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報告書&レポート

2014年11月6日 調査部金属資源調査課 畝井杏菜
2014年44号

ILZSG鉛亜鉛需給予測、供給不足継続も2015年不足幅縮小-2014年秋季国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)報告(1)-

 2014年10月16~17日、リスボンにて、国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)の秋季定期会合が開催された。ILZSGは、1959年に国際連合により発足された国際機関で、現在はリスボンに事務局を置いている。鉛・亜鉛市場における透明性確立を目的とし、需給調査や経済動向など鉛・亜鉛市場に影響を与える分野の情報収集、分析、統計を行っており、春季、秋季の年2回定期会合を開催している。今回、2014年秋季定期会合に参加する機会を得たため、本会合の報告を2回に分け行うこととする。本稿ではILZSGによる2015年までの鉛及び亜鉛の需給見通しについて報告する。

1. 鉛

1-1. 需給バランス―不足幅縮小するも、2015年も供給不足が続く―

表1:世界の鉛需給バランス(2012~2015年)

(単位:千t)

区分 2012年実績 2013年実績 2014年見込 2015年予測 増減
2015/2014
鉛鉱石生産 5,006 5,432 5,564 5,871 5.5%
鉛地金生産(供給) 10,550 11,121 11,290 11,540 2.2%
鉛地金消費(需要) 10,483 11,167 11,328 11,563 2.1%
需給バランス 67 ▲ 46 ▲ 38 ▲ 23  

(出典:ILZSG会議資料より作成)

 まず、世界の鉛地金生産量と消費量との需給バランスを表1に示す。鉛需給は、引き続き供給不足が継続すると推測されるものの、2013年の供給不足幅4.6万tが2014年には3.3万tまで縮小し、2015年にはさらに2.3万tにまで改善される見込みとしている。中国の鉛輸入量が依然拡大している中で、ペルーのLa Oroya銅・亜鉛・鉛製錬所が操業停止、米国の鉛二次製錬所も閉鎖が相次いでいるが、ボリビアのKarachipampa鉛・銀製錬所が2014年9月に稼働開始したことが主な要因となって、2015年は供給不足幅が縮まる見込みとなっている。

1-2. 鉛需給動向―鉱石・地金ともに生産量増加、中国鉛消費の伸びは小幅―

 鉛の鉱石生産量、地金生産量及び消費量の動向については次のとおり。

表2:鉛の鉱石・地金生産及び消費量(2013~2015年)

(単位:千t)

区 分 鉱石生産量 地金生産量 地金消費量
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
欧州 404 409 403 1,792 1,875 1,899 1,681 1,711 1,724
アフリカ 86 85 83 91 101 102 98 99 102
米州 1,027 1,027 1,054 2,282 2,146 2,133 2,312 2,310 2,321
アジア 3,204 3,284 3,552 6,724 6,945 7,180 7,057 7,186 7,392
*中国 2,850 2,950 3,200 5,000 5,070 5,300 4,977 5,100 5,250
*アジア(中国除く) 354 334 352 1,724 1,875 1,880 2,080 2,086 2,142
オセアニア 711 759 779 232 223 226 19 22 24
世界計 5,432 5,564 5,871 11,121 11,290 11,540 11,167 11,328 11,563

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図1:世界の鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2013~2015年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図1:世界の鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2013~2015年)

(1) 鉱石生産量
 鉱石生産については、カナダで減産となるものの、豪州、中国、米国で増産が見込まれているため、2014年は対前年比で2.4%増の556万t、2015年は対前年比で5.5%増の587万tになると推定されている。具体的には、カナダでは2013年に2.2万tの鉛鉱石が生産されたものの、2014年及び2015年はわずか0.4万tに留まると見られている。カナダ東部にあるGlencore社の世界最大の坑内掘鉛鉱山、Brunswick亜鉛・鉛鉱山は、生産能力は6万t/yと世界有数の鉛鉱山であったが、2013年4月に鉱量枯渇を理由に閉山となった。一方豪州では、2013年は71.1万t、2014年は75.9万t、2015年には79.9万tと順調な生産規模拡大が見込まれており、具体的には春季大会でも報告されている通り、Glencore社のMt Isa鉱山及びMcArthur River鉱山、Perilya社のBroken Hill鉱山の増産が生産量拡大を牽引するものと見られる。中国も、2013年の285万tから2015年には320万tの生産量増加が期待されている。

(2) 地金生産量
 地金の生産については、米国の鉛生産最大手Doe Run社の相次ぐ製錬所閉鎖が影響すると見られるものの、欧州を中心とした増産により生産量は増加する見込み。Doe Run社のHerculaneum製錬所が2013年末に操業終了、またカリフォルニア州にある二次製錬プラントも2014年3月に閉鎖されたことから、米国の鉛地金は、2013年から2014年にかけて、10万t以上も減産すると見られている。また、Doe Run社の子会社である、ペルーのLa Oroya製錬所も2014年6月に閉鎖となり、ペルーの鉛生産量も僅かに減少する見込み。一方、イタリアやロシア、ベルギー、韓国など、欧州各国を筆頭に複数の製錬所が地金生産を拡大させる予定となっており、世界全体では2014年は対前年比1.5%増の1,129万t、2015年にはさらに2.2%増の1,154万tの生産が見込まれている。

