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報告書&レポート

2013年3月7日 金属企画調査部 廣川満哉、竹下聡美、門泰之、サンティアゴ事務所 神谷夏実
2013年11号

JOGMEC―チリ銅委員会(COCHILCO)第8回情報交換会

 JOMGECはチリ銅委員会(COCHILCO)との間で銅の需給や生産などに関する情報交換会を2005年から毎年定期的に実施してきた。第8回目となる今回は、2012年12月14日にサンティアゴ市で開催され、COCHILCO、日本大使館、在チリの本邦鉱山会社及び商社並びにJOGMEC本部及びサンティアゴ事務所から計30名が出席した。

 本情報交換会では、JOGMEC及びCOCHILCOから交互に講演を行い、出席者から質疑応答を受ける形で情報交換を行った。本稿では、各講演の概要を紹介する。

 1. 『チリの銅マーケット』COCHILCO
 2. 『日本の銅需給トレンド』JOGMEC
 3. 『鉱業が直面する課題』COCHILCO
 4. 『日本におけるレアアース及びレアメタルの重要性』JOGMEC
 5. 『チリにおける鉱業投資環境』JOGMEC

講演1.『チリの銅マーケット-COPPER MARKET IN CHILE』
発表者:María Cristina Betancour(Research and Policy Planning Director, COCHILCO)

 1990年代後半からの中国の銅地金需要増加に伴って銅の価格は2000年に入り上昇している。世界の銅需要は年々伸び続けているものの、2000年以降はEU、アメリカ、日本等の先進国での需要量は減少傾向にあり、全体の銅需要の伸びは中国やブラジル、インドなどの工業新興国によって支えられている(図1)。

図1.世界の銅地金消費量

図1.世界の銅地金消費量

 チリの銅埋蔵量は世界埋蔵量の27.5%を占めている。また銅生産量は1974年に年産100万tであったものが2011年には550万tにまで増加している(図2)。また2011年のチリにおける探鉱費は8億3,100万US$であり、これは世界第5位である。

図2.チリ及び世界の鉱山生産量(単位:百万t)

図2.チリ及び世界の鉱山生産量(単位:百万t)

 2012-2020年チリ鉱業投資計画額は1,043億US $であり、そのうちの約77%に当たる804億US $が銅、約19%に当たる199億US$が金及び銀に投資される計画である(図3)。

図3.チリにおける2012年から2020年までの鉱業投資計画額

図3.チリにおける2012年から2020年までの鉱業投資計画額

 チリの銅鉱石のうち、精鉱になる銅鉱石の平均品位は2000年では1.27%であったが、2011年では0.86%にまで低下している。またSX-EWに使用される鉱石の品位も0.97%から0.70%に低下している(図4)。

図4.銅鉱石の平均品位の推移

図4.銅鉱石の平均品位の推移

 品位の低下やエネルギーコストの増加に伴いチリの銅生産コストは年々増加しているが、世界全体でも同様の傾向を示しており、世界平均も同様に増加している。チリの銅生産コストはおおよそ世界平均に近い値となっている(図5)。

図5.主要生産国のキャッシュコスト推移

図5.主要生産国のキャッシュコスト推移

 まとめとして、銅需要は幅広い用途から長期的には堅調に推移すると見られることから、銅価格にはポジティブに働くと考えられる。しかしながら、短期的には、世界経済の動向に影響を受けて価格のボラティリティは高く維持される。

講演2.『日本の銅需給トレンド-Trend of Copper Supply and Demand in Japan』
発表者:竹下 聡美(JOGMEC 金属企画調査部 調査課)

 日本の銅需給について、世界との比較及び今回要望のあった東日本大震災後の動向について統計データを基に紹介する。

 はじめに、日本の銅市場を考える上で世界経済において日本がどの程度の規模及び影響力を有しているのかIMFによるGDP推移で概観する。日本は2010年に中国に抜かれるまで約40年もの長期にわたって米国に次ぐGDP第2位に位置し、世界GDP額に占める比率はピークの1994年には18%に達していた。世界経済全体及び中国の成長に伴って、その比率は2012年には8%に減少したものの、米国、中国に続く世界第3位として依然としてプレゼンスは大きい。

 銅の需給について、サプライサイドでは、日本については、図6のとおり、7カ所の銅製・精錬所があり、年産能力はおよそ1.7百万t、2009年の金融危機及び2011年の震災の影響による減産を除くと年産量は1.4百万tから1.6百万tの間で推移している(図7)。小名浜、日立、小坂の3カ所の製錬所が東日本大震災の影響を受けて一時操業を停止し、量としては8万t減産したが、2011年7月には全ての製錬所が通常生産を再開した。日本の地金供給に占める輸入精鉱、スクラップ、輸入地金の割合は2011年でそれぞれ83%、7%、10%となっているが、2011年は震災の影響で輸入地金が増加している。また図8のとおり、月別の地金生産量では2011年3月の震災による減産から、2012年には通常レベルに回復していることが分かる。

