閉じる

報告書&レポート

2013年7月25日 リマ事務所 岨中真洋
2013年46号

ペルーの2012年の鉱業と最近の動向

 2013年5月にエネルギー鉱山省が公表した資料によると、ペルーの2012年の輸出総額は45,639百万US$で2011年に比べて約1.4%減少し、その内、鉱産物輸出額の合計は全体の57%に当たる25,921百万US$であり、2011年に比べ5.3%の減少となった。一方で、鉱産物輸出額の8割を占める銅、亜鉛、金の2012年の鉱石生産量は、2011年と比較してほぼ横ばいである。

 本稿では、これら主要鉱種について、エネルギー鉱山省により公表された2012年の生産量とペルーの鉱業プロジェクト及び政策に関する最近の動向を概観する。

1.2012年の金属鉱石生産量

 ペルーにおける主要鉱種の2012年の生産量、世界生産量及び世界順位を表1に、また、銅、亜鉛及び金の過去10年の生産量の推移を図1に示す。

表1.金属鉱石生産量(2012年)

鉱種 2011年
ペルー
生産量
2012年
ペルー
生産量
増減 2012年
世界
生産量
2012年
ペルー
世界シェア
2012年
世界順位
( )は前年順位
銅(千t) 1,235.3 1,298.6 5.1% 16,740.0 7.8% 3(3)
亜鉛(千t) 1,256.4 1,281.0 2.0% 13,629.0 9.4% 3(3)
鉛(千t) 230.2 248.7 8.0% 5,265.0 4.7% 4(4)
金(t) 166.2 161.3 -2.9% 2,592.1 6.2% 6(6)
銀(t) 3,418.9 3,479.1 1.8% 25,176.5 13.8% 3(3)
錫(千t) 28.9 26.1 -9.7% 276.2 9.4% 3(3)
モリブデン(千t) 19.1 16.8 -12.0% 264.7 6.3% 4(4)

「出典:ペルー生産量:エネルギー鉱山省

世界生産量及び世界順位-(銅:ICSG Copper Bulletin March 2013),(亜鉛・鉛:ILZSG Lead and Zinc Statistics April 2013),(その他:World Metal Statistics April 2013)」

図1.金属鉱石生産量の推移(2003~2012年)

図1.金属鉱石生産量の推移(2003~2012年)

(1) 銅
 2012年のペルーの銅生産量は1,298.6千tであり、2011年比で5%の増加となった。2012年の世界の銅生産量は、2011年比で4.6%増加して16,740千tとなり、ペルーの世界順位は、チリ、中国に次いで世界第3位を保っている。ペルーの銅生産量は、世界の伸びと同程度の増加であり、2009年以来の銅生産量減少傾向に回復の兆しが見られた。

 2012年の生産量を鉱山別にみると、ペルー最大のAntamina鉱山が拡張工事を完了、2012年3月からフル生産を開始し、2012年合計で116千t(33%)の増産になった一方で、Glencore XstrataのTintaya鉱山は、鉱量枯渇により43千t(46%)の減産となった(表2)。

 ペルーにおける銅の生産は、外資が操業する上位5鉱山が全体の85%を占めており(図2)、今後のペルーの銅の生産推移は、これら5鉱山の生産動向と、新規開発プロジェクトの進捗が鍵を握っていると言える。

表2.ペルー・上位10銅鉱山の生産量(2012年)


