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報告書&レポート

2013年11月14日 ロンドン事務所 森田健太郎
2013年64号

欧州の戦略的実行計画、中国の銅需給の実態、その他~2013年秋季国際銅研究会(ICSG)参加報告~

 2013年9月30日~10月1日、ポルトガル・リスボンにて国際銅研究会(ICSG)秋季会合の一連の会議が開催され、18か国・国際機関、業界団体、資源メジャー、コンサルタント等から50名ほどが参加した。2011年秋季会合で“中国”がテーマとなって以来、約2年振りに中国からの参加者が目立ち、中国非鉄産業協会、安泰科、五鉱集団公司、上海金属取引所から数名が参加した。日本からは、在ポルトガル大使館、経済産業省製造産業局非鉄金属課、同省資源エネルギー庁鉱物資源課、日本鉱業協会、鉱山会社、商社他が参加した。JOGMECロンドン事務所からは2名が参加した。

 また10月10日、英国・ロンドンにてICSG産業諮問パネルが開催され、業界団体、鉱山会社、コンサルタント等から約25名が参加した。日本からは、鉱山会社、JOGMECロンドン事務所が参加した。

 今回のICSGにおいては、2013年及び2014年の鉱山生産、製錬、消費、需給バランスの予想値などの需給見通しの見直しが行われた。またコモディティブームの終焉や将来的な価格動向について見解が交わされるとともに、鉱山業界が直面する新たなリスク、EUにおける新たな戦略的実行計画、中国における需給実態について、複数の発表があった。

 本稿ではこれらの概要を紹介する。また本会合での講演資料は、ICSGの公式HPから入手可能である。

 (http://www.icsg.org/index.php/meetings-and-presentations-2/viewcategory/235-icsg-meeting-presentations)

1. 第35回 環境経済委員会

1-1. 講演『資本支出の節約により数年後には銅不足』

(Barclays Capital、Director、Gayle Berry氏)

【過去のコモディティ価格上昇時には年4%成長が必要だった】

 コモディティ価格については、世界経済は改善しているように見えるが、これが新たな成長の始まりなのか、あるいはこのまま安定してしまうのか不透明である。2004年以降の経済成長とコモディティ価格の相関を見ると、世界の経済成長が4%以上なければ、コモディティ価格は安定的に上昇していなかった。

 投資家については、コモディティへの関心は弱まっている。2013年に入ってから、金のETP(上場取引型金融商品)が一掃され資金が流出している。機関投資家のコモディティでの資産運用についても、2013年は昨年及び過去5年平均よりも低水準である。

図1.世界の経済成長率(右軸)とコモディティ価格(左軸)

(出典:Ecowin, Barclays Research資料より講演者が作成)

図1.世界の経済成長率(右軸)とコモディティ価格(左軸)

【中国が3%成長なら2014年の銅価は約2,500 US$/tまで下落】

 需要面については、もし中国を除いて考えるならば、2008年以降のベースメタル需要は世界金融危機により縮小していた。今後、中国がハードランディングして2014年の経済成長が3%になると仮定すれば、銅と綿花の需要が大打撃を受けるだろう。その場合、2014年の銅価格は約2,500 US$/tまで下落するだろう。

 供給面については、現在、世界の銅生産は伸びており、過去10年で最高水準に達しつつある。概してベースメタルは「供給ショック」に直面していると言える。すなわち、銅のみならず、アルミニウム、ニッケル、亜鉛も供給過剰に直面している。

図2.中国がハードランディングする場合の銅価格予測

(出典:Ecowin資料より講演者が作成)

図2.中国がハードランディングする場合の銅価格予測

【コモディティ価格は2014年を底値としてその後回復】

これまでの鉱業サイクルは、あるピークから次のピークまで20年続いていた。しかし当社は、現在の供給過剰は長く続かず、数年(mid-decade)で再びタイトになり始めると考える。価格についても、2014年が底値で、その後数年で急速に回復すると考える。

図3.需要の伸びと供給の伸びの差異

(出典:Wood Mackenzie資料より講演者が作成)

