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報告書&レポート

2015年11月5日 メキシコ事務所 縄田俊之
No.15-46

第31回メキシコ国際鉱業大会参加報告

 2015年10月7~10日、第31回メキシコ国際鉱業大会がアカプルコにて開催された。

 メキシコ鉱業を取り巻く環境としては、昨今の金属市況下落・低迷に加え、2014年1月には鉱業特別税等が施行されたほか、本年に入って鉱山労働者に対する誘拐・殺人事件、脅迫事件等が多発する等厳しい状況となっている。こうした中、本鉱業大会に参加した国内外の鉱業関係者から、開会式、基調講演、パネルディスカッション等において、一部興味深い発言が見受けられたため、本稿において主な発言概要を紹介する。

1. 第31回メキシコ国際鉱業大会概要

 メキシコ国際鉱業大会は、2年に1回のペースで開催され、メキシコにおける金属及び非金属に関する鉱業関係の催事としては最大規模となる。

 今回の鉱業大会は、メキシコ以外に、カナダ、米国、豪州、中南米諸国等24か国から約530社の参加により1,000を超える展示ブースが出展された。また、Ildefonso Guajardo経済大臣、Rafael Occhiano環境天然資源大臣を含むメキシコ政府関係者をはじめとして、国内外の鉱業関係者が開会式、基調講演、パネルディスカッション等に参加した。

 特に今回の鉱業大会では、経済・産業及び環境それぞれの政府代表である経済大臣及び環境天然資源大臣がリーダーシップを発揮し、グローバル経済に対し官民全ての鉱業関係者が一致団結するとともに互いに補完しつつチャレンジする旨を宣言した。

 なお、期間中の来場者数は、主催者発表によると12,000人に達した。

開会式の様子

開会式の様子

2. 主な参加者による発言概要

(1) Ildefonso Guajardo経済大臣

・鉱業は我が国経済の基礎として数世紀に亘って果たしてきた役割が大きく、構造改革の推進により州政府や地方自治体へ権限委譲してきた結果、鉱業では多くの雇用を創出した。

・今日におけるメキシコ鉱業投資は国内企業のみならず、多数の外国資本によるものであり、メキシコ鉱業に対する信頼の証でもある。本年におけるメキシコ鉱業投資額を昨年の50億ペソから55億ペソへと増加を見込んでいるが、昨今の金属市況下落や昨年施行された鉱業特別税等による影響にも関わらず探鉱投資にも向けられている点に注目したい。

・特に昨年施行された鉱業特別税や貴金属鉱業特別税を含む鉱業税制改革に関しては、当初鉱業界からの強い反対があったものの、政府が鉱業界と対話を重ねたことにより払拭された。また、鉱業基金として組み入れられたこれら税制による税収に関して、本年、農地土地都市開発省(SEDATU)と連携し州政府や地方自治体等に対する配分を行うことにより、本改革の趣旨を完全に実現する運びとなった。これにより、従前、限定的又は間接的にしか実施されてこなかった鉱山周辺地域への(鉱業企業による利益の)還元が、法律に基づき直接的な恩恵として実施されることとなった。

(2) Rafael Pacchiano環境天然資源大臣

・鉱業はメキシコ経済における重要な推進力の一つであることを認めた上で、鉱業における本質的な役割の一つとして、鉱山周辺地域の経済、環境及び社会の発展の促進が挙げられる。

・環境天然資源省(SEMARNAT)は、鉱業活動での様々なグリーン開発において、連邦政府機関と産業界とのパイプ役を果たすとともに、グリーン開発が効率的に促進できるよう関係法令の整備を行う。

・鉱業セクター全体における持続的な開発の促進に焦点を当てるため、連邦政府・州政府・地方自治体の行政3レベルと鉱業界との相互関係の根拠となる協定を、最近SEARNATとメキシコ鉱業会議所(CAMIMEX)との間で調印した。

・鉱業コンセッションに環境基準を含めることを目的として、SEMARNATと経済省(SE)との間で横断的課題に取り組む方向で検討を行っている。また、SEMARNATは、金銀抽出における廃滓の取扱に焦点を当てたテーマに北米環境協力委員会と取り組むことも検討している。

(3) Mario Cantú経済省鉱業調整官

・メキシコは、政治面、社会面及び経済面において堅調であるほか、財政面においても健全性を保っていることから、国内外の投資家に対し信頼を与えている。特にメキシコ鉱業は、世界的に見ても良好な探鉱投資の受け入れ先であり、実際、カナダ、豪州に次ぐ探鉱投資額となっており、全世界の探鉱投資総額の7 %を占めている。

・鉱業プロジェクトの立ち上げから鉱山操業に至る間、コストを含む様々な問題が発生するが、これら全てを解決するに当たっては、鉱業バリューチェーンにおける競争力の促進と向上が必要であり、このための政策支援が重要である。

