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報告書&レポート

2015年10月22日 調査部 金属資源調査課 新井裕実子
No.15-42

鉛・亜鉛需給予測、亜鉛は2016年に15.2万tの供給不足―2015年秋季国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)報告―

 2015年10月8~9日、リスボンにて、国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)の秋季定期会合が開催され、ILZSG加盟国の政府関係者、産業団体、企業、専門家等100名以上が参加した。本稿ではILZSGによる2016年までの鉛及び亜鉛の需給見通しについて報告する。なお需給予測値が当研究会にて検証された翌日、Glencoreが亜鉛鉱石を年間50万t減産、鉛鉱石を年間10万t減産する見通しを発表したため、今回の需給予測にはこの影響は反映されていない。

 ILZSGは、1959年に国際連合により発足された国際機関で、鉛・亜鉛市場における透明性確立を目的とし、需給調査や経済動向など鉛・亜鉛市場に影響を与える分野の情報収集、分析、統計を行っており、定期会合を春季、秋季の年2回開催している。

1. 鉛

1-1. 需給バランス―供給過剰は拡大

 鉛地金生産量と鉛地金消費量のバランスについては表1のとおりである。2015年の需給バランスは、2015年春季定期会合時点で1.7万tの供給不足になると予測されていたが、本秋季会合においては4千tの供給過剰とほぼ均衡するとの予測が発表された。中国における地金消費量の予測が下方修正されたことが主な要因。2016年は、韓国の新規製錬所が生産開始予定であること等から、供給過剰幅は9.7万tとさらに拡大する見込みである。

表1.世界の鉛需給バランス(2013~2016年)

1-2. 鉛需給動向

 2014年から2016年にかけての地域別の数値を表2に、当該数値をグラフ化したものを図1に示す。2015年及び2016年の世界の鉛鉱石生産量、鉛地金生産量及び消費量の見通しについては以下のとおり。

表2.世界の鉛鉱石生産・鉛地金生産及び消費(2014~2016年)
図1.世界の鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2014~2016年)

(1) 鉛:鉱石生産量

 豪・Paroon Station鉱山での操業一時休止や豪・Cannington鉱山での減産等に伴い、2015年は対前年比2.1 %減の480.2万tと見込まれている。他方で中国において複数のプロジェクトの開発・拡張が予定されていることや、メキシコ及びロシアでのプロジェクト開始によりこれら減産は相殺され、2016年は1.2 %増の486.1万tと予測されている。なお鉱石需要に関連して、ILZSGでは中国の鉱石輸入量は2015年・2016年の両年合計で90万tに及ぶと予測している。

(2) 鉛:地金生産量

 2015年地金生産量は、ペルー・La Oroya製錬所の生産停止が2014年6月以来継続していること及びカナダでの二次鉛生産量の減少の影響で、対前年比1.0 %減の1,082.5万tと予測された。2016年は、豪・Port Pirie製錬所の操業拡張が予定されていることや、韓国Ulsanにおいて年産能力13万tの新たなプラントが生産開始すること等が主要因となり、前年比3.5 %増の1,120.2万tと見込まれる。

(3) 鉛:地金消費量

 2015年地金消費量は対前年比0.7 %減の1,082.1万tと見込まれる。中国のE-bike市場における需要はすでにピークを過ぎたとの見方だが、世界全体での自動車用バッテリー分野の鉛需要は依然として優勢であり、特にマイクロハイブリッド車/アイドリングストップ車向けに市場は拡大しているとして、2016年は、欧州及び北米・南米での消費量がそれぞれ約5万t回復し、さらに中国での消費量が15万t伸びるとの予測から、対前年比2.6 %増の1,110.5万tの見込みである。

1-3. 鉛の在庫と価格

 図2に示すとおり、鉛の在庫は2014年10月以来減少傾向にある。2015年4~5月にかけて大幅に減少した後6~7月に僅かに回復したものの、それ以降はおよそ50万tの水準で推移している。なお、これは約5年ぶりの低水準である。Shanghai Future Exchange (SHFE:上海先物取引所)の在庫量が減少していることや、生産者及び消費者の在庫量の減少をふまえると、全体での在庫水準は年初比12万t減である。LME価格は、在庫の減少にもかかわらず下落傾向が続いており、2015年10月時点で1,620 US$/t台を記録して、2009年以来の最低水準にまで落ち込んでいる。

