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報告書&レポート

2014年12月26日 調査部 金属資源調査課
2014年51号

2014年金属鉱物資源分野の10大ニュース

 JOGMEC調査部では、2014年の世界の金属鉱業情勢を概観し、金属鉱物資源分野における10大ニュースを次のとおり選定し、それらについてまとめた。

NO.1   安倍内閣総理大臣、資源国歴訪
NO.2   我が国資本の鉱山、相次いで始動
NO.3   資源価格の軟調続く、鉄鉱石は5年ぶりの安値
NO.4   インドネシア、高付加価値化政策を施行
NO.5   中国レアアース等輸出規制、WTO協定違反確定
NO.6   南アPGM鉱山で過去最長のストライキ
NO.7   沖縄本島北西沖に新たな海底熱水鉱床を発見
NO.8   BHPビリトン、非中核事業をスピンオフ
NO.9   ロンドン貴金属値決めシステム「London Fixing」、100年の歴史に幕
NO.10  加Mount Polley銅金鉱山で大規模な鉱滓ダム決壊事故が発生、BC州での資源ビジネスに逆風か

1.安倍内閣総理大臣、資源国歴訪

 安倍内閣総理大臣は、2013年に引き続き、2014年も活発な資源外交を展開した。

 エネルギー・鉱物資源の大宗を輸入に頼っている日本にとって、鉱物資源や石油天然ガス等を安定的に調達することは重要な課題の一つであり、資源国との二国間関係の強化及び供給源の多様化が求められる。安倍内閣総理大臣は本年、アフリカ、オセアニア、中南米の資源国を訪問し、資源開発等における協力関係強化を各国政府と合意した。具体的な訪問国は、表1のとおり。金属資源に関しては、チリにおいて首脳会談が行われ、本邦企業のチリへの投資推進について言及された。会談後の共同声明では、鉱業分野における二国間関係をより一層強化するとの内容が表明され、チリから日本への鉱物資源の安定供給に向けて政府間での合意がなされた。また、政府機関や民間企業のトップも併せてチリを訪問し、実務者レベルでの会談を進め、より具体的かつ重層的な協力関係を築くことに貢献し、まさに官民一体での資源外交が進められた。安倍内閣総理大臣は、カセロネス銅鉱山の開山式にも出席し、スピーチで同鉱山を通した日チリ関係の発展に対する期待が述べられた。

表1:2014年の安倍内閣総理大臣の資源国訪問

訪問国 日程 会談概要
モザンビーク 2014年1月11日~13日 資源開発及び資源を活かした産業振興の推進協力
日モザンビーク天然ガス・石炭発展イニシアティブ
豪州 2014年7月7日~8日 エネルギー・鉱物資源分野での関係強化
PNG 2014年7月10日~12日 資源開発等、両国間の投資促進の協力
メキシコ 2014年7月25~27日 石油・天然ガス・シェールガス等の開発における協力
チリ 2014年7月28~30日 チリの鉱業分野等への投資の促進
カセロネス鉱山開山式に出席
ブラジル 2014年7月31日~8月2日 深海油田等のエネルギー分野への投資についての協力

2.我が国資本の鉱山、相次いで始動

 40年ぶりの日本資本100 %の大型銅・モリブデン鉱山である、チリ・カセロネス鉱山が生産を開始した。同鉱山は、2006年の権益取得から約8年間の開発期間を経て、2013年3月から電気銅を、2014年5月から銅精鉱の生産を開始。7月29日に銅精鉱出荷第1船がコキンボ港を出航し、鉱石運搬船は大分県佐賀関製錬所に到着、9月22日初荷到着式が開催された。同鉱山は2015年度にフル操業となり、日本の銅鉱石輸入量の約1割に相当する銅量約15万tが生産され、PPC(パンパシフィック・カッパ―㈱:JX日鉱日石金属66 %、三井金属鉱業34 %)の国内製錬所で処理される。7月30日にサンティアゴにおいて開山式が執り行われ、安倍内閣総理大臣、アウロラ・ウィリアムス鉱業大臣をはじめチリ及び日本の政府関係者、地元関係者、鉱山関係者など500人が列席した。

