閉じる

報告書&レポート

2014年1月23日 リマ事務所 岨中真洋
2014年01号

ペルー鉱業を巡る最近の争議の動向-オンブズマンレポート第116号(2013年10月)より-

 ペルーの公的仲裁機関であるオンブズマン(Defensoria del Pueblo)1は、ペルー国内の社会争議の動向を常時モニタリングし、毎月、調査報告書を公開している。

 2013年10月の争議レポートにより報告されたペルー国内の争議状況、特に鉱業関連の争議の実情や特徴を以下にまとめる。

1. ペルー国内の争議の状況

 オンブズマンレポート第116号(2013年10月号)によると、2013年10月末時点で確認された全国の争議件数は220件であり、その内173件(79%)が顕在状態2、47件(21%)が潜在状態3であった。これら争議の内、新たに発生した争議が7件、潜在状態から再び顕在化した争議が1件、一方、顕在状態から潜在化した争議が6件であった。また、対話・協議中の争議が86件、解決された争議が4件と報告されている。

 なお、争議とは別に、一時的に発生したデモ、ストライキ等の集団抗議行動(デモ、ストライキ等)が90件確認されている。

 最近1年間の争議件数の推移を見ると、争議件数は2013年1月にかけて減少したが、その後2013年4月までは緩やかな増加傾向が見られ、翌5月以降は再び緩やかな減少傾向を示している(図1)。2012年は3月から11月にかけて230件以上の争議が発生していたことを考慮すると、2013年は前年と比較して争議件数は少ないもののその差は約4%で、依然として220件程度の争議が存在している。

図1.全争議件数の年間推移

図1.全争議件数の年間推移

 争議要因をタイプ別にみると、全争議220件のうち145件(66%)が社会・環境争議となっており、次に郡・区行政を取り巻く争議が22件(10%)、境界問題4が15件(7%)、労働争議が10件(5%)の順となっている(図2)。

 なお、2012年10月との比較では、社会・環境争議が149件から145に、労働争議が13件から10件に、中央政府行政に関する争議が14件から9件へと減少した一方、郡・区行政に関する争議が20件から22件に、境界に関する争議が13件から15件に、コミュニティ間の争議が8件から9件へと増加した。これらのタイプ別争議数の増減は、統計的に有意であるとは判断し難いが、地域住民の生活に密接に関連する部分での不満が高まってきていることに対する反映のようにも見える。

図2.全争議(220件)のタイプ別比率

図2.全争議(220件)のタイプ別比率

 また、争議の発生状況を県別にみると、争議件数の多い順にAncash県(30件)、Apurimac県(23件)、Puno 県(16件)、Cajamarca県(13件)、Junin県(13件)などとなっている(図3)。

 県別では、前年との比較で多少の争議件数の増減があるものの、一般的な傾向は変わっていない。2012年8月末にNewmont及びBuenaventura社がMinas Conga金プロジェクトの中断を決定したCajamarca県においても2012年10月時点と変わらない13件の争議が報告されている(13件中顕在争議10件全てが鉱業関連争議)。

図3.全争議の県別争議件数(3県以上にまたがる争議6件を除く)

注:( )は潜在化している争議件数で内数。

図3.全争議の県別争議件数(3県以上にまたがる争議6件を除く)

 一方、顕在争議の件数の推移を見ると、この1年間で167件から173件へ全体として微増傾向が継続している(図4)。タイプ別では社会・環境争議が123件で全体の72%を占めている(図5)。

図4.顕在争議件数の年間推移

図4.顕在争議件数の年間推移
図5.顕在争議(計173件)のタイプ別比率

図5.顕在争議(計173件)のタイプ別比率

1 オンブズマン(Defensoria del Pueblo)
1993年に憲法に基づき設立された独立・自立的監査官並びに機関であり、憲法が国民や共同体に対して保障する権利の保護、行政の監査、市民への支援サービスの提供等を行う。オンブズマンの代表は国会の3分の2以上の賛成をもって選出され、任期は5年である。オンブズマンは、係争案件に関して、憲法によって定められた完全に中立的な立場から、民事的・刑事的責任を負うことなく意見や推奨を提案することができる。ただし、裁判官や判事、その他の権威機関の代理となるものではなく、判決や刑罰、罰金等を定める役割は負わない。

2, 3 顕在状態と潜在状態
オンブズマンでは、争議全体を顕在状態、潜在状態に分けて把握している。この内、顕在状態は、争議の当事者あるいは第三者による抗議行動が公の場で発生したケースを示す。一方、潜在状態は、一見隠れた状態又は静止状態にある争議であり、軋轢や対立が存在しているが、表立った抗議行動には至っていない場合や、抗議行動が収まった後、一定の年月が経過しているケースを言う。

4 境界問題
行政区分境界や所有地境界など、権利・権限が及ぶ境界設定等に関する問題。

2. 鉱業関連争議の動向

 2012年10月当時では顕在争議167件中87件(52%)が鉱業関連争議であったが、2013年10月現在、顕在状態にある争議173件の内、55%に相当する96件が鉱業関連争議である。

 鉱業関連争議は、Cajamarca県でのMinas Conga金プロジェクトに対する反対運動に象徴されるが、2012年8月の同プロジェクト中断決定以後は地元での報道も少なくなり、一見沈静化してきたようでもあるが、2012年10月に発生したJunin県のToromocho銅プロジェクト(Chinalco)でのプロジェクト地域からの移転反対派住民と警官隊との衝突や、2012年末以降、環境破壊阻止・水資源保全を訴える地元住民と企業、警察との対立が深刻化、2013年5月には探鉱活動の中断を余儀なくされた、Lambayeque県のCañariaco銅プロジェクト(Candente Copper社)など、鉱業関連争議は依然発生している。

