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報告書&レポート

2013年8月1日 金属企画部、金属環境事業部、資源探査部、ロンドン事務所
2013年49号

ザンビア共和国における鉱害防止・探査技術セミナー報告-The JOGMEC Seminar on Sustainable Development of Zambia’s Mining Sector-

 ザンビアでは初となる鉱害防止・探査技術セミナー「The JOGMEC Seminar on Sustainable Development of Zambia’s Mining Sector」が、経済産業省、ザンビア鉱山・エネルギー・水開発省(以下、鉱山省)、JOGMECの共催により、2013年6月21日にザンビア共和国ルサカ市内のNew Government Complexに於いて開催され、93名が参加した。

 本稿は、鉱害防止政策や鉱害防止技術に関する日本の経験や知見を同国に伝え、持続可能な鉱山開発に貢献することを目的とした本セミナーの概要を報告するものである。

1. はじめに

 ザンビア共和国における鉱業は、同国GDPの約10%を占め、毎年前年比6%以上の経済成長を牽引している。その中でも、特に銅産業は輸出額全体の約7割を占め、サッカーの同国ナショナルチームが「Chipolopolo(銅の弾丸)」の愛称で呼ばれるほど、国民にとって身近な存在である。

 その一方で、環境団体のブラックスミス研究所が2007年に発表した『世界10大環境汚染地域』に中央州カブウェ市の鉛鉱害汚染地域が入るなど、深刻な鉱害問題も抱えており、環境保護及び汚染管理法(1990年法第12号)のほか、1997年に制定された鉱業・鉱物(環境)規制や環境保護・汚染管理(環境影響評価)規則は存在するものの、対策が追い付いていない現状がある。

 そうした中で、JOGMECでは、2009年に同国と鉱物資源分野における協力に関して覚書を締結して以来、人材育成及び共同探査等の分野において協力関係を構築してきており、本年5月17日には、JOGMEC、同国鉱山省及び商務貿易産業省の3者により新たに持続可能な開発を促進するための協力の一貫としてのセミナーの実施を含めた覚書を、当時来日したYamfwa Mukanga鉱山大臣との間で締結した。また、本セミナーの開催は、5月18日に東京で開催された日アフリカ資源大臣会合において、茂木経済産業大臣より提案されて参加国の賛同を得た、「日アフリカ資源開発促進イニシアティブ」の協力の第一歩ともなった。

2. 内容

 本セミナーは、2013年6月21日午後に、ザンビア共和国ルサカ市内のNew Government Complexにおいて開催され、ザンビア側からは鉱山省、地質調査所、小規模鉱業セクター、金融機関及び環境保護団体から、また、日本側からは在ザンビア日本大使館、経済産業省、JICA、日系企業などから93名が参加した。

 冒頭、長友哲次JOGMEC金属・石炭事業支援本部長による開会の辞に続いて、日本側から江川明夫在ザンビア日本国大使が、ザンビア側からはChristopher Yaluma鉱山大臣が挨拶を行った。江川大使は、挨拶の中で日本の鉱害経験に触れ、本セミナーがザンビア鉱業セクターの持続的発展に寄与することを期待すると述べた。Yaluma鉱山大臣は、鉱害防止対策は社会全体の益になると同時に、鉱業セクター自体の安定的発展にも繋がると述べ、鉱害防止分野での日本との協働を進めていくことに期待を示した。

 続いて、日本側4件、ザンビア側2件の講演を交互に行った。プログラムは本稿最下段に示す。本稿では、ザンビア側の講演内容を中心に紹介する。

(1) ”Mineral Exploration Potential in Zambia“ について
   (地質調査所 Ezekiah Chikambwe上級地質技師)