 カセロネス鉱山は、チリ・アタカマ州の標高4,600 mの山々に囲まれた高地に位置する硫化鉱、酸化鉱からなる斑岩型銅モリブデン鉱床。採掘対象鉱量は、精鉱生産対象鉱量が10億5千万t(銅品位0.34 %、モリブデン品位126 ppm)、SX-EW対象鉱量が3億t(銅品位0.25 %)、採掘は露天掘りで、精鉱生産ラインは、破砕・磨鉱→浮遊選鉱→銅、モリブデン精鉱からなり、SX-EWラインは、ダンプリーチング→SX-EW→電気銅である。生産期間は2040年までの28年間で、当初10年間の年間生産量は、銅精鉱:銅量15万t、電気銅:3万t、モリブデン:3千t。本プロジェクトは、PPCが2006年5月に権益を取得し、2008年9月FSへの移行を決定、2010年2月に開発決定し、三井物産が資本参加したものであり、操業会社はMinera Lumina Copper Chile(MLCC:PPC77.37 %、三井物産22.63 %)。

 シエラゴルダ銅鉱山では、10月1日にミシェル・バチェレ大統領をはじめチリ及び日本の関係者など1,000人が列席し、開山式が執り行われた。同鉱山は、第Ⅱ州アントファガスタ市の北東140kmに位置し、可採鉱量約15億t(含有金属量:銅約6百万t、モリブデン約30万t、金約95 t)で露天採掘され、マインライフは23年、平均年間生産量は銅22万t、モリブデン1.1万t、金2 t。本鉱山の出資比率は、住友金属鉱山が31.5 %、住友商事が13.5 %、KGHM社(ポーランド)が55 %で、銅精鉱の50 %については住友金属鉱山が引き取り権を有している。

 アルゼンチン・オラロスリチウムプロジェクトは、開発事業会社Sales de Jujuy社によりフフイ州オラロス塩湖において、リチウムの本格生産を開始、12月3日にフフイ州・フェルナー知事をはじめアルゼンチン及び日本の関係者などが列席し、リチウム精製工場の開所式が行われた。今後同社は炭酸リチウム換算で年間17,500 tの生産を目指し、マインライフは約40年。同社には、豊田通商が25 %出資しており、当該精製工場で生産される炭酸リチウムの全量について豊田通商が販売代理権を取得している。

 JOGMECは、これらプロジェクトに対し、権益取得や探鉱活動に必要な資金の貸付(金属鉱物海外探鉱資金貸付制度)、開発資金の借入にかかる債務保証(開発資金債務保証制度)などの支援を行っている。

3.資源価格の軟調続く、鉄鉱石は5年ぶりの安値

 2014年の資源価格は、2012年からの軟調な値動きが継続し下落傾向にあった。特に今年は、銅などの非鉄金属のみならず、鉄鉱石価格の下落が顕著となり、2009年以来の安値をつけた。

 図3に銅及び鉄鉱石の価格推移を示す。銅については、2013年の平均価格7,321.9 US$/tに対し、2014年平均(1-11月)は6897.6 US$/tと、およそ6 %の下落となった。世界の銅の半分近くを消費している中国の景気減退が懸念されたこと、ドル高ユーロ安による割高感が嫌気されて買いの動きが停滞したこと、また2014年までは供給不足傾向にあったところ、2015年以降は生産量拡大にともなう供給過剰が予測されていることが要因と見られる。鉄鉱石については、2013年の平均価格130.97 US$/tに対し、2014年平均(1 -10月)は106.13 US$/tと、およそ19 %の下落となった。2014年1月と10月の比較では、133.4 US$/tから81.3 US$/tと4割近くも値下がりした。鉄鉱石の需要は、供給の75 %を海外からの輸入に頼る中国の建設事業に左右され、2014年は中国の住宅価格が低迷したこともあり、需要の減退懸念が一段と高まった。これに加え、Rio Tinto、BHP Billiton、Valeの大手3社の鉄鉱石生産増加が、供給過剰に拍車を掛けた。