鉱山名 権益所有企業 2011年
生産量(t)
2012年生産量(t) 増減
合 計 精鉱 SX-EW
1 Antamina BHP Billiton:33.75%、
Glencore Xstrata:33.75%、
Teck Resources:22.5%、
三菱商事:10%
347,059 462,832 462,832 0 33.4%
2 Cerro Verde Freeport McMoRan:53.56%、
Buenaventura:19.35%、
住友金属鉱山:16.8%、
住友商事:4.2%
302,904 278,813 224,972 53,841 -8.0%
3 Cuajone Southern Copper
(Grupo Mexico:80.9%)
143,626 161,732 158,804 2,928 12.6%
4 Toquepala Southern Copper
(Grupo Mexico:80.9%)
152,214 149,379 120,113 29,266 -1.9%
5 Tintaya Glencore Xstrata 95,262 51,875 43,031 8,844 -45.5%
6 Cerro Corona Gold Fields:98.5% 40,245 37,673 37,673 0 -6.4%
7 Cerro Lindo Milpo
(Votorantim:50.06%)
23,259 29,929 29,929 0 28.7%
8 Colquijirca El Brocal
(Buenaventura:53.76%)
24,347 24,000 24,000 0 -1.4%
9 Condestable Iberian Minerals 22,576 20,887 20,887 0 -7.5%
10 Cobriza Doe Run 20,313 20,258 20,258 0 -0.3%
    1,171,805 1,237,378 1,142,499 94,879 5.6%
  その他   63,540 61,186 55,058 6,128 -3.7%
  総 計   1,235,345 1,298,564 1,197,557 101,007 5.1%

「出典:エネルギー鉱山省」

図2.上位5銅鉱山の占める割合

図2.上位5銅鉱山の占める割合

(2) 亜鉛
 2012年の亜鉛の生産量は1,281.0千tとなり、2011年比で25千t(2.0%)の微増で、世界順位も中国、オーストラリアに次ぎ、世界第3位と変化がなかった。ペルーにおける亜鉛の生産量は、2008年の1,602.6千tをピークに減少傾向が続いてきたが、未だ明瞭な増加に転じてはいない(図1)。

 生産量を個別にみると、ペルーの亜鉛生産量の2割を占めるAntamina鉱山が銅生産に力点を置いており、相対的に亜鉛品位が低く銅品位が高い鉱石が採掘されているため亜鉛生産量は横ばいである(表3)。ペルーの亜鉛生産量は、同鉱山の生産動向に大きく左右される状況となっている。

 亜鉛価格低迷のため一時休止していたIscaycruz鉱山は2010年4月から生産を再開し、2011年にはペルー第2位の亜鉛鉱山に返り咲いたが、2012年は2011年比で28%減産とふるわず、2008年レベルの生産量(175千t/年)の約半分(88千t/年)であった。

 一方、Iberian Minerals社のCatalina Huanca鉱山は、2011年2月の豪雨により5月までの約4ヶ月間操業が止まり、同年の亜鉛生産量が22千tに留まったが、2012年には設備のフル稼働により生産量を75%増加させて39千tとなり、ペルー国内第9位に入った。

表3.ペルー・上位10亜鉛鉱山の生産量(2012年)


鉱山名 権益所有企業 2011年
生産量(t)
2012年
生産量(t)
増減
1 Antamina BHP Billiton:33.75%Glencore Xstrata:33.75%、
Teck Resources:22.5%、三菱商事:10%
270,457 269,989 -0.2%
2 Cerro Lindo Milpo (Votorantim:50.06%) 96,157 114,038 18.6%
3 Chungar Volcan 103,786 99,217 -4.4%
4 San Cristobal Volcan 87,289 87,848 0.6%
5 Iscaycruz Glencore Xstrata (97%) 121,103 87,617 -27.7%
6 El Porvenir Milpo (Votorantim:50.06%) 65,191 71,956 10.4%
7 Cerro de Pasco Volcan 64,370 49,557 -23.0%
8 Atacocha Milpo (Votorantim:50.06%) 47,893 45,461 -5.1%
9 Catalina Huanca Iberian Minerals (98.73%) 22,073 38,670 75.2%
10 Andaychagua Volcan 32,819 37,463 14.2%
    911,138 901,816 -1.0%
  その他   345,245 379,159 9.8%
  総 計   1,256,383 1,280,975 2.0%

「出典:エネルギー鉱山省」

図3.上位5亜鉛鉱山の占める割合

図3.上位5亜鉛鉱山の占める割合

(3) 金
 2012年の金の生産量は2011年とほぼ同等の161 tを維持したものの、かつては年間200 tを超えていた金の生産量も近年は160 t台前半まで減少している(図1)。