 鉱業関連の争議をタイプ別に分類すると、社会・環境争議に属するものが92件(96%)で、ほぼ全てが社会・環境を巡る争議である(図6)。

図6.顕在争議に占める鉱業関連争議の割合とタイプ別内訳

図6.顕在争議に占める鉱業関連争議の割合とタイプ別内訳

 一方、鉱業関連争議を原因別に分類したものを図7に示す。原因が重複しているものもあるため、総件数は124件となっている。

 これら124件の内訳を見ると、鉱業による環境や地域社会、健康、経済への影響が争議の源となっているケースが43件と最多である。ただしこれは、鉱害や社会への影響が実在する場合と、環境汚染や健康被害への危惧・懸念を原因とする争議の双方を併せた数字である。

 環境への影響としては、特に河川や湖等、水資源の汚染、減少、枯渇、或いはその可能性を原因としているケースは18件である。なお水資源に関しては、環境汚染・鉱害に分類される水質汚染以外にも、鉱業活動による大量の水利用によって、農業用水や生活用水が減少することへの危惧を原因とする争議が多く存在する。特に近年、水資源の乏しい地域や農牧業を伝統的な産業とする地域においては、鉱業に水を奪われる、或いは汚染されてしまうという危機感が大規模な争議に発展するケースが目立つ。

 次に、政府が状況改善に向けて取り組んでいるものの、近年特に金価格の上昇によって拡大傾向にある零細鉱業・インフォーマル鉱業5・違法鉱業6問題が争議の発端となっているケースが23件存在する。零細・インフォーマル鉱業に関しては、政府が合法化政策を進めているものの、その活動に対する監査・監督業務は地方政府の管轄であることから、増加しつづける零細・インフォーマル鉱業事業者に対する合法化手続きが追い付かず、零細・インフォーマル・違法金採掘鉱業をめぐる争議は年々増加しつづけている。

 一方、鉱業事業者との間で地域社会に対する支援や補償に関する合意や取決めが存在するにも関わらず、履行されていないことを原因とするケースが23件存在している。

 さらに、地元支援(インフラ整備等)や鉱業による影響・被害(影響下地域である、或いは健康被害、道路破壊等の具体的な損害を被っている)に対する補償要求を原因とするケースが5件、土地問題(地表権に関する取り決め、鉱区の所有権争い、自治体間の境界線問題)を原因とするケースが9件確認されほか、労使抗争や雇用要求が原因の争議は2件であった。

図7.鉱業関連争議の原因

図7.鉱業関連争議の原因

 表1に、鉱業関連争議の個別の事例を県別、タイプ別に整理したものを示す。

 Ancash県及びApurimac県における鉱業争議件数は15件で全国最多となっており、以下、Cajamarca県(10件)が続いている。

表1.鉱業関連の顕在争議96件の詳細

県 名
(争議件数)
タイプ 一次的当事者 内 容
Ancash(15) 社会・
環境
(15)

Antamina社、Ancash村落自治体連合(AMUCEP)、Nyrstar社、Catac農民組合、Ancash県農業連合(FADA)

Ancash村落自治体連合(AMUCEP)は、約束不履行と環境汚染を理由に、Huari郡に対してAntamina社及びNyrstar社に対する抗議行動実施を呼びかけ。

Antamina社、San Antonio de Chipta村民、Chavez組合、Juprog社会環境開発委員会

Chipta村は、Antamina鉱山直接影響下にあるとし、土地所有権を巡る問題や同社による約束の不履行、さらに鉛汚染による健康被害の存在を主張。政府による保健/環境対策を要求。

Antamina社、Huarmey開発対話・合意形成委員会、漁業者連盟、零細船主組合

漁業者連盟、Huarmey港の零細船主ら、また同地域住民らは、Antamina社による支援の約束不履行を主張。

Barrick社、Cuncashca村、ESMAC村立公社

Cuncashca村は、Barrick社に対し旧道閉鎖に対する代償や、約束履行を要求。

Antamina社、Ayash Pichiu村、Santa Cruz Pichiu村、Ayash開発連合(ASODESO)

Ayash川流域住民は、Antamina社に対し、廃さい流入による川の汚染による健康被害・環境破壊を主張、鉱山による対応を要求。

Antamina社、Ango Raju農民コミュニティ、Carhuayoc村

操業影響下地域にあるとして鉱山からの支援・補償を要求。

Antamina社、
San Antonio de Juprog村

Antamina社による約束不履行と環境汚染の可能性を主張。

Brrick Misquichilca社、Atupa村・Antauran村灌漑利用者組合

Atupa村、Antauran村は、Brrick Misquichilca社の鉱業活動によりYarcok水源が枯渇したとして水源の返還を要求。同社はEIAの時点から水源は枯渇していた旨記載してあることを主張。

Brrick Misquichilca社、Mareniyoc村配水サービス管理組合(JASS)

Mareniyoc村配水サービス管理組合(JASS)は、Shulcan水源が枯渇した時点からBrrick Misquichilca社と水資源利用を巡る問題を抱えていると主張。また同社は組合への水提供を約束したが次第に規制が加えられ、現在は雨水のみしか利用できない状況にあると主張。

