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報告書&レポート

2013年4月25日 モスクワ事務所 大木雅文
2013年22号

ロシア鉱物資源に係る極東輸出インフラの状況等(関係者の声)

 近年、アジアのエネルギー・鉱物資源などの需要増に伴い、ロシア極東経由の輸送量が大幅に拡大している。ソ連時代、貨物の流れは東から西が主であり、インフラもこれを前提とした陸上輸出に重点が置かれていたが、輸出貨物の流れは向きを変えて東に向かい極東港湾を経由するようになった。しかしながら、現状、アジア市場の急激な発展に対して、ロシア極東の輸出ポテンシャルは既に鉄道輸送能力の限界に突き当たり、港湾との連携というボトルネックも加わっている。

 そもそも極東は、ロシア欧州部などと比べて自然環境や地理的条件が厳しく、ソ連時代の優遇措置も無くなり人材・産業の空洞化が進展していることもあり、市場メカニズムのみでは外資を含むビジネス投資は進まず、必要とされるインフラ投資も進み難い状況にある。

 APECウラジオストック・サミットに関連した大型インフラ建設が着工・完了し、新たに極東発展省が設置され、極東における地場産業の振興と雇用創出が政策課題にある中、近時の極東の輸出インフラを巡る課題等につきロシア関係者のコメント、現地報道等を整理して以下報告する。

 なお、ベースメタル関連の鉱石等は、「石炭」と同じバルクカーゴ輸送となり、レアアース(メタル、混合希土等)であれば「コンテナ」の扱いに相当するものとして、以下、目を通していただければ幸いである。

1.現状概況

 極東の輸出インフラを構成する主なものは、道路、鉄道(「シベリア鉄道」「バム鉄道」及びその支線)、そして港湾(不凍港が多く、鉄道の引き込み線あり。主要な港湾は、最大規模の「ヴォストーチヌイ港」の他、「ワニノ港」、「ナホトカ港」、「ウラジオストック港」、「ポシェット港」など)であり、陸路はモスクワまではもちろん、海路は内航海運により各方面と有機的につながっている。また中央アジアやモンゴルとの貿易ルートとしても活用されている。

 近年の極東港湾の取扱貨物量(重量ベース)は、その約8割が輸出で、国内物流が1割、輸入及びトランジットは少ない。輸出のうち、サハリンや東シベリアで産出されるエネルギー資源(石油・石油製品(4割超え)、石炭(3割超え))の比率が非常に高く、次いでコンテナ(近年増加中)、金属鉱物資源、木材となり、まだ少量であるが「穀物」がその大きな増加で注目されている。また直近5年間(2008年~2012年)における港湾取扱量の推移において、ロシア全体が24.7%の増加に対して、極東はその約3倍の67.2%の増加になっている。

 日露貿易に関しては、日本からロシアへの輸出で完成車、建設機械などが、ロシアから日本への輸入では石油、LNG、石炭、木材、水産物、非鉄金属などが、極東の鉄道、港湾などのインフラを経由している。

表1. ロシア港湾の取扱貨物量とその推移

(単位; 百万t)

  2008 2009 2010 2011 2012
ロシア全体 454.6 496.4 526.03 535.53 567.1
 北西部 215 223.3 227.71
  Arctic area 41 38.7
  Baltic area 185.7 207.2
 南部 159.2 180.9 180.25
  Black Sea area 172.8 176.7
  Caspian area 10.6 10
 極東 80.4 92.2 118.1 125.4 134.4

(出典)Source: MorCentre TFC

http://transrussia.net/analytics/2008/12/analytics.aspx

2.課題点

(1) 鉄道
 ① 輸送・処理能力の問題
  ◆ 「鉄道は作業量増加に対応できていない」(2012年11月)

・ 2012年1~10月のロシアにおける鉄道の出荷量は、前年同期比3.2%増の10億6,400万tとなった。しかし、輸送時間の増大が既に1年も続いており、需要が伸びても利益が出せていない。(現地報道)