・中小鉱山(中小鉱業企業)が成長し鉱業活動を継続するためには、十分に高い業務の質が求められるが、連邦政府は中小鉱山(中小鉱業企業)がこれを獲得するための支援を行う。

(4) Ricardo López Pescador農地都市開発省(SEDATU)鉱業基金総局長

・鉱業税制改革の実施により新たな鉱業関係税収が見込まれるが、これら税収は法律に基づき厳格な透明性の下、鉱業基金を通じ、鉱業が立地する自治体に対し30 %、同じく州政府に対して50 %、残りの20 %を連邦政府にそれぞれ配分することとなる。

・当該配分により、直接的に鉱山周辺地域に対し(鉱業企業による利益が)還元されることとなるが、これはメキシコにおいて初めて企業の利益が直接地域へ付与されるケースである。

(5) Luis Felipe Medina Aguirre第31回メキシコ国際鉱業大会組織委員会委員長(Agnico Eagle Mines社副社長)

・現在鉱業が置かれている環境は最良なものとはかけ離れているが、この困難な状況に対し鉱業関係者は一致団結しており、その証拠として今回の鉱業大会では記録的な出展数と参加者数となった。

・各鉱業プロジェクトや鉱山は持続的な活動となることを原則に、鉱業の現実を社会全体に知らしめることが、常に鉱業が進歩するための機会であると捉えなければならない。

・鉱業を競争力のある産業とするためには、官民が協力することが必要であり、当局に対しても強力に要請することが重要である。

(6) Salvador Rogelio Ortega Martínez・Guerrero州知事

・Guerrero州では、近年山岳地域において世界でも有数な金鉱床が発見されたが、これは鉱業関係当局、鉱業企業及び学術界による協力の成果である。

・メキシコにおいて同州を含むChiapas州、Oaxaca州等南部の州は非常に貧困率が高いため、連邦政府と連携し支援を行っていくが、鉱業は貧困対策における雇用創出として期待するところが大きい。

(7) Mario Sánchez Ruiz国民行動党(野党)・前下院議員

・国際労働機関(ILO)のILO169号条約「独立国における原住民及び種族民に関する条約」を批准しているメキシコでは、開発プロジェクトが開始される前には当該地域の先住民と協議を行うことが国内法上義務づけられていることから、鉱業セクターにおける権威主義的な認識を一掃した上で、先住民コミュニティとの対話を実施すべきである。

・鉱業関係当局と鉱業界は、実施される全施策に関しメキシコ国内の全ての住民レベルに告知しなければならない。

(8) Jeffrey Hedenquist地質コンサルタント

・グローバルな視点から見たメキシコ鉱業は、効率的で安全な鉱山を発見し採掘する能力があり、更に、ラテンアメリカ諸国やその他諸外国と比べ適切に機能している政府による規制が存在することである。

・メキシコでは、鉱業に起因する環境への影響の削減が進んでいることや、鉱業が立地する地域と鉱業企業との連携が図られていること等を踏まえ、これらに取り組んだ民間セクターと鉱業関係当局との協力を評価する。

・メキシコ鉱業には、新規鉱区における探鉱インセンティブの必要性や、現在の国際経済情勢を踏まえた上での鉱業の限界に対する認識、更に、治安問題対策等解決すべき課題が多いものの、数百年に亘る伝統を有し長期的な視点から立ち向かうべき幅広いチャンスを保持している。

おわりに

 前回2013年の第30回大会は、正に2014年に施行された鉱業特別税、貴金属鉱業特別税等を含む鉱業関係税制改革に関しメキシコ議会において審議が繰り広げられている最中に開催されたため、多くの鉱業関係者から当該税制改革に対する強い反発が相次ぐ等、鉱業関係税制一色の大会であった。

 一方、今回の大会は、金属市況下落・低迷や治安問題等メキシコ鉱業を取り巻く環境が厳しい状況にあるものの、全参加者が一様に興味を示すような共通的な話題には乏しかったとの印象を持った。特に今年に入り相次いだ鉱山労働者が標的又は巻き込まれた治安問題に関しては、殆ど話題にも取り上げられなかったように思われた。

 比較的その時々における鉱業の現状が反映されやすい鉱業大会において、今回の大会は果たして希有なものであったのか、それとも昨今の金属市況下落・低迷を踏まえた結果が今回の大会の雰囲気として現れていたのか、現時点では判断つきかねると言うのが偽らざる感触である。

 しかしながら、依然としてメキシコ鉱業を取り巻く環境が厳しい状況であることは変わりないため、このようなイベントにおける各政府機関や鉱業企業の対応状況等も観察しつつ、引き続きメキシコ鉱業の動向について注視していきたい。

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