 2012年の生産量を鉱山別にみると、2005年には104 tの金を生産したペルー最大のYanacocha鉱山は、2011年比で1.6 t(4.1%)の増加にとどまった(表4)。

 一方、Rio Alto社のLa Arena鉱山は、2011年5月に新たに生産を開始した金鉱山で、2011年内は徐々に操業規模を拡大させ、2012年1月から本格操業に入った結果、金生産量は2011年の1.7 tから6.2 t(275%)に増加させた。

 なお、投資規模が48億US$と大きく、年間約20 tの金の生産が期待されていたNewmont及びBuenaventura社が推進するMinas Conga 金プロジェクト(Cajamarca県)は、反鉱業運動により2012年8月にプロジェクトの中断に至った。

表4.ペルー・上位10金鉱山の生産量(2012年)


鉱山名 権益所有企業 2011年
生産量
(kg)
2012年
生産量
(kg)
増減
1 Yanacocha Newmont:51.35%、
Buenaventura:43.65%、IFC:5%
40,221 41,865 4.1%
2 Lagunas Norte Barrick Gold 23,726 23,456 -1.1%
3 M.D.D Madre de Dios 22,490 11,412 -49.3%
4 Orcopampa Buenaventura 8,116 7,417 -8.6%
5 La Arena Rio Alto 1,656 6,214 275.2%
6 Horizonte-Curaubamba Consorcio Minero Horizonte 5,811 5,727 -1.4%
7 Tucari Aruntani 6,194 5,531 -10.7%
8 Cerro Corona Gold Fields 5,232 5,508 5.3%
9 Retamas Minera Aurifera Retamas 5,160 5,465 5.9%
10 Santa Rosa Minera Aurifera Santa Rosa 5,660 4,994 -11.8%
    124,266 117,589 -5.4%
  その他   41,921 43,737 4.3%
  総 計   166,187 161,326 -2.9%

「出典:エネルギー鉱山省」

図4.上位5金鉱山の占める割合

図4.上位5金鉱山の占める割合

2.2012年の地金生産量

 米国Doe Run社が所有するLa Oroya製錬所は、2008年には銅地金を54千t、亜鉛地金を43千t、鉛地金を114千t生産していたが、資金繰りの悪化によって2009年半ばから操業を停止していた。2010年末には債権者会議で一旦会社清算を決定したが、ピークを過ぎたとは言え依然金属価格が高く、製錬工程の環境対策が一部で進んだ状況から、2012年7月末に銅、亜鉛の製錬再開を発表、2012年9月に銅と亜鉛の製錬を再開した。その後2013年4月には債権者会議において清算手続きを中止し、会社更生後にHuancavelica県のCobriza銅鉱山とともに売却することが決定された。

 一方、Cajamarquilla製錬所では生産設備の拡張工事の結果、亜鉛地金の生産量が2009年の140千tから2011年の313千tへとおよそ2.2倍の増産を達成し、2012年も順調に操業は推移した(表5)。

表5.ペルー・地金生産量(2012年)

製錬所名 権益所有企業 2011年
生産量(t)
2012年
生産量(t)
増減 備考
Ilo Southern Copper
(Grupo Mexico:80.9%)
223,113 203,865 -8.6%  
La Oroya Doe Run 0 1,934 2012年7月末生産再開
Cajamarquilla Votorantim 4,206 4,320 2.7%  
合 計   227,319 210,119 -7.6%  

Cajamarquilla Votorantim 313,714 315,893 0.7%  
La Oroya Doe Run 0 3,387 2012年7月末生産再開
合 計   313,714 319,280 1.8%  
La Oroya Doe Run 0 0 (生産データ無し)
合 計   0 0  
Funsur Minsur 32,290 24,811 -23.2%  
合 計   32,290 24,811 -23.2%  