 このように、2014年は鉄鉱石価格の下落が激しく、また、石油価格も「逆オイルショック」と呼ばれるほど大幅に下落している。これら資源価格の下落により資源国の通貨も下落しており、資源国経済及び資源メジャーにとって大きなインパクトとなっている。

図1:銅及び鉄鉱石価格推移(月平均価格)
(銅:2006年~2014年11月までのLME価格、鉄鉱石:2006年~2014年10月までの中国の豪州からの輸入価格)

4.インドネシア、高付加価値化政策を施行

 2014年1月12日、前日深夜までに及ぶ閣議を経て、インドネシアは2009年に施行された鉱業法に基づき高付加価値化政策を施行した。これを以て未加工鉱石の輸出が停止され、世界鉱石生産の3割を占めるニッケルについては、市場に大きな影響をもたらしている。

 ユドヨノ大統領の承認に基づき施行された政令及び大臣令の骨子は以下のとおり:

◆ 鉱産物の輸出は許可制をとる
◆ 未加工鉱石の輸出は認められず、定められた基準以上の処理が義務付けられる
◆ 精鉱の輸出は定められた基準に達した場合のみ、輸出税を支払い2016年まで可能

 同国二大銅鉱山を操業する米国企業Freeport McMoRan及びNewmontは、輸出認可の条件について同国政府と個別交渉を行い、その中で製錬所建設計画の進捗を条件に精鉱輸出税率の引き下げが認められたが、未加工鉱石の輸出については、政府は妥協する様子を一切見せていない。

 10年ぶりの政権交代が行われた10月以降も、鉱業政策に転換の萌芽は見られず、副大臣と鉱物・石炭総局長は鉱石輸出停止の継続を明言、新エネルギー鉱物資源大臣も政策を維持する方針としている。また、12月初めには憲法裁判所が鉱石輸出停止に係る違法審査請求を棄却し、当該政策の正当性が(少なくとも国内では)認められることとなった。他方、政府は7月に30のニッケル製錬所建設計画を含む資料を公表したが、その後、進捗に関する前向きなニュースは入ってきていない。同国の高付加価値化政策の成否は、2015年に持越しとなった。

 鉱石禁輸の影響として、インドネシア産ニッケル鉱石の主な需要家である日本と中国はフィリピンからの調達量を増大させているが、輸入価格の高騰に直面している。インドネシア最大のニッケル鉱石生産者である国営PT Antamの1~9月期鉱石生産量は前年同期比91 %減少した。市場ではもはやインドネシアから鉱石が輸出されることはないことを前提としており、ニッケル需給が2015年にバランスないし供給不足に転じ、今でこそ中国の在庫調整を受けて軟調に推移しているニッケル価格もいずれ上昇すると予測している。

 なお、鉱石の代替供給源となっているフィリピンにおいては、本年7~8月に未加工鉱物の完全禁輸を定める鉱業法改正案が上下院議員により提出された。ただし、高付加価値化については鉱山地球科学局が大統領令(2012年通達)に基づき実施可否に係る調査段階のところ、当該法案は政府との事前協議なく提出されたもので、当面は実現されない見通し。

5.中国レアアース等輸出規制、WTO協定違反確定

 8月29日、WTO紛争解決機関会合において中国のレアアース、タングステン及びモリブデン輸出規制がWTO協定に違反するとの3月パネル判決が正式に確定した。これにより、中国はレアアース産業政策の見直しを迫られることとなった。

