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報告書&レポート

2013年8月8日 ロンドン事務所 森田健太郎
2013年51号

トルコ・マイニング・ショー2013(その2)-トルコの地質構造、投資環境、鉱業法制-

3・ トルコの豊かな地下資源の探査

Abdulkerim Yorukogluトルコ・エネルギー天然資源省探査総局(MTA)副局長

【アルプス・ヒマラヤ造山帯】

 アルプス・ヒマラヤ造山帯は、アフリカプレート、中東プレート、インドプレートが集中して、昔のテチス海という地点で、ユーラシアとぶつかって形成された。テチス鉱床生成ベルト(Tethyan Metallogenic Belt)は、東地中海からトルコを通って中国に至っている。複雑な地質・地殻構造が探査を困難にしており、トルコは地質的・技術的には不利と言わざるを得ない。

 しかし未だに豊かな鉱床がある数少ない国の一つだ。トルコで金、銅が産出されるのは、このテチス鉱床生成ベルトに位置するためである。また金、銅以外にも広範な鉱床が存在する。

【MTAによる探査活動の歴史】

 1935年にMTA(現エネルギー天然資源省探査総局)が設立されて以降、トルコの鉱物探査が始まった。1960年代に2万5千分の1の地質図作成が始まり5,547枚作成した。今はほとんどがデジタル化され保存されている。

【トルコ経済における鉱業の割合】

 トルコGDPに占める鉱業の割合は、2000年には1%であったが、2006年に増え始めて1.2%となり、2011年には1.5%となった。さらに鉱業生産品が国内の製造業や化学産業等で使用されることによる付加価値を含めれば、GDPに占める割合は9%となる。鉱業分野の外資系企業の数も増えている。2004年には138社だったが、徐々に増えて2012年には687社になっている。

(出典:トルコ・エネルギー天然資源省探査総局資料より)

図6. トルコにおける外資系鉱山会社の推移

【トルコの地質ポテンシャル】

 トルコでは約3,500の鉱床が確認されている。約2,000は工業用鉱物、426がエネルギー用鉱物、600が地熱資源、140が地熱地帯である。現在世界で90種類の鉱物が取引されているが、トルコに賦存しないのは17種類だけである。賦存する73種類のうち53種類が生産されている。

 ホウ素の埋蔵量は30億tであり世界の埋蔵量に占める割合は72%である。大理石は52億立方㎥であり同じく40%である。金のポテンシャルは高く、2000年の生産量は0 tであったが、2007年に10 t、2012年には約30 tと拡大した。フィージビリティ・スタディ等で確認された金の埋蔵量は約700 tである。適切な探鉱プログラムが実施されれば、経済的に開発可能な潜在的埋蔵量は大きい。

(出典:トルコ・エネルギー天然資源省探査総局資料より)

図7.トルコにおける金の生産量の推移

4・ トルコにおけるベースメタル不足

Mehmet Bali, Madenbank事務局長

【トルコ経済概観】

 国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、2008年から2010年にかけて、トルコは世界で15番目に魅力的な投資先にランク付けられた。トルコ経済は、世界で16番目に大きく、過去7年間堅調に成長している。また世界経済危機から速やかに回復し、現在の世界経済の不透明性からもほとんど影響を受けていない。2002年から2012年までの年間平均成長率は5.2%であった。

 2013年から2015年までの中期プログラムは、潜在成長率をほぼ実現し、現在の財政赤字をより縮小し、インフレを抑え、公的バランスシートを改善することにより、マクロ経済と財政の安定性を強化することを目的としている。

【トルコの地質構造】

 アナトリアは、テチス鉱床生成ベルトの中心に位置する。そのベースメタルのポテンシャルは大きく、現在の生産水準に照らせばほとんどが未採取である。ただしトルコはとても活発で複雑な地質構造地帯に位置するため、様々な事象が発生し、地下資源を開発するのを困難としている。

【トルコのベースメタル】

 トルコでは、銅、アルミニウム、ニッケル、鉛、亜鉛、錫などの非鉄金属は、合金、鋳物、鍛造品、成型品、針金、ケーブル、管などとして、化学や自動車などの製造業、発電所、鉄道、電気通信などインフラ産業、農業、建設業などで使用されている。

 トルコは精鉱を製錬する能力がないため、地下資源の優位性を発揮できない。製錬所を新規に建設しようとしても、高価な電気料金により棚上げになる。ほとんどのベースメタル関連業者が、国内で精鉱を生産して輸出し、海外で最終製品となったものを再輸入している。このため貿易の不均衡が拡大し、財政赤字につながり、トルコ経済のアキレス腱となっている。

 例えば銅については、製錬所は一か所しかない。そのため、銅の国内生産は国内消費の20%をカバーするにすぎず、輸入金額は約20億US$であり高止まりしている。

【トルコの鉱物探鉱が直面するリスク】

 一般的に、操業を開始してキャッシュフローが入るまでは7~8年必要である。また資金調達の問題、政策の不安定性、環境問題、その他予期せぬリスクがある。道路、水、電気、通信といったインフラも不十分である。

 鉱業関連の許認可と検査は、異なる省庁により実施されている。これが責任の分散を招いている。重複していて不要であっても形式を求められるため、投資期間は間延びし投資コストも増大する。その結果、投資家は投資を避けるようになる。政府関係者が求める形式は、責任ある当局により整理され一元化されるべきである。

 トルコが経済成長を続けながら、ベースメタル不足を解消していくためには、年間20億US$の投資が必要である。国内及び海外の資本を呼び込むために、権利とインセンティブが継続することをトルコ政府が保証すべきである。