Antamina社、Santa Rosa村、Cajacay農民コミュニティ、Cajacay村長

Cajacay農民コミュニティは、Antamina社による精鉱漏れの責任を追及。

California社、Tumpa農民コミュニティ

Tumpa農民コミュニティは、環境基準違反等を理由にCalifornia社の鉱業活動に反対。

Pampacancha村民、Huancapeti社

Pampacancha村民らは、Sipchop川流域におけるHuancapeti社の選鉱廃さい堆積場で流出事故が起こったと報告。

Buenos Aires村民、Greenex社

Buenos Aires村民は、Greenex社に対して、河川の汚染を理由に浮遊選鉱プラント建設工事の中止を要求。

Shumay農民コミュニティ、San Geronimo社

Shumay農民コミュニティは、San Geronimo社による非金属鉱業活動が粉じんによる環境被害をもたらしていると主張。

Toma la Mano社、Vicos農民コミュニティ

Vicos農民コミュニティは、Toma la Mano社による約束不履行を主張。

Apurimac(15) 社会・
環境
(15)

Andahuaylas郡共闘委員会、エネルギー鉱山省地方局

Andahuaylas郡の様々な社会組織が、伝統的な農牧業への影響を懸念し鉱業活動に反対。

Tiaparo農民コミュニティ、Southern Copper社

Tiaparo農民コミュニティは、環境汚染を危惧。またSouthern Copper社による探鉱活動に関する説明を要求。

Iscahuaca農民コミュニティ、Suyamarca社

Iscahuaca農民コミュニティは、合意事項の不履行や環境汚染等を理由に、Suyamarca社の活動を拒絶。

Chalhuahuacho農民連盟、Chalhuahuacho区利益戦線、Glencore Xstrata

Chalhuahuacho農民連盟等が、Glencore Xstrataによる17項目の約束の不履行を主張。また同社による地域雇用を要求。

Southern Copper社、
Tapayrihua村

村の土地の利用に関する合意がないことや、極端な水利用を理由に同社の鉱業活動に反対。

Apurimac県小規模零細鉱業従事者連盟、Andahuaylas郡等の零細鉱業従事者連盟

インフォーマル鉱業従事者らの様々な組織が、小規模零細鉱業の生産・売買・輸送を規制する県条例の廃止を要求。

Anabi社、周辺の多数の自治体、集落

Anabi社のUtunsaプロジェクトは探鉱段階であるにもかかわらず、開発を行っており周辺河川を廃さいで汚染していると告発。

Glencore Xstrata、Chalhuahuaho周辺地域住民、Choaquere農民コミュニティ等

Las Bambasプロジェクト周辺住民は、同社と水資源庁(ANA)の透明性の不足と、水資源の減少を危惧。

Tocctopata農民コミュニティ、Cotahucho農民コミュニティ等

Pacucha村の一部が、環境汚染を理由に、Tocctopata農民コミュニティによる零細鉱業実施に反対。

Mollebamba農民コミュニティ、Buenaventura社、Molle Verde社

Mollebamba農民コミュニティは、Buenaventura社との間に締結された合意書に不正があると主張。

San Juan de Chacna農民コミュニティ、零細鉱業従事者、零細鉱業反対派

San Juan de Chacna農民コミュニティの一部は、コミュニティメンバーの一部が行う零細鉱業によって環境が汚染されていることを理由に、鉱業活動の禁止を決議。

Huaquirca農民コミュニティ、Anabi社、Alturas Minerals社、その他零細鉱業等

Huaquirca農民コミュニティは、複数企業による鉱業活動に反対。

First Quantum社、Antares Minerals社、Huanacopampa農民コミュニティ

Huanacopampa農民コミュニティは、2012年12月31日で期限が終了したFirst Quantem社との合意更新がないことに不安を表明。

Sañayca農民コミュニティ、Ccori Llancay零細鉱業連盟、Mapsa社、Bayomapsa社、Apu社等

Sañayca農民コミュニティメンバーが形成するCcori Llancay零細鉱業連盟は、鉱業権者であるMapsa社、Bayomapsa社、Apu社等と対立。

Pucuta農民コミュニティ、Collpa農民コミュニティ、Norte社

Collpa農民コミュニティ住民らは、Pucuta農民コミュニティ住民と称する人々がCollpaコミュニティ内でインフォーマル鉱業を実施していると主張。一方CollpaコミュニティはNorte社の活動に反対。

Arequipa
(4)
社会・
環境
(3)

Arequipa県零細鉱業従事者連盟、閣僚評議会、エネルギー鉱山省、環境省

インフォーマル鉱業従事者らが、零細・インフォーマル鉱業規制法令に反対し、合法化プロセス途上における操業許可を要求。

Cocachacra、Dean Valdicia村民、Southern Copper社

Islay郡の住民や農民らは、環境への影響を理由にTia Mariaプロジェクトに反対。

インフォーマル鉱業従事者、Jardines del Sur Caravilenos社関係者、Buenaventura社

Jardines del Sur Caravilenos社に関係するインフォーマル鉱業従事者らが、Buenaventura社による閉山作業に反対、零細採掘場としての譲渡を求め、同社のIshihuinca鉱山を占拠。

中央政府行政(1)

Cono Norte防衛発展組合その他

Arequipa県の社会団体は、鉱業特別賦課金の一部が州政府による公共工事の実施に利用されるべきと要求。

Aerquipa/
Ayacucho
(1)
社会・
環境
(1)

San Pedro de Lucanas農民コミュニティ、Acari村、Caraveli郡

San Pedro de Lucanas農民コミュニティは、コミュニティ内における事前承認を受けていない鉱業活動の取締りを政府に要請。

Ayacucho
(7)
社会・
環境
(7)