図3.需要の伸びと供給の伸びの差異

【資本支出が求められる時期に節約のプレッシャー】

 なぜならば、コストの上昇は構造的な問題だからである。操業コストは高騰しており、銅鉱山でのエネルギー消費は急増しており、鉱石の品位は急速に低下している。そのため金融危機時にあってさえ、コストの上昇率は10%以上だった。また2012年のニッケルのプロジェクトに要する資本は、2002年から2012年までの平均に比べて352%増加した。

図4.銅産業における資本支出の増加率

(出典:Wood Mackenzie資料より講演者が作成)

図4.銅産業における資本支出の増加率

図5.2012年とそれ以前の資本支出の比較(単位US$/t)

(出典:Wood Mackenzie資料より講演者が作成)

図5.2012年とそれ以前の資本支出の比較(単位US$/t)

 新規プロジェクトではより一層の資本を必要とするが、それがさらに資金調達を困難にする。世界の株価は上昇しているのに、鉱業銘柄の株価は下落している。2013年のジュニア企業の株式市場での資金調達は、過去10年で最低水準まで縮小している。マージンが減少しているのに、既存株主はより多くの配当を求めるため、より一層の節約に努めなければならない。その結果、生産能力拡張のための資本支出は2012年から2015年にかけて56%減少するだろう。

図6.鉱業における資本支出の変化(単位:10億US$)

(出典:Wood Mackenzie資料より講演者が作成)

図6.鉱業における資本支出の変化(単位:10億US$)

【資本支出の節約により新規プロジェクトは遅延】

本来は2014年及び2015年の生産増の半分は新規プロジェクト(Greenfield)から来なければならないし、2016年以降は生産増の全量が新規プロジェクトに頼らざるを得ない。しかし実際には、新規プロジェクトへの資本支出は節約せざるを得ない。それが将来の供給増を困難とする。実際、資源メジャーが手掛ける多くの新規プロジェクトが、生産開始時期を延期している。資本支出の大幅削減が行われた金融危機時にも同じ現象が見られた。

【銅価格は2014年を底値として回復し7,000 US$/t弱で推移】

銅鉱石の生産量についても、2013年以降減少し、2019年には490万t不足すると予測する。その結果、銅価格は、2014年は6,400US$/tまで下落するものの、中長期的には回復し、7,000 US$/t弱で推移すると予測する。

図7.銅の需給ギャップ(単位:Kt)

(出典:Wood Mackenzie資料より講演者が作成)

図7.銅の需給ギャップ(単位:Kt)

1-2. 講演『欧州原材料イニシアティブと欧州革新パートナーシップ』

(欧州委員会、Head of Unit、Mattia Pellegrini氏)

【2013年9月、戦略的実行計画を承認】

2012年2月「原材料にかかる欧州革新パートナーシップ」が発表された。これを実行に移すため、2013年初めより事務局を立ち上げ、同年2月よりハイレベル運営委員会、4回のシェルパ会合、2回の実務者会合を開催した。そして先週(同年9月25日)、ハイレベル運営委員会にて「戦略的実行計画」が承認された。

【戦略的実行計画の内容】

戦略的実行計画は3つの柱からなる。①技術の柱、②非技術政策の柱、③国際協力の柱である。①技術の柱では、技術開発のコーディネーション、原材料の一次・二次の生産技術、原材料の代替を進める。②非技術政策の柱では、欧州の原材料の枠組み・要件の改善、廃棄物管理の枠組み・要件の改善、知識・技能の共有を進める。③国際協力の柱は、国際的な交易と対話から最大の利益を得るための分野横断的な柱である。欧州域内での生産及びリサイクルの増大、世界的な原材料アクセス改善のための国際協力、代替と省資源、ベスト・プラクティスの共有を進める。国際協力の柱には、a技術、b世界的な原材料のガバナンス及び対話、c健康・安全・環境、d技能・教育・知識、e投資行動の5つの行動分野がある。

【2014年までに5つの国際会議を予定】

国際協力は、具体的には、高い相互利益のための欧州委員会とパートナー国による対話、あるいはLetter of Intentに基づく対話という形式で行われる。2013年から2014年にかけて5つの会合を予定している。すなわち、2013年11月の「日米欧ワークショップ」、2014年2月の「欧州南米対話」、2014年6月の「鉱業政策・鉱業技術のベストプラクティス共有のためのワークショップ」、2014年9月の「欧州グリーンランドワークショップ」、2014年10月の「欧州アフリカ連合ワークショップ」である。

