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報告書&レポート

2013年5月2日 北京事務所 篠田邦彦/ロンドン事務所 小嶋吉広 報告
2013年25号

中国の対アフリカ貿易の現状とアフリカ依存度-米中の公式資料に見る対アフリカ関係-

 2013年3月14日に新たに国家主席に選出された習近平主席は、就任後初の外国訪問として3月25~29日の間、タンザニア、南ア及びコンゴ共和国を訪問した。今回の訪問で習主席は、アフリカに対し今後3年間で200億US$の支援を発表するとともに、南アではBRICS首脳会議に出席し、BRICS開発銀行の設立について正式に合意した。世界的にはTPPや米欧FTAによる中国包囲網が徐々に強化される中、中国政府は今回の訪問を通じアフリカ諸国との一層の関係強化を図ることで、米国主導の世界秩序に対抗する姿勢を改めて示したと言える。

 中国とアフリカの貿易関係についてはこれまで公式情報が限られていたが、2013年2月に米連邦議会行政監査局(GAO:United States Government Accountability Office1)が、米中の対アフリカ貿易に関するレポート(Sub-Saharan Africa -Trends in U.S. and Chinese Economic Engagement-)を発表した。このGAOによるレポートは、連邦議会議員からのリクエストに基づき作成されたものであり、米国政府が公式に発表したデータとして意義が深く、非常に貴重な資料と言える2

 本稿ではまず前半部において、GAOの発表したデータに基づき、中国の対アフリカ貿易に関し米国との比較を通じ、その特徴について概論として報告する。そして後半部では、中国の対アフリカ貿易関係の各論として、中国政府が発表している通関統計のデータに基づきアフリカからの輸入量が多い鉱種、即ち「アフリカ依存度」の高い鉱種を取り上げ、中国にとってのアフリカの重要性について輸入量の観点から検証作業を行ってみたい。


1 GAOは連邦議会に付属した機関であり、行政府に対し監査や調査を行い、連邦議会を補佐する権限を有する。

2 GAOによるレポートでは、アフリカはサブサハラアフリカを指しているが、本稿では便宜的に「アフリカ」で記載を統一した。レポートは以下のURLからダウンロードできる。
http://www.gao.gov/assets/660/652041.pdf

1. 対アフリカ貿易関係に見る米中の相違(概論)

(1) データによる比較
 米中ともに2001年以降、対アフリカ貿易は拡大しているが、そのスピードは中国が米国を凌駕している。アフリカにとっての貿易相手国第1位はこれまで米国であったが、2009年にその座を中国へ奪われている。米中によるアフリカからの輸入額の推移とその内訳を図1に示す。まず、右側のグラフの中国について見ると、アフリカからの輸入の大半は石油・天然ガス(石油製品含む)であり、輸入額全体の59%を占めている。次いで金属鉱物(金属製品含む)が32%となっており、石油・天然ガスと金属鉱物で輸入額全体の9割以上を占めているのが特徴である。

 他方、左側のグラフの米国は、中国以上に石油・天然ガス比率が高く、アフリカからの輸入の81%を占め、金属鉱物は9%と中国ほどは高くない。両国とも石油・天然ガスと金属鉱物で輸入額の9割以上を占めており、両国にとりアフリカはエネルギーと金属鉱物資源の重要な供給ソースであることを裏付けている。

図1 米中の対アフリカ輸入額の推移と内訳

(出典:米GAOのデータを基にJOGMEC作成)

図1 米中の対アフリカ輸入額の推移と内訳

 比較として日本の対アフリカ輸入額の推移を図2に示す。2012年の輸入額は213億US$であり、輸入額としては米中の3割以下の規模となっている。内訳を見ると64%が石油・天然ガス(石油製品を含む)、25%が金属鉱物(金属製品を含む)となっており、近年、石油・天然ガスのシェアが高まっている。

図2 日本の対アフリカ輸入額の推移と内訳

(出典:JETRO貿易動向資料のデータを基にJOGMEC作成)

図2 日本の対アフリカ輸入額の推移と内訳

 次に、米中による国別の輸入額を図3に示す。米中ともに輸入額が10億US$を超える輸入相手国は、ナイジェリア、アンゴラ、南ア、コンゴ共和国、赤道ギニアの5か国である。米国の場合、これら5か国に加え、ガボン、チャド、コートジボワールが輸入額10億US$を超える輸入相手国となっている。米国のアフリカからの輸入額において石油比率が高いことを既に指摘したが、ガボン、チャド、コートジボワールといった石油輸出国が主な輸入相手国となっていることがこれに関係する。

