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報告書&レポート

2015年5月21日 メキシコ事務所 縄田俊之
No.15-25

パナマ鉱業に関する最近の動き

 パナマでは、2014年5月に大統領選挙が行われ、野党パナメニスタ党のJuan Carlos Varela Rodríguez副大統領が勝利し同年7月1日に大統領に就任した。新大統領は、当該大統領選挙期間中、自身が大統領選挙に勝利した場合、直ちに新規鉱業プロジェクトの認可を一時凍結する等を宣言したため、パナマ鉱業にとって今後厳しい対応を迫られることが懸念された。

 一方、パナマ金属鉱業に関しては、これまで主として金の生産のみを行ってきたが、近年銅プロジェクトの探鉱や開発が進められる等、徐々にではあるが鉱種多様化の兆しが見え始めてきている。

 今般同国鉱業の最近の動向について、関係者から関連情報を得ることができたため、鉱業を取り巻く状況とともにこれら情報を報告する。

1. パナマ鉱業を取り巻く状況

(1) 政治

 パナマでは、2014年5月に5年毎に実施される大統領選挙が行われ、野党パナメニスタ党のJuan Carlos Varela Rodríguez副大統領が与党民主変革党のJosé Domingo Arias候補を破り、同年7月1日に大統領に就任した。新大統領は、就任後、国民に対し透明性のあるクリーンな政治と民主主義の回復を約束しており、実際に透明性の確保としっかりとした議論を行う努力が見られることから「真面目な政治」を行っているとも評されている。一方、しっかりとした議論を行うが故、法令協議や各種政策の審議等に時間が掛かると言ったマイナス面の指摘も聞かれる。

 通常パナマにおいては選挙前の約半年間は政治が止まる傾向にあると言われており、昨年は5月に大統領選挙が行われたため、昨年上半期は殆ど政治がストップした状態であった。しかしながら、昨年7月に大統領が就任し新体制が発足したことにより年後半には動き始め、現在は正常な状態になっている。

(2) 経済

 2013年における人口は386.4万人(世銀発表)、主要産業はパナマ運河運営、コロン・フリーゾーン経由の中継貿易、国際金融センター等第3次産業である。マクロ経済は、2013年における国内総生産(GDP)が426.5億 US$、GDP成長率が8 %、1人当たりGDPが11,036.8 US$、インフレ率が4 %(以上、統計データは世銀発表)である。

 同国経済の特色としては、第3次産業がGDPの約8割を占めるほか、各種工業製品や燃料等の殆どを輸入しているため恒常的な貿易収支赤字となっている。

 政府として取り組むべき喫緊の課題としては、物価高の是正とともに、前政権で行われた公共事業等が原因となる公的債務の解消にあると考えられている。

(3) パナマ運河

 パナマ経済のみならず世界の物流をも左右するパナマ運河に関しては、運河通過貨物量の増加やコンテナ船の大型化等に対応するため、2007年9月に総事業費52.5億 US$となる運河拡張工事が開始した。当初計画では2015年12月に完成を予定していたところ、度重なる工事労働者によるストライキ等により工事が遅延したが、本年4月末には計画されていた新設閘門全ての設置が完了した。

 パナマ政府としては2016年4月1日の運用開始を目指し、本年4月末には新運河通航料金について閣議決定を行った。今後は、本年6~7月に注水を伴う新設閘門の動作確認や、運河運用に係る現場職員に対するトレーニングの実施等が予定されている。

 なお、パナマ鉱業関係者としては、本運河拡張に関し、既存鉱山や鉱業プロジェクト開発で必要となる資機材の輸送をはじめ、採鉱した鉱石や精鉱等の運搬の効率化が図られるものとして歓迎の意を表している。

2. パナマ鉱業の現状

(1) 鉱業関係当局

 パナマにおいて鉱業を所管する監督官庁は、貿易産業省国家鉱物資源局である。当局は1963年に設立、関係法令により鉱物資源の利用と保全に関する政策の立案と実施を担うことが規定されており、パナマ国内における鉱物資源の探鉱から生産、輸送に関する全ての許認可権限を有する。また、探鉱や採鉱に関する監査や技術的支援も行う。

 現在職員数は35名であるが、貿易産業大臣が提唱する積極的な鉱業推進の下、本年5月から地質専門家等技術スタッフを中心に職員の増員を順次行う計画である。

 なお、現時点において、鉱業関係法令に基づき各種許認可等を実施するほか、民間企業が行う鉱業活動を監督、支援する以外に、特筆すべき鉱業政策は無いとのことである。

(2) 生産・輸出実績

 パナマは、南米から北米にかけて連なる斑岩銅鉱床ベルトに位置し世界でも有数の未開発大規模銅鉱床が存在するとも言われているが、これまでのところ主として金の採鉱に留まっており、銅に関しては採鉱実績が無い。また、金採鉱に関しても、Petaquilla Minerals社(本社:バンクーバー)が保有するMolejon金鉱山のみが生産を行っていたが、2013年末に操業を停止して以来現在まで操業を再開していないため、2015年4月末現在パナマにおいて操業を行っている鉱山は1か所も存在しない。