「出典:エネルギー鉱山省」

3.鉱業投資の動向

 ペルーでは、2011年7月に左派のウマラ政権が誕生し、反自由主義経済や民族主義を打ち出すことが懸念されたが、当初の方針は中道寄りに変換され、民間投資を促進する経済政策が継続されている。また、鉱業ロイヤルティ法の改正、鉱業特別税及び鉱業特別賦課金の新設など鉱業税制が変更・強化され、鉱業界からは一定の評価をもって受け取られており、鉱山企業各社による鉱業投資が継続されている。

 エネルギー鉱山省によると、2012年のペルーの鉱業投資額は過去最高の85.5億US$に達し、2011年の72.4億US$に比べ18%の伸びを示し、2008年から2012年までの5年間では5.0倍に増加している(図5)。

 2012年に最も鉱業投資額が多かったのはJunín県(14.5億US$)で、以下Cajamarca県(13.0億US$)、Apurimac県(10.5億US$)、Ancash県(9.1億US$)、Arequipa県(8.0億US$)と続く。鉱業投資額を企業毎に見ると、2012年に最も鉱業投資額が多かったのはChinalco(11.8億US$)で、以下Xstrata Las Bambas社(10.3億US$)、Yanacocha社(10.2億US$)、Antamina社(6.6億US$)、Cerro Verde社(6.0億US$)、Xstrata Tintaya社(4.3億US$)と続く。

 2012年の鉱業投資額85.5億US$のうち、探鉱費は8.91億US$(10.4%)で過去最高を記録したが、探鉱費の伸びは、対前年比で134.5%(2009年)、56.3%(2010年)、が40.4%(2011年)、3.0%(2012年)と、近年は探鉱費の伸び幅が頭打ち傾向にある。

図5.ペルーにおける鉱業投資額の推移

図5.ペルーにおける鉱業投資額の推移

4.進行中の鉱業プロジェクト

 2013年4月のエネルギー鉱山省発表によると、鉱山拡張、鉱山開発、探鉱などの主要プロジェクトが47件あるとされ、これら主要プロジェクトによるプロジェクト実施期間中の投資予定額は合計で538億US$に上る。

 主要47プロジェクトは、鉱山拡張9件、環境影響評価(EIA)書承認済み~鉱山開発工事中9件、EIA審査中6件、探鉱段階23件であり、探鉱が初期段階であるものや小規模なものを含まない。また、47プロジェクトの内、25件は銅ないし銅を主対象とするプロジェクトである。

 今後のEIA承認手続き等の動向次第ではあるが、現時点で比較的早期の生産開始や増産が見込まれている主な鉱業プロジェクトを以下及び表6に示す。

表6.ペルー銅開発プロジェクト・増産計画

プロジェクト名
(所在地)
企業名 投資額
(百万US$)
銅生産量 生産開始年 ステージ
Cuajone銅鉱山
拡張計画(Moquegua県)
Southern Copper 300 22千t 2013 拡張工事
Toromocho銅プロジェクト
(Junin県)
Chinalco 3,500 275千t 2013 EIA承認済み
Toquepala銅・モリブデン鉱山
拡張計画(Tacna県)
Southern Copper 600 100千t 2014 拡張工事
Constancia銅プロジェクト
(Cuzco県)
HudBay Minerals 1,546 80千t 2014 EIA承認済み
Las Bambas銅プロジェクト
(Apurimac県)
Glencore Xstrata 5,200 315千t 2014 EIA承認済み
Marcobre(Mina Justa)
銅プロジェクト(Ica県)
Minsur、KORES、
LS-Nikko Copper
744 110千t 2015 探鉱
Haquira銅プロジェクト
(Apurimac県)
Antares Minerals 2,800 190千t 2015 探鉱
Los Chancas銅プロジェクト
(Apurimac県)
Southern Copper 1,560 80千t 2015 探鉱
Tia Maria銅プロジェクト
(Arequipa県)
Southern Copper 1,000 120千t 2015 探鉱(EIA再調査)
Cerro Verde銅・モリブデン
鉱山拡張計画(Arequipa県)
Freeport McMoRan
Buenaventura
住友金属鉱山、住友商事
4,400 272千t 2016 拡張工事
Quellaveco銅プロジェクト
(Moquegua県)
Anglo American
三菱商事
3,300 225千t 2016 EIA承認済み
Pukaqaqa銅プロジェクト
(Huancavelica県)
Votorantim 630 40千t 2016 EIA審査中
Michiquillay銅プロジェクト
(Cajamarca県)
Anglo Amercan 700 187千t 2016 探鉱
El Galeno銅・モリブデン・金・
銀プロジェクト(Cajamarca県)
中国五鉱集団、江西銅業 2,500 350千t 2016 探鉱
Magistral銅プロジェクト
(Ancash県)
Votorantim 750 31.1千t 2016 探鉱
Rondoni銅プロジェクト
(Huanuco県)
Volcan 350 50千t 2016 探鉱