 ザンビア国内に於ける鉱物資源探査の進捗状況の説明があった。未探査地域が国土の42%を占める同国政府保有のデータに基づき、鉱物資源ポテンシャルの可能性を強調しつつ、更なる投資を期待する内容だった(図.1参照)。鉱物資源ポテンシャルの高さについては、本セミナー前に開催された第3回ザンビア国際鉱業大会においても、Michael Chilufya Sata大統領の代理として出席したGuy Scott副大統領が挨拶の中で言及し、国民の生活向上及び雇用創出のためにも鉱業は最も重要であると述べ、鉱物資源ポテンシャルの高さを示しながら、海外からの投資呼び込みに積極的な姿勢を前面に押し出していた。

図1.ザンビア鉱物探査ポテンシャル

図1.ザンビア鉱物探査ポテンシャル

(2) ”Legal system and works on mine pollution prevention in Zambia”について
   (鉱山保安局 Aaron Soko上級監査官)

 同国の鉱害防止のための2大法令である、2008年制定の鉱山・鉱物開発法(MMDA)と、2011年制定の環境管理法(EMA)についての詳細な説明がなされた。以下にその概略をまとめる。

① 鉱山・鉱物開発法(MMDA: Mines and Minerals Development Act)
  MMDAは、以下の4規則から成る。

 1 鉱業規則 施行年 1994
英文名称 The Mining (Mineral Resource Extraction) Regulations
適用範囲 鉱物資源抽出
主要事項 硫黄酸化物排出量規制、罰金設定
* 大気中に排出される硫黄1kgにつき10クワチャ(約200円)
 2 鉱業・鉱物(環境)規則 施行年 1997
英文名称 The Mines and Minerals (Environmental) Regulations
適用範囲 環境保全
主要事項 環境影響評価、鉱業廃棄物処理・閉山基準、有害物質処理、労働環境整備
 3 鉱業(環境保護基金)規則 施行年 1998
英文名称 The Mining (Environmental Protection Fund) Regulations
適用範囲 環境保護基金
主要事項 ・ 基金設立の目的 
i) 上記2鉱業・鉱物規則を実施する鉱山開発者への支援 
ii) 鉱業権者が存在する鉱山のリハビリテーション義務不履行により被る政府の損害に対する保護
・ 開発者による基金積立額は、各社の業績により算出される。
・ 基金は、鉱山省次官、鉱山保安局長、ZEMA(Zambia Environment Management Agency)の代表者、財務経済省の代表者、基金積立を行う開発者の代表者(7人)で管理運営される。
 4 鉱業・鉱物資源開発(ウラン及びその他放射性鉱物資源の概査、鉱業)規則 施行年 2008
英文名称 The Mines and Minerals Development (Prospecting, Mining and Milling of Uranium Ores and Other Radioactive Mineral Ores) Regulations
適用範囲 探査及びウラン他放射性鉱物の探査、採掘、製錬
主要事項 探査及び製錬前の環境影響評価、許可申請の義務化

 ② 環境管理法(EMA : Environment Management Act)
   EMAは、以下の4規則から成る。

 1 有害廃棄物管理規則 施行年 2001
英文名称 Hazardous Waste Management
適用範囲 有害廃棄物管理
主要事項 モニタリング、保管、廃棄、輸出入等、有害廃棄物の取扱い全般を規定
 2 環境影響評価規則 施行年 1997
英文名称 Environmental Impact Assessment Regulations
適用範囲 環境影響評価
主要事項 鉱山開発者への規則順守義務の明示
 3 大気汚染防止規則 施行年 1997
英文名称 The Air Pollution Control (Licensing and Emissions Standards) Regulations
適用範囲 認可、排出基準
主要事項 各化学物質(SO2、 NOx、CO2 等)の排出上限値設定
 4 水環境保全規則 施行年 1993
英文名称 The Water Pollution Control (Effluent and Waste Water) Regulations
適用範囲 水質汚染・排水・汚水基準
主要事項 排水ライセンス取得の義務付け、毎月の水質検査の義務付け

 上記のように、ザンビアでは鉱山環境全般の基本的な法制度は整備されているものの、他の開発途上国と同様に実際の運用・実行面で多くの課題が存在し、これら諸規則が有機的に機能していない場合がある。質疑応答においても、これらの法令・規則が守られていない実状に関して、参加者から改善を期待する声が挙がったが、本意見に対する鉱山省関係者の説明では、現状は把握しているものの、対策が追い付いていない現状に終始したものであった。