【2020年までの7年間で約31億€を要求中】

予算については、「ホライズン2020」の「卓越技術」「産業先導」「社会挑戦」のうち、「社会挑戦」310億€の内数として要求中である。「気候変動への対応、資源効率性及び原材料」という項目に含まれており、2014年から2020年の7年間で約31億€で要求している。

1-3. 講演『銅市場に影響する制度改正』 (ICSG事務局、Carlos Risopatron氏)

【マルチの制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のマルチの制度改正としては以下がある。
 - IMOによる海洋環境に有害な金属精鉱のリスト
 - ILOの原住民及び種族民条約(第169号)の批准
 - 水銀に関する水俣条約の採択・署名
 - 国連による初の海底鉱業権(2016年)

特にIMOばら積み船残渣廃水規制については、海洋環境に有害な積み荷を特定するため、2013年7月及び9月に小委員会が開催された。IMOとしては、海洋環境に有害な積み荷を特定する簡易な方法として、リストによる分類システムを検討している。銅を含むいくつかの積み荷は、システム上“海洋環境に有害“と分類されることになる。

【中国における制度改正】

銅市場に影響する2012年以降の中国における制度改正は以下のとおり。
 - 中国国家発展改革委員会による25の鉄道プロジェクトの承認
 - エネルギー効率の高い製品への新たな補助制度
 - コモディティー・ファイナンスの安全規制
 - 新たな環境・資源税制
 - 老朽化した余剰な精錬設備600Kt分の段階的廃棄
 - 小規模なリサイクル・製精錬業者の2013年中の操業停止

また銅市場に影響する継続中の制度改正は以下のとおり。
 - 香港証券取引所(HKEx)によるLME銅の中国元建て取引
 - 希土類の輸出割り当て31Kt(2013年)
 - 中国国務院による不動産税の改革
 - 富裕層への税制改革
 - 省エネルギーと環境政策
 - リサイクル規制の促進
 - 造船産業の支援(2013年-2015年)

【米国における制度上の動向】

銅市場に影響する2012年以降の米国における制度上の動向は以下のとおり。
 - 米上院による倉庫、電力及び石油を所有する銀行に対する公聴会
 - 米司法省による金属倉庫産業への調査
 - 米商務省による銅管輸入の義務の撤回
 - 米商品先物取引委員会によるコモディティ価格と連動した契約への質問状
 - 米商品先物取引委員会は米ドット・フランク法に基づく訴訟を優先(ただし同法の実施率は37%にとどまる)
 - 米ドット・フランク法が店頭市場でのリスクの高いコモディティ・スワップ取引にも適用
 - 米証券取引委員会が連邦裁判所に対して銅現物の上場投資信託(ETF)の訴訟を棄却するよう要請
 - 電気電子機器廃棄物の輸出を規制する法案を提出
 - 米環境庁が金属スクラップを有害廃棄物の例外とする措置の終了を提案

【英豪加における制度改正】

銅市場に影響する2012年以降の英豪加における制度改正は以下のとおり。
 - 英国では、LME倉庫からの出荷時間の短縮を2014年から開始予定
 - 豪州では、資源収入が予定を大幅に下回っている
 - カナダではケベック鉱業界が新たなロイヤルティ制度を2014年から開始予定

【欧州における制度改正】

銅市場に影響する2012年以降の欧州における制度改正は以下のとおり。
 - 透明性向上のため新たな会計指令を公表
 - 仏独が採取産業透明性イニシアティブに参加
 - 原材料の欧州革新パートナーシップを策定
 - スペインがイベリア半島での黄鉄鉱への投資を呼び込み
 - 欧州市場インフラ規制(EMIR)の導入
 - 変圧器にエコ・デザインを求める欧州規制
 - 銅及び合金の廃棄物に関する「廃棄からの脱却(end-of-waste)」基準の見直し
 - 国連経済委員会が欧州に対して放射性廃棄物に係る警告
 - 欧州・中国による太陽電池販売に関する貿易協定

