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報告書&レポート

2015年4月23日 メキシコ事務所 縄田俊之
No.15-20

Mexico Mining Forum参加報告

 2015年4月14日、Mexico Mining Forumがメキシコシティで開催された。本Forumは、Mexico Business Eventsが主催となり毎年発行されるMEXICO MINING REVIEWの宣伝を兼ねた会合ではあったが、メキシコ鉱業を所管する経済省において鉱業行政の実質トップとなる鉱業調整官をはじめ多くの政府関係者のほか、メキシコ鉱業関係者や、メキシコへの外国鉱業投資で最大となるカナダの鉱業関係者等が多数発表者として参加した。

 一方、メキシコ鉱業に関しては、2013年10月に鉱業税制改革がメキシコ議会にて承認され、それを受け2014年1月に鉱業特別税等が施行されてから1年余りが経過したほか、本年に入って鉱山労働者に対する誘拐・殺人事件、脅迫事件等が多発するなど、鉱業を取り巻く環境は厳しい状況となっている。

 こうした現状を踏まえ、本Forumでは、参加した国内外の鉱業関係者が幾つかのテーマ毎にパネルディスカッションを実施したが、メキシコ鉱業の現状に即した興味深い発言が幾つか見受けられたため、本稿において当該発言のポイントを紹介する。

※前年のメキシコ鉱業における動向や今後の展望について、国内外の鉱業関係者によるインタビュー等を中心に編集しレポートとして毎年発行。

1.パネルディスカッション等のテーマ

 本Forumで実施されたパネルディスカッションにおいて取り上げられたテーマは、以下のとおりである。

・現在の鉱業市況下における探鉱に対するインセンティブ

・メキシコにおける各種改革の鉱業への影響

・投資見直し、コスト削減及びノンコア資産売却に関する戦略

・尾鉱管理、閉山対策及び環境復元方策に関するベストプラクティス

・鉱業サプライヤー及びサービス提供における成功事例

 なお、この他に一部参加者により、メキシコ鉱業の競争力、メキシコ鉱業に対するカナダの見解、エネルギー改革による鉱業企業への電力コスト削減可能性等について発表が行われた。

2. 主な参加者による発言概要

(1) Mario Cantú経済省鉱業調整官

・メキシコは国土全体にわたり広く、かつ、多くの鉱物資源が賦存しているにもかかわらず、国土全体の27 %しか鉱業開発が進展していないため、未だ開発可能なポテンシャルを有していると言える。

・鉱業に関係する各種法令も整備され、連邦政府から州政府に至るまで鉱業企業に対し適切なサポートを実施する体制が整っている等、鉱業投資を行う上での環境が良好な状態にある。

・2014年1月に施行された鉱業特別税や貴金属鉱業特別税等による税収に関しては、2013年10月にメキシコ議会で承認された鉱業税制改革において掲げられたとおり、鉱業活動が行われている地元への還元を目的として、鉱業活動が行われている州政府や自治体に対して適切な予算配分を確実に実施する。

・本年に入ってGuerrero州やSinaloa州で相次いで発生している鉱業関係者に対する誘拐・殺人事件や脅迫事件等に関しては、政府としても重く受け止め、最重要課題として位置付けた上で、治安対策の検討、実施に乗り出している。特に鉱業に関する治安対策のため、陸軍警察の中に新たに特殊部隊を創設することも計画している。

(2) Raúl Cruz Ríos経済省メキシコ鉱業センター(SGM)長官

・メキシコは、金属鉱物、炭化水素ともに天然資源の賦存ポテンシャルが極めて高い。

・SGMでは、完全な地質データを整備しているため、鉱業企業に対し的確な地質情報の提供が可能である。

・現在Peñoles社が51 %の権益を保有するTizapa鉱山と言う優良鉱山があるが、自分は20年以上前、SGMの前身である鉱物資源審議会(CRM)に所属し、同鉱山の開発プロジェクトに関して同社と日本とともに携わった経験を有する。このようにSGMは、鉱業プロジェクトに対し積極的に関与、支援することにより、鉱業プロジェクトの推進を図っている。

・SGMは、ワールドクラスの品質を備えた行政サービスを提供していることから、メキシコにおける鉱業投資環境は良好と考えている。

(3) Armando Pérez Gea経済省メキシコ鉱業振興信託(FIFOMI)長官

・メキシコ鉱業を発展させるためには、中小鉱業企業に対する金融支援が不可欠である。

・FIFOMIとしては、プロジェクトファイナンススキームを整備しており、中小鉱業企業を中心として当該プロジェクトファイナンスの提供を実施している。

(4) Ricardo López Pescador農地都市開発省(SEDATU)鉱業担当リーダー

・鉱業特別税等新たに導入された税制による税収は、鉱業活動が行われている地域の州政府に対し当該税収の50 %、自治体に対し30 %を予算として分配するため、これら予算は地域コミュニティに対する還元に繋がり、社会利益(福祉)の向上が図られる。実際、これら分配される予算は、地域におけるインフラ整備等に活用される見込みである。