 本件は、中国政府による当該品目に対する輸出数量制限、貿易権の制限及び輸出税賦課が、GATT第11条1項(数量制限の一般的禁止)、中国加盟議定書5.1条及び作業部会報告書(貿易権の制限禁止)、同議定書11.3条(輸出税の撤廃、上限輸出税率の設定)に違反するとしたもので、日・米・欧が2012年に協議申し立て、その後協議で解決せずパネルでの審理に委ねられていた。

 中国国内の状況を見ると、レアアース企業は全土に亘り多数存在し、密輸・違法採掘・環境汚染が横行する統制のとれない状態となっているとされる。中国政府による急なELの削減とこれに伴うレアアース価格高騰もこのような混乱を助長した一因と考えられ、自らの政策によって損害を招いたとも言える。政府には協定に違反した措置の速やかな是正が求められているところ、同時に国内産業を管理できる代替策の導入が必至となっている。具体的には資源税導入の可能性が従来から指摘されている他、政府が現在注力している対策としては、レアアース6大企業集団による管理である。当該企業集団は、国のレアアース戦略に基づきレアアース採掘、生産計画から環境保護まで、あらゆるレアアース業界の管理政策を徹底的に実施することを要求されている。中国内専門家も、政府の今後の施策に注目しており「2015年Q1がレアアース業界にとってカギとなる」との見方を示している。こうした中、12月12日に発表された「2015年関税実施方案」では、レアアース、タングステン及びモリブデンの輸出関税は維持されることが明らかとなった。10月末に工業情報化部が新たな関連政策と管理措置の実施について言及し、その際「WTO判定を受けて輸出量を調整すれば、市場にダメージが及ぶ」と述べたとも報じられており、税率維持は未だ代替策の結論が内部で出ていないことを示唆する。

 無秩序な開発による乱掘や環境汚染問題への対応、そしてハイテク産業の育成を目的として種々の規制を推進してきた中国は、輸出規制という対外施策に頼らず、内部統制で以て業界の秩序維持と発展に取り組むことが求められている。

表2:中国のレアメタル規制の動向

1992年 鄧小平による南巡講話での発言「中東に石油有り、中国にはレアアースが有る。中東と同様、我が国はレアアースで以て優勢を発揮できる(中東有石油、中国有稀土、一定把我国稀土的優勢発揮出来)」
1999年 輸出許可枠(Export License; EL)の設定
2004年 増値税還付の縮小(2005年に完全撤廃)
2006年 第11次5カ年計画要綱において、レアアース、タングステン、錫、アンチモンの資源保護強化とレアアースのハイテク産業への応用を推進する方針が明確化 → 輸出税の賦課、以降引き上げ、ELの削減
2009年6月 米・欧・メキシコ、中国のボーキサイト、マンガン等9品目の輸出規制に関しWTO提訴
2010年7月 2010年下半期ELの6割削減
2010年9月 尖閣諸島漁船衝突事件 → 輸出停滞
2012年1月 WTO上級委員会、9品目の輸出規制に関し協定違反判決
2012年3月 日・米・欧、中国のレアアース等輸出に関しWTO協定に基づく協議要請、4月に協議実施
2012年7月 日・米・欧の要請に基づきWTO紛争処理小委員会(パネル)を設置
2013年1月 中国、WTO協定違反判決を受けた9品目につき2013年輸出税を撤廃
2014年8月 WTO上級委員会、レアアース等3品目の輸出規制に関し協定違反判決
2014年12月 中国、WTO協定違反判決を受けた3品目につき2015年輸出税率を維持

6.南アPGM鉱山で過去最長のストライキ

 本年1月に開始され、妥結まで過去最長の5ヶ月間を要した南アPGM鉱山でのストライキは、Anglo American Platinum(Amplats)による中核鉱山売却発表のように、南アPGM産業の構造的変革をもたらす契機となった。