Pomacocha農民コミュニティ、Santiago03社、インフォーマル鉱業従事者

Pomacocha農民コミュニティは、Santiago03社鉱区内におけるインフォーマル鉱業従事者の活動が環境汚染を引き起こしていると主張

Santa Lucia農民コミュニティ、小規模零細鉱業連盟、Virgen Santa Lucia請負業者

Santa Lucia農民コミュニティ、小規模零細鉱業連盟、Virgen Santa Lucia請負業者らが、Casco de Oroと呼ばれる鉱業エリアを巡って争議

Rio Plata社、Chuschi農民コミュニティ、農民コミュニティ連盟、農業連合、労働総連等

Chuschi村住民らは、水源の汚染を危惧してRio Plata社の鉱業活動に反対

Catalina Huanca社、Taca農民コミュニティ

Taca農民コミュニティは、社会・労働・環境関連の約束不履行を理由に、土地利用契約の再交渉を要求

Casma Palla集落、Quellopata社

Casma Palla集落住民は、伝統的な地域経済活動に影響を及ぼすとしてQuellopata社の活動に反対。

インフォーマル鉱業従事者、Beta Luz del Sur社

インフォーマル鉱業従事者らは、Beta Luz del Sur社の鉱区内における活動エリアを要求

Union Santa Rosa社、SOTORAMI社、Victoria100社

Union Santa Rosa社は、SOTORAMI社との対立を回避するため、エネルギー鉱山省地方局による介入を要請。

Cajamarca
(10)
社会・
環境
(10)

Yanacocha社、La Encañada村民、村役場

La Encañada村や村民らは、Yanacocha社に対して、約束の履行と、村の実施するプロジェクトへの融資に関する社会的合意書への署名を要求。

Chugur村、Cajamarca県政府、Coimolache社

Hualgayoc郡当局とChugur村は、Tantahuatayプロジェクトの拡張に反対。

Yanacocha社、
Celendin郡住民

Celendin郡住民らは、環境汚染及び4つの湖の消失を理由にMinas Conga金プロジェクトに反対。

Chuquibamba、Condebamba村、インフォーマル鉱業、Sulliden社

環境被害を理由として、合法鉱業(Sulliden社)・インフォーマル鉱業双方に反対。

Gold Fields La Cima社、Hualgayoc村

Hualgayoc村はGold Fields La Cima社に対して一連の約束履行を要求。

La Zanja社
Pulan村民

Pulan村の一部は、環境汚染を理由にLa Zanjaプロジェクトに反対。

Yanacocha社、Baños del Inca区、水資源政策委員会、条例特別委員会

Baños del Inca区と区民は、Yanacocha社に対し、Quinuario川、Grande川、Mashcon川流域を保護する条例の遵守と、これら地域における探鉱の停止を要求。

Aguila Dorada社、Supayacu先住民コミュニティSan Jose de Lourdes先住民コミュニティ

先住民コミュニティは、環境汚染を理由にAguila Dorada社の活動を拒否。

Pucara農民組合等、Origen Group社

Pucara農民組合その他は、環境汚染を理由にOrigen Group社による鉱業活動に反対。

Coimolache社-Tantahuatayプロジェクト、El Tingo農民コミュニティ

El Tingo農民コミュニティ住民らは、Coimolache社に対する合意事項の履行と、土地売買の正当性の証明を要求。

Cusco
(6)
社会・
環境
(6)

Camanti村、インフォーマル鉱業従事者、合法鉱業従事者、金採掘業者連合、Camanti村民、エネルギー鉱山省、環境省

Camanti村やQuincemilの住民らは、環境汚染や林業・農業への打撃を理由に、政府に対してインフォーマル鉱業の取締りを要求。

Anabi社、Llusco村

Llusco村は、約束不履行や環境への影響を理由にAnabi社の撤退を要求。

Hatun Rumi社、Vicho村住民

Vicho村住民らは、Quispe氏所有の非金属鉱区Hatun Rumiで同氏が実施する採石活動が環境汚染を引き起こしているとして抗議。

Glencore-Xstrata社、Espinar郡複数住民団体

Minera Tintaya社に対し、Espinar郡開発への貢献拡大と、Huanipampa廃さい堆積場の移転を要求。

Nazareno Rey社、Lutto Kututo村、エネルギー鉱山省

Nazareno Rey社によるインフォーマル鉱業の中止をめぐる争議、農業・遺跡地域における全ての鉱業活動の拒否。

Espinar郡、Glencore-Xstrata社道路及びパイプライン建設地周辺の自治体、コミュニティ等

Espinar郡内の自治体やコミュニティ等は、Glecore-Xstrata社による道路建設や、精鉱輸送パイプライン設置に、環境汚染を理由に反対。

Huanuco
(1)
社会・
環境
(1)

Raura社、Lauricocha郡内の複数の農民コミュニティ

Lauricocha郡の農民コミュニティは、血中の鉛濃度上昇被害に対する補償を要求し、Lauricocha川の水源の迂回を主張。

Ica
(3)
社会・
環境
(1)

Chavin農民コミュニティ、Milpo社

Chavin農民コミュニティは、Milpo社に対して、約束不履行を主張。

中央行政(1)

零細鉱業連盟、エネルギー鉱山省、環境省

零細鉱業従事者らは、合法化の期限延長を要求。

労働争議(1)

Shougang Hierro Peru社、同社労働組合

Shougang Hierro Peru社の労働者らが昇給を要求。

Junin
(3)
社会・
環境
(3)
Chinalco Peru社、Morococha村

Toromochoプロジェクトの実施に必要なMorococha居住地移転に反対。

Azulcocha Mining社、San Jose de Quero村、Concecion郡、Chupaca郡役場、県協議会等

San Jose de Quero村や周辺住民ら、またChupaca郡役場は、Cunas川への影響を危惧しAzulcocha Mining社の探鉱活動に反対。

Upkar Mining社、Paraiso Perdido社、San Jose de Apata農民コミュニティ

San Jose de Apata農民コミュニティは、環境や伝統産業、また児童の健康等への影響を危惧しUpkar Mining社及びParaiso Perdido社の活動に反対。

