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報告書&レポート

2015年7月9日 ロンドン事務所 キャロル涼子
No.15-34

欧州金属リサイクルとバーゼル条約第12回締約国会議の論点

 本稿では、2015年4月にリスボンにて開催された国際非鉄研究会の春季定期会合の中から、22日午後に行われた3研究会(ICSG、INSG、ILZSG)合同セミナーの模様を報告する。今回の合同セミナーは、「国際貿易政策の枠組みと国家のアプローチ」、「金属鉱業関連の貿易問題」という2本柱で構成され、WTO、欧州委員会、OECD、Cochilco、欧州銅協会(European Copper Institute、以下ECIとする)らから7つの発表があった。今回はこのうち「金属鉱業関連の貿易問題」から金属リサイクルにまつわる国際再生資源連盟の講演概要に基づき、欧州リサイクル規制に関する欧州の着目点を報告する。

1. バーゼル条約COP12に向けた循環・リサイクル資源の貿易及び環境問題

講師:国際再生資源連盟(BIR) Trade & Environment Director, Mr Ross Bartley

1.1 国際再生資源連盟とは

 国際再生資源連盟(Bureau of International Recycling、以下BIRとする)は、1948年にアムステルダムに設立され、1971年にはベルギーの首都ブリュッセルに拠点が移された1。参加国72ヶ国から900の事業者が加盟2し、リサイクル産業では世界最大の非営利国際貿易連盟である。会員には、主要産業国の国内リサイクル連盟や再生資源加工業者、流通業者、貿易業者のほか、リサイクル関連のサービス業者、国際再生資源に関する企業や協会、連盟、公共機関などが加盟する。

 BIRの主な目的は、産業交流や国際フォーラムの開催、リサイクルに関する専門的情報の発信であるが、国家間における再生資源(Secondary Materials)の自由な流通を促進するため、長年にわたって国連機関や欧州委員会、関係国際機関との協議に取り組んでいる3。活動対象は主に鉄・非鉄金属、紙及び繊維。使用済み電子・電気機器(e-スクラップ)のほか、ステンレス鋼・特殊合金やプラスチック、タイヤ・ゴムについても委員会を設けて調査研究を実施している。

1.2 欧州のリサイクル産業団体EuRICの発足

 2014年10月には、BIRから欧州関連の活動を分離して、欧州リサイクル産業連盟(European Recycling Industries’ Confederation、以下EuRICとする)が発足した4(図1)。EuRICは、欧州鉄回収リサイクル連盟(The European Ferrous Recovery and Recycling Federation、EFR)と欧州再生紙協会(the European Recovered Paper Association、ERPA)及び欧州金属取引リサイクル連盟(the European Metal Trade and Recycling Federation、EUROMETREC)の3組織が合同でブリュッセルに結成した欧州内のリサイクル業者を統括する組織である。会員には欧州並びにEFTA諸国18か国5から5,500社が参加し、域内で30万人の雇用を創出している。会員全体で年間1億5,000万tの廃棄物(紙・金属ほか)をリサイクル回収し、全会員の年間売上合計は950億ユーロに達する。今後は新たな資源や新規加盟メンバーに応じて対象を拡大する意向である。

図1 EuRICの組織体系

図1 EuRICの組織体系

1.3 欧州における再生資源の概念と廃棄物関連規制

 EuRICは、欧州におけるリサイクル関連の法規制への対応についてもBIRから引き継いだ。EuRICが対応する欧州リサイクル規制については図2にまとめたとおりである。なお、欧州域内における地方自治体レベルの廃棄物処理については域内共通のベストプラクティスがあるわけではないため、リサイクル促進度の高い国とそうでない国とでばらつきがあり、国ごとに様々な処理方法を組み合わせて実施している状況である。

図2 リサイクル業者に関係する欧州環境法

図2 リサイクル業者に関係する欧州環境法

1.4 「End of Waste:廃棄物と無駄の終焉」を掲げて資源循環を促す欧州

 欧州の環境中期計画「第7期欧州環境行動計画(2014~2020年)」においては、天然資源、健康と並んで「資源効率の良い経済」が3本柱のひとつとなっており、ライフサイクルを通した製品の環境性能向上を目指している。このうち再生資源の流動性を高めるため、欧州総局が2004年に掲げた「廃棄物に関する欧州指令(通称「廃棄物枠組み指令」)6」の見直しと2005年の「廃棄物の防止とリサイクルに関するテーマ別戦略」に則して「End of Waste(以下EoWとする)」という概念を掲げ、安全かつ質の高い廃棄物から資源を回収する際に妨げとなっている廃棄物規制の行政手続きの見直しと、再生資源の適正を評価する基準作りに取り組んでいる。