 他方、中国による輸入については、上記の共通する5か国に加え、DRコンゴ、ザンビア、スーダン、モーリタニアが10億US$を超える輸入相手国となっている。DRコンゴに対し中国は2009年、60億US$の資金支援を表明し、それと引き替えに銅・コバルトの探鉱・開発権を取得している。またザンビアでは有色金属公司が132百万US$を投資し、2003年からChambishi鉱山を操業しており、中国にとって銅の重要な供給ソースとなっている。

図3 米中の輸入相手国(2011年)

(出典:米GAOレポート)

図3 米中の輸入相手国(2011年)

 参考までに、日本の輸入相手国を図4に示す。最大の輸入相手国は南アであり、アフリカからの輸入額の30%を占めている。続いてナイジェリア(22%)、エジプト(6%)の順となっており、10億US$を超える国はこれら3か国のみである。

図4 日本の輸入相手国(2012年)

(出典:JETRO貿易動向資料のデータを基にJOGMEC作成)

図4 日本の輸入相手国(2012年)

(2) 政策面での比較
 ① 米国

 米国は「対アフリカ戦略(U.S.Strategy Toward Sub Saharan Africa)」を2012年6月に策定し、対アフリカ政策の柱として、①貿易投資を通じた経済成長の実現、②民主化促進、③平和や安全保障の構築、④(生活水準向上等の)開発促進、の4項目を掲げている。このうち①の貿易投資促進は最重点項目として位置づけられており、2011年10月のクリントン長官による演説では、投資を通じてアフリカ開発を目指すこと、およびアフリカ諸国の経済の自律性を確立することが最重要課題であると示されている。貿易投資の促進に向け、国務省、商務省、USAID、USTR等の関係機関は具体的なプランを策定するべく連携を深め協力しており、また国務省のイニシアティブにより地域経済の統合や米国企業のアフリカ進出を側面支援している。

 2000年に制定されたアフリカ成長機会法(AGOA:African Growth and Opportunity Act)もこの理念をサポートするものとして機能している。同法は、基準を満たしたアフリカ諸国に対し、米が国内法に基づき一方的に特恵を供与するというものであり、対象国は40か国(2012年時点)となっている3

 ② 中国

 中国の対アフリカ政策は、公式に発表された2つの対外方針文書、即ち2006年に発表された「対アフリカ政策」と2011年に発表された「対外援助白書」に示されている。「対アフリカ政策」では、互恵的関係に基づいた長期的観点での関係構築が基本方針として示されている。経済面での具体的アプローチとしては、後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)4からの輸入に当たり関税を免除する方針を掲げるとともに、「走出去」政策の推進に向け、中国企業への譲許的資金供与を通じたアフリカへの投資促進が謳われている。また、政治面では「一つの中国(one China)」原則が対アフリカ政策の基本であることを改めて明確に示している。

 2011年に発表された「対外援助白書」では、冒頭で「中国は発展途上国である」と述べ、中国の対外援助は南南協力の理念に基づくものであることを改めて表明し、内政不干渉の原則を貫くことで「自らの特色のあるモデル」を構築していく姿勢を明確に示している。

 ③ 両国による関税措置

 米国は前述のAGOAを通じ輸入を拡大させており、一般特恵関税制度に基づく無税対象約5,000品目に加え、AGOA向け1,835品目を足した計6,835品目が無税となっている。2011年時点で、アフリカからの輸入額のうち約7割がAGOAによる無税で輸入されており、さらにAGOAによる輸入の92%はナイジェリアやアンゴラからの石油が占めている5

 中国は2003年アディスアベバで開催された第2回中国-アフリカ協力フォーラム(FOCAC: Forum on China-Africa Cooperation)において、アフリカLDC諸国からの輸入品に関税免除品目を設けることを発表している。その後、2012年に北京で開催された第5回FOCACでは、本措置を拡大させるため、アフリカLDC諸国からの輸入に当たっては関税を撤廃する方針が掲げられた。WTOの資料によれば、アフリカを含むLDC諸国からの輸入のうち、98%は関税免除が適用されている。