 世界全体のPGM生産量に占める南アの割合は、 プラチナは68 %、パラジウムは34 %と重要な供給ソース。南アでの生産の殆どはBig 3と呼ばれる生産大手3社Amplats、Impala Platinum(Implats)、Lonmin)が製錬設備や製錬技術等の優位性を生かし供給を実質的に支配してきた。

 2014年1月20日、AMCU(鉱山労働者建設組合)は、未熟練労働者の最低賃金を月額12,500ランド(約1,250 US$)へ引き上げることをBig 3に対して要求し、要求が実現されない場合、1月23日からの合法スト開始を通告。PGM鉱山での現状の平均的賃金は約5,500ランド(約550 US$)であるため、Big 3各社はAMCUの要望を過大なものとして拒否。最終的に6月24日、以下の条件で労使合意に至った(表4参照)。

表3:労使合意内容

  Amplats, Implats Lonmin
基本給12,500ランド/月未満の労働者 1~2年目:+1,000ランド/月 1~3年目:+1,000ランド/月
3年目:+950ランド
基本給12,500ランド/月以上の労働者 1~2年目:+8 %/月 1年目:+8 %/月
3年目:+7.5 %/月 2~3年目:+7.5 %/月

(出典:南ア鉱業協会資料)

 ボーナスや各種ベネフィットを加えた総支給額は、基本給の1.6~1.7倍と言われており、今回合意された賃金増の結果、生産者にとって労務費は今後2年間で1.4~1.5倍に増大すると見込まれる。また生産コスト全体では約2割増加すると想定され、プラチナ価格が低迷する中、生産者がコストをどの程度価格に転嫁していくか注目が集まる。

 本ストライキを受け、Amplatsは今後の経営合理化/立て直しに向け、Rustenburg鉱山等の資産売却を発表し、現在、売却先の選定作業が行われている。

 Johnson Matthey社が11月に発表した需給見通しによれば、2014年の南アのプラチナ及びパラジウムの生産量はそれぞれ対前年比15.7 %減、パラジウムが14.3 %減となった。また世界全体で見ても、プラチナは同5.9 %減、パラジウムは同2.4 %減となり、3年連続の供給不足が見込まれている。Amplatsによる事業再編等の供給サイドでの変化が、今後、価格にどのような影響を及ぼすか、関係者は注視している。

7.沖縄本島北西沖に新たな海底熱水鉱床を発見

 JOGMECは経済産業省の委託を受け、沖縄海域において海洋資源調査船「白嶺」や民間船を用いて、平成24年から継続して実施している地形調査、海底観察、サンプリング等により、沖縄本島北西沖の伊平屋小海嶺周辺に新たに海底熱水鉱床を発見した1。南北1km×東西600mの範囲(“野甫(のほ)サイト”と仮称)に、大小20 個以上のマウンドを確認し、野甫サイト中央には最大規模の高さ約30 m、直径約100 mに及ぶマウンドがあり、銅、鉛、亜鉛、金、銀を含む海底熱水鉱床の形成を確認した。

 品位分析を行ったところ、銅 0.53 %、鉛 7.81 %、亜鉛 12.03 %、金 3.3g/t、銀 911g/tとの結果を得ており、この鉱石品位やマウンド分布域の広がりは、伊是名海穴Hakureiサイトの海底熱水鉱床に匹敵する。

 今後、海底観察、物理探査、ボーリング調査等を行い、この鉱床の広がりや金属含有率を把握し、資源量を評価する予定である。

8.BHPビリトン、非中核事業をスピンオフ

 BHP Billiton(BHPビリトン)は2013年度決算(2013年7月~2014年6月)の発表に合わせ、非中核事業(ノンコア資産)をスピンオフさせ、新会社として上場させる計画を明らかにした。同社の株主および関係当局の承認を以て、2015年5月に上場を完了させるスケジュールで、本社はパースに置く。上場先はシドニー、ヨハネスブルグ、ロンドンの3か所。