 その主な目的は、クリーンなリサイクル製品とそうでないものを見分ける高度な環境基準作りを行い、低リスクの製品に関しては規制緩和を導入するなどして域内市場での流通を促進することである。基準作りの際は主な項目として以下の事項を考慮する。

・該当資源のリサイクルを実施することで環境保護につながること

・回収時や処理工程における技術的要件を満たし、環境リスクが低いこと

・リサイクル後の製品が良質であること

・再生品の資源価値を認める市場が存在すること

 鉄・スチール・アルミスクラップについては、欧州合同研究センター(Joint Research Centre、以下JRC とする)による基準案7をもとに見直しが行われ、方法論に対する欧州加盟国の合意を得て、2011年の3月末には欧州委員会において基準案が可決され規制として成立、各スクラップについて細かな基準が明確に定められた8

 なお銅スクラップ、再生紙、ガラスカレット(glass cullet)、プラスチック、生物分解性廃棄物および堆肥の法規制に関しては、JRCを中心に欧州域内の専門家やステークホルダーを交えた作業部会を設置し今後の資源化基準導入に向けて方法論等を検討中9である。このうち銅スクラップ、再生紙、ガラスカレットについてはJRCからの報告書はすでに提出済みで、生物分解性廃棄物および堆肥については現在も調査を実施中である。

1.5 循環型社会におけるリサイクル製品の流通と国際競争力

 循環型社会という概念は次第に普及し始めたとはいえ、それを現実のものとするためには国際競争力を備えなければならない。しかし、この流れを阻害するのが輸出規制である。この例として輸出規制を設けている国の一覧を表1にまとめた。輸出規制に関しては、OECDが輸出規制導入国とその効果に関する調査報告書を作成しており、その概要をJOGMECカレントトピックス15-28号でも報告していることから、そちらをご参照いただきたい。

 中国では、中国国家品質監督検験検疫総局(AQSIQ)が主体となって、グリーンフェンスを導入し、スクラップの輸入について質・量ともに厳しく取り締まっているところである。また4月からはインドでも商工省商務局・外国貿易部(DGFT)が「2015~2020年外国貿易政策」を策定し、スクラップのインド向け輸出について船舶輸送前検査証書を求めるなど、運用ルールが急速に変更された10。この件に関して、インド当局とやりとりのある審査機関にBIRが聞き取り調査を行ったところ、ほぼ半数の機関が対応に問題を抱えているとの結果が出たことから、専門家の意見を参考に対策ができる時間的猶予を求めて移行期間の延長について当局と交渉中である。

 もう一つの課題は、違法輸送である。欧州域内への中古品の流入は、制度に基づき取り締まっており、合法で取引する分には問題がないが、例えば自動車を解体してスクラップとして域内に持ち込み、のちに溶接して販売するというような違法操業の例が後を絶たず、法の抜け道から流通する品物の取締強化が必要であると同時に安全性が懸念されている。

 自動車に限らず電化製品などの中古品の輸出については、輸出元各国での取締りに差があり、その隙間から流入してくるため、輸出国での取り締まり強化に向けて対策を講じているところである。

表1 スクラップの輸出規制制度数と導入国一覧

鉄鋼 亜鉛 タングステン モリブデン コバルト
234規制
(30か国)
32規制
(21か国)
22規制
(18か国)
20規制
(17か国)
21規制
(16か国)
20規制
(16か国)
アルゼンチン エジプト ギアナ ギアナ ギニア ギニア
ギアナ 南ア 中国 中国 南ア 中国
インド ギアナ スリランカ スリランカ スリランカ スリランカ
スリランカ ケニア アルジェリア アルジェリア ナイジェリア アルゼンチン
マレーシア スリランカ アルゼンチン アルゼンチン アルゼンチン アルゼンチン
エジプト アルジェリア ジャマイカ ジャマイカ ケニア ジャマイカ
ウガンダ アルゼンチン ケニア ケニア ロシア ケニア
ウクライナ ジャマイカ 南ア ロシア マレーシア ロシア
タンザニア モーリシャス モーリシャス モーリシャス モーリシャス モーリシャス
ケニア モロッコ モロッコ モロッコ モロッコ モロッコ
ギニア ナイジェリア パキスタン パキスタン パキスタン パキスタン
ベラルーシ パキスタン ロシア ルワンダ ルワンダ ルワンダ
ドミニカ共和国 ロシア ルワンダ 南ア タンザニア タンザニア
パラグアイ ルワンダ タンザニア タンザニア ウガンダ トリニダードトバゴ
インドネシア タンザニア トリニダードトバゴ トリニダードトバゴ ウクライナ ウガンダ
ルワンダ トリニダードトバゴ ウガンダ ウガンダ ベトナム ベトナム
南ア ウガンダ ウクライナ ベトナム    
ウルグアイ ウクライナ ベトナム      
ザンビア ベトナム        
アルジェリア ザンビア        
ジャマイカ          
モーリシャス          
ナイジェリア          
ロシア          
UAE          
ベトナム          
チュニジア          
ベネズエラ          
モロッコ          
パキスタン          