【DRコンゴにおける制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のDRコンゴにおける制度改正は以下のとおり。
 - DRコンゴのカタンガ州が銅鉱石輸出禁止の提案を拒否
 - DRコンゴが銅及びコバルト精鉱への輸出税を100US$/tに値上げ
 - DRコンゴが旧鉱業法の見直し作業を終了
 - DRコンゴが現行契約に影響を与えない鉱業法改正案を提案
 - プロジェクトの国の所有率は35%に増加、ロイヤルティは上昇

【ザンビア、南ア、タンザニアにおける制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のザンビア、南ア、タンザニアにおける制度改正は以下のとおり。
 - ザンビアは新規鉱業プロジェクトについては25%-35%の所有を目指す
 - ザンビアの鉱業者は輸出収入を地元銀行に預けなければならない
 - ザンビアの鉱業者は銅含有量を公表しなければならない
 - 南アは鉱業税及びロイヤルティを見直し
 - タンザニア鉱山会社は30%の法人税の支払いを開始
 - 米国は“Power Africa“と題して70億US$による発電プログラムを発表

【アジアにおける制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のアジアにおける制度改正は以下のとおり。
 - インドは銅スクラップ及び真鍮に対する輸入税を値上げ、ルピアを切り下げ
 - フィリピンは鉱物資源収入の75%を南部に支援
 - フィリピンは新規鉱業申請のモラトリアムを解除、910件の探鉱申請あり
 - インドネシアの最高裁判所は鉱石輸出禁止に対して無効判決
 - パプアニューギニアでの鉱業に新たな財政インセンティブ

【チリにおける制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のチリにおける制度改正は以下のとおり。
 - 水分野の制度的枠組みを見直し
 - 初の鉱業協定をドイツと締結
 - 初の鉱業MOUをフィンランドと締結

【その他南米における制度改正】

銅市場に影響する2012年以降のその他南米における制度改正は以下のとおり。
 - メキシコは鉱業法を改正しロイヤルティを5%とした
 - エクアドルは鉱業法の抜本的改革を提案
 - ブラジルは国内の金属スクラップの流通を促進
 - ブラジル・パラ州はValeと鉱業税値上げを交渉
 - ボリビア新鉱業法は平等な人権を付与、ただし影響と懸念もあり

2. 第42回 統計委員会

2-1. 2013年、2014年の銅需給予測 (ICSG事務局、主任統計官 Ana Rebelo氏)

【2013年、2014年の銅需給バランス】

2013年の銅地金の需給バランスは、生産の伸びが需要の伸びを上回るため、39万tの供給過剰になると予測した。2014年の需給バランスについても、需要は伸びることが期待されるが、既存・新規鉱山からの生産が需要の伸び以上に増加するため、より一層の63万tの供給過剰になると予測した。

【2013年、2014年の銅鉱山生産量】

具体的には、銅鉱山生産量については、2013年は過去3年間の停滞期を経て、対前年比6.5%増の1,777万5千tと予測した。2014年以降についても、債務危機で遅延されていたプロジェクトが供給を開始するため強い伸びが続くとし、2014年はさらに対前年比4.5%増の1,857万9千tと予測した。

【2013年、2014年の銅地金生産量】

銅地金生産量については、2013年は一部地域で維持補修があるものの他地域からの生産増がそれを上回るため、対前年比3.9%増の2,091万2千tと予測した。2014年についても、既存設備の再稼働や中国における電解設備の新設・拡張により、さらに対前年比5.5%増の2,206万1千tと予測した。

【2013年、2014年の銅地金需要】

銅地金需要については、2013年は、中国における実需は約6%増加すると期待されるが、輸入が増えていないことから公表されていない在庫を取り崩していると考えられ、中国の見かけ需要としては対前年で減少する。そのため前年とほぼ同じ2,052万5千tと予測した。2014年については、世界経済の好転により、対前年比4.4%増の2,142万9千tと予測した。

表1.2014年までの見通し

(単位:千t)