「出典:各種資料からJOGMEC作成」

(1) Cuajone銅鉱山拡張プロジェクト

 Cuajone銅鉱山はペルー南部のMoquegua県に位置し、Gurpo Mexico系列のSouthern Copper社が経営する。2012年には、浮遊選鉱及びSX-EWで合計162千tの銅を生産した、ペルー第3位の銅鉱山である。拡張工事の実施により、2013年下半期には22千tの増産を予定している。

(2) Toromocho銅プロジェクト

 Toromocho銅プロジェクトはペルー中部のJunin県に位置しており、中国アルミ業公司による新規鉱山開発プロジェクトである。2013年1月には、プロジェクト投資額は3,500百万US$と発表されていたが、最近の報道(2013年6月18日)によると、プロジェクトの拡大により投資総額も4,820百万US$に増資された。

(3) Toquepala銅・モリブデン鉱山拡張プロジェクト

 Toquepala銅・モリブデン鉱山はペルー南部のTacna県に位置しており、Gurpo Mexico系列のSouthern Copper社が経営する。拡張プロジェクトは、1日当たりの粗鉱処理量を6万tから12万tに増やすもので、ミルや精鉱輸送用ベルトコンベアなどが増設される。

(4) Constancia銅プロジェクト

 Constancia銅プロジェクトは、ペルー南部のCuzco県に位置しており、カナダHudBay Minerals社が進める新規鉱山開発プロジェクトである。現在鉱山建設中であるが、2014年に生産を開始し、2015年第2四半期にはフル生産体制になると見込まれている。

(5) Las Bambas銅プロジェクト

 Las Bambas銅プロジェクトはペルー南部のApurímac県に位置し、Glencore Xstrataが進める新規鉱山開発プロジェクトである。同プロジェクトは、ペルーの鉱業プロジェクトの中でも最大級のもので、投資総額は5,200百万US$とされている。2013年5月現在、鉱山建設は30%まで進んでいると報道されている。

 同プロジェクトは評価額が4,400~7,000百万US$とされており、2013年5月末のGlencoreとXstrata(双方ともスイス本社)の合併に関連して売却される見込みで、最近の報道では2013年7月半ばに売却実施の発表が行われ、2013年9月半ばには売却先が発表されると伝えられている。

 エネルギー鉱山省によると、Las Bambas鉱山は、銅の年間生産量31.5万tで、2014年に生産開始とされるが、プロジェクト売却が完了するのは2015年6月との報道もある。また、2013年6月26日の地元紙によれば、同省はプロジェクトの買収について中国アルミ業公司(Chinalco)が関心を表明したこと及びプロジェクトへの関心を持つ多くの企業が既に政府に接触していることを伝えている。

(6) Quellaveco銅プロジェクト

 Quellaveco銅プロジェクトはペルー南部のMoquegua権に位置しており、Anglo Americanが81.9%、三菱商事が18.1%の権益を保有する新規鉱山開発プロジェクトである。