・ 鉄道の平均貨物輸送速度は既に1年に亘り低下し続けている。2012年上期の平均輸送速度は228 ㎞/日で、前年同期比13.6%減となった。貨車回転日数(鉄道車両オペレーション業者の経済効率を示す主要指標)は1年前に比べ1日長く、滞留車両は途中駅では8.7%、ターミナル駅では10%増加した。(現地報道)

・ 最重要問題の一つは、機関車更新への投資不足である。ロシアの機関車の97%以上がロシア鉄道の所有だが、老朽化が激しく輸送能力が低下している。専門家によると、更新には2015年まで毎年1,000台以上の機関車を購入する必要があるが、これは民間投資の誘致なしには実現不可能である。(S.マリツェフ 「鉄道車両オペレーションサービス市場参加者協議会」幹部会会長・GlobaltransグループCEO)

  ◆ 「プーチン大統領、輸送インフラ増強支援を業界に約束」(2012年8月)

極東の石炭輸出にとって最重要問題の一つは、「渋滞」によりロシア鉄道が、石炭輸出の増加に対応できないことである。極東の専門家は、ロシア鉄道は極東の経済発展の妨げになりつつあると見ている。またロシア運輸省はロシア鉄道と荷受人の間のトラブルの調整的役割を強化すべきだとしている。(現地報道)

  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

輸送インフラの不足により、臨港地区の操車場における長時間の車両の滞留や、路線における列車の渋滞が見られる。貨物駅のインフラは、鉄道輸送需要の増加に対応できていない。待避線、作業線、操車線が不足している。順番待ちができ、貨物のデリバリータイムが延びた。臨港鉄道では、輸出貨物を積載した3万1,200両が毎日荷下ろしを待って停車中である。滞留する列車の数は前年の2倍となった。(現地報道)

  ◆ 「鉄道は作業量増加に対応できていない」(2012年11月)

ロシア鉄道はこうした事態の理由を、インフラの貨物取扱能力が限られており、これほど大量の貨車を受け入れることができないだけとしている。ロシア鉄道の計算によると、毎日約400編成の無蓋貨車が荷積みできずに構内線に滞留し、積み込みヤードの作業を妨げている。(現地報道)

 ② コストアップの問題
  ◆ 「石炭に関する会議報告」(2012年9月)

ロシアの石炭生産者がアジア市場でシェアを拡大するには、石炭輸送料金の引き下げが不可欠であると専門家は指摘している。しかしその料金は上がる一方で、Eurosib SPb-Transport systemsのアンドレイ・バラノフ氏は、「石炭価格は大きく下がったが、輸送コストは増大し、7月には4~6%アップする」と述べた。鉄道料金は国家規制を受けており、政府は不況の間は経済を下支えすべく、料金をこれまで予定していたほど大きくは引き上げないことを検討している。(現地報道)

  ◆ 「極東のロジスティクス・ビジネス:難しくともできる」(2011年10月)

独占企業は荷主からもっと金をとるという、その一点だけで方針を決め、荷主への態度も傲慢である。(ハバロフスク自動車貨物輸送業協会 ヴィクトル・シュパコフ会長)

  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

 極東のインフラ問題は、マネジメント問題と運行管理の質の低下によって深刻化している。数年前の過激な鉄道事業改革の結果、ロシア鉄道は自社保有車両を失い、車両は営利企業に引き渡され、市場経済原則の下で運行されるようになった。これが運行管理システム全体の効率に悪影響を及ぼした。ロシア鉄道は運行管理システムを現実に適応させることができなかったのである。その現実とは、車両の総台数が2003年の81万9,000台から2012年には110万台に増加したことである。

 かつてロシア鉄道が誰にでも車両を提供していたのに対し、民間事業者は相手を選んでサービスを提供するようになり、鉄道輸送市場で最も利益率の高い部門に集中した。全ての荷主が鉄道インフラのサービスを平等に利用できるという重要な原則が失われたのである。その結果、輸送にとって利益率の低い石炭、建設資材その他貨物の荷主である生産者の多くが極端な車両不足に直面し、一方で空車両が利幅の大きい貨物を求めて鉄道網を無秩序に動き回り滞留するなど、列車運行を妨げるようになった。鉄道網の全運行地域と、ほぼ全ての路線接続点で、空列車が無秩序に行き交うようになった。(現地報道)