  鉱山生産量 地金生産量 地金消費量
  2012 2013 2014 2012 2013 2014 2012 2013 2014
アフリカ 1,449 1,820 2,123 1,057 1,292 1,475 251 250 261
北米 2,274 2,339 2,641 1,647 1,635 1,751 2,219 2,279 2,331
中南米 7,109 7,426 7,762 3,420 3,451 3,612 618 633 659
ASEAN10 645 743 896 411 514 564 799 826 856
その他アジア 1,944 2,078 2,333 8,882 9,310 9,929 12,251 12,103 12,798
CIS 546 560 574 439 461 470 100 101 102
EU27 826 839 854 2,742 2,686 2,781 3,054 3,001 3,034
その他欧州 865 867 916 1,071 1,071 1,112 1,133 1,201 1,255
オセアニア 1,040 1,140 1,125 460 501 505 112 115 115
世界計(調整後) 16,697 17,775 18,579 20,129 20,912 22,061 20,550 20,525 21,429
変化率 6.5% 4.5%   3.9% 5.5%   -0.1% 4.4%
需給バランス -421 387 632

2-2. 講演『中国の銅市場』

(中国非鉄金属産業協会(CNIA)国際協力部、Yusheng Li氏)

【銅地金生産量は急速に増加】

当協会のデータによると、2013年1月~7月の7か月の中国の銅地金生産量は、前年同期比12.4%増加し376万tとなっている。特に銅地金生産量のうち2/3を占める銅精鉱からの生産が14.6%増加している。主な要因は、減速しているとは言え依然強い内需、設備増強等考えられる。原料面については、銅スクラップの輸入は減少しているが、TC/RC(熔錬費/精錬費)が増加しているため銅精鉱からの地金生産が増加している。

図8.中国における地金生産(単位:Kt)

(出典:CNIA)

図8.中国における地金生産(単位:Kt)

【銅地金輸入量は減少】

 銅地金の輸入量及び輸出量については、昨年2012年は342万t及び27万4千tに達しいずれも歴史的高水準であった。純輸入は313万tであり前年同期比16.8%増であった。

 しかし2013年第1四半期は、銅地金の輸出については前年同期及び直前四半期に比べて増加したものの、輸入については前年同期及び直前四半期に比べて大きく減少した。2013年1月~7月の7か月で見ると、輸入は2011年以前の水準に戻っている。2013年は輸入業者上位10社が大きく入れ替わったことも特徴である。

図9.中国の地金輸入(単位:Kt)

(出典:中国税関データより講演者が作成)

図9.中国の地金輸入(単位:Kt)

【上海保税倉庫の銅在庫は減少】

中国税関のデータによれば、銅地金の輸入は一般貿易及び保税倉庫貿易が太宗を占めるが、このうち保税倉庫貿易が2012年は前年比91.9%増加し2013年は前年比37.2%減少している。したがって保税倉庫への輸入が減少したことが、2013年の輸入減少の主因と考えられる。上海保税倉庫の銅在庫は2013年初めより50万t減らして40万tで推移中である。上海金属取引所とLMEとの価格差が輸入を抑制していると考えられる。

【銅地金消費量は漸増】

 前述のとおり、2012年は国内生産が増加し純輸入も増加したので、国内の銅地金の供給量(消費量)は13.6%増の895万tであったと考えられる。2013年1月~7月の7か月で見ると、供給量(消費量)は1.2%増の522万tであった。

 銅地金消費量の約半分が電力分野である。電化製品では、エアコン、交流モーターの生産量が伸びている。

【2014年の銅市場予測】

当協会は、2014年の中国の銅地金生産量は695万t、銅地金消費量は870万tと予測する。

3. 第14回 産業諮問パネル

講演『鉱物資源開発プロジェクトにおけるリスク要素にかかる研究』

(Oakdene Hollins、Senior Economist、Peter Willis氏)

【会社概要】

当社は、持続可能な製品・サービス及びクリーンな生産方法に係るコンサルティングを行っている。対象分野は、食糧・飲料から金属・鉱山、そして欧州政策まで幅広い。ECやOECD、英国政府の各省庁にも成果物を提供している。現在、国際非鉄3研究会の共同プロジェクトとして、鉱物資源開発プロジェクトのリスク要素を特定し評価している最中である。今次中間報告を経て、本年11月に最終レポートを公表予定である。

【調査方法】

調査方法としては、産業界、業界団体及び政府の専門家にインタビューを行い、リスク要素を特定した。また相対的重要性、トレンドの経時的変化、小さな変化への敏感度により、このリスク要素を分析した。そして、リスクが顕在化する確率を3段階、顕在化した際のダメージを3段階とし、これら掛けあわせて1~9のリスク段階として評価した。