図2.鉛のLME等在庫及び価格

2. 亜鉛

2-1. 需給バランス

 2015年の亜鉛需給バランスは、同年の中国の地金輸入量が著しく減少したことに伴い、8.8万tの供給過剰になるとの予測が発表された。2015年春季会合時点では、15.1万tの供給不足に陥るとの見込みだった。2016年は中国以外での供給量落ち込みにより世界全体で生産が伸び悩むと予想されることから、15.2万tの供給不足に転じると予測された。

表3.世界の亜鉛需給バランス(2013~2016年)

2-2. 亜鉛需給動向

 2014年から2016年にかけての地域別の数値を表4に、当該数値をグラフ化したものを図3に示す。2015年及び2016年の世界の亜鉛鉱石生産量、亜鉛地金生産量及び消費量の見通しについては以下のとおり。

表4.世界の亜鉛鉱石生産・亜鉛地金生産及び消費(2013~2016年)
図3.世界の亜鉛鉱石生産・地金生産及び消費(2014~2016年)

(1) 亜鉛:鉱石生産量

 2015年の亜鉛鉱石生産量は2014年と同水準の1,354.7万tとなる見込みである。インド・Rampura Agucha鉱山の拡張工事が2014年下半期に完了したことから、同国における2015年の鉱石生産量が大きく伸びるとの予測が主要因である。ボリビアやカナダ、アイルランドでの生産は落ち込むものの、オーストラリアや中国、ペルーでの生産が増えると見込まれる。2016年は、豪・Century鉱山とアイルランド・Lisheen鉱山の閉山の影響で中国以外の生産が縮小するものの、中国における生産が伸びると予想されるため、対前年比1.8 %増の1,379.7 tと予測される。

(2) 亜鉛:地金生産量

 地金生産量は、2015年は対前年比3.6 %増の1,399万t、2016年はさらに1.6 %増の1,421.5万tと予測される。増加は主に中国での増産に起因するが、その他の国々における生産量も増加する見込みである。2015年は、インドにおいて国内精鉱の調達が増加したことに伴う増産や、その他カナダや韓国における増産も見込まれている一方、ナミビア・Skorpion製錬所からの供給が落ち込むことも予想される。2016年は、韓国・Onsan製錬所等において生産能力拡張中であり、ナミビアやメキシコの生産も回復・増加する見込みであるものの、オランダやウズベキスタン等における減産が予測されるため、これらに相殺されるものと予想される。

(3) 亜鉛:地金消費量

 亜鉛は主に中国需要の伸びを受けて、2015年は対前年比1.1 %増の1,390.2万t、2016年は対前年比3.3 %増の1,436.7万tになると予測された。中国における自動車産業及び家電のいずれにおいても生産・販売は落ち込んでいるが、亜鉛めっき鋼板需要は2015年1~7月にかけて4.4 %の成長をしている。これは、インフラ消費の力強い成長が継続していること、ならびに多くの主要都市で新規住宅販売が回復していることに影響されたものである。本会合ではGavekal Dragonomicsのデータを基に、中国国内で年間13,500 US$以上の所得者数が今後も増加することに伴い、同国自動車販売は年間8 %の成長率で増加するとの予測が示された。

2-3. 亜鉛の在庫と価格

 2015年1~7月にかけて、LME在庫は約25万t減少したがその後在庫量は回復し、SHFEの倉庫における在庫量が増加したことや生産者による報告を鑑みると、全体量は年初より6万t増加しているものと見込まれる。価格は在庫量の増加を顕著に反映し、2015年10月初旬時点では1,650 US$/t以下という5年ぶりの低水準に落ち込んでいる。

図4.亜鉛のLME等在庫及び価格

まとめ

 鉛・亜鉛は大型鉱山の閉山に伴い、従前より2015年から供給不足になると見込まれていた。しかし中国需要の伸び悩みに伴い、鉛は2016年も供給過剰、亜鉛も供給不足に転じる時期が2016年に後ろ倒しされた。本予測値発表後にGlencoreの減産発表がなされたことは印象的な出来事だったが、現時点では、Glencoreの減産発表に対して他社が追随して減産する動きは見られない。長引く価格の低迷による各生産者への影響を引き続き注視する必要がある。

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