5・ トルコの投資環境と鉱業分野

Arda Ermut, トルコ首相府投資支援促進庁(ISPAT)官民連携課長

【トルコの経済成長はOECD加盟国中で最速】

 トルコ経済は2002年から2012年までの10年間、年平均5%で成長してきた。そのため、2002年に2,310億US$だったGDPは、2012年には3倍以上の7,860億US$にまで拡大した。OECD経済見通しによれば、2012年から2017年までのトルコの経済成長率は年平均5.2%と推定されている。OECD加盟34か国の中でチリの4.8%成長をも上回り最速である。

(出典:2012.6 OECD経済見通しより講演者が作成)

図8.OECD加盟国の年間実質GDP成長率(2012-2017)

【トルコは25兆US$市場のハブ】

 トルコの自動車生産は、世界で17番目、EU内で比較すれば第6位である。セメント生産は、EU内で比較すればトップであり、世界的な建設業者225社のうち33社がトルコ企業である。鉄鋼生産は、世界第8位、EU内で比較すれば第2位である。なぜトルコに投資するかと言えば、国内需要が強いことに加え、国際的なハブだからである。飛行機で4時間圏内に150億人の人口、25兆US$のGDP、8兆US$の貿易が存在する。世界経済フォーラムが発表する世界競争力指標によれば、トルコの競争力は2004年には104か国中66位だったが、徐々に順位を上げ、2012年には144か国中43位となり上位3割に入った。

表1.世界競争力指標におけるトルコの位置

(出典:世界経済フォーラム資料より講演者が作成)

【トルコ鉱業の比較優位】

 フレーザー研究所の鉱業分野の政策ポテンシャル指標によれば、トルコは、カナダ、オーストラリアに次いで投資しやすい国である。ブラジル、南ア、ロシア等を上回っている。例えば、南アとトルコの2010年と2020年の坑内掘り1 t当たりコストを比較すると、2010年時点では南ア194 US$に対してトルコ158 US$であり優位にあるが、2020年時点では南ア241 US$に対してトルコ172 US$と推定されており、さらにトルコの優位性が大きくなると見込まれる。

(出典:フレーザー研究所資料より講演者が作成)

図9. 鉱業分野における政策ポテンシャル指標(2012年)

(出典:Nithia Capital Resources資料より講演者が作成)

図10. 南アとトルコの坑内掘りのコスト比較

【トルコ鉱業への投資インセンティブ】

 トルコの鉱業分野に投資する場合、特別優先投資インセンティブ及び戦略的インセンティブを受けることができる。具体的には、付加価値税の免除・還付、関税の免除、減税、土地の提供、利息への支援等である。

6・ トルコの鉱業法制

Sadi Civelekogluトルコ・エネルギー天然資源省鉱業総局(MIGEM)副局長

【法的枠組み】

 トルコ鉱業の法的枠組みとしては、鉱業法及びその実施規則がある。その他関連する法制として、労働法、環境法、職業健康安全法がある。

【トルコ鉱業法の特徴】

 トルコ鉱業法では、鉱物資源は国有であり発見者の財産とはならない。鉱業権は決められた期間のみ付与される。また鉱業権は譲渡はできるが分割はできない。鉱業権は、トルコ国民もしくは鉱業を行うためにトルコの法令に基づいて設立された企業に与えられる。鉱業法は、国内資本・外国資本の差別なく全ての投資家を平等に扱うことを保証している。

【鉱業法における鉱物資源の分類】

トルコ鉱業法では、鉱物資源を以下の6つに分類している。
  第1グループ: 砂及び砂利、セメント・セラミック産業用の粘土
  第2グループ: 骨材、大理石、天然石
  第3グループ: 塩、二酸化炭素
  第4グループ: 金属鉱物、工業用鉱物、エネルギー鉱物
  第5グループ: 貴石
  第6グループ: 放射性鉱物

【鉱業権の申請と許可】

 鉱業権は、先願主義である。当局(MIGEM)に対して申請され、鉱物資源のグループ別に審査される。鉱業権は、関係機関が妥当であると認める限り、いかなる場所であっても付与される。同じ地域であっても、鉱物が異なれば異なる許認可を与えることができる。

【鉱業権の型】

 鉱業権はいくつかの型に分類される。鉱業権のうち探鉱権は、探鉱前期間、一般探鉱期間、詳細探鉱期間に分類される。鉱業権のうち操業権は、探鉱権が切れるまでに探鉱結果や回復計画と共に申請されなければならない。操業権は、探鉱の結果検知した確定・推定埋蔵量・予測鉱物資源量地域に対して付与される。操業許可は、確定埋蔵地域であって施設が既にある地域に付与される。操業権の期間は確定埋蔵量があれば延長可能である。また、例えば操業期間が5年の場合、不可抗力である場合を除き、3年以内に生産移行できないと鉱業権は失効する。

【鉱業活動のための許認可】

 操業権は、環境影響評価、事業開始証明、土地アクセスの許可を必要とする。これらは基本的に生産開始までに得なければならない。

【税とロイヤルティ】

 操業者は他分野の業者と同様に法人税を払わなければならない。加えて年間の鉱石販売に基づきロイヤルティを払わなければならない。第2グループ中の大理石及び天然石、並びに第4グループのロイヤルティは2%、その他のグループのロイヤルティは4%である。鉱業地域が森林または公用地の場合、さらに30%のロイヤルティを払わなければならない。

【鉱業分野でのインセンティブ】

 操業者が国内で鉱物資源を処理して付加価値を付けた場合、ロイヤルティは半額となる。生産が坑内掘りの場合も、ロイヤルティは半額となる。

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