 大規模鉱業者は、それら法令・規則を理解した上で鉱業活動を展開しているものと思料するが、いわゆる小規模鉱業者(Small Scale Miners、以下、SSMとする)は、鉱山環境分野に関する情報や知識が乏しい上、鉱害防止対策に投じる資金が無い、あるいは不足しているため、意図せずして様々な環境問題を引き起こしている現実があるようだ。

 これに関連し、ZCCM-IH(ザンビア銅公社)からは、鉱業だけではなく他セクターも横断する技術部門から派生する新部門“MAWE”の起ち上げに着手し、SSMを対象として資機材供給、銀行からの融資調達等の支援を行うとの情報提供があった。詳細は明らかにされていないが、SSMの鉱山環境分野に対する支援も併せて実施していくことを期待したい。

 なお、日本側からは、原田富雄経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部鉱物資源課長補佐より、アフリカにおける鉱物資源分野の持続可能な開発のための日本の政策について、鈴木哲夫JOGMEC資源探査部長より、ボツワナ・地質リモートセンシングセンター事業の概要説明及び事業成果報告とザンビア Mwinilunga州の地質図を例示しながらJOGMECの探査事業について紹介した。

 その他、鉱山環境分野においては、中村英克JOGMEC金属環境事業部企画課長代理より、鉱害防止対策の基礎的な考え方について、また、JOGMECの鉱害防止支援に関する取り組みに関して、古谷尚稔JOGMEC金属環境事業部調査技術課員より、鉱害防止技術手法を中心に紹介を行った

 これら講演に対しては、会場の多数を占めていたSSMより、地質関連情報の入手方法や低コストで可能な硫黄酸化物処理方法があるかなど、多くの質疑が寄せられた。

 最後に、長友本部長及びVictor Mutambo 鉱山省次官による閉会の挨拶があり、盛況のうちに終了した。

長友 哲次

長友 哲次

JOGMEC金属・石炭事業支援本部長
江川 明夫

江川 明夫

駐ザンビア特命全権大使
Christopher Yaluma

Christopher Yaluma

鉱山大臣
Victor Mutambo

Victor Mutambo

鉱山省次官

写真1.挨拶



原田 富雄
経済産業省資源エネルギー庁
資源・燃料部鉱物資源課長補佐


Ezekiah Chikambwe
ザンビア地質調査所
上級地質技師


鈴木 哲夫
JOGMEC資源探査部長
 


中村 英克
JOGMEC金属環境事業部
企画課長代理


Aaron Soko
鉱山省鉱山保安局
上級監察官


古谷 尚稔
JOGMEC金属環境事業部
調査技術課員

写真2.セミナー講演者

進行役のDelax Chillumbu鉱山省主任鉱山技師

進行役のDelax Chillumbu
鉱山省主任鉱山技師
セミナー会場

セミナー会場
 
質疑応答風景

質疑応答風景
 

写真3.会場の様子

3. おわりに

 93名の参加者の内、政府関係者の他、金融機関とSSM関係者の出席が目立った(図.2参照の)。質疑応答の際には、SSMから、「自分達は鉱害対策に対する財務的・技術的なサポートは受けておらず、政府は実質的な環境対策を怠っている」とのコメントがあり、その発言に対して会場が拍手で沸く一幕もあるなど、現場での環境に対する意識は決して低くなく、しかしながら、経済的な問題で足踏みが続いている状態が見て取れた。

 ザンビア政府は、鉱害防止対策には多額の費用を要するが、鉱業を付加価値化させて企業からの投資を呼び込むことによって、その地域の経済活性化・雇用の創出にもつながることを認識しており、引き続き体制の整備に取り組むとの見解(あるいは方針)が示された。次の一歩が同国鉱業の持続的発展に寄与する大きな一歩となることを期待したい。

図2. 参加者内訳

図2. 参加者内訳

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