3 対象国となる基準は以下2項目、①民主化が進んでおり、ガバナンスが良好、②輸出管理制度が整っている。現在のところ非適格国で主要な国はジンバブエやソマリア等。

4 LDCの認定は国連が行い 、認定の要件は以下3 点。①一人あたりGNI(2005-2007 年平均):905 US$以下、②人的資源開発の程度を表す指標であるHAI(Human Assets Index)が一定値以下、③外的ショックからの経済的脆弱性を表す指標であるEVI(Economic Vulnerability Index)が一定値以下。アンゴラ、DRコンゴ、モザンビーク、ザンビア等の資源国が現在LDCに認定されている。

5 米国は原油輸入に対して1bblにつき5.25~10.5¢の従量税を課しているが、AGOA諸国に対してはこれが免除される。(出典:「主要国の対アフリカ戦略」JETRO、2013)

2. 中国とアフリカの貿易関係の分析(各論)

 後半部では中国-アフリカ間の貿易関係の各論として、最近発表された2012年の中国通関統計における輸入量のデータを基に、中国の輸入量においてアフリカ依存度の高い鉱種を以下ピックアップし、最近の動向等について鉱種毎に考察してみたい。

(1) 銅

 粗銅及び電解精製用陽極銅(HSコード7402)に係る中国の輸入相手国を図5に示す。近年の旺盛な中国国内でのインフラ需要を背景とした銅の輸入量増加に伴い、チリのシェアが年々拡大しているものの、2012年はザンビアが輸入相手国第1位、シェア34%となっている。ザンビアでは有色金属公司がChambishi鉱山やLuanshya鉱山を操業しており、山元のChambishi銅製錬所(権益比率は有色金属60%、雲南銅業40%)で粗銅を生産している。

 第3位はDRコンゴ(18%)であり、1位のザンビアと3位のDRコンゴを合計すると全輸入量の52%をアフリカから調達していることになり、中国にとってアフリカは銅の供給ソースとして非常に重要な意味を持っていることが改めて分かる。

図5 中国の粗銅及び電解精製用陽極銅の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7402)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図5 中国の粗銅及び電解精製用陽極銅の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7402)

(2) プラチナ

 プラチナの用途別需要を世界的に見た場合、自動車触媒用(全需要の38%)と宝飾品(同33%)で全体の7割以上を占めているが、中国においては宝飾品需要が圧倒的に多く、需要量全体の83%を占めている。プラチナの輸入相手国第1位は南アであり、4割強のシェアとなっている(図6参照)。南アでは2010年に金川集団と中国アフリカ開発基金が、プラチナ鉱山を操業するWesizwe社の権益51%を878百万US$で取得しており、資源確保に向けた取組みがなされている。

 中国国民の所得向上を背景に、宝飾品用需要は今後も堅調に拡大すると予想され、また中国国内での自動車生産量増加によって触媒用需要も成長が見込まれることから、中国でのプラチナ需要は今後も拡大傾向が持続するものと考えられる。

図6 中国のプラチナの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7110.11)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図6 中国のプラチナの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7110.11)

(3) コバルト鉱石

 DRコンゴは世界のコバルト鉱石生産の約5割を占めているが、中国の輸入相手国としては94%の圧倒的なシェアを有している(図7参照)。中国は2008年、DRコンゴ政府への90億US$(後にIMFの調停により60億US$へ減額)規模の資金支援の見返りに、コバルト資源量620千t相当の探鉱・開発権を獲得しており、数年以内に生産が開始される見込みである。またコンゴ共和国も3%のシェアを有しており、両国を合計すると輸入量の97%がアフリカ産ということになる。中国国営企業である金川集団は世界第2位のコバルト生産者であり、DRコンゴ等から輸入した鉱石により国内でコバルト地金やコバルト酸化物の生産を行っている。

図7 中国のコバルト鉱石(精鉱を含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2605)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図7 中国のコバルト鉱石(精鉱を含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2605)

(4) クロム鉱石

 世界のクロム鉱石生産量第1位は南ア(8,750千t、シェア36%)であり、続いてインド(3,800千t、シェア16%)、カザフ(3,702千t、シェア15%)となっている6

 中国の輸入に関しては南アのシェアが高く、2012年は49%であった(図8参照)。南アでは2009年に五鉱資源有限公司が81百万US$を投資し、Townlands/Kookfonteinクロム鉱山の権益を取得している。

 中国では国内でのステンレス鋼生産の拡大に伴い、ここ数年クロム鉱石の輸入量は増えていたが、2012年は景気減速の影響を受け、対前年比1.5%減の9,299千tとなった。

