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報告書&レポート

2015年8月6日 ロンドン事務所 竹下聡美
No.15-37

英国政府の資源確保への取組—Mining on Top:Africa-London Summit 2015から—

 2015年6月25日から26日にかけて、英国ロンドンにおいてMining on Top: Africa – London Summit 2015が開催された。当該カンファレンスは英国貿易投資総省(UK Trade & Investment, UKTI)が主催し、今年で3回目を迎える。アフリカをターゲットとした鉱業イベントとしては欧州最大で、事務局によれば36カ国から250名が参加した。なお、前回の参加者は37カ国500名であり、コモディティ価格低迷による資源投資意欲の減退が影響して規模が大幅に縮小し、資源メジャーをはじめとした鉱山会社の参加は非常に少なかったものの、アフリカ各国政府(ザンビア、ケニア等8カ国)、豪州(WA州・QL州政府)、在英各国大使館、AU、南ア鉱業協会、EITI等の政府機関、投資会社等が参加した。UKTIは、南アMining Indaba 2015において大規模な展示を初出展する等、英国政府の近年アフリカ鉱業へのプレゼンスは活発化している。本カンファレンスのUKTIによるオープニングスピーチ及びUKTIの提供する支援事業の概要を報告する。

1. 英国UKTI CEO Dominic Jermey氏によるオープニングスピーチ

アフリカの資源ポテンシャル

 世界では年に500億tもの資源が採掘され、その価値は1兆6,000億US$にも及ぶ。鉱産物による収入は世界GDPの11.5 %を占め、サービス業、農業(肥料)、燃料、建設部材など間接的な貢献も含めれば、世界GDPの45 %を上回る。

 アフリカに目を向ければ、2001年以降GDP成長率は平均5 %で推移し続けており、世界の天然資源の4割を占めるとされる採取産業がこれを刺激している。アフリカからの資源輸出は2012年に前年比6.1 %増と強いコモディティ価格に支えられて他の地域に比べ急速に成長しており、世界需要の拡大に伴って今後も加速すると期待される。また世銀によれば、現在のアフリカは30年前の中国に置き換えられるとし、2015年の実質GDP成長率は約6 %と予測している。事実、2050年までに世界人口の4分1をアフリカが占め、2040年までにインド及び中国の市場よりも大きい世界最大の労働市場10億人を抱えると見られている。

資源国における下流産業育成及びインフラ整備の重要性

 一方で、アフリカの生産国は基盤産業を有しておらず、鉱産物の加工は主に海外でなされているため、これら生産国のGDPへの鉱業による直接的な貢献は僅か2~4 %に留まっている。成熟した工業経済は、鉱業セクターの1US$の経済活動で3US$の価値を生み出すとされていることから、鉱業から恩恵を受けるには、下流産業の育成が必須となる。多くの生産国はこうした基盤産業と人的資源を確立させるための投資を必要としており、持続可能な鉱山操業及び下流産業の開発計画は、長期的な経済成長にとって重要な鍵となる。また鉱山のみならず、周辺インフラの開発が進めば、より広い経済開発の基盤を提供し、閉山後であっても持続的な活用が可能であることから、国家レベルの鉱業戦略は鉄道、道路及び港湾、エネルギー、水資源といったインフラを検討すべきである。

英国の資源投資への強み

 英国はアフリカとの間に長い歴史を有しているが、両者の繁栄に向けて英国政府はアフリカと英国のビジネスを支援するためにあらゆる資源を投じていく。アフリカ各国の政府と協調してビジネスを進めていく上では、EITI(採取産業透明性イニシアチブ)を通して公平で透明性の高い手法で進めることが重要である。

 鉱山開発に必要とされる技術力と専門知識は非常に高く、プレFSの段階から、法律、規制、財務、社会環境といった分野は当然ながら、設計、エンジニアリング、インフラ、プロジェクトマネージメントといった専門性は開発計画から閉山までの全てのステージにおいて必要不可欠である。英国の強みは、この鉱業ライフサイクル全般に渡って専門性を有する企業が揃っているということである。

 英国政府としては次の取組を行っている。英国国際開発省(DFID)は、ビジネス環境の創出を支援しており、政府と民間セクターが、国境を越えて自由貿易、投資責任、持続可能で包括的な経済成長を可能にするビジネス手法を立ち上げるための環境作りを行っている。またファイナンス支援面では英国輸出ファイナンス(UKEF)と協調して、鉱業プロジェクトにUKソリューションを提供している。