 同社は2013年5月の新CEO就任以来、「鉄鉱石、石炭、銅、オイル・ガス」の中核4分野(自社操業:12事業会社+非自社操業:7事業会社)にカリウム(開発中:1件)を加えた5分野を中核事業と位置付け、資産の最適化を検討していた。今回、ノンコア資産として分社化されるのは、アルミニウム(含アルミナ)、マンガン、ニッケルおよび原料炭と一般炭の一部を合わせた計12事業で、BHPビリトン全体の利益に占める割合は2013年度決算で5 %に満たない小規模セグメント。


図2: 2013年度決算におけるセグメント別の主な経営状況

 当該事業セグメントは、BHPビリトンにおいては相対的に小規模と位置付けられたが、価格低迷が続いているベースメタルと石炭を中心事業としながらも、2013年度決算で、売上92億US$、定常的営業利益(Underlying EBIT)7.4億U$を113億US$のネット営業資産から稼いでおり、一般的には優良な大手企業である。また、各事業会社は著名な企業であり、相当なのれん価値を有していると考えられる。従い、2015年の上場時、また、その後の資源価格の上昇サイクルにおいて、BHPビリトンに巨額のキャッシュをもたらすであろう。それを中核4分野が効率良く使用する事で、スピンオフされたノンコア資産はBHPビリトンの企業価値と株主リターンの持続的な最大化に貢献する意味を持つ事になる。

 今回のスピンオフは、鉄鋼をはじめとするインフラ需要中心のポートフォリオをエネルギー需要、そして食糧需要へとシフトさせたい同社の事業戦略を色濃く反映した動きと言える。需要減少と過剰供給による価格低迷は資源メジャーの利益の屋台骨である鉄鉱石にも強い影響を及ぼしており、2014年Q4に入って、5年ぶりに70US$/t を割る展開を見せている。直近の資源ブーム以前、長く続いた15~20 US$/t の時代を生き抜いてきた資源メジャーにとっては依然として利益を出せる価格とは言え、資源メジャー5社で最も高い収益力を誇るBHPビリトンが先陣を切って大規模な事業再編に動いた事で、今後同様の動きが他社でも活発化すると考えられる。実際、Valeは12月初旬に投資家向け会合の席上で、取締役会の承認を得ていない非公式なものであるとの前置き付きながら、ベースメタル部門を分社化して、トロント市場に上場させる考えを述べている。また、Rio Tintoは7月にGlencoreから合併の打診があった事を10月になって認めている(株主価値の最大化に寄与しないとして、Rio Tintoの取締役会が却下し、8月に破談)。

9.ロンドン貴金属値決めシステム「London Fixing」、100年の歴史に幕

 2014年4月、ドイツ銀行が金・銀値決め業務からの撤退を表明した。これにより、従来同行を含め3行で実施してきた銀の値決めは、残り2行(英HSBC、加ノバスコシア)での継続が困難となり、117年の歴史を持つLondon Silver Fixingの値決めは2014年8月を以って終了することとなった。これに伴い、ロンドン金市場協会(LBMA)は新制度構築の企画公募実施し、その結果、2014年7月、米シカゴ商品取引所(CME)&トムソン・ロイターの採用を決定、8月より新体制での銀値決めがスタートした。

 金については、残り4行(英HSBC、加ノバスコシア、英バークレイズ、仏ソシエテ・ジェネラル)による値決め継続としていたが、米国企業等から価格決定方法の不透明性を指摘されたこと、また、英バークレイズが金価格操作の内部管理を怠ったとして45億円の制裁金を科されたことなどを受け、世界金協会(WGC)が金値決めの改革計画を発表し提案募集を実施。2014年10月に米インターコンチネンタル取引所(ICE)を選定し2015年1Qからの運用開始を予定している。95年の歴史を持つLondon Gold Market Fixingの値決めにも幕が下ろされる。

 これら一連の大手銀行のコモディティビジネスからの撤退は、2012年中頃にロンドン銀行間取引金利(Libor)不正操作疑惑が問題化したことに端を発し、欧州大手銀行でのコンプライアンス強化が影響したものと見られている。