(2) 港湾
 ① 輸送・処理能力の問題(鉄道関連)
  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

出荷最盛期や悪天候の際には極東港湾への路線で渋滞が生じる。数年後にはワニノ港及びソヴィエツカヤ・ガヴァニ港への鉄道路線の輸送能力は、大きな海港の能力の2分の1から3分の1になるとの意見もある。(現地報道)

  ◆ 「石炭に関する会議報告」(2012年9月)

ワニノ港には大きな問題がある。バム鉄道の輸送能力が不足しているからだ。シベリア石炭エネルギー会社(SUEK)の計算によると、ワニノ港のターミナルの利用率は約50%である。(石炭市場研究所 コヴァリチュク所長)

  ◆ 「渋滞で列車が立ち往生」(2012年8月)

列車の滞留問題はほぼ全ての極東港湾(ワニノ、ヴォストーチヌィ、ナホトカ、ポシェット、コジミノ)で生じた。(現地報道)

  ◆ 「極東のロジスティクス・ビジネス:難しくともできる」(2011年10月)

港湾の能力は、鉄道駅の貨物取扱能力が非常に大きく制約されているため、港湾は今より多くのコンテナや自動車を取り扱えるのに、それができない。(コンスタンチン・ボロディン社長 VMK社)

 ② 輸送・処理能力の問題(港湾ターミナル関連)
  ◆ 「極東のロジスティクス・ビジネス:難しくともできる」(2011年10月)

 石炭輸出の拡大には港湾の取扱能力拡充と近代化が不可欠である。時代遅れの機材では輸送量を拡大できず、特に石炭が凍結する冬場は貨車は動けない。取扱能力を上げる貨物解凍設備を有する港はごく少数である。(タマーラ・ノヴィコワ氏 海洋船舶研究所)

 現在、沿海地方、特にウラジオストクでは、コンテナ及び鉄道ターミナル、最新の倉庫施設その他の輸送・物流インフラ施設の不足が深刻である。(デニス・パヴロフ氏 輸送企業グループ「ヴォストーク」共同創業者)

  ◆ 「ワニノ港取扱い貨物が一変する可能性あり」(2013年2月)

ワニノ港を経由する貨物の種類が一変する可能性がある。新所有者のMechelは自社の石炭積み替えに、港を最大限利用すると見られ、他の荷主は新たなルートを探さざるを得なくなる。(現地報道)

  ◆ 「極東で石油製品を積載したタンク車2,000両が立ち往生」(2013年2月)

・ 2012年2月、極東で新たな鉄道マヒが起きた。ナホトカ地区の駅で、石油製品を積載した約2,000両のタンク車が滞留してしまった。ロシア鉄道によると、冬季の重油の凍結による高粘土化で荷下ろしが遅れたという。専門家は最近の貨物輸送量増加に港が対応できないと指摘している。荷受企業Vostokbunker、RN-Nakhodkanefteproduct、Niko-Oil-DVでは、増加した貨物の受入態勢が整っておらず、極東鉄道(国営ロシア鉄道の極東支部)は、「液体貨物積み替えのボトルネックとなったのは、荷受企業の機材設備が充実していないこと、厳しい航海事情によりタンカーがタイミングよく港に着けられなかったことであるが、港湾荷役は荷下ろしが遅かった理由に重油の高粘度化もある。」としている。(現地報道)

・ 増加した貨物を処理するのは難しい。特に厳しいのは、クズネツォフ・トンネルの再建を経て極東鉄道のオウネ~ヴィソコゴルナヤ間が2012年末に運行開始した後であり(これによりバム鉄道の輸送能力が1,900万tに拡大)、また冬季には荷下ろしのために石炭を温めたり、グラブで砕いたりする必要がある。輸出予定量は港湾の能力を超えており、港湾と鉄道の接続部がボトルネックとなって、輸出量拡大を阻んでいる。(ミハイル・ブルミストロフ社長 INFOLine-Analitika)