Junin/Pasco
(1)
社会・
環境
(1)

Administradora Cerro社、Aurifera社、El Brocal社、Activos Mineros社、Pan American Silver社、Chungar社、SN Power社、Electroandes社、Electroperu社、Junin県政府、郡役場、San Pedro de Huari他多数の農民コミュニティ、環境省

Chinchaicocha周辺の複数の農民コミュニティは、鉱業や炭化水素事業を実施する企業に対し、Chinchaicocha湖の浄化と、環境破壊に対する補償を要求。

La Libertad
(4)
社会・
環境
(4)

Parcoy零細鉱業連盟、La Bonita de Pacoy社、Horizonte社

インフォーマル及び違法鉱業従事者らは、Horizonte社の鉱区内での活動合法化を目的として当局の介入を要請。

Pataz零細鉱業連盟、Poderosa社

Pataz零細鉱業連盟は、Poderosa社の鉱区内での活動合法化を目的として当局の介入を要請。

Chora村、Trinity Peru社

Chora村は、健康や伝統的活動への影響を危惧し、Trinity Peru社による鉱業活動に反対。

La Libertad零細鉱業連盟、内閣

La Libertad零細鉱業連盟は、内閣に対して協議結果の合意内容履行を要求。

Lambayeque
(1)
社会・
環境
(1)

Candente Copper社、Cañaris村、Cañaris農民コミュニティ

Cañaris村やCañaris農民コミュニティは、環境汚染の可能性や約束不履行を理由にCandente Copper社のCañariaco銅プロジェクトに反対。

Lima
(3)
社会・
環境
(3)

Minera San Juan社、
San Mateo de Huanchor住民、San Mateo環境委員会

住民らは、崩壊の危険があるCoricancha鉱山廃さい堆積場の危険性を訴えると共に水資源供給プロジェクトを提案。

Casapalca社、San Mateo de Huanchor住民

住民らは、企業による約束の不履行と、書類の偽造を主張。

Raura社、Quichas農民コミュニティ

Quichas農民コミュニティは、企業による約束不履行と環境への影響を主張。

Madre de Dios (1) 社会・
環境
(1)

零細鉱業従事者連盟、環境省、エネルギー鉱山省、防衛省、内務省

Madre de Dios県内における違法鉱業根絶対策への反対。違法鉱業従事者らは緊急政令の廃止、採掘船解体の中止、同エリアからの軍隊の即時撤退を要求。

Moquegua
(1)
社会・
環境
(1)

Southern Copper社、Moquegua県政府、その他自治体、灌漑利用者組合等

近隣農民らが、Cuajone鉱山操業をはじめとする開発を原因とする長年の環境汚染への補償を要求。

Moquegua/
Tacna
(1)
境界線抗争
(1)

Moquegua県、Tacna県政府。問題発生地域の自治体

鉱物資源の存在を理由とした、Moquegua県、Tacna県の境界線争議。

Pasco
(5)
社会・
環境
(5)

Minera Cerro社、内閣、Pasco県政府、郡役場、Chaupimarca村、Yanacancha村

Chaupimarca村民らは、環境や住民の健康への影響を理由に、Minera Cerro社によるピット拡張に反対。

San Agustin de Huaychao農民コミュニティ等、Administradora Chugar社

San Agustin de Huaychao農民コミュニティは、Administradora Chugar社による約束不履行と環境汚染を理由に、当局による介入を要求。

Smelter農民コミュニティ、El Brocal社

Smelter農民コミュニティは、El Brocal社の活動による安全や健康上のリスクから、居住地の移転と当局による介入を要求。

San Antonio de Paucar農民コミュニティ、Raura社

San Antonio de Paucar農民コミュニティは、Raura社が活動する土地の権利を主張。

Pallanchacra農民コミュニティ、Vinchos社

Pallanchacra農民コミュニティは、Vinchos社によるコミュニティの土地の無断使用を主張。

Piura
(3)
社会・
環境
(3)

Piura県政府、Lomas、Tambogrande、Suyo、Paimas村役場、農民、零細鉱業連盟等

Piura県政府以下自治体が、環境汚染を理由にインフォーマル鉱業に反対。

Ayabaca農民連合その他、Rio Blanco Copper社、教会等

違法性と環境汚染の懸念を理由に、農民連合らがRio Blancoプロジェクトに反対。

Sechura農民連合、American Potash社

Sechura村民らが、American Potash社の実施するかん水の採取に反対。同社のダムによる水の停滞、既存灌漑・排水設備の破壊を懸念。

Puno
(8)
社会・
環境
(8)

CIEMSA La Poderosa社、Melgar郡多セクター委員会、Orurillo村、環境汚染対策委員会

Orurillo村住民らはCIEMSA La Poderosa社の鉱業活動を住民総会で拒否。

Sillustani社、Condoraque農民コミュニティ

Condoraque農民コミュニティが、Sillustani社の廃さいによる水資源の汚染を告発。

Cojata村、エネルギー鉱山省、INGEMMET、外務省、Peluchuco村(ボリビア)、SERGEOTECMIN(ボリビア)