 同プロジェクトは、2010年に環境影響評価(EIA)が承認されており、2013年1月、Anglo Americanはプロジェクト開発の実施をエネルギー鉱山省に対して申請し、同省よりプロジェクトの建設に必要となる許可が下りたが、水資源庁(ANA)による水利用については承認待ち段階であると伝えられている。

 2013年5月には、Anglo American CEOのCutifani氏がペルーを訪問し、同プロジェクトに関してMoquegua県のVizcarra知事との会談を行い、プロジェクトにおける環境汚染の防止や飲用水・農業用水を利用しないこと等の、同県とAnglo Americanとの合意事項を確認したとされるが、同CEOは、銅の価格推移や開発コスト等に基づくプロジェクトの採算性評価を未だ実施中であると発言している。

図6. ペルーの主要鉱山・製錬所・鉱業プロジェクト位置図

図6. ペルーの主要鉱山・製錬所・鉱業プロジェクト位置図

(本文あるいは図表で取り上げた鉱山・プロジェクト等を示した。)

5.持続的投資環境認証サービス局(SENACE)の設立

 2012年11月、ペルー国会は、国家環境影響評価システム法(法律27446)及びその施行細則に規定される環境影響詳細評価(EIA-d)の審査・承認を行う、環境省傘下の機関である「持続的投資環境認証サービス局」(SENACE)の設立法案を賛成多数で承認し、翌12月12日、Humala大統領は同法を公布した。

 SENACEの設立によりペルーでは、他の南米諸国(アルゼンチン、チリ、ボリビア、コロンビア、ブラジル、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、ベネズエラ)等と同じく、独立機関によるEIAの審査が開始されることになる。SENACEは環境省傘下の特殊専門機関であり、予算を有する独立法人で、環境省が統括する国家環境影響評価システム(SEIA)の一部を構成する。

 SENACEが審査の対象とするEIA-dは、プロジェクトの特徴、規模、位置等により深刻な環境影響を与える可能性がある活動、建設、その他工事や商業活動を伴う、全国的或いは複数の地方レベルにおける公共・民間或いは官民共同投資プロジェクトのものである。

 SENACEの機能は、同設立法第3条によると、

A) 本法第1条に基づく環境影響詳細評価の承認

B) 環境コンサルタントの登録業務及び管轄機関により承認、或いは却下された全国規模又は地方規模の環境ライセンスの登録・更新業務。なお、環境評価監査局(OEFA)の有する監査・罰則適用権限とは、別途これらの業務を実施するものとする。

C) 必要に応じた、公的環境による専門的見解の申請

D) 政府の調整メカニズムや地域社会との関係、市民参加等を含めた、環境影響詳細評価の評価方法の継続的な改善を目的とした提案の実施

E) 環境影響詳細評価の承認プロセスを実施する単一窓口の設置

とされている。また、SENACEの最高権限組織として、環境大臣(会長)、経済財務大臣、農業大臣、エネルギー鉱山大臣、生産大臣、保健大臣の6大臣から構成されるSENACE審議会が設置されている。

 SENACE設立法末尾の移行・補完規定には、SENACE設立・体制構築・機能移転の道筋が定められており、現在、これに沿って業務開始に向け準備中であり、2013年3月のPulgar-Vidal環境大臣談話によると、SENACEによるEIA-dの審査・承認業務は2014年4月からになる見通しである。

6.先住民事前協議に関する混迷

 ペルー政府は、2012年4月3日付けで先住民事前協議法(法律29785)の施行細則を公布した。

 先住民事前協議法及び施行細則は、鉱業や炭化水素事業等の天然資源開発プロジェクトが先住民コミュニティの集団的権利に対して直接的な影響を及ぼす場合、政府はこれらプロジェクトの探鉱や開発を承認・許可する前に、政府と先住民コミュニティの間で事前協議を行う義務があると定めている。

 2012年10月には、最初の事前協議として、2013年第1四半期にLoreto県で実施予定の石油鉱区の開発契約締結に先立つ先住民事前協議について、国会のアンデス・アマゾン・アフリカ系社会環境委員会は、既に7つの集落と話し合いを進めていると伝えられた。