3.課題解決に向けた取り組み

(1) 鉄道の開発状況等
  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

 ロシアは、積極的な開発をするかわりに、ソ連時代に作られたインフラを修繕しながら使用している。一般用新規路線の開業は、ソ連時代には毎年600~700 kmあったのに対し、2011年は1 kmもなかった。それどころか一般用鉄道路線の総延長は2003年に比べ102 km短縮され、8万5,300 kmとなった。

 ロシア鉄道には投資プログラムがある。2012年向けの投資プログラムは4,280億ルーブルを上回り、うち約2,100億ルーブルがインフラの制約解消に充てられたが、総合的な大規模プロジェクトは4件にすぎず、その中で極東プロジェクトはコムソモリスク・ナ・アムーレ~ソヴィエツカヤ・ガヴァニ間の近代化(クズネツォフ新トンネル建設)のみである。

 専門家は「クズネツォフ・トンネル建設後、この路線の輸送能力は1,300万tから3,000万tに拡大するが、コムソモリスク・ワニノ輸送拠点路線の必要な年間貨物輸送量は既に5,000万tと見積もられている」と例示している。鉄道の資金不足は他のインフラ部門に比べ際立っている。年間投資額は、幹線ガスパイプライン開発が6,250億ルーブル、電力開発が6,750億ルーブル(送電網)及び4,180億ルーブル(発電)であるのに対し、鉄道インフラ整備は約2,700億ルーブルである。

 2020年までの鉄道開発長期投資プログラム(概算5兆7,000億ルーブル)の最新案が策定された。優先投資対象とされたのがバム鉄道の近代化である(バム鉄道圏には有望な石炭・鉱石採掘企業が増加しつつあり、これに加えてシベリア横断鉄道の貨物輸送の一部がバム鉄道に切り替えられる予定である)。

 ロシア鉄道の評価によると、臨港鉄道インフラ整備プロジェクトは経済性があまりに厳しい。現在、ロシア鉄道は北西連邦管区の港湾(特にウスチ・ルガ)周辺の鉄道インフラ整備に積極的に参加しており、これらのプロジェクトの資金回収期間は13年であり、また南部連邦管区の港湾への路線は21年で資金が回収される予定だが、極東港湾への路線では全く回収できない。この路線の貨物輸送構造の大半を、いわゆる安価なバルクカーゴ、特に石炭が占めているからである。ロシア鉄道はこの路線の開発に対する政府支援を当てにしている。

 2011年末、地域鉄道にロシア鉄道、地元当局、大手荷主による特別調整協議会が設立された。さらに、輸送管理システム、「統一ネットワーク技術プロセス(ESTP)」案が策定された。ロシア鉄道によると、新たな方策の目的は、輸送申込書の受付から荷受人への貨物引き渡しに至るまでロシア鉄道の各セクションと荷主の間で効率的な連携が行われるようにすることである。貨物輸送市場参加者には一定の技術的資格を有することが規定され、出荷と空車両回送の予定は月毎に組まれ、空車両は鉄道施設に適切に配備される見通しである。(現地報道)

  ◆ 「ロシア鉄道、シベリア・極東インフラ整備に約1,340億ルーブル投資予定」(2012年12月)

ロシア鉄道は、シベリア・極東のインフラ整備に約1,340億ルーブルを投資予定である。このインフラ整備には2012年に500億ルーブル以上が投じられ、2015年までにさらに1,340億ルーブルが投資される。この金額はロシア鉄道の財務計画と投資プログラムに定められている。(現地報道)

  ◆ 「バム鉄道再建へ」(2012年12月)

ロシア連邦運輸省は、2020年までにバム鉄道改修に8,630億ルーブルを投資するというロシア鉄道の提案を受け入れた。プロジェクトは、2020年にはバム鉄道の貨物輸送能力を現在の年間2,000万tから5,000万tに拡大するというものである。その理由として挙げられているのは、ヤクーチアの新規炭田及び鉱床開発、ハバロフスク地方の港湾インフラ及びその他の北極海航路の港湾発展に伴い、バム鉄道の輸送能力が限界に達し、これが2030年までの地域発展の一番の問題となるからである。(現地報道)

(2) 鉱床開発と鉄道支線
  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

各種鉱床における個別鉄道支線建設プロジェクトの幾つかは民間投資で実施されている。自前の引込線をもつことで操車作業が容易になり、一回の荷積みに使用できる貨車数を増やすことができると、専門家は指摘する。(現地報道)