(3) 地金消費量
 2014年の地金消費量は、世界全体で対前年比1.4%増の1,132万tとなる見込みであるものの、2.5%成長と予測されていた中国の消費量の伸びは1.4%に留まる見通し。中国の主な鉛用途分野は、自動車、E-bike(電動自転車)、携帯電話基地局の電源であり、鉛蓄電池が欠かせない。中国国内での自動車産業は、年6.2%の成長率で、さらなる市場拡大が期待されている他、携帯電話についても、4Gネットワーク普及のインフラ整備が進んでいる。一方、これまで生産を拡大し続けてきたE-bikeについては、その成長は減速し始めている。その他の国の需要については、米国は横ばい、欧州は2014年は対前年比1.8%増、2015年は0.8%増の成長が見込まれている。

1-3. 鉛の在庫と価格―在庫、価格ともに小幅な動きが継続―

 鉛の在庫は、この1年間では大きな変動は無かった(図2参照)。2014年春から夏にかけて、やや減少したものの、10月には昨年10月と大きく変わらない在庫量まで回復している。SHFE在庫については、2012年~2013年をピークに、2014年にかけては横ばい~下落傾向で推移している。なお、LME在庫は2014年4月に一時的に20万tを下回ったものの、概ね20万t台前半で推移した。2013年10月には、LME在庫のおよそ半分を抱えていたオランダのVlissingen倉庫の在庫の一部がRotterdam倉庫に移り、現在は8万t程度となっているほか、ベルギーのAntwerp倉庫で6千tほど増加した半面、米国Detroit倉庫で6千t減の動きがあった。

 LME価格については、この1年間は小幅な値動きが続き、概ね2,000US$/t前後で推移した。2014年7~8月にかけては、米中経済の指標が好調だったことから需要の伸びが期待され2,200US$/tを超えたものの、現在元のレンジに戻っている。

図2:鉛の在庫及び価格の推移

(出典:ILZSG会議資料)

図2:鉛の在庫及び価格の推移

2. 亜鉛

2-1. 需給バランス―2014年、2015年と40万t程度の供給不足―

表3:世界の亜鉛需給バランス(2012~2015年)

(単位:千t)

区分 2012年実績 2013年実績 2014年見込 2015年予測 増減
2015/2014
亜鉛鉱石生産 13,130 13,195 13,330 13,804 3.6%
亜鉛地金生産(供給) 12,631 12,873 13,245 13,681 3.3%
亜鉛地金消費(需要) 12,386 12,982 13,648 14,047 2.9%
需給バランス 245 ▲ 109 ▲ 403 ▲ 366  

(出典:ILZSG会議資料より作成)

 世界の亜鉛地金生産量と消費量との需給バランスを表3に示す。亜鉛も2013年以降供給不足が続いており、2014年には40.3万tまで不足幅が拡大する見通し。2015年は若干改善されるとは言え、36.6万tの供給不足と需給が逼迫した状態が継続するものと見られる。さらに、後述するが、亜鉛は在庫の減少も顕著となっており、鉛と比べてもその需給のタイト感はより明確である。

 亜鉛は、Century鉱山やRampura Agucha鉱山等、大型鉱山の閉鎖や減産で供給不足に陥っているものの、Mt Isa鉱山やMcArthur River鉱山の増産、インドのKayar鉱山の生産開始他、以下各項で述べるような増産も期待されている。

2-2. 亜鉛需給動向―供給不足幅は40万tと大きいものの、増産計画に期待―

 亜鉛の鉱石生産量、地金生産量及び消費量の動向については次のとおり。

表4:亜鉛の鉱石・地金生産及び消費量(2013~2015年)

(単位:千t)

区 分 鉱石生産量 地金生産量 地金消費量
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
2013年
実績
2014年
見込
2015年
予想
欧州 976 1,021 1,004 2,395 2,485 2,514 2,356 2,384 2,407
アフリカ 333 319 298 146 150 123 166 164 166
米州 3,857 3,792 3,918 1,836 1,795 1,858 1,710 1,829 1,855
アジア 6,505 6,672 7,040 7,998 8,318 8,694 8,577 9,096 9,440
*中国 4,730 5,050 5,400 5,100 5,470 5,770 5,748 6,250 6,550
*アジア(中国除く) 1,775 1,622 1,640 2,898 2,848 2,924 2,829 2,846 2,890
オセアニア 1,524 1,526 1,544 498 497 492 173 175 179
世界計 13,195 13,330 13,804 12,873 13,245 13,681 12,982 13,648 14,047

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図3:世界の亜鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2013~2015年)

