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報告書&レポート

2014年7月3日 シドニー事務所 伊藤浩
2014年26号

豪州連邦政府・資源エネルギー経済局(BREE)発表の「Resources and Energy Major Projects, April 2014」の概要

 2014 年5 月28 日、豪州連邦政府・資源エネルギー経済局(BREE)は「Resources and Energy Major Projects, April 2014」を発表した。BREEは同発表資料において、資源・エネルギー分野の主要プロジェクト件数及びプロジェクト価値(投資額)等を報告するとともに、将来のプロジェクト投資額を予測している。

 本稿では当該発表資料の概要を報告する。

はじめに

 5 月28 日発表の同資料によれば、2014 年4 月末時点で民間企業による最終投資判断(FID: Final Investment Decision)が行われている資源・エネルギー分野の主要プロジェクト(建設中のプロジェクトを含む)は48 件、プロジェクト価値は投資額にして2,289億A$(約22兆円: A$=95 円)であった。半年前の2013 年10 月末時点では63 件、2,401億A$、1 年前の2013 年4 月末時点では73 件、2,676億A$であったことから、FIDが行われている主要プロジェクトは件数、プロジェクト価値を示す投資額とも減少傾向にある。BREEは資源・エネルギー分野では設備投資が一段落し、生産段階に移行しつつあると分析している。

 また、BREEは資源・エネルギー分野の主要プロジェクトの将来予測も行っている。これは2013 年4 月以降、BREEが6 ヶ月毎に発表しているもので、今回が3 回目となる。今般、BREEは「実現見込みの高いシナリオ(Likely Scenario)」において、今後FIDが行われる資源・エネルギー分野の主要プロジェクトは、短期的にはプロジェクト価値を示す投資額に大きな変化はなく、2015 年末時点でも2,300億A$程度(2014 年4 月末時点と同程度)で推移すると予測している。

1. 資源・エネルギー分野の主要プロジェクトの分類

 BREEは資源・エネルギー分野における主要プロジェクトを開発ステージ別に次の4 つに分類している。主要プロジェクトとはプロジェクト価値(投資額)が5,000万A$以上のプロジェクトを指す。

(1) Publicly Announced Stage  (プロジェクト公表済み。初期FS未完了)
(2) Feasibility Stage  (初期FS完了済み)
(3) Committed Stage  (FID実施済み。建設中を含む)
(4) Completed Stage  (建設工事完了)


 (1)のPublicly Announced Stageプロジェクトはプロジェクト名が公表され初期のFeasibility Study(FS)が行われている段階のプロジェクトを指す。(2)のFeasibility Stageプロジェクトは初期FSが完了しているプロジェクトを指す。(1)及び(2)のプロジェクトとも、FIDが行われる前の段階のプロジェクトである。

 (3)のCommitted StageプロジェクトはFIDが行われているプロジェクトであり、建設中のプロジェクトも含む。(4)のCompleted Stageプロジェクトは対象期間中に建設工事が完了したプロジェクトである。

 なお、今般の発表資料における対象期間は2013 年11 月から2014 年4 月である。

2. プロジェクト件数及びプロジェクト価値(投資額)

2-1. Publicly Announced Stageプロジェクト
 2014年4月末時点において、Publicly Announced Stage プロジェクトは78件、プロジェクト価値(投資額)は964億A$~1,224億A$である(表1参照)。Publicly Announced Stage プロジェクトは2013 年10 月末時点の92 件、プロジェクト価値(投資額)1,096億A$~1,516億A$から大幅に減少した。

【表1】2014年4月末時点の開発ステージ別プロジェクト件数及び価値


出所:BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」中の表をもとに筆者作成

2-2. Feasibility Stageプロジェクト
 2014 年4 月末時点において、Feasibility Stage プロジェクトは146 件、プロジェクト価値(投資額)は1,689億A$である(表1参照)。Feasibility Stage プロジェクトは2013 年10 月末時点の162 件、プロジェクト価値(投資額)2,085億A$から大幅に減少した。BREEは豪州の資源・エネルギー分野のプロジェクトはFeasibility Stageにおいて活動の一時停止や減速が観察されると説明している。