Cojata村のアルパカ牧畜業者らが、汚染を理由にSuches川におけるインフォーマル鉱業に反対。また、ボリビア人のインフォーマル鉱業従事者の存在を告発。

Crucero村利益保護団体、Ananea鉱業地区、Crucero村環境監視委員会、地域住民

自治体及び住民らが、Ramis川流域の汚染を理由に、Ananea村、Cuyo村、Crucero村等におけるインフォーマル鉱業活動に反対。

Bear Creek社、Huacullani村、Quelluyo村、農民コミュニティ等

Chucuito郡内の複数の村が、環境汚染と共有地の減少を理由に、Santa Ana社の鉱業活動に反対。またPuno県南部における鉱業活動全般を拒否。

CIEMSA社、Paratia天然資源・環境保護委員会

住民らは、2007年の合意内容の更新を目的としたCIEMSA社との対話を要求。

Arasi社、Ocuviri村、Ocuviri農民コミュニティ

Ocuviri村民らは、廃さい流入によりChallapalca川の鱒が死亡しているとして、Arasi社に対し約束の履行を要求。

La Rinconada、Cerro Luna、Tapiche等の集落住民、Puno県政府(エネルギー鉱山省地方局)

金採掘を行うインフォーマル鉱業従事者らが、県政府に対し、道路、水、保健、教育等の公共サービスの充実を要求。県政府の管轄外の要求も含まれる。

Tacna
(3)
社会・
環境
(3)

Southern Copper社、灌漑利用組合、Tacna県政府以下自治体等

Tacna県灌漑利用組合の農民らは、農業用水の減少を理由に、Southern Copper社のToquepala選鉱プラント及びQuebrada Honda廃さい堆積場拡張に反対。

San Jorge社、Ticaco村、Tarata村

Ticaco村とTarata村は、住宅地や農地、遺跡の存在を理由に、San Jorge社に対する鉱区付与に反対。

Minsur社、Tacna環境保護団体、下水サービス局

Tacna環境保護団体その他市民団体は、水資源への汚染を理由にMinsur社の鉱業開発に反対。


5, 6 インフォーマル鉱業と違法鉱業
 政府は最高政令(006-2012-EM)でと「インフォーマル鉱業」と「違法鉱業」を定義している。政令によると「インフォーマル鉱業」は、鉱業活動の可能な地域において、必要な法的手続きを踏まずに行われる場合である。「違法鉱業」とは、鉱業活動の禁止地域において、行政・技術・社会・環境法規や手続きを守らず行われる鉱業活動である。
 政府は、今後インフォーマル鉱業の合法化を促進支援する一方で、違法鉱業に対しては譲歩の余地なく規制取締りの対象とする方針を示している。

3. 鉱業関連争議の様相

(1) Cañariaco銅プロジェクトの中止
 Candente Copper社(本社:カナダ)によって実施されているCañariaco銅プロジェクト(Lambayeque県)では、2012年7月にボーリングによる探鉱の実施に必要な地表権の取得に関する住民の意思を問う住民総会(参加者約400名)が裁判所の指示に基づいて実施され、同社の活動受け入れが決定された。当時の報道によると、総会には住民約4,000名のうち400名のみが参加し、同プロジェクトに関して無関心或いは反対の立場を取る住民は総会に参加せず、反対派は、別途住民投票を行う意向を表明していた。

 2012年9月末、プロジェクト対象地域の住民らによる住民投票が実施されたところ、投票者約1,900名のうち、9割以上がCañariaco銅プロジェクトに反対票を投じる結果となった。反対派は、同プロジェクトが水源に位置していることや、当地で盛んなコーヒー栽培をはじめとする農業への影響を主な反対理由に挙げていた。この結果について、同プロジェクトが位置するLambayeque県政府は、住民投票の結果に法的拘束力はないものの、大多数が反対した事実を考慮すべきだとの見解を示した。

 2012年12月には、反対派住民による地質技師らの一時的な身柄拘束事件も発生したが、同月のうちに関係者による協議会が開催されるなど、合意形成が模索されていたが、2013年1月に入り、プロジェクトキャンプ地へのアクセス道路を封鎖していたCañaris村の住民らと警官隊が衝突、複数の負傷者を出した。住民らは政府に対し、首相やエネルギー鉱山大臣、環境大臣、また市民オンブズマンや水資源庁の代表者等の参加する対話協議会の設置を求めた。この状況に対しLambayeque県知事は、対話協議会発足までCandente Copper社による探鉱活動を中止することが争議解決の唯一の方法であるとの考えを示した。

 このような中、市民オンブズマンはエネルギー鉱山省に対し、Candente Copper社に対する探鉱実施許可は、「コミュニティ所有地における経済活動・民間投資法(法律26505)」が規定するコミュニティ住民の3分の2の賛同を得ていない可能性があるとして、2012年7月に実施された住民総会の議事録の精査を要請するとともに、同社がコミュニティでの探鉱実施に必要な用地の使用許可を有しているのかを確認することを勧告した。

 さらに2013年5月に入ると、プロジェクト対象地域のSan Juan de Cañarisコミュニティに対する事前協議の実施を巡ってエネルギー鉱山省と文化省が対立し、文化省のLa Negra異文化受容次官(当時)が辞任し、2013年5月18日にCandente Copper社は、探鉱活動の一時的な中止を発表するに至った。

 Cañariaco銅プロジェクトの中止は、地域住民による反対運動がきっかけとなったことは明らかであるものの、複数の原因や問題が内在している。

 まず、プロジェクト対象地域は伝統的な鉱業地帯ではなく、コーヒー栽培等をはじめとする農業が主要産業となっており、同プロジェクトが水源付近に位置していることが最大の反対理由となっている。現地は、岩や土が露出する、あるいは高地アンデスに見られる背の低い植物が一般的な、多くのペルーの鉱山サイトとは異なる植生豊かな地帯である。