  ◆ 「ザバイカリエ地方の金属産業の展望」(2011年9月)

・ ウドカン(銅)及びチネイスコエ(鉄、チタン、バナジウム)鉱床は、ザバイカリエ地方北部、バム鉄道(トゥインダ~スコヴォロジノ、ウスチ・クト~ブラーツク~タイシェット)が通るコダル・ウドカン地域鉱山冶金コンプレクスの一部である。鉱床開発(まずウドカン、将来的にはチネイスコエ及びその他一連の鉱床)を支えるインフラは鉄道であり、ブイストリンスコエ及びブグダインスコエ鉱床開発の一環として建設されている。ウドカン鉱床の西側を迂回するノーヴァヤ・チャラ~チネイスコエ鉱床間74 kmの支線は費用のかかる改修・復旧作業を必要とする。ウドカン鉱床はチャラ駅の南30 kmに位置し、2017年に操業開始予定である。チネイスコエ鉱床はザバイカリエ地方北東(チタから660 km)のカラルスキー地区にあり、東シベリア鉄道ノーヴァヤ・チャラ駅の南東45 km、ウドカン鉱床の南15 kmに位置する。

・ タルィンナフスコエ及びゴルキツコエ(鉄)鉱床(南ヤクーチア開発公社の傘下)ともヤクーチア南部に位置する。両鉱床の開発はコダル・ウドカン・コンプレクスの一部であり、バム鉄道までの約200 kmの鉄道支線建設と高圧送電線の利用を伴う。採鉱選鉱コンビナートの建設が予定され、これと並びペレットやブリケットを使用する製品等を生産する冶金コンビナートが建設される可能性もある。

・ ベレゾフスコエ鉄鉱床をベースにザバイカリエ地方南東の国境地帯には、直接還元技術で鉄鉱石から銑鉄を取り出すだけでなく、さらに鋼鉄生産、場合によっては圧延製品生産まで可能な生産施設から成る金属生産コンプレクスが2020年までに形成される可能性がある。プロジェクトの目標値は中国側に押されて設定したもので、鉄鉱石の年間処理能力を1,000万tとしているが、これは明らかに大幅な水増しであり、現実的な数字はせいぜい500万~600万tと見られる。鉱床を輸出用国内幹線に接続する鉄道の建設計画さえなく(最も現実的なのはガジムルスキー・ザヴォードからで、別ルートの製品輸出用鉄道建設は軍事的・政治的理由により不可能)、地域に必要な電力確保もできないことから、そもそもプロジェクトの実現が疑問視されており、かなり先送りされる可能性がある(ベレゾフスキー採鉱選鉱コンビナートは2010年に操業開始する予想であった。)。(現地報道)

  ◆ 「Norilsk Nickel、チタ・プロジェクトで鉄道輸送を開始」(2012年6月)

 6月9日、ナルィン1(ボルジャ)~ガジムル工場鉄道管区で運行開始式が行われた。この管区の建設により、ザバイカリエ地方南東の遠隔地がロシア鉄道網と結ばれた。     Norilsk Nickelにとってこの鉄道輸送の開始は、ブイストリンスキー及びブグダインスキー鉱床開発を目的とするチタ・プロジェクトを実施する上で重要なステップである。

 ブイストリンスキー及びブグダインスキー採鉱選鉱コンビナートは、2013年までの建設開始、2016年の操業開始を予定している。ブイストリンスキー採鉱選鉱コンビナートは年間1,000万tの採鉱及び処理により、銅精鉱6万2,000 t、金精鉱6.3 t、鉄精鉱210万tの生産を予定している。ブグダインスキー採鉱選鉱コンビナートは年間1,600万tを採鉱し、モリブデン精鉱9,000 tを生産する予定である。(現地報道)

  ◆ 「極東開発公社はもっと我々の近くにあるべき」(2012年8月)

現在、ザバイカリエ地方で最も重要な建設案件はナルィン~ルゴカン間鉄道で、ブイストリンスコエ、クルトゥミンスコエ、ルゴカン、ソロネチェンスコエ、ブグダインスコエという地域最大規模の(多金属)鉱床をシベリア横断鉄道に接続する。(現地報道)