 パナマ政府は鉱業に関し、生産統計を公表せず輸出統計として公表しているが、本統計値は実質金輸出のみである(図1. 及び図2. 参照)。実績としては輸出量、輸出額ともに2009年から増加しているが、これはMolejon金鉱山が2009年に操業を開始し、翌2010年に商業生産へ移行したことによる(図3. 参照)。また、パナマの全輸出額における鉱業輸出額の割合は、2012年は全産業でトップとなる14.1 %であったが、2013年は全産業で第3位の7.9 %であった。なお、前述のとおりMolejon金鉱山は2013年末に操業を停止したが、同年中に採鉱した金鉱石の一部をストックしていたことにより、2014年第1四半期における鉱業輸出額は1.1百万 US$であった。

図1. パナマにおける金輸出量の推移

出典:貿易産業省

図1. パナマにおける金輸出量の推移

図2. パナマにおける金輸出額の推移

出典:貿易産業省

図2. パナマにおける金輸出額の推移

図3. パナマMolejon金鉱山における金生産量の推移

出典:貿易産業省

図3. パナマMolejon金鉱山における金生産量の推移

(3) 鉱業企業の活動状況

 パナマには、1990年に設立された鉱業関係企業を会員とする非営利組織「パナマ鉱業会議所」があり、パナマ鉱業の発展を目的とし、会員企業への情報提供や政府に対する意見具申等の活動をこれまでに行ってきている。

 同会議所の2015年4月末現在における会員企業数は50社、参加する企業の業種としては金属関係企業、非金属関係企業及び鉱業サービス企業であり、そのうち金属関係企業は7社で全て外資系企業である。また、これら7社のうち実際に探鉱、採鉱等鉱業活動を展開している企業は4社のみである。なお、4社の概略は以下のとおり。

◯Minera Panamá社First Quantam社(本社:バンクーバー)、韓国鉱物資源公社(KORES)及びLS Nikko Copper(本社:ソウル)が権益比率80 %、10 %及び10 %でパナマに保有するCobre Panamá銅プロジェクトの現地管理会社。

◯Petaquilla Gold社
Petaquilla Minerals社(本社:バンクーバー)がパナマに保有するMolejon金鉱山の現地管理会社。なお、一部パナマ資本あり。

◯Minera Cerro Quema社
Pershimco Resources社(本社:カナダ、ルイーヌ・ノランダ)がパナマに保有するCerro Quema金プロジェクトの現地管理会社。

◯Veragold社
鉱物の掘削、サンプリング及び分析。一部パナマ資本以外はカナダ資本。

(4) 鉱業プロジェクトの概要

 現在パナマにおいて存在する鉱業プロジェクトは数少なく、主なものも以下に示す程度である。

 なお、鉱業関係者によると、現時点において鉱業プロジェクト数の増加見込みは無く、主な要因としては鉱業コンセッションの許可が下りないことを指摘している。

◯Cobre Panamá銅プロジェクト

保有者: First Quantam社(本社:バンクーバー)、韓国鉱物資源公社(KORES)及びLS Nikko Copper(本社:ソウル)がそれぞれ権益比率80 %、10 %及び10 %で保有。
場所: パナマシティの西約120キロメートル、カリブ海沿岸まで20キロメートルと近接した場所に位置。
投資額: 6,400百万 US$
推定埋蔵量: 銅12,500千 t、銀4,326千 oz、金7,300千 oz、モリブデン75千 t(国家鉱物資源局データ)
操業開始時期: 2017年末予定。
備考: 現在経済性評価に関し再評価を実施中。一方、採鉱予定現場から鉱石等積出港までの鉱石等運搬用パイプライン及び当該鉱石等積出港を建設中。工事は順調に進展中との評価。

◯Cerro Quema金プロジェクト

保有者: Pershimco Resources社(本社:カナダ、ルイーヌ・ノランダ)が保有。
場所: パナマシティの南西約190㎞に位置。
投資額: 117百万 US$
推定埋蔵量: 金750千 oz(国家鉱物資源局データ)
操業開始時期: 同社の当初計画によると2016年操業開始を予定しているが、鉱業関係者によると現時点では未定。
備考: 現在環境影響評価を実施中。2016年から開発工事を開始予定。

◯Mina Santa Rosa金プロジェクト

保有者: Veragold社が保有。
場所: ベラグアス県カニャサス郡に位置。
推定埋蔵量: 金1,000千 oz(国家鉱物資源局データ)
操業開始時期: 末定。 備考: 現在探鉱中。開発工事時期未定。2001年に閉鎖鉱山。
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