 なお、プラチナ・パラジウムについても、ロンドン・プラチナ・パラジウム市場(LPPM)が値決めの見直しを実施し、2014年10月に英ロンドン金属取引所(LME)を新しい管理機関として選定、本年12月より白金族の値決めを実施している。

10.加Mount Polley銅金鉱山で大規模な鉱滓ダム決壊事故が発生、BC州での資源ビジネスに逆風か

 2014年8月4日の午前2時頃、トロント証券市場に上場するImperial Metals Corp.(IMC社)がBC州Likely近郊で操業中のMount Polley銅・金鉱山(IMC社の100 %子会社Mount Polley Mine Corp.)で大規模な鉱滓ダム決壊事故が発生した。長さ約2kmの堰堤が約370mに渡って決壊し、約7.3百万立方メートルの鉱滓スラリーを含む約17百万立方メートルの廃水(東京ドーム14杯分)が事故から5日間でほぼ全て流出した。鉱区付近を流れる小川から近隣住民の生活に欠かせないQuesnel湖に混入した大量の汚泥廃水には、鉱石由来のヒ素、水銀等が大量に含まれており、周辺住民や生態系への重大な悪影響が懸念されている。なお、事故原因は明らかになっておらず、現在進行中の当局による事故調査報告書が開示される2015年1月末を待つことになる。

 当該事故に因る環境への影響に関して、事故直後に州当局が実施した水質検査の結果、汚染度の高い特定エリアを除き、飲料水としての使用制限は8月9日に解除されており、また、魚類の生体検査でも毒性は確認されていない。ただし、当該検査結果は流出汚泥が粒子の細かい浮遊物となって水深40 m~100 mに存在している事を示しており、気温の下がる10月頃から発生する湖水のターンオーバー現象によって、深部から表層部へと湖全体に拡散する懸念を指摘する専門家もいる。また、当該地方の季節的な特徴に、雪解け水による大増水(Spring Freshet)があり、流出汚泥の堆積物がQuesnel湖に流入する追加被害を懸念する声も多い。決壊した鉱滓ダムは9月に仮堰堤が完成しており、9月末時点で鉱滓の流出は完全に収まっているが、鉱滓ダムの完全修復が冬季中の降雪が溶ける来春以前に完了しない場合、雪解け水による新たな大規模流出の可能性がある。州当局による事故調査が完了する2015年1月以降、堰堤の本格的な再建工事を早急に行い、3月の雪解けシーズン前の完全修復が強く望まれている。

 IMC社は追加被害の防止策を講じるため、環境管理法にもとづく汚染緩和命令(Pollution Abatement Order)に従い、事故後、直ちに銅精鉱の生産を停止すると同時に、様々な復旧作業に着手している。例えば、9月には空となった鉱滓ダムの底面および周辺の流出汚泥が堆積する全エリアを対象に、促成生育する草の種を散布し、雨による汚染土壌の流出および土壌乾燥による風化流出(ダストの飛散)の予防策を講じた。また、仮堰堤による鉱滓ダムの補修や2次流出時のバックアップシステムも9月末までに完成している。こうした初期対応は11月末までに大部分が完了しており、現在は雪解けによる増水対策への対応(堰堤の完全修復)が次の重要なマイルストーンとなっている。

 BC州環境省は本件への事故対応を2つの段階に分けており、現在進行している2015年6月までのフェーズ1においては、追加被害の緩和(仮堰堤の建設、浮遊物回収、防汚フェンス設置、バックアップ用の貯水池建設、等)および雪解けによる増水への対応と、短期的な速効性と追加被害の拡大防止にフォーカスしている。一方、フェーズ2は環境評価の継続とリンクした長期的な被害の低減策実施にフォーカスしており、2015年7月からスタートする。