(出典:ILZSG会議資料より作成)

図3:世界の亜鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2013~2015年)

(1) 鉱石生産量
 2014年の鉱石生産量は、対前年比で1.0%増に留まった。中国では、およそ6.8%生産が増加するものの、その他の国で2.2%の減産となるためである。主な要因としては、亜鉛鉱石生産能力が65万t/yと、世界最大の亜鉛鉱山であるインドのRampura Agucha鉱山が露天掘りから坑内掘りへと採掘方法を変更したことが挙げられる。坑内掘りは、露天掘りに比べて生産効率が低く、生産量が減ると予想されるものの、マインライフは延長されるものと見られる。また、ペルー国内最大級の亜鉛鉱山であるAntamina鉱山でも減産が予定されている。ただし、Minera Antamina社は亜鉛の減産に対して今後回復する見通しだとのコメントを述べている。他にも、カナダのBrunswick亜鉛・鉛鉱山及びPerseverance亜鉛・鉛鉱山が、2013年4月に閉山となっている。

 2015年には、豪州のCentury亜鉛・鉛鉱山の閉山をはじめ、アイルランドでも減産が予定されているものの、中国をはじめ、カナダやメキシコ、ペルー、スウェーデンの増産でカバーされ、世界全体では対前年比3.6%の増産となり、中国を除いた場合でも1.5%増となると推測されている。

(2) 地金生産量
 地金生産については、2014年は対前年比2.9%増の1,325万t、2015年は同3.3%増の1,368万tとなる見込み。2014年は、ペルーのLa Oroya銅・亜鉛・鉛製錬所の操業停止やブラジル、インド、米国で減産されるものの、中国が増産する他、ベルギーやフランス、イタリア、ノルウェー、ロシアでも生産量が増える見通し。さらに2015年には米国・ノースカロライナで新たな製錬所が稼働することが計画されている他、韓国及びインドでの大幅な増産が期待されている。

(3) 地金消費量
 亜鉛についても、消費の伸びは中国が牽引。亜鉛めっき鋼板用途を筆頭に勢いよく伸びている模様。2014年には世界全体で対前年比5.1%増、うち中国では8.7%増、また2015年も世界全体で対前年比2.9%増、うち中国では4.8%増と推測された。

 その他、2014年は米国経済の回復に伴う自動車や建設需要の増加で欧州から米国への亜鉛地金輸出が伸びているものの、2015年には伸びは一服するだろうとの見方がされている。インドや韓国、メキシコ、トルコにおいても、これまで徐々に需要が伸びている一方、2014年大きく円安に動いた日本については、過去4年間と変わらず消費量50万t前後で推移し、2014年以降も消費増加の傾向は見られないとされている。

2-3. 亜鉛の在庫と価格―LME在庫は1年で半減、価格は上昇傾向―

 亜鉛の在庫は、この1年間で大きく減少した。2012年12月~2013年3月をピークに減少し始め、2014年6月に2011年以来およそ3年ぶりの低水準を記録した後、現在は僅かながら回復している。SHFE在庫については、横ばいで推移している一方、LME在庫については、2012年のピーク時が123.6万t、2014年に最も減少した時が65.0万tであるのを比較すると、在庫量はほぼ半分となっていることがわかる。LME在庫は現状70万t程度と、2014年6月のレベルを上回っているものの、再び減少局面に入っている。LME倉庫の在庫量を確認してみると、ベルギーにあった14万tの亜鉛が現在5千tに減少の他、オランダに7.3万tほどあった在庫が足元では1.6万tとなっている等、欧州在庫のほとんどが流出している一方、米国ではやはり減少はしているものの、現在も国内全体で約66万tの在庫を有している。

 LME価格については、在庫の減少に反比例するように2013年以降徐々に上昇している。特に、2014年7~8月は米国経済の回復と中国経済の堅調な伸びから、足元の需要が増したために価格が一気に高騰し、2,420US$/tまで達した。現在は、ドル高ユーロ安が進行し、ドル建てで取引する割高感から購入が敬遠され、やや値を下げて2,200US$/t付近となっている。

図4:亜鉛の在庫及び価格の推移

(出典:ILZSG会議資料)

図4:亜鉛の在庫及び価格の推移

おわりに

 鉛亜鉛は、ともに2014年、2015年と供給不足が続く。鉛は主に亜鉛の副産物であるが故、減産あるいは増産の構図は似ているものの、鉛地金のおよそ半分は再生鉛であることから、鉛に比べリサイクル率の低い亜鉛の方が、必然的に供給不足幅が大きくなっている。今回の国際非鉄研究会の合同セミナーのテーマが「リサイクル」であったが、まさに今後はいかに効率よくリサイクルを行い、スクラップを有効活用することで供給量の減少及び需給バランスの悪化をカバーできるのかが重視されるであろう。

 次回のILZSG春季定期大会は、2015年4月22日にリスボンにて開催予定となっている。

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