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報告書&レポート

2013年3月21日 サンティアゴ事務所 神谷夏実
2013年14号

チリの銅鉱業とエネルギー消費

 先のカレント・トピックス2012年74号で、チリの銅鉱業と電力供給及び消費について報告したが、本稿では、銅鉱業における燃料消費の動向、並びに、電力と燃料消費を合わせたエネルギー消費の動向について報告する。チリの銅鉱業において、電力、燃料を合わせたエネルギー消費量は年々増加傾向にあるが、銅生産量が2008年以降伸び悩んでいるのに対し、エネルギー消費量及び消費原単位は増加傾向が続いている。なお、本稿では、COCHILCO(2012)iによるデータを使用した。

1. 銅鉱業の燃料消費量

1-1.銅鉱業の燃料消費量の推移

 2002年から2011年のチリの銅生産のための燃料消費量と銅生産量から算出した燃料消費原単位の推移を図1に示す。1-3で詳述するが、チリの銅生産で消費された燃料は、2002年の38.3千兆ジュールから2011年の65.7千兆ジュールまで、72%(年平均6.5%)増加した。この間の銅鉱石生産量は、4,581千tから5,263千tまで14.9%(年平均1.6%)増加したので、燃料消費量は銅の生産量を大幅に上回って増加したことになる。したがって、燃料消費原単位は、2002年の83.5億ジュール/銅-tから2011年の124.9億ジュール/銅-tまで約49.6%(年平均4.6%)増加した。特に2007年以降の上昇率が高い。チリの銅鉱石生産量のうち露天採掘が全体の約90%を占めている。燃料消費は露天採掘における鉱石、廃石の運搬によるものがほとんどを占めるとみられるが、露天採掘の深部化、運搬距離の増加、鉱石品位低下等により、燃料消費原単位が上昇しているとみられる。

図1.チリの銅生産の燃料消費原単位の推移

図1.チリの銅生産の燃料消費原単位の推移

1-2.銅生産工程と燃料消費原単位

 2011年の銅生産の工程別の燃料消費原単位及び燃料消費量を表1、図2に示す。銅の生産工程別にみた場合、露天採掘の燃料消費原単位が7,720百万ジュール/銅-tと圧倒的に大きいが、これに製錬の4,794百万ジュール/銅-t、LX/SX/EWの2,975百万ジュール/銅-tが続いている。ここで、LX/SX/EW工程とは、鉱石処理、鉱石ダンプ、リーチング、溶媒抽出及び電解工程である。露天採掘では、前述のとおりダンプトラックによる鉱石、廃石の運搬が主な消費要因であるとみられる。

表1.チリの銅生産と燃料消費量

工程 燃料消費原単位
(百万ジュール/銅-t)
燃料消費量
(兆ジュール)
生産量
(千t、金属純分)
露天採掘 7,719.7 48,776.9 (鉱石)6,318.5
坑内採掘 1,393.1 981.6 (鉱石)704.6
採掘(露天・坑内) 6,986.2 49,758.5 (鉱石)7,023
選鉱 222.2 719.5 (精鉱)3,301
製錬 4,794.3 6,540.4 (粗銅)1,364
精錬 1,046.6 1,117.4 (地金)999
LX/SX/EW 2,975.1 6,024.0 (地金)2,025
その他 309.9 1,630.9 (鉱石)5,263

* 露天、坑内を含む採掘の銅生産量(7,023千t)は、採掘され鉱石処理工程に投入された銅量であり、商業的な銅鉱石生産量(鉱石処理、選鉱のアウトプットとしての銅量)とは異なる。

* LX/SX/EWは、鉱石処理、ダンプ、リーチング、溶媒抽出及び電解工程で、採掘は含まない。

図2.チリの銅生産の燃料消費原単位(プロセス別)

図2.チリの銅生産の燃料消費原単位(プロセス別)

(百万ジュール/銅-t、2011年)

 2002年から2011年の銅生産の工程別の燃料消費原単位の推移を図3に示す。これによると、2002年と2011年を比較すると、露天採掘で68%、坑内採掘で30%、選鉱で18%、LX/SX/EWで28%の増加となっている。工程別にみた場合でも、露天採掘の燃料消費原単位の増加が著しく大きい。チリの銅鉱石の平均銅品位は、2002年の1.13%から2011年の0.84%まで低下していることもあり、粗鉱運搬量の増加、露天採掘深部化に伴う運搬距離の増加、廃石運搬量の増加等が燃料消費原単位の増加の要因となっているとみられる。特に、2007年以降、鉱石品位の低下の傾向と、露天採掘におけるエネルギー消費原単位の上昇が加速している。

図3.チリの銅生産工程別の燃料消費原単位の推移

図3.チリの銅生産工程別の燃料消費原単位の推移

(銅生産量1t当たり、2002年=100)

1-3.銅生産の燃料消費量
 銅生産の工程別の燃料消費量及びその推移を図4、図5に示す。2011年の銅生産のための燃料消費量は65.7千兆ジュールであったが、燃料消費量の74%が露天採掘で消費された。チリの銅生産において、露天採掘における運搬用の燃料消費が全体の4分の3と圧倒的な割合を占めている。

