環境影響評価システムに関する規則令の和訳条文は日智商工会議所2009年6月刊のチリの環境関連法規を参考にした。

 なお、閉山法施行細則全文の原文と仮訳を冊子として後日発行する予定である。


*1 月間課税単位。2ヶ月前の消費者物価上昇率に応じて毎月改定される。2013年2月の1UTM=40,005チリペソ。1US$=472.56チリペソ(2013年1月29日)。

*2 有資格者:鉱業技術士法(法律第20,235号、2007年12月31日官報に掲載)で定められた技術者の資格を有する者。「鉱業部門に関連する科学分野の専門技能を有すること」及び「最低5年の経験」が要求される。

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