 Publicly Announced Stage プロジェクト及びFeasibility Stageプロジェクトの件数の推移を図1に示す。なお、図1のLess Advancedプロジェクトとは、プレFSあるいはFS実施中のプロジェクトのことであり、Publicly Announced Stage及びFeasibility Stageプロジェクトと同様の意味を有する。

【図1】Publicly Announced Stageプロジェクト及びFeasibility Stageプロジェクトの件数の推移
【図1】Publicly Announced Stageプロジェクト及びFeasibility Stageプロジェクトの件数の推移
出所: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」

2-3. Committed Stageプロジェクト
 2014 年4 月末時点におけるCommitted Stage プロジェクトは48 件、プロジェクト価値は投資額にして2,289億A$の規模である(表1参照)。Committed Stage プロジェクトは半年前の2013年10月末時点の63件、プロジェクト価値(投資額)2,401億A$から減少した。また、1年前の2013 年4 月末時点における同プロジェクトの件数は73 件、プロジェクト価値(投資額)は2,676億A$であったことから、Committed Stage プロジェクトは件数、プロジェクト価値(投資額)とも減少傾向にあるといえる。BREEは報告書において資源・エネルギー分野においてはプロジェクトへの設備投資が一段落し、生産段階に移行しつつあると分析している。

 Committed Stage プロジェクトの位置を図2に、Committed Stageプロジェクトの件数及びプロジェクト価値(投資額)を図3に示す。

 2013 年11 月から2014 年4 月末までの6 ヶ月間で新たにFIDが行われ、Feasibility StageからCommitted Stageに移行した主要プロジェクトは8件、プロジェクト価値は投資額にして128億A$である(表2参照)。

【図2】Committed Stage プロジェクトの位置(2014年4月末時点)
【図2】Committed Stage プロジェクトの位置(2014年4月末時点)
出所: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」

¥ 【図3】Committed Stage プロジェクトの件数及びプロジェクト価値(投資額)の推移
【図3】Committed Stage プロジェクトの件数及びプロジェクト価値(投資額)の推移
出典: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」

【表2】Feasibility StageからCommitted Stageに移行したプロジェクト
(2013年11月~2014年4月)


出所:BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」中の表をもとに筆者作成

2-4. Completed Stageプロジェクト
 2013 年11 月から2014 年4 月の間に建設工事が完了したCompleted Stageプロジェクトは21 件、総投資額にして256億A$である(表3参照)。Completed Stageプロジェクトの件数は2013 年5 月から10 月までの期間に建設を完了したプロジェクトの18 件から3 件増加した。投資額は過去最高額を記録した2013 年5 月から10 月までの6 ヶ月間に建設工事を完了したプロジェクトの投資額303億A$よりも47億A$減少したが、同最高額に続きこれまでに2 番目に高い額となった。

 BREEは2009 年以降に急増した資源・エネルギー分野への投資は、プロジェクトの建設工事の完了によって生産を拡大する段階に移行しつつあり、今後、これらプロジェクトが長期的に高付加価値を有する鉱業産品を生産していくことになると説明している。

 Completed Stageプロジェクトの投資額の推移等を図4に示す。

【表3】Completed Stageプロジェクトの鉱種別投資額
(2013年11月から2014年4月までの間に建設工事が完了したプロジェクト)


出所: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」をもとに筆者作成
【図4】Completed Stageプロジェクトの投資額の推移
【図4】Completed Stageプロジェクトの投資額の推移
出所: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」

3. 将来予測

 BREEはCommitted Stageプロジェクトについて、「Likely Scenario(実現見込みの高いシナリオ)」及び「Possible Scenario(起こりうるシナリオ)」の2つのシナリオを用いて将来予測を行っている。

3-1. Likely Scenario(実現見込みの高いシナリオ)
 1 年前の2013 年4 月末時点でCommitted Stageプロジェクトのプロジェクト価値は投資額にして2,676億A$であったが、同年10月末時点で2,401億A$、2014 年4 月末時点で同2,289億A$に減少した。今般BREEはLikely Scenario(実現見込みの高いシナリオ)において、今後民間企業がFIDを行うCommitted Stage プロジェクトのプロジェクト価値(投資額)は短期的には大きく変動せず、2014 年末及び2015 年末時点でも2014 年4 月末時点のプロジェクト価値(投資額)とほぼ同額の2,300億A$程度であると予測しており、その後、2016 年末時点で1,500億A$程度に減少し、2017 年末には750億A$程度に減少すると予測している。