【5分野で15のリスク要素】

5つの分野で15のリスク要素が特定された。すなわち、ファイナンス分野では資本支出不足やコスト上昇など4つのリスク要素、政治分野では資源ナショナリズムなど2つのリスク要素、技術分野ではインフラ不足やエネルギー・アクセス、品位低下、スクラップ不足など6つのリスク要素、環境分野ではプロジェクトが環境に与える影響など2つのリスク要素、社会分野では地域社会での受容と言う1つのリスク要素が特定された。

【最大のリスクは地域社会の不受容】

 これらのリスク要素を銅プロジェクトに当てはめて分析・評価したところ、リスクの第1位は地域社会に受容されないことであり、その深刻性は益々増大している。第2位はスクラップ不足であるが、銅以外の鉱種ではそれほど深刻ではない。第3位はコスト上昇であるが、徐々に通常のビジネス環境(business as usual)の範囲内として認識されつつあり、その深刻性は減少している。第4位はコモディティ価格の不安定性(volatility)であった。

 またこれらのリスク要素を鉛・亜鉛及びニッケルのプロジェクトに当てはめて分析・評価したところ、銅の場合と類似の結果が得られた。ただし、スクラップ不足は鉛・亜鉛及びニッケルのプロジェクトではさほど深刻ではない。むしろニッケルのプロジェクトにおけるリスクの第1位は、資源ナショナリズムであった。

【最も軽いリスクは環境が与える影響】

逆に最も軽いリスクの第1位は、環境がプロジェクトに与える影響であった。環境が劣悪だからと言ってプロジェクトを止めるケースは少ないからだ。第2位は水へのアクセス、第3位はエネルギーへのアクセスであった。これらは、銅、鉛・亜鉛及びニッケルのプロジェクトのいずれにおいても、類似の結果であった。

【リスクへの対処方法】

 リスク第1位の地域社会からの不受容については、地域社会の取込みや地元業者の優先採用、政府によるプロジェクト保護、第三者による監査などで対処すべきである。

 リスク第2位のスクラップ不足については、収集・解体・分別の促進、違法リサイクルの取締りを進めるべきである。

 リスク第3位のコスト上昇については、好調期に投資抑制した分を停滞期の投資に振り向けるような反循環的(counter cyclical)投資、政府による投資行動の監視、あるいは景況感の改善を行うべきである。

 リスク第4位のコモディティ価格の不安定性については、政府は公正貿易を確保すべきだし、企業はヘッジで対処すべきである。

4. おわりに

 今次ICSGは、銅が供給過剰となり価格が下落する中で開催された。

 需給面については、前回ICSGでは、供給過剰の見通しにもかかわらず銅価格が下落しない要因として、世界の銅地金生産量の約3割、消費量の約4割を占める中国において、報告義務のない保税倉庫での在庫積上りが指摘されていた。今次ICSGには、中国非鉄産業協会、安泰科、五鉱集団公司、上海金属取引所から数名が参加し、中国における需給実態について説明を行った。その結果、2012年の中国における見かけ需要は、保税倉庫での在庫の積み上がりが主因であり、2013年は解消に向かっているとの認識が得られた。

 価格面については、短期的には供給過剰が進む中、スーパーサイクルと言われるコモディティ価格の高騰期が終了したか否かに関心が集まった。一部の金融関係者は中国の経済成長が3%まで下落すると仮定すれば銅価格は約2,500US$/tまで下落するとの見通しを紹介し、その現実性を疑問視する質疑応答も聞かれた。しかし、そのような金融関係者も含め、中長期的には銅需給はひっ迫し価格は上昇するとの見方で一致した。

 政策面については、消費国側では、欧州委員会の新たな原材料政策について、複数回、積極的な発表があった。LMEについては、出荷制約の改善、米国における訴訟などが進展中であり、引き続き注視が必要である。資源国側では、DRコンゴなど中南部アフリカ、インドネシアなどアジアにおける資源ナショナリズムの動きが紹介された。

 次回のICSG会合は、2014年3月31日、4月1日にリスボンにて開催予定である。

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