 銅生産における燃料消費量の推移は、2002年の38.3千兆ジュールから2011年の65.7千兆ジュールまで、72%(年率6.2%)増加した。これに対し、この間の鉱石生産量は14.9%(年率1.6%)増加しただけである。特に、チリの銅生産量は2004年以降伸び悩んでいるが、燃料消費量の増加のペースは2007年以降高まっている。また、燃料消費量に占める露天採掘の割合も、2002年の58%から2011年の74%まで一貫して増加傾向が続いている。

図4.チリの銅生産の工程別燃料消費量

図4.チリの銅生産の工程別燃料消費量

(65.7千兆ジュール、2011年)
図5.チリの銅生産の工程別燃料消費量の推移

図5.チリの銅生産の工程別燃料消費量の推移

2. 銅鉱業のエネルギー消費

 銅生産に必要な主要なエネルギー源は電力と燃料であるが、これらを合わせた2011年のチリの銅生産のエネルギー消費量(電力、燃料)を図6、図7に示す。

 2011年の銅生産のエネルギー消費量は、電力71.9千兆ジュール、燃料65.7千兆ジュール、合計137.6千兆ジュールで、電力と燃料の比率は52:48となり、電力がわずかに多い。工程別のエネルギー消費量の内訳は、露天採掘が全体の38%、選鉱が25%、LX-SX-EWが21%等となっており、銅生産の主要なエネルギー消費量は、これら3工程で全体の84%を占めている。また、図7によると、2002年のエネルギー消費量は87.7千兆ジュールであったが、これが、2011年には137.6千兆ジュールまで、57%(年率5.1%)増加した。特に2007年以降の増加のペースが高まっているが、2010年、2011年はやや増加のペースが下がったようにも見える。前述のとおり、2004年以降、チリの銅生産量は伸び悩んでいるが、エネルギー消費量の増加は続いている。工程別では、露天採掘が114%(年率8.8%)増加しており、これに選鉱の61%(年率5.4%)、LX-SX-EWの44%(年率4.1%)が続いている。露天採掘は主に採掘深部化、鉱石品位低下による鉱石運搬量、運搬距離の増加、選鉱、LX-SX-EWは主に鉱石処理(破砕、粉砕)によるエネルギー消費量の増加が主要要因となっているとみられる。

図6.チリの銅生産の工程別エネルギー消費量(電力・燃料)

図6.チリの銅生産の工程別エネルギー消費量(電力・燃料)

(137.6千兆ジュール、2011年)
図7.チリの銅生産の工程別エネルギー消費量(電力・燃料)の推移

図7.チリの銅生産の工程別エネルギー消費量(電力・燃料)の推移

 図8に、チリの全エネルギー消費に占める銅生産の割合の推移を示す。2002年の銅鉱業分野のエネルギー消費量は20.9千兆カロリーであり、全国のエネルギー消費量292.5千兆カロリーの7.15%を占めた。2010年には、それぞれが、33.3千兆カロリー、354.5千兆カロリーとなったので、鉱業分野が占める割合は9.38%に増加した。この間のエネルギー消費量の増加は、鉱業分野が59%(年平均6.0%)、全国が14.4%(年平均1.7%)であり、鉱業分野のエネルギー消費量の増加速度は、全国の約3.5倍であり、特に2005年以降、エネルギー消費量の増加が加速している。以上のように、チリにおいて銅生産によるエネルギー消費量は、チリ全国のエネルギー消費量に対する比率は全体の10%以下で低いものの、その増加速度は速い。

図8.チリの銅生産のエネルギー消費量と、全エネルギー消費量に占める割合の推移

図8.チリの銅生産のエネルギー消費量と、全エネルギー消費量に占める割合の推移

3. まとめ

 チリの銅生産のための燃料消費量と燃料消費原単位は、2002年以降上昇を続けており、特に、2007年以降、銅生産量が伸び悩んでいるのに対し、鉱石品位の低下、エネルギー消費原単位及び消費量の増加傾向が加速しているように見える。エネルギー消費量の増加の主要要因としては、露天採掘の深部化、運搬距離の増加、鉱石品位低下、坑内採掘の採掘深部化、粗鉱処理量の増加、選鉱及びLX-SX-EWにおける鉱石処理量の増加、鉱石硬化度の増加等の要因が考えられる。各工程において省エネルギーへの取り組みも行われているとみられるが、生産条件の悪化がこれを上回っているとみられる。また、今後、採掘深部化、鉱石品位低下がさらに進むと同時に、鉱山立地の奥地化、海水淡水化・揚水量の増加等により、さらにエネルギー消費原単位が上昇し、生産コストの上昇につながる可能性がある。


【参考文献】

i COCHILCO(2012):Actualizacion de Informacione sobre el Consumo de Energia Asociado a la Mineria del Cobre al Ano 2011(DE/10/2012)

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