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報告書&レポート

2013年8月8日 ロンドン事務所 森田健太郎
2013年50号

トルコ・マイニング・ショー2013(その1)-開会の辞、世界の鉱業の現状-

 2013年6月18日~20日、トルコ・イスタンブールにおいて「トルコ・マイニング・ショー2013」が開催された。トルコ・エネルギー天然資源省副大臣、同省鉱業総局、同省探査総局、投資促進庁、探鉱ジュニア企業、製精錬企業、関係大学、研究者、法務コンサルタント、ギリシャやアフガニスタン等周辺国の企業など、約150人が参加した。日本からは、JOGMECロンドン事務所が参加した。

 トルコの経済は年5%程度のペースで拡大している。この経済成長はサービス業や工業、農業が支えており、鉱業への依存度は必ずしも大きくはない。ただし近隣のEU諸国に対照すれば鉱業は制約されておらず、73種類存在する鉱物資源のうち53種類もの鉱物が生産されている。このような豊かな鉱物資源ポテンシャルにもかかわらず、ハイペースの経済成長に伴いトルコ国内での鉱物資源の需給はひっ迫している。一部の鉱種については大きく輸入に依存している。鉱物資源の安定供給のためには、より一層の投資促進、そのための鉱業法制の円滑な運用が課題となっている。

 今次「トルコ・マイニング・ショー2013」では、トルコの経済情勢、鉱業の現状、投資環境、鉱業法制、各企業の取組みなどについて講演があった。本稿ではこれらの概要を3回に分けて報告する。

 なお、プログラム等については、以下のWebサイトを参照されたい。

 http://www.terrapinn.com/exhibition/turkey-mining-show/programme.stm

1・ 開会の辞

Hasan Murat Mercanトルコ・エネルギー天然資源省副大臣

【世界の鉱業の歴史】

 鉱業分野は効果的な経済発展と市民生活の向上を支えてきた。先進国においては、18世紀から19世紀にかけて、経済成長における重要な役割を担ってきた。今日においても、製造業で大きな付加価値を生んでいる。それにもかかわらず、国家間でレアメタル、クリティカルミネラルの供給問題が発生している。持続可能な発展のためには、生産物、副産物の適切な管理が求められている。

【トルコの地質ポテンシャル】

 トルコは地質的にはアルプス・ヒマラヤ造山帯というとても活発な地帯に位置する。そのため、ホウ素、大理石、金、レアメタル、褐炭、地熱などの豊かな鉱床がある。しかも鉱床の位置は浅く、初期段階(early stage)で、持続可能な開発が期待できる。

【魅力的な投資環境】

 世界的に大型鉱床の発見が困難となる中で、トルコの鉱業ポテンシャルは高く利益が出やすいため、世界でもっともダイナミックな(投資の)目的地となった。米国、英国、ドイツ等の先進国が投資し、利益だけでなく新技術も共有している。次の10年間で200億US$を初期段階(early stage)に投資する。正しく効果的な投資計画が、産業化を促し地質ポテンシャルを最大限発揮することにつながる。

【トルコ政府の取組み】

 トルコ政府は鉱業が発展するよう促している。2010年の鉱業法改正で、トルコ市民、もしくは鉱業を目的に国内法に基づいて外資により設立された企業にのみ鉱業権が与えられることになった。今日トルコの鉱業がよりダイナミックとなったことを踏まえ、政府は、鉱業分野を政策的に支援するだけでなく、鉱業法をさらに改正する用意もある。鉱業法制をよりよくするため、鉱業が直面する困難を克服するため、様々なアイディアが議論されることを期待する。

【トルコ鉱業の発展に期待】

 トルコは成長し続ける。トルコのエネルギー分野、特に鉱業分野が大いに貢献することを期待する。今回のトルコ・マイニング・ショーで、世界の専門家を交えて、新技術、規制枠組み、持続可能な開発等について活発な意見交換が行われることを期待する。