・最近、各州政府や自治体において、鉱業活動(鉱業企業)と地域コミュニティとが良好な関係を築いているケースが見受けられるようになってきており、その代表例としてZacatecas州の事例が挙げられる。

(5) César Emiliano Hernández Ochoaエネルギー省電力担当次官

・今般のエネルギー改革により、今後メキシコ国内における電力価格が米国並みに下がれば、メキシコGDP成長率が0.9~2.2 %押し上げられる見通しである。

・今般のエネルギー改革がメキシコ鉱業にもたらす恩恵(利点)としては、電力価格の低下や、安価な天然ガスの購入が可能となり、鉱業活動におけるコスト削減に繋がる。

(6) Rosalind Wilsonカナダ商工会議所(CANCHAM)会頭

・メキシコは、鉱物資源ポテンシャルが極めて高く、長い鉱業の歴史を有しているため知見や経験が豊富で、かつ、政府の支援体制が確立され透明性が図られていることから、鉱業投資に適した国であると評価している。現にカナダの鉱業企業の多くがメキシコへ進出しており、メキシコに対する鉱業投資額や進出している鉱業企業数は他国と比べ突出している。

・一方、本年に入り相次いでメキシコで活動するカナダの鉱業企業の鉱山労働者が誘拐・殺人事件等凶悪な犯罪に巻き込まれており、大変憂慮している。このため、CANCHAMとしては、メキシコ政府に対し係る事態への迅速かつ的確な対応を求めるとともに、今後の治安対策に関してもメキシコ政府の対応を強く要請している。

(7) 鉱業企業各社

・鉱業企業としては、2~3年前の投資状況と比べ、この間の金属市況の下落、低迷に加え、2014年1月に施行された鉱業特別税等により厳しい環境に置かれているため、対応策として大幅なコスト削減に努めている(加Argonaut Gold社)。特に昨年1月に施行された鉱業特別税等により、メキシコは国際的に見て鉱業税率が高くなったため国際競争力が低下したが、中でも中小鉱業企業にとっては大変厳しい環境となったことから、これまで以上のコスト削減が求められる(加Timmins Gold社)。

・近年注意しなければならない問題としては、環境対策と地域コミュニティ対策が挙げられる。特に地域コミュニティに関しては、デモ等が実力行使に発展したり、法廷闘争に持ち込まれる等問題が深刻化する傾向が強いため、政府等関係当局が積極的に解決に乗り出すことを希望する(Grupo México社、加Argonaut Gold社)。

・鉱業活動における各種問題に関し大手鉱業企業は政府の関与なしでも自力で解決できる能力を有しているところもあるが、中小鉱業企業はそのようにはいかないため、政府等関係当局が積極的に中小鉱業企業対策を推進することを希望する(加Evrim Resources社)。

・人的資源の確保とともに人材育成の充実が、将来の利益獲得に繋がるのみならず、メキシコ鉱業の国際競争力の向上に資すると考えられることから、政府関係当局は元より各鉱業企業においても、より一層の人材確保・育成の推進が必要である(加First Majestic Silver社)。

・本年に入って相次いで発生している鉱業企業関係者が巻き込まれた誘拐・殺人事件や脅迫事件等を念頭に置き、政府に対しては、より一層の治安対策を強く要請する(加Evrim Resources社)。

おわりに

 メキシコは、金属鉱物資源が豊富でポテンシャルが高いと言われており、事実、主要金属鉱物の生産量に関しては世界でも毎年上位に入り、また、カナダを中心とした外国鉱業企業による鉱業活動も盛んに行われている。

 今回Forumに参加した発表者も指摘したように、メキシコは、金属鉱物資源の賦存状況、鉱業関係法令の整備状況、インフラ整備状況、長い歴史に裏打ちされた知見、経験等を踏まえると鉱業ポテンシャルは高いと考えられよう。しかしながら、2014年1月に施行された鉱業特別税等や、本年に入り立て続けに発生した鉱山労働者に対する誘拐・殺人事件等メキシコ鉱業に対するマイナス面が存在することも事実である。

 こうした状況を踏まえ、カナダの鉱業企業を中心とした欧米系鉱業企業に加え、近年目立つようになってきた中国系鉱業企業等を含めた国内外の鉱業企業によるメキシコでの鉱業活動の動向と政府による鉱業政策の行方については、引き続き高い関心を持って注視していくことが必要と思われる。

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