  ◆ 「Mechel、ヤクーチアのエリガ炭田の採掘中止もありか」(2013年2月)

2012年初め、エリガ炭田とバム鉄道をつなぐウラク~エリガ間鉄道支線(321 km)の運行が開始された。主要投資家はMechelである。多くの専門家の評価では、現在バム鉄道の輸送能力は年間1,800万~2,000万tを超えないが、近い将来、貨物輸送の要請は年間1億tを超える。Mechelのヴィクトル・トリグプコ上級副社長は1月の会合で「我々はエリガ炭田で1,500万tでも2,000万tでも石炭を採掘できる。しかしどうやってこれを運び出すのか」と皮肉った。(現地報道)

  ◆ 「バイサーロフ氏、エレゲスト炭田への鉄道建設請負企業を選定」(2013年2月)

約400 kmの支線がエレゲスト炭田とシベリア横断鉄道をつなぐ。幹線はエレゲスト駅をまずトゥバ共和国の首都クィズィールと、既存のロシア鉄道網がきているクラスノヤルスク地方クラギノ駅と結ぶ。トゥバにおける鉄道の第一期分は貨物輸送能力1,500万tを予定しており、2,700万tまで拡大する可能性もある。(現地報道)

(3) 港湾の開発状況等
  ◆ 「ロシア輸送インフラの包括的近代化に対するニーズが大きく高まる」(2012年6月)

ナホトカ港は石油・穀物ターミナルの拡張を予定している。ウラジオストクではバースの改修が行われている。

ソヴィエツカヤ・ガヴァニの開発が進められている(石炭ターミナルが建設された)。また既存のヤマル・ガス鉱床開発プロジェクトに関連して港がもう一つ建設される可能性がある。(現地報道)

  ◆ 「整備を待つ輸送拠点『ヴォストーチヌィ・ナホトカ』」(2012年11月)

連邦特別プログラム「ロシアの輸送システムの発展」の一環として、2014年にヴォストーチヌィ港で年間貨物積替能力2,000万t(公称)の新規総合積替施設の建設が開始される。ヴォストーチヌィ港のラザレフ社長は「今年10月、石炭ターミナル第三期建設プロジェクトがスタートした。これにより当社の石炭年間取扱能力は2017年には1,700万tから2,700万tに拡大する。2019年には石炭ターミナル第三期がフル操業することで年間3,500万のバルクカーゴを処理できるようになる」としている。(現地報道)

  ◆ 「ロジスティクスの改善を目指す」(2012年9月14日)

留意すべき点は、石炭企業の多くが石炭積替用港湾施設の拡張プロジェクトを発表すれば、港湾への鉄道路線の拡充が必ず必要になることである。(ヴァレーリー・シュパコフ氏Novaya perevozochnaya kompaniya(GlobaltransGroup傘下)社長)

(4) インフラ整備への新たな資金調達・官民連携(PPP)
  ◆ 「VEB、ウドカン鉱床開発に資金提供」(2011年9月)

バイカル鉱山会社、ロシア開発・対外経済銀行(VEB)、VEBエンジニアリングはイルクーツクのバイカル経済フォーラムにおいてMoUを締結した。MoUによると、VEBは、採鉱選鉱コンビナート、選鉱プラント、冶金工場、火力発電所などの主要施設の建設資金を提供する他、官民パートナーシップの下、鉱床に最も近いバム鉄道チャラ駅からの鉄道支線、自動車道、空港、従業員と家族のための居住区といった鉱床開発のための輸送・社会インフラ施設建設の資金調達をアレンジする。MoUの参加者は、金融手段を用いてウドカン銅鉱床開発プロジェクトの製品を国内外市場に進出する戦略を共同で開発し、官民パートナーシップの下で輸送・社会インフラ整備につきザバイカリエ地方当局と協力する。(現地報道)

  ◆ 「デリパスカ、インフラプロジェクトに新しい資金調達メカニズムを」(2011年9月)