(出所:BIR会議資料より和訳)

1.6 バーゼル条約第12回締約国会議

 本非鉄研究会3研究会合同セミナーの数週間後には、バーゼル条約の第12回締約国会議(以下COP12とする)が予定されていたことから、非鉄研究会3研究会合同セミナーにおいてもBIRが注目する論点の紹介があった。

 バーゼル条約とは、「有害廃棄物の国境を超える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」の通称で、処分又はリサイクルを目的とした有害廃棄物の輸出入の事前通告に基づく許可制や、必要な書類の携行、不適正な輸出や処分行為が行われた場合の再輸入の義務などを規定している11

1.6.1 BIRが認識するバーゼル条約環境法執行上の課題

 BIRは、環境法の執行上の課題として、既存法規制のより良い執行を求めると同時に、電子通知制度導入の必要性を強く主張している。1993年以降、手続きの効率化は一切見直されておらず、インターネットやeメール、電子署名等の技術が普及した今日においても、紙ベースの手続きが続いている。このため所轄官庁において、リサイクル向け有害廃棄物の取り扱いで通常の申請処理に時間がかかり、執行過程の遅延が深刻な問題となっている。次回のCOP12では、この点について真剣に議論されることをBIRは期待している。

1.6.2 BIRが注目するCOP12の焦点

 COP12で金属リサイクルに関連してBIRが注目している点は次の3点である。

○E-Waste及び使用済み電気電子機器の越境移動

 「電気電子機器廃棄物(E-waste)及び使用済み電気電子機器の越境移動」に関する技術ガイドラインの法案の採択如何が注目される。このガイドラインでは廃棄物と非廃棄物の識別が焦点となっているが、BIRでは中でも特に法案24-26段落に盛り込まれた判断基準の中で、例えば品質保証付き製品の輸送が免除の対象になるかといったような免除対象の判断に注目している。

 電気電子機器の輸出入には、リユース目的の場合と故障機材の修理目的の場合とがあり、リユース目的には使用済み機材の機能の判断、そして故障機材の場合は修理可能な製品であるかの見分け方に明確な基準が必要となる。今回の会合ではその基準がどこまで採択されるかに注視している。電気・電子製品に関するEU指令であるWEEE指令(Waste Electrical and Electronic Equipment Directive、WEEE Directive)との関連で、WEEE対象製品の欧州域外での処理については、欧州指令2012/19/EUの基準を満たすに等しいと証明できるものに限り輸出入の対象となっているが、この証明方法について、輸出業者は適合性の宣誓書を規定12に従って提出しなければならないと定められている。

○有害廃棄物の定義と環境上適正な管理

 バーゼル条約は、有害廃棄物と製品の境界を明確にするという役割を担っている。BIRの会員には、家庭ごみの焼却灰から金属を回収する技術を持った企業もあるため、この焼却灰を越境移動する際に、有害廃棄物の定義対象となるかどうかに着目している。

○有害廃棄物等の環境上適正な管理

 有害廃棄物の適正管理について、BIRではOECDの取りまとめた「拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility):政府向けガイダンスマニュアル」13を参照している。

2. バーゼル条約COP12の成果(補足)

 会議の成果については、環境省14及び経済産業省15から概要が公表されている。このうち、BIRが着目した上記3点については、経済産業省及び環境省の発表によると、次のような結果となった。

2.1 E-Waste及び使用済み電気電子機器の越境移動

 経済産業省の公表によると、「電気電子機器廃棄物及び使用済み電気電子機器の越境移動(特に廃棄物と非廃棄物の識別)に関するガイドライン」が、次期会合(COP13)において更新されることを前提として採択。議論の結果、輸出時に使用済み機器を非廃棄物と見なす条件は、以下ように定められた。

(リユース目的の輸出入の場合)

・輸出にインボイスと契約書の写しが伴うこと

・使用済み機器が完全な機能を有することの検査結果の記録及び再使用が確実であることの輸出者等による宣誓書が伴うこと

・輸出者等による関係するすべての国の法令等を遵守していることの宣誓が伴うこと

・各機器が輸送及び積卸しの際に損傷等から保護されるための十分な梱包と積載が行われていること

(故障した機器の修理を伴う再使用や故障解析のための輸出入の場合)