図6.銅製錬所位置図

図6.銅製錬所位置図
図7.国内地金供給の推移

図7.国内地金供給の推移
図8.月別地金生産量推移

図8.月別地金生産量推移

 銅精鉱の輸入動向について、2011年輸入量は製錬所が被災した影響で1.2百万tと前年比18%減となった。輸入相手国別では、輸入量に占める割合はチリが48%、ペルーが14%、豪州、カナダが各々9%、インドネシアが8%となっており、チリが約5割を占める。輸入相手国は精鉱輸送の観点から環太平洋地域がメインとなっている。

 次に、デマンドサイドについて、内需及び輸出動向については、図9に示すとおり、内需は2008年まで1.2百万t水準で推移していたが、世界金融危機の影響により、2009年に初めて1百万tを割って89万tまで減少した。その後、2010年、2011年ともに1百万t水準で2008年以前の水準まで回復しておらず、反比例して輸出量が増加傾向にある。2012年の内需は1百万tを再度割り込む見通しとなっている。月別の地金出荷量によると震災の影響はほとんど表れていない。

図9.地金内需及び輸出推移

図9.地金内需及び輸出推移

 銅の用途は主に電線と伸銅品の2つで、地金消費の6割が電線、4割が伸銅品向けとなっている。まず電線について、日本電線工業会の統計によると、出荷量のうち4割が建設用電線、2割が電気機械、1割が電力、1割が自動車向けとなっている。2009年以降、国内消費は80万tから60万tまで減少して推移している。1990年のピーク時のおよそ半分にまで出荷量が落ち込んでいるが、用途別で見ると、電気機械向けが家電メーカーの海外工場移転が影響して大きく縮小し、電力向けでは国内では送電網完備に伴い主に更新需要のみとなったこと、通信向けでは光ファイバーケーブルに置き換えられたことが要因として挙げられる。一方、自動車向けワイヤーハーネスの需要は、電気制御が大きく増えて堅調に推移している。なお、月別出荷量では震災の影響は見られない。

図10.電線の出荷量長期推移(1980~2011年)

図10.電線の出荷量長期推移(1980~2011年)

 今後の見通しについて、日本電線工業会によると、2016年出荷量は、国内68.2万t、輸出2万tの計70.2万tとしており、ほぼ横ばいで推移すると予測している。用途別では、復興需要と耐震化等により建設向けは短期的に堅調と見ており、電気機械向けでは海外シフトの進展が進むとしながらも医療機器やスマートフォン等の需要増が期待されている。また自動車向けではハイブリッド車や電気自動車の買い替え需要増がポジティブ要因である。

 伸銅品については、日本伸銅協会によると、出荷量のうち4割が半導体やエアコン等の熱交換器向け、1割が住宅や設備等の金具、2割が輸出向けとなっている(図11)。伸銅品は原料の半分以上をスクラップ原料が占めているため、生産に要する銅量は電線とほぼ同じ規模である。図11によると、電線と同様に世界金融危機の2009年以降、国内消費は80万tから60万t近く低迷している。図12のとおり、生産量の長期推移でみても落ち込みが明らかであり、要因としては各メーカーの海外移転や住宅や設備投資の縮小が挙げられる。日本伸銅協会による今後の見通しについては、電線と同様に横ばいで堅調に推移するとし、2016年までの出荷量は80万t水準としている。

図11.伸銅品の内需及び輸出推移

図11.伸銅品の内需及び輸出推移
図12. 伸銅品の生産量長期推移(1980~2011年)

図12. 伸銅品の生産量長期推移(1980~2011年)

 日本では超円高により国内メーカーの海外生産シフトが進み産業の空洞化が問題視されている。一方で、中国の反日デモや日本製品の不買運動によるチャイナリスクが顕在化しており、中国進出が鈍化する可能性もある。総選挙後には、政府はデフレ脱却に向けて金融緩和に踏み切ると見られ、超円高は緩和される見通しで輸出産業にとってはポジティブ要因となりうる。

 まとめとして、銅は幅広い分野で使用され、産業に欠かせない資源である。日本は世界で第3位の経済国で銅市場で大きなプレゼンスを有する。日本の製錬所は国内産業の基盤となる戦略的アセットであり、今後リサイクルでの重要性も増すと考えられる。最後に日本は輸入精鉱の50%をチリに依存し、また多くの日本企業がチリ鉱業に積極的に投資している。引き続き強固な関係を構築していきたい。