 シベリアのインフラ整備には、特に外国からの借款、連邦予算からの支出、連邦年金基金の資金活用といった新規資金調達メカニズムを構築する必要性がある。シベリアでは使用料金の回収を前提とした事業主の投資は不可能である。

 シベリアの膨大な資源とインフラ欠如は共存しえない。いかなる製品をもってアジア太平洋地域へ進出するのか、その加工度はどれくらいか、そのためにいかなるインフラが必要か、我々は決定しなければならない。

 En+グループのプロジェクト向けに鉄道インフラを整備するには、ロシア鉄道による投資だけでは足りない。我々が鉄道インフラ整備の取組を始めなければ、国際市場への参入を制限されることになる。

 モスクワから韓国、中国、日本と親しくなるのは不可能である。主要プロジェクトに不可欠なのはアジア太平洋地域諸国との地域間協力を発展させることである。(デリパスカ社長 En+グループ、ルサール)

4.終わりに(考察)

 現在、石油、天然ガスについては、トランスネフチ、ガスプロムといった独占企業体がその搬送を統一パイプライン・システムによりそれぞれ担う統制的な体制にある。しかしながら、鉱物資源(特にバルク材)については、荷主・発送者、鉄道会社、港湾会社が関与し、それぞれによる処理能力の管理・向上と、三者間における連携・調整が求められている。極東では毎年、悪天候などにより、港湾において鉄道から船舶への貨物の積み替え等が滞り、貨物渋滞が発生し、鉄道運行障害へと連鎖的な機能障害が起こる構造的な問題を抱えている。鉄道会社側は積載荷物量の制限の必要性を訴え、一方の荷主側は指定/適正量で処理しており、むしろ鉄道会社側の無駄な車両運行やインフラ整備不足などの非効率性を問題の所在としている。近年その取扱量が拡大している石炭などのバルクカーゴに対するロシア鉄道の貨物輸送料金の設定タリフは最も低く、ビジネスとしてより利益率の高い石油化学肥料やコンテナ等との関係で、関係者のビジネス/投資へのモチベーションに少なからず影響を与えている。

 一方、レアアース(メタル又は精鉱)などのコンテナ輸送については、現状、ヴォストーチヌイ港やウラジオストック港では、海外からの輸入コンテナに対して、海外への輸出コンテナは「空」が多い状況にあるため、レアアースなどの高付加価値製品のロシア極東からの輸出余地は十分にあると考えられるが、生産地(現地で選鉱・製錬)から極東港湾までのロジスティック面においては、上述の石炭カーゴ問題などの影響を受ける可能性は否定できない。

 現状、ロシア連邦・地方政府も含む関係者は、上流開発・生産から輸出されるまでのマテリアルフローにおいてボトルネックにあるロシア極東の輸出インフラの問題等につき十分に理解しているものの、なかなかその解決と進展が出来ないでいる。ロシア鉄道は、極東方面に分配できる十分なインフラ投資資金が不足しており、また民間業者や子会社への貨物業務の移管や、貨物・旅客部門の分離などの実施により、その貨物運行を適正に掌握・管理できない状況にある。また港湾にあっては、アジアへの石炭輸出の拡大等を目論む鉱物資源企業が、独自に港湾施設を開発し又は買収を通じて占有する動きを加速している。こうした中、港湾型特別経済区(ソビエツカヤ・ガワニ港)の設置・拡張、共和国資源の開発を念頭に置いた港湾整備(トゥバ共和国、サハ共和国)、独立系ターミナル(アスタフィエフ、環境配慮型・高効率な石炭ターミナル)など公共財としての機能を視野にいれた開発計画も進んでいる。

 日本が鉱物資源を船舶により輸入する際、現状、豪州より10日以上、南アフリカより20日以上、南米より30日以上を必要とする。今後、これらの地域からの輸送コストが大きくなれば、日本に近いロシア極東からの輸入は一層魅力的なものになる。極東のインフラ整備は、ロシア国内の、あるいは中央アジア・モンゴルの資源生産地との有機的連携を可能とし、上流開発のリスクを下げ、その経済性を向上させる。引き続き、極東インフラの開発・整備状況等について、ニュースフラッシュ等により報告していきたい。

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