 同プロジェクトに関する争議が大きくなったのは、2012年7月に行われた住民総会以降である。Candente Copper社は、エネルギー鉱山省によるボーリング実施許可を取得済みであったが、実際にボーリングを行う前に地表権者との土地利用に関する合意を得ることが必要とする裁判所の指示に基づき、住民総会が実施され、活動受け入れが決定された。

 しかし、前述のとおり、プロジェクト反対派住民の呼びかけによって2012年9月に実施された住民投票では、投票者1,900名の9割以上が反対を表明した。これ以降反対派は、この住民投票の結果を尊重するよう主張する一方で、エネルギー鉱山省は、合法的に行われた2012年7月に実施された住民総会による決定を認める立場を示していた。そして2013年初頭以降は、道路封鎖や警官隊との衝突による負傷者発生など、事態は深刻化していった。

 Candente Copper社が公表した2011年のCañariaco銅プロジェクトの経済性評価によれば、同プロジェクトの銅資源量は4百万tであり、プロジェクト開発に必要な投資額は15億US$とされていた。また、2013年5月には近傍において金・銀の有望鉱床が発見されたことが伝えられた。

 しかし、鉱業専門家らは、資源量の増加や近年のコスト上昇から、実際に必要な投資額は2011年当時に算出された額を大きく上回ると見ている一方、銅価格は2011年2月のピーク(9,880US$/t:LME)から2013年5月のプロジェクト中止決定時(7,248US$/t:LME)へと27%下落している。

 Candente Copper社はジュニア企業であり、そもそも資金的に強靭ではない。プロジェクトを売却するとしても、より多くのボーリング調査を行って正確な資源量を把握する必要があるが、住民の反対や妨害によってボーリング調査の実施が不可能な状況の中、機材等のリソースを現場に維持することはコスト的に負担が大きい。そこに市況の下落も相まり、Candente Copper社は、これ以上争議が激化する前に探鉱活動を一時中止し、情勢が落ち着くのを待つことを選んだとの見方もある。

 Cañariaco銅プロジェクトに関する争議を通して浮き彫りとなったのが、先住民に対する事前協議の適用をめぐるエネルギー鉱山省と文化省の対立である。

 「先住民事前協議法(法律 29785)」は、現政権発足後間もない2011年8月、先住民居住地域における鉱業や石油・天然ガス開発を含む措置に関し、先住民の意向を汲むことを目的として成立したもので、同法施行細則は2012年4月に施行された。

 しかし、事前協議の対象となる先住民及び種族民をリストアップする先住民・種族民データベースは公表されていなかった。このデータベース作成に関し、文化省のLa Negra次官はCañariaco銅プロジェクトの地域住民であるSan Juan農民コミュニティを含めるべきだとの考えを示し、市民オンブズマンも賛同していた。他方のエネルギー鉱山省は、同プロジェクトの実施は既に承認済みであり、事前協議実施の必要はないとの姿勢を示したうえ、農民コミュニティは先住民事前協議の対象にはならないとの考えを示していた。

 本対立の争点は、ケチュア語やアイマラ語等を母語とするアンデス農民コミュニティを事前協議の対象として認めるかという点である。これらコミュニティが事前協議の対象として認められた場合、多くの鉱業プロジェクトにおいて事前協議の実施が義務付けられることになる。この点を見越したエネルギー鉱山省が政府内で圧力をかけ、結果的に文化省La Negra次官は辞任、さらにPeirano文化大臣は、先住民・種族民データベースが混乱や争議の元になるとして、公表取り止めの発表に至ったのではないかと見られている。

 なお先住民事前協議法に関しては、資源開発を巡る争議の回避・解決策になる一方で、事前協議の実施が投資に対する阻害となることを懸念する声も上がっている。

(2) インフォーマル鉱業問題
 最も深刻なレベルの環境汚染をもたらすとされるインフォーマル鉱業や違法鉱業も、全国で争議の原因となっている。政府はインフォーマル鉱業の合法化活動や違法鉱業の取締りを行ってきたが、その一方で零細・インフォーマル鉱業を目的とした鉱区取得が急増し、2005年から2011年にかけて零細鉱業の鉱業権者数が20%増加した一方、鉱区面積は150万haから440万haへと約3倍に拡大している。

 前年までにカレントトピックスで取り上げたオンブズマンレポートと比較しても、インフォーマル鉱業や違法鉱業が原因となった争議の数は2011年が8件、2012年が13件、さらに2013年では23件へと増加の一途をたどっている。また、Piura県ではインフォーマル鉱業の規模があまりにも拡大し、県政府では対応不可能なレベルとなっている旨指摘されている。

 ペルー政府は、特に熱帯雨林地方に位置するMadre de Dios県の違法鉱業エリアにおいて重機破壊等の取締りを実施しているが、金価格高騰と脱税・密輸で高い利益を上げる違法業者はすぐに重機を買い替えるため、目立った成果は上がっておらず、違法鉱業を収入源とする労働者からの反発も根強い。このような状況の2013年11月、政府はMadre de Dios県において、燃料取引の規制、ガソリンスタンドの新たな設置許可の停止やシアン等金採掘に使用される化学物質取引の規制、使用者の登録、金の輸出の規制等による多角的な対策を発表した。

 NGO団体のペルー鉱業争議観察所は、2014年4月に政府によるインフォーマル鉱業合法化の期限が終了することから、インフォーマル鉱業が鉱業争議の中心になるとの見通しを示しているほか、現在約7万件の合法化申請が行われているものの、実際に合法化されるのはこのうち20,875件であるとの見通しを示している。