講演3.『鉱業が直面する課題-Challenges facing the mining industry』
発表者:Jorge I.Zeballos(Research and Policy Planning Department, COCHILCO)

 チリは現在まで世界最大の銅生産国として世界にアドバンテージを持ってきた。2011年においても世界銅生産量の約33%をチリが占めている。また銅以外にもリチウムやモリブデン等の鉱物資源の埋蔵量世界上位国となっている(図13)。

図13. 世界鉱物資源埋蔵量及び生産量に占めるチリの割合

図13. 世界鉱物資源埋蔵量及び生産量に占めるチリの割合

 チリにおける鉱業投資額は年々増加しており、また銅の生産量についても既存鉱山での生産量は減少するものの、新規鉱山の操業開始により順調に増加すると見られている(図14、図15)。

図14.チリにおける鉱業投資額推移

図14.チリにおける鉱業投資額推移
図15.チリの銅生産量予想推移

図15.チリの銅生産量予想推移


 このようにチリは世界に対してアドバンテージを持ってきたが。今後もこのアドバンテージを保つためには5つの挑戦すべき課題がある(図16)。

図16. チリにおける5つの課題

図16. チリにおける5つの課題

 1つ目は鉱山のコンディションである。鉱山の稼働年数が長くなるにつれ鉱石の低品位化、深部化、運搬距離の長距離化が問題化している(図17)。2つ目は人材である。2020年、大規模銅鉱山会社は現在よりも64%多い人材が必要となると見られている(図18)。

図17.鉱山における課題

図17.鉱山における課題
図18.人材における課題

図18.人材における課題


 3つ目はコミュニティーである。近年は環境意識の高まりにより鉱山開発やエネルギー生産に様々な問題が浮上している。4つ目はエネルギーマネジメントである。鉱石の低品位化、深部化等によりエネルギー消費量は増加し(図19)、2020年の銅生産エネルギーは39.4 TWhとなることが予想されている(図20)。

図19.エネルギー消費量と銅生産量

図19.エネルギー消費量と銅生産量
図20.銅生産における エネルギー使用量推移

図20.銅生産における エネルギー使用量推移

 2012年以降のエネルギー使用量推移をみると脱塩セクターと選鉱セクターでのエネルギー増加が見込まれている(図21)。選鉱では鉱石の品位が低下する中で、一定量の銅量の精鉱を生産する為にはより多くの鉱石処理が必要となり、そのためエネルギーの使用量も上昇する。

図21.銅生産セクター別エネルギー使用量推移

図21.銅生産セクター別エネルギー使用量推移

 5つ目が水のマネジメントである。新規プロジェクトの立ち上げ等による水の使用量増加や、水を移送するポンプシステムに必要なエネルギー、また海水を使用する為、設備の塩分への対策等が問題となっている(図22)。

図22.水利用に関する課題

図22.水利用に関する課題

 過去10年鉱業セクターでのエネルギー消費は増加しているが、この傾向はこれからも変わらないと考えられる。したがって安価で効率的な水の使用が今後の鉱業においてカギとなってくると考えられる、淡水化した海水を使用することについても検討しているが、淡水にする際のエネルギーの供給が主な課題となっている。また特に電力プロジェクトにおいて環境への意識の高まりが、安定的な電力の供給体制確立の大きな問題となることが予想される。

講演4.『日本におけるレアアース及びレアメタルの重要性-Importance of Rare Earth and Minor Metals(Rare Metals)in Japan』

発表者:廣川 満哉(JOGMEC 金属企画調査部 調査課長)

 レアメタルの定義は国際的に一意的に定まったものはない。1954年出版の「Rare Metals Handbook」によると、
 ① 地球上での天然の存在量が極めて稀で、偏在する。
 ② 存在量は多くても経済的・技術的に純粋なものを取り出すことが難しい。
 ③ 抽出された金属を利用するだけの用途がなく特性も明らかでない。
 のいずれかに該当する金属のことを指す。日本では1984年に上記①②に加え
  ・ 現在工業用需要があり、今後も需要があるもの
  ・ 今後の技術革新に伴い新たな工業用需要が予測されるもの

 に該当するものをレアメタルとし、31鉱種がレアメタルとして定義された (レアアースは17鉱種を総括して1鉱種として定義)。

 日本では2010年6月にエネルギー基本計画改定の際に戦略的レアメタルが指定され、2030年には自給率50%を目標としている。米国では同年12月クリーンエネルギー4分野(磁石、電池、太陽光発電、蛍光物質)での需要予測からDy、Eu、Nd、Tb、Y、Inの6鉱種をクリティカル元素として選定した。EUも同年6月に「Critical raw materials for the EU」を発表し、14鉱種をクリティカルマテリアルとした。