 なお、Mt. Polleyの操業再開については、2014年12月16日現在で公式アナウンスはリリースされていない。BC州で過去最大級の環境破壊を招いた鉱山事故であり、事故調査委員会の報告書が開示される2015年1月までの再開は難しいとする現地報道が目立つ。さらに、初期対応期間であるフェーズ1は2015年6月とされており、その間に雪解け水への対応が求められる季節(3月~6月)が含まれる事から、少なくとも2015年6月までは操業再開は望めないと予測する見方も現地の専門家の間に多く存在している模様。

 カナダの鉱業界では、今回の事故がトリガーとなって、地元住民による反対活動や環境許認可取得における必要以上の遅延など、当事者であるImperial Metals社のみならず、他のプロジェクトへのネガティブインパクトの波及を心配する声が高まっている。


(参考)

 IMC社は2つの主要事業(Mt. Polley:100 %権益とHuckleberry:50 %権益)と2つの主要プロジェクト(Red Chris:100 %権益とRuddock Creek:50 %権益)を持つ中小規模の鉱山会社で、特にMt. Polleyは売上高、純利益ともに全社の70 %を占める中心事業会社である事から、同鉱山の操業が早期に再開されない場合、同社の経営状態に深刻な影響を与える恐れがある。

 まず、既存の中心事業であるMt. Polleyは事故の対策費用を含め、キャッシュの流出が継続する一方で、生産停止により、運転資金部分を除けば、営業キャッシュの流入が無い状態が2014年8月から続いており、14年9月末の営業CFはマイナス、14年9月末の現預金は僅か18mC$となっている。事故関連費用として、2014年9月期で67.4 mC$(20.3 mC$は初期対応費用で、残りの47.1 mC$は引当金)を損失認識させているが、この認識に対して、今後10年単位での対処が要求される事故対策費用として見積もりが甘いと指摘する専門家もいる。

 さらに、同社は持分生産量の大幅増加を目指して、2010年から同じくBC州にあるRed-Chris銅・金鉱山の開発を本格化させ、その開発資金(2014年9月末時点の総資産額880 mC$)の大部分を負債に求めた事から、有利子負債は2010年末の13 mC$から2014年9月末時点で668 mC$に大きく増加している。Red-Chrisは2014年Q4の商業生産を予定しており、既に一部設備で試運転を開始していたが、Mt. Polleyの事故を受けて、Red-Chrisの鉱滓ダムも再検査が義務付けられ、操業開始の公式アナウンスは現在のところ報じられていない。

 Red-Chrisは銅40,000 t/y、金53,000 oz/t、鉱命28年の開発事業であり、Mt. PolleyとHuckleberryを合わせた現在の生産量と比較して、銅で1.49倍、金で1.12倍の規模を持つ同社のコア資産となるが、その開発に要した巨額な借入金の元利返済原資は原則として既存事業のMt. PolleyやHuckleberryでは無く、Red-Chris自身のキャッシュフローである。

 こうした資金繰りのタイトさが懸念される中、大手格付け機関のMoody’sは11月21日、2014年12月末から2015年前半における同社の脆弱な流動性を指摘し、コーポレートファミリーレーティング(CFR)をB2からCaa-1へ、上位無担保社債(Senior Unsecured Regular Bond)をB3からCaa-2へそれぞれ引き下げている。なお、Moody’sは、Red-Chrisの早期稼働が実現すれば、IMC社の資金繰り問題は解決の方向に向かうとも付記している。

 Mt. PolleyおよびRed-Chrisの操業開始が早期には難しい場合、IMC社の筆頭株主(36 %)であり、Canadian Natural Resources社の会長職をはじめ、カナダのエネルギー業界で著名な実業家Murray Edwards氏による支援が必要となる場面も考えられるだろう。


 1  JOGMEC HP ニュースリリース 沖縄本島北西沖に新たな海底熱水鉱床の存在を確認(2014年12月4日);
   http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_000169.html

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