 鉱物資源開発では、Candente Copper社(本社:カナダ)が進めるCañariaco銅プロジェクト(Lambayeque県)に関して、同プロジェクト実施地域の住民で構成されるSan Juan de Cañarisコミュニティとの事前協議が必要とする環境省と、プロジェクトの実施は既に承認済みであり事前協議実施に反対するエネルギー鉱山省とが対立するという事態となった。このため、先住民事前協議法施行細則の適用に際して先住民専門機関としての役割を果たす、文化省異文化受容次官室のLa Negra 異文化受容次官は、2013年5月初旬に辞任した(2013年6月、異文化受容次官にPaulo Vilca氏が新たに就任)。

 La Negra 異文化受容次官辞任後の2013年5月半ば、Peirano文化大臣は、先住民事前協議法で規定されている先住民及び種族民のデータベースの公表は、混乱や無駄な期待など、多くの問題を招くとの考えから取り止め、投資プロジェクトによって影響があると考えられるコミュニティからの申請に基づいて、個別に先住民族として認めるか否かの判断を行う仕組みを採用すると発表した。これに対し、一部の国会議員からは、政府に対する先住民コミュニティの信頼を損なうものだとの批判が上がり、混迷の度が深まっている。

7.おわりに

 ペルーは、輸出総額の57%を鉱産物が占める鉱業国である。同国の鉱業生産を拡大して鉱業を発展させるためには、探鉱の実施と埋蔵量の拡大が不可欠であり、多くの探鉱投資を必要とする。ペルーに鉱業投資を呼び込み鉱業を促進することは、経済の発展と平等な社会の構築の両立を目指すウマラ政権にとって重要な課題であるが、それを阻害している最大の要因の一つがペルー国内各所で頻発する反鉱業運動の存在である。

 前述のとおり、2012年8月にはMinas Conga金プロジェクトが反鉱業運動により事実上のプロジェクト中断の事態に至った。また2012年末には、Toromocho銅プロジェクト(Junín県、Chinalco)やCañariaco銅プロジェクト(Lambayeque県、Candente Copper社)でも抗議行動が発生している。2013年5月中旬、Candente Copper社は、金属価格下落とコスト上昇のためCañariaco銅プロジェクトの探鉱活動を一時中止すると発表したが、専門家らは、活動中止の主な原因は地域住民による反鉱業運動であると指摘している。さらに2013年6月中旬、Minas Conga金プロジェクトで、反対派による破壊活動を伴う反鉱業運動が再開された。

 政府は、反鉱業運動等の社会争議の発生を未然に防止すべく先住民事前協議法を制定して、反鉱業を掲げる地元住民や自治体との協議をとおして問題の解決を図るなどの対応を見せているが、反鉱業問題を解決するためには、政府、企業と住民の対話が重要であることはもちろんのこと、鉱山地域の地方自治体に交付される鉱業カノン税やロイヤルティを有効に活用して地域住民が鉱業による恩恵を得られるためのより良い仕組みを構築することが重要である。

 エネルギー鉱山省によると、2012年にペルー政府が地方政府に送付した鉱業カノン税及び鉱業ロイヤルティの総額は、5,539百万ソーレス(約2,134百万US$)であるが、投資やプロジェクト実施能力の不足により、地方政府の予算執行率は平均50%程度に留まっていると言われている。このような状況から、2013年4月、Merinoエネルギー鉱山大臣は、地方政府による鉱業カノン税やロイヤルティの利用状況を改善し、効率性を高めることを目的として両者を規定する法律の見直しをすると発表した。また同大臣は、法律の見直しを2013年内に終えるため、既に経済財政省との調整を行っているとコメントしている。

 更に、鉱業への不信感の元凶となっている違法鉱業への厳格な対応、廃止鉱山の鉱害防止対策の着実な実施なども重要な政策課題であり、鉱業国ペルーが抱える課題は山積しているものの、今後のウマラ政権の手腕に期待したい。

ページトップへ