図8 中国のクロム鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2610)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図8 中国のクロム鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2610)

(5) フェロクロム

 フェロクロムの最大輸入相手国は南アであり、2011年は63%のシェアであったが、2012年は54%に減少した(図9参照)。これは、南ア電力公社Eskomが2008年以降、電力価格を段階的に引き上げており、南ア産のフェロクロムの国際競争力が徐々に低下していることが原因の一つと考えられる。南アではSinosteelが2006年より、クロム生産大手のSamancorとJVで生産を行っている。

 またジンバブエに関しては、2007年にSinosteelがジンバブエ国内最大の高炭素フェロクロムメーカーZimascoを買収したことから、輸入量として1~2%のシェアがデータとして現れている。

図9 中国のフェロクロムの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7202.30)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図9 中国のフェロクロムの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7202.30)

(6) マンガン鉱石

 2011年以降、中国国内の粗鋼生産量増加のスピードが減速していることを受け、2012年のマンガン鉱石(HSコード2602)輸入量は対前年比4.7%減となった(図10参照)。輸入相手国別に見ると豪州が1位であるが、次いで南ア、ガーナ、ガボンの順となっており、地域で見た場合、これら3か国でマンガン鉱石全輸入量の45%を占め、豪州を上回るシェアとなっている。

図10 中国のマンガン鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2602)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図10 中国のマンガン鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2602)

(7) フェロマンガン

 フェロマンガンの輸入量及び相手国は年によって多少の変動が見られるが、2012年は南アが63%を占めた(図11参照)。また最近ザンビアからの輸入が増えてきており、2012年では南アとザンビアからの輸入量は全体の73%にまで至っている。

図11 中国のフェロマンガンの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7202.11)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図11 中国のフェロマンガンの輸入量と輸入相手国内訳(HSコード7202.11)

(8) タングステン鉱石

 中国は世界最大のタングステン生産国であり、2010年のタングステン精鉱の生産量は59,000 tと、世界全体の生産量の86%を占めている7。中国国内でのタングステン消費量の増加を背景に、輸入量も近年増加傾向を見せている。タングステン鉱石(精鉱含む)の主な輸入相手国はロシアとカナダであるが、最近、ルワンダの比率が上がってきており、2012年では16%のシェアとなっている(図12参照)。ルワンダ産のタングステンは、米国金融規制改革法(いわゆるDodd-Frank法)1502条で規定されるSEC(米証券取引委員会)への報告義務が本年より課されており、今後、同法の適用状況によってはルワンダからの輸入量に変化が発生することも予想される。

図12 中国のタングステン鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2611)

(出典:Global Trade Atlasのデータを基にJOGMEC作成)

図12 中国のタングステン鉱石(精鉱含む)の輸入量と輸入相手国内訳(HSコード2611)


6 2010年、ICDA Statistical Bulletinのデータ

7 USGSデータ

3. 所感

 中国鉱業協会の最近の発表によれば、2011年末までの中国企業によるアフリカでの金属資源分野への投資額は156億US$となり、中国による金属資源投資の実に75%がアフリカへ向けられていることになる。

 2012年の中国の経済成長率は7.8%となり、1999年以来12年ぶりに成長率が8%を割り込んだ。IMFが4月に発表した世界経済見通しによれば、2013年が8.0%、2014年は8.2%と前回予測(2013年1月)よりも若干下方修正されたものの、今後も8%台の成長が続くと予想されている。

 中国経済の持続的発展に伴い、中国企業によるアフリカへの金属資源投資は今後も拡大すると考えられる。他方、米国政府の米中経済安全保障委員会は、中国国営企業が政府系金融機関(中国輸出入銀行等)から受けている資金支援は、貿易歪曲のおそれがあるとして懸念を示しており8、今後アフリカにおいて両国の国益が衝突する可能性も否定できない。習新体制の中国が今後、世界での資源獲得においてどのような政策を具体的に展開していくか、引き続き注視して参りたい。


8 米国政府の米中経済安全保障委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)は2012年4月に発表したレポート「Export Assistance and the China Challenge」において、中国政府による国営企業に対する資金支援について懸念を示している。また、2012年11月14日に議会へ提出した報告書の中では、国営企業は政府の補助金により支援されているため、米国内での公正な競争を担保できないとして対米投資の際の審査を厳格化することも提言している。

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