・再使用又は故障解析が行われることが確実であること、修理等から生ずる有害廃棄物が適正に管理されること等を担保するため、輸出者及び修理施設の間で有効な契約書が締結されていること

・輸出者等による輸出から修理等を完了するまでの一連のプロセスに係る責任を明らかにするための宣誓がなされていること

 また、同ガイドラインには、使用済み機器の輸出入の是非に係る各国の意思について、条約事務局を通じ相互に通報を行うべき旨が盛り込まれた。

2.2 有害廃棄物の定義

 環境省の報告によると、締約国が条約実施の参考時に指針とするバーゼル条約の用語集(Glossary of Terms)の作成については、COP11での決定に基づき実施中である。その採択は次回のCOP13会合をめどとしている。

 また、有害廃棄物の定義に関する附属書( I、Ⅲ、IV及びIXの一部(特にreuse関係))については改定を視野に見直し作業を開始することとし、特にIV、IXについては会期間作業グループが来年開催予定のバーゼル条約第10回公開作業部会(OEWG10)にむけて勧告を取りまとめることとなった。

【参考】 附属書 I :規制する廃棄物の分類(種類及び化学物質)

附属書Ⅲ:有害な特性(毒性、可燃性等)

附属書IV:処分作業(リサイクル、最終処分等)

附属書IX:非有害廃棄物(規制対象外)のリスト(特にreuse関係)

2.3 有害廃棄物等の環境上適正な管理に関するガイドライン

 環境省の公表によれば、有害廃棄物等の環境上適正な管理(Environmentally Sound Management: ESM)に関する専門家作業グループは、COP11において設置され作業継続中であるが、今回のCOP12では次期会合(COP13)までの作業計画が採択された。

 これまでの専門家作業グループの成果として、ESMツールキット(ESMの実施マニュアル、特定の廃棄物に係るファクトシート等)案が作成されたことを受け、今後の作業計画では、パイロットプロジェクトの実施等を通じて、その更新を実施することとなった。

3. おわりに

 リサイクルを目的とした製品の輸出入については、金属資源循環の観点から日本でも経済産業省を中心に非鉄金属スクラップの取り扱いについて規格・認証制度の導入や動静脈産業の連携に向けて様々な取り組みがなされている。今後の欧州動向としては、銅スクラップのEoW基準が注目点となることから、進捗を注視していきたい。


(注記)

本セミナーは、国際非鉄3研究会(INSG、ICSG、ILZSG)が合同で開催するもので、毎回各研究会共通の関心事をテーマに、講演と議論が進められる。毎年春(概ね4月)と秋(10月)の2回開催される。次回は「南米における鉱山と金属の動向:現状と将来の展望」をテーマに、2015年10月7日にポルトガルのリスボンで開催される予定である。

  1. BIRの歴史については、全国製紙原料商工組合連合会平成24年報告の「BIRローマ会議参加報告書」p2参照
  2. 2015年4月22日講演時点のBIR情報
  3. 経済産業省平成17年度「諸外国の資源循環政策に関する基礎調査」報告書第4章、p67参照
  4. 2014年10月22日付RecyclingToday報道「Europeanrecyclinggroupformed」
  5. オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェイ、ポーランド、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国の18か国
  6. EU Directive 2008/98/EC on waste (Waste Framework Directive)
  7. 基準の策定方法について詳しくは、同センターホームページをご参照のこと
  8. COUNCIL REGULATION (EU) No 333/2011, establishing criteria determining when certain types of scrap metal cease to be waste under Directive 2008/98/EC of the European Parliament and of the Council
  9. 廃棄物枠組み指令に関する欧州委員会のホームページ:Waste Framework Directive, End-of-waste criteria
  10. インドの貿易管理制度については、JETROのホームページに詳しい。
  11. 経済産業省2015年5月18日付プレスリリース「バーセル条約第12回締約国会議(COP12)が開催されました」より
  12. WEEE 対象製品の受入国は、2012/19/EU のうち、第8 条及び附属書VII及びVIIIに定める処理条件の要件を満たすかについて、第三機関の証明を受けなければならない。
  13. ガイダンス英語版はこちらから入手可能:
    http://www.oecd-ilibrary.org/environment/extended-producer-responsibility_9789264189867-en
  14. 環境省プレスリリース「バーゼル条約第12回締約国会議(COP12)の結果の概要
  15. 経産省プレスリリース「バーセル条約第12回締約国会議(COP12)が開催されました

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