2・ 世界の鉱業の現状

Tim Steinle, U.S. Global Investorsポートフォリオマネージャー

 鉱業分野の投資家は、コモディティ価格を“テコ (leverage) ”として株価・配当を上げることを求める。“テコ”とは具体的には、投資先企業が、 (1) 生産量の増加、(2)マージンの拡大または(3) 保有資本の最適化によって、効果的な鉱山会社として価値を加えること、及び(4) 借入によるバランスシートの改善、(5)配当によるキャッシュフローの増大または(6) 格付けの増幅効果によって、効果的な公開企業として価値を加えること、である。

 しかしながら2011年4月以降、多くの鉱山会社がコモディティ価格の低下傾向に苦戦してきた。金価格と金鉱山の株価も2011年初めより乖離し始めた。 (1)から(6)の投資家の期待について、金を扱う鉱山会社を中心に見ていきたい。

(1) 金生産量の増加について

 生産量は拡大していない。2006年から2011年まで年平均2%減少してきた。しかしながら今後も6%の事業成長が計画されている。投資家は「事業成長ではなく減少分の回復ではないか」「本当に出荷されるだろうか」と懐疑的である。

 過去10年間、例えばBarrick Gold社は、市場で調達した2百億US$を事業成長に投じたが15%の生産減少となった。Newmont Mining社も、市場で調達した160億US$を事業成長に投じたが34%の生産減少となった。“事業が成長する“という約束が守れないため最高経営責任者は交代となっている。2012年は少なくとも20人の最高経営責任者が辞任した。次の10年に計画されている鉱山プロジェクトは、「約束し過ぎ」であり出荷が不足(Over Promise/Under Deliver)するだろう。

 品位についても、2005年から2011年にかけて、世界の金鉱石平均品位は21%下落している。操業コストについてもインフレが広がっている。当社が99鉱山会社の過去3年間の1 t当たり/年平均の操業コストの変化率を並べたところ、平均(中央値)は11%/年であった。



(出典:各社報告書及びCIBC World Markets Inc.より講演者が作成)

図1. 世界の金鉱石平均品位の推移

(出典:各社報告書及びDundee Capital Marketsより講演者が作成)

図2. 過去3年間の操業コストの変化率の分布

(2) マージンの拡大について

 金を扱う鉱山会社にとって、マージンの伸びる速度は遅い。2002年以降、金価格は約5倍に上昇したのに、主要金生産者のマージンは約8%のまま横ばいである。むしろ資本支出が増えている。2000年から2012年にかけて、金1oz当たりの資本支出は608%増大し447$/ozとなった。年平均のインフレ率は18%である。

(出典:Bloomberg, Gold Fields Company Dataより講演者が作成)

図3. 金価格と金生産者のマージンの推移

(3) 保有資本の最適化について

 2002年以降、未探鉱地域を開発するための資本支出が年率32%で大きく増大している。しかし、資産買収は年率17%でありそれほど大きくない。保有資産の最適化が十分進んでいるとは言えない。

(4) 借入によるバランスシートの改善について

 2000年から2011年にかけて、金生産業者の市場における資金調達は、8割程度が株式の発行であって、長期借入は2割程度である。そのため、株式の数は年平均17%で増大している。

(出典:Bloombergより講演者が作成)

図4. 主要金生産者の資金調達

(5) 配当によるキャッシュフローの増大について

 配当利回りは、市場が利回りに飢える中、苦戦が続いている。主要金生産者の配当利回りは、S&P500及び鉱業全体の配当利回りが2004年以降増大したにもかかわらず低下し、現在はS&P500及び鉱業全体の配当利回を大きく下回っている。

(出典:Bloombergより講演者が作成)

図5. 配当利回りの推移

(6) 格付けの増幅効果について

 投資家は鉱業銘柄を格下げしている。2003年時点では、主要金生産者の格付けは、S&P500よりも高かったが、2003年以降続落し2011年にはS&P500とほぼ同じにまで落ち込んだ。

 以上(1)から(6)を見てきたが、いずれの項目についても鉱山会社は投資家の期待に応えられていない。それでは今後、投資家は鉱山会社に何を求めるだろうか。第一に自らの生産物に自信を持つこと、第二にキャッシュフローに焦点を当てること、第三に「約束し過ぎ」ずに出荷すること、である。

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