 De Echave元鉱山次官は、政府は拡大を続けるインフォーマル鉱業に歯止めをかけるべく、インフォーマル鉱業の実施地域ごとの現状把握を行うこと、またこれ以上の森林破壊を阻止するためには鉱業禁止区域を拡大するべきだと述べている。

 無秩序な森林伐採、水銀やシアン化合物の使用による深刻な環境破壊や未成年者の労働、劣悪な労働環境、人身売買などの人権問題等による鉱業のイメージ悪化はもとより、周辺国では、違法鉱業が合法的に実施されている鉱業を脅かす存在にもなっており、これ以上のインフォーマル鉱業や違法鉱業の拡大を防ぐことは国家の緊急課題の1つとなっている。

4. オンブズマンの取り組み

 オンブズマンでは、社会争議の解決や沈静化に向けて①防止・監査活動、②仲介、③法的擁護の3種類のアプローチを行っており、2013年10月の実績は下表のとおりである。

 なお、オンブズマンによる活動件数は188件(2012年10月は161件)であり、このうち防止・監査活動が148件で大部分を占めた。

表2.オンブズマンの取り組み実績

防止・監査活動 情報アクセス 6
立ち入り監査 3
当事者への意見聴取/会議・セミナー開催 148
法廷助言 0
注意喚起 9
仲介 仲裁/仲介 7
対話協議の設置 12
ハイレベル争議解決委員会の設置 1
法的擁護 逮捕者の拘束状況調査 2
警察、検査局、司法への監査 0
合 計   188

5.おわりに

 この1年間、社会争議件数はほぼ横ばいであるが、2012年まではMinas Conga金プロジェクトに対する反対運動をはじめとする反鉱業運動が次々に起こったのに比べ、2013年はプロジェクト中止に至った上半期のCañariaco銅プロジェクト反対運動を除き特に大きな反対運動は見られなかった。これは、金属価格高騰のピークを過ぎ、鉱業プロジェクトに伴う活動そのものが以前のようなペースで展開されていないことを反映していると見ることが出来るかもしれない。

 2013年下半期には、多くの鉱山における減益、経営見直し等のニュースが流れ、2014年1月にはカノン税(鉱山企業が前年に納付した所得税の50%)還付額は2013年には38億PEN(ヌエボ・ソーレス、約13億5,700万US$)であったが2014年は19億~21億PEN(約6億7,800万~7億5,000万US$)へと大幅に減るとの見通しも伝えられた。住民側の一部もペルーにおける鉱業の位置付けや、鉱業活動による恩恵に気付き始めたものと思われる。

 2011年7月に発足した現Humala政権は、鉱業や投資促進の方針は維持しつつも、争議の根本にある社会的不平等の解消の必要性を前面に打ち出し、鉱業界に対し、社会発展へのより一層の経済的貢献を求めるという考え方のもと、2011年には鉱業ロイヤルティ改正や鉱業特別税導入を行った。また同年9月には「先住民事前協議法」の公布、翌2012年4月には同法の施行細則が公布され、2012年12月には、鉱業をはじめ現在各産業を管轄する省庁で個別に行われている環境影響詳細評価(EIAD)の審査・承認業務を一括して担う、「持続的投資環境認証サービス局」(SENACE)の設立法が公布された。2013年5月には、政府は、不安定な世界経済の動向や金属価格下落への対応策として、一連の投資促進政策を発表した。その一環として政府は環境影響評価(EIA)の迅速な審査を目的とする最高政令を公布した。

 Humala政権は、このように鉱業及び社会の健全な発展のための法・制度整備を進めてきた。

 2013年12月10日には、Chinalco(中国アルミ業公司)のToromocho銅プロジェクト(Junin県)の操業が開始され、操業開始式典にはHumala大統領が出席した。

 Toromocho銅プロジェクトでは、第1ステージで年間170,000 tの銅を生産し、段階的な増産を経て、2016年のフル生産体制下では年間375,000 tの銅を生産する計画である。

 なお同プロジェクトの操業開始により、2014年のペルー銅生産量は13%増加して147万tとなる見通しである。同プロジェクトへの合計投資額は4,820百万US$にのぼり、ペルーにおいてはAntamina銅・亜鉛プロジェクト以降最大規模の鉱業プロジェクトである。

 しかしながら、地方政府によるカノン税の活用度も依然として50%程度と低く、2013年4月、エネルギー鉱山省はカノン税及び鉱業ロイヤルティを規定する法律の見直しを実施することを発表した。また、2013年10月、ペルー鉱業石油エネルギー協会は、鉱業特別税が地方において活用されていないことを理由に、過去に存在していた自発的拠出金のような、鉱業影響下にある地域が直接裨益する制度の復活を提案している。

 先住民事前協議法に関しては、Cañariaco銅プロジェクト中止の経緯でも記したとおり、先住民・種族民と同様にケチュア語やアイマラ語等を母語とする農民コミュニティを事前協議の対象とするか否か、政府内においても方針が統一されていない。

 また、SENACEによるEIAD審査は2014年4月から開始される見込みと言われているものの、SENACE設立法の施行細則は2013年末現在公布されておらず、SENACEの業務開始の遅れが懸念される。

 現Humala政権は発足後2年半を過ぎ、今後さらにペルー社会とそれを支える鉱業の発展に向けた政策が着実に実行され、実効あるものにしていく正念場を迎えており、これまで以上に政府によるバランスのとれた対応が重要になる。

ページトップへ