 Committed Stage プロジェクトのプロジェクト価値をBREEのこれまでの報告額(実績額)及び当該Likely Scenarioによる予測額から時系列に整理すれば以下のとおりで、Committed Stage プロジェクトは2012 年がピークであったと判断される(表4参照)。

【表4】Committed Stage プロジェクトのプロジェクト価値(投資額)の動向
(Likelyシナリオベース)


出典: BREE「Resources and Energy Major Projects」等(2012年~2014年)をもとに筆者作成

3-2. Possible Scenario(起こりうるシナリオ)
 BREEはPossible Scenario(起こりうるシナリオ)において、今後民間企業によるFIDが行われるCommitted Stage プロジェクトの価値(投資額)は、2015 年末に2,700億A$程度に増加するとともに2016 年末には2,700億A$を超えピークになると予測しており、その後、2017 年末に2,300億A$程度に減少した後、2018 年末には1,500億A$程度、2019 年末には1,000億円程度になると予測している。

 Likely シナリオ及びPossible シナリオにおける将来のCommitted Stage プロジェクト価値(投資額)の推移を図5に示す。

【図5】将来のCommitted Stage プロジェクトのプロジェクト価値(投資額)の推移
【図5】将来のCommitted Stage プロジェクトのプロジェクト価値(投資額)の推移
(Likely シナリオ及びPossible シナリオ)
出所: BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」

4. おわりに

 BREEは、資源・エネルギー分野では投資段階から生産段階に移行(これまで設備投資が行われたプロジェクトの建設が完了して生産段階に移行)しつつあると分析しているが、今般の報告書の内容からは、新規プロジェクトに対する企業の最終投資判断(FID)は従来より鈍化していると判断され、また、今後、建設中のプロジェクトが着実に完成していくこと及び昨今の鉄鉱石及び石炭の生産量の増加を鑑みれば、資源・エネルギー分野のプロジェクトは生産段階に移行しつつあるというよりも、既に生産段階に移行しているのではないかと推察される。この状況は、資源・エネルギー分野が資源ブームの論議における第三段階(第一段階の価格ブーム、第二段階の投資ブームを経て、第三段階の生産ブーム)に移行している状況であると言えるかもしれない。

 Committed Stage プロジェクトの将来予測における実現見込みの高いシナリオ及びこれまでのCommitted Stage プロジェクトの実績額(BREE報告額)の推移を見れば、Committed Stage プロジェクトは2012 年(2012 年10 月末時点)の2,684億A$がピークであったと判断されるが、一方、Possible シナリオに目を向ければ、今般のシナリオは1 年前のシナリオと比較し、プロジェクト価値(投資額)のピークが2014 年から2016 年に動いており、また、Committed Stageのプロジェクトの価値(投資額)が資源ブーム前の2007 年頃の投資額レベル(700億円程度)になるのは2019 年以降と予測されている。この予測はFIDが行われるプロジェクトは今後数年間、これまでと同等規模で推移するとの意味を有するものであり、今後もCommitted Stage プロジェクト、Completed Stageプロジェクトの動向が注目される。

 なお、今般BREEが発表した「Resources and Energy Major Projects, April 2014」には、開発ステージ毎に主要な資源・エネルギープロジェクトのリストが掲載されている。当該リストについては鉱種別に整理した上で「金属資源レポート」に掲載する予定である。

~参考資料~
 BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2014」
 BREE「Resources and Energy Major Projects, October 2013」
 BREE「Resources and Energy Major Projects, April 2013」
 BREE「Resources and Energy Major Projects, October 2012」
 BREE「Mining Industry Major Projects, April 2012」

上記資料については下記のサイトを参照されたい。
http://www.bree.gov.au/publications/resources-and-energy-major-projects

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