 資源開発は資金調達なしには行えず、ロンドンは資源メジャー5社のうち4社が本社を置き、多くのジュニア企業も上場している。しかしながら、英国が鉱山セクターに強いのは金融面だけではなく、探鉱、評価、設計、建設及び操業に至るまで広範なノウハウを世界に輸出している。また多くの英国企業は、長期的に持続可能な経済開発をもたらす鉱山操業に長けており、さらに地域とのパートナーシップを尊重して地域社会の人材育成や技術移転も実施している。この他、鉱山操業をサポートするために必要とされる電力、上下水道、学校や病院といった設備建設も行っていることから、包括的な取組が可能である。

2. UKTIによる支援事業

1) High Value Opportunitiesプログラム(HVO)

 UKTIは2014年4月にHigh Value Opportunitiesプログラムを立ち上げた。本プログラムは大規模海外プロジェクトに英国企業(英国で上場している企業)が参画できる機会を特定し、契約に至るまでUKTIが支援するもので、具体的には、100件以上の海外プロジェクトに係る情報を早い段階で企業に提供することにより、競合他社に先駆けて当該プロジェクトに参画できるよう促すものである。UKTIが対象とするプロジェクトの投資額は合計で数兆ポンドに達し、個別のプロジェクトは少なくとも5億£の規模で、そのうち2.5億£相当に英国側での参入を試みている。

 これに加えて、英国政府は鉱業及びインフラ事業に際しては包括的なファイナンス支援を新たに提供していくべく、ロンドン証券取引所(LSE)、ロンドン金属取引所(LME)をはじめ、アドバイザリー業務、経済分析、インフラファイナンス、債券市場、保険、プライベートエクイティといった様々な分野との間で包括的な事業展開の可能性について検討している。この取組については、2015年10月6日から8日にかけてガーナ・アクラで開催される西アフリカ諸国開発共同体(ECOWAS)が主催する第1回ECOWAS Mining & Petroleum Forum & Exhibitionにおいて発表を行う予定である。

<HVOプログラムの支援内容>

・海外プロジェクト情報の共有

・英国及び海外での専門家ネットワークへのアクセス

・英国及び海外での対象国政府の関係部署や民間セクターの専門家などのステークホルダーとの関係構築

・プロジェクトの入札に際し、パートナーとなり得る企業を紹介する。

・必要に応じたロビーイングの支援を行う。

<HVOプログラムの支援対象事業>

 石油・ガス、鉱業、原子力発電、再生エネルギー、空港、港湾、鉄道、ヘルスケア、スポーツ設備(スタジアム等)。

2) 英国輸出ファイナンス(UKEF)

 英国輸出ファイナンス(UKEF)は、1919年に設立された世界で最も古い輸出信用機関で、輸出金融(融資、債務保証)及び貿易保険を提供している。UKTIは、企業による鉱山及び周辺インフラ開発投資へのUKEFによる支援を促進している。

<UKEFを利用するメリット>

・融資の返済期間は10年から14年

・英国政府保証を反映した低金利を適用

・契約額の85 %までファイナンス支援可能

・融資オプションとして、変動金利又は固定金利(CIRR)、もしくはこの組み合わせを選ぶことが可能

・対象とする通貨は、ポンド、米ドル、ユーロ、人民元(人民元は2014年から適用開始)で、その他通貨も検討可能

<UKEFの支援対象者>

・英国内で事業を実施している企業であること

・対象企業の株主の国籍は問わない

・総契約額のうち、2割は英国内で事業を実施している企業が関係すること

おわりに

 英国は資源メジャーが拠点を置き、多くのジュニア探鉱会社が上場していることから、政府による鉱業投資へのプレゼンスはこれまで目立たなかったように思われる。しかしながら、ここ最近ではMining Indaba2015への出展を始め、英国政府の鉱業投資へのプレゼンスは活発化しており、特に、UKTIは海外の大規模投資プロジェクトに英国企業を参画させるための支援を強化させている。2015年7月には英国国内で最後の坑内採掘の石炭鉱山が年内に閉山することがニュースとなった。こうした資源エネルギーの海外依存度が高まっていることもこうした政府の動きを後押ししているように思われる。英国政府の資源確保政策については引き続き注視していきたい。

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