図23.日本における元素別金属分類

図23.日本における元素別金属分類
図24.鉄鉱石、ベースメタル、レアメタル比較図

図24.鉄鉱石、ベースメタル、レアメタル比較図

 レアメタル・レアアースは、高機能材、製品の小型化・軽量化・省エネ化、精密加工など産業競争力の向上に不可欠な元素であり、日本はガリウムやインジウム、レアアースをはじめとし、レアメタル世界消費量に占める割合が非常に高い(図25)。

 レアメタルの問題は資源が特定の国に偏在し、一部企業により生産が寡占化されていることに加え、ベースメタルの副産物として産出されることが多く、その生産に依存性がある。また、市場規模が小さいことから投機的な資金で価格が不安定になりやすい。このため、鉄鉱石、石炭、ベースメタルに較べてレアメタルはリスクが高いため、民間企業のビジネスとなりにくい性格がある(図26)。

図25.各金属の世界消費量に対する日本の消費割合

図25.各金属の世界消費量に対する日本の消費割合
図26. 日本のレアアース需要

図26. 日本のレアアース需要

 レアアースの生産は中国が世界の約97%を占める。過去には西側諸国での生産も行われていたが、中国の低コスト生産や環境問題等により閉山し、現在に至っている。

図27. レアアース生産推移と中国国内生産

図27. レアアース生産推移と中国国内生産

 レアメタル、レアアースは太陽光発電、風力発電、電気自動車等の省エネ技術、超電導分野等など将来性のある産業分野でも非常に重要な役割を果たすために、日本にとって重要である。しかしながら、レアアースに関しては、中国のレアアース問題発生後、価格高騰により需要が減少しているが、軽希土については中国以外での生産開発が進んでいるものの重希土については開発に至っていない。

講演5.『チリにおける鉱業投資環境-Mining Investment Climate in Chile』
発表者:神谷 夏実(JOGMEC サンティアゴ事務所長)

 チリは本邦企業による銅鉱山投資の最大の相手国で、チリの主要銅鉱山における、日本企業の権益割合は、2011年現在、約10%程度となっているが、現在建設中のカセロネス、シエラゴルダ両鉱山の生産が軌道に乗れば、これが15%程度に上昇するとみられる(図28)。

図28.チリの主要銅鉱山と日本企業の保有権益割合

図28.チリの主要銅鉱山と日本企業の保有権益割合

 チリでは、上位21鉱山が銅生産量の約92%(2011年現在)を占めている。このうち1992年以前に生産を開始した7鉱山の生産量が全体の45%、90年代に生産を開始した鉱山の生産量が38%を占めている。チリは世界最大の銅生産国であるが、その生産は比較的古い、大規模鉱山の生産に支えられている。2000年代に入り、新規開発鉱山の数が減り、銅生産量は伸び悩んでいる(図29)。

図29. 1992-2020年のチリ銅生産推移

図29. 1992-2020年のチリ銅生産推移

(棒グラフは現在操業鉱山の2011年銅生産量をその鉱山の生産開始年にプロットしたものである。)

 チリは、これまで、投資リスクが低く投資環境は良好とされてきたが、近年、投資リスク上昇傾向がみられる。鉱業用水の確保(海水淡水化プラントの建設、海水の直接利用、揚水コスト上昇)、電力問題(安定した電力インフラ建設、送配電網整備、再生可能エネルギーの導入)、環境規制強化(環境基本法改正、閉山法、環境影響評価の厳格化)、地域住民や先住民による反対運動、税率引き上げ、技術者不足等様々な課題がでてきている。メディアでも、チリはBusiness friendlyからTough placeにシフトしているとも報道されている。特に、環境影響評価の厳格化、地域住民や先住民の反対により、El MorroやCerro Casale等の鉱山プロジェクトのみならず、Hydro Aysen(水力発電)、Castilla、Punta Alcalde(火力発電)等の電力プロジェクトも影響を受けている。こうしたチリの投資環境の変化の中で、日本の産業界は、探鉱や鉱山プロジェクトへの投資、生産物のオフテイクだけでなく、得意とする技術とマネジメント力をもって、チリのインフラ整備への投資も行い、チリの持続可能な発展、社会福祉の向上、投資環境の改善に貢献できる。

 JOGMECは、今後も、リスクの高い初期探鉱プロジェクトの実施と日本企業への権益引継ぎ、開発に向けた金融支援、技術開発・支援等により日本企業の投資を支援していく。

おわりに

 チリは世界最大の銅生産国で、日本企業は参入・投資に意欲的である。引き続き、COCHILCOを始めとするチリ政府系機関との関係を強化し、有益な情報収集・提供に努めてまいりたい。

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