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報告書&レポート

2017年3月10日 ロンドン事務所 吉益英孝・ザボロフスキ真幸
No.17-04

Mining Indaba 2017 参加報告 ―投資環境の整備を急ぐアフリカ鉱業界―

はじめに

2017年2月6日から9日の4日間にわたって、今年で23回目となるアフリカ最大の鉱業投資会議「Mining Indaba 2017」がケープタウン国際会議場で開催された。アフリカ諸国をはじめとする政府関係者、メジャー及びジュニア企業、国際機関、鉱業関係者が集い、出展企業・団体は約250社、全体の参加者数は約6,000人と昨年と横ばいとなった。

日本政府からは、井原巧経済産業大臣政務官が出席し、鉱物資源分野において日本とアフリカ諸国との関係強化、成長に向けたTICADⅥにもみられるようなアフリカ支援策に関する講演を行い、アフリカ各国の鉱業関係大臣との二国間会談も実施された。

JOGMECからは、濱野幸一副理事長がアフリカにおけるJOGMECの活動を発表すると共に、経済産業省及びJBICと共同で日本ブースを出展した。

本稿では、南アZwane鉱物資源大臣の基調講演、南アでの鉱業プレゼンスが高いAnglo American及びSibanye Gold社による基調講演の概要について報告する。

1. 南アZwane鉱物資源大臣の基調講演概要

写真1 Zwane鉱物資源大臣による講演

写真1 Zwane鉱物資源大臣による講演

初日幕開けの基調講演で、Zwane鉱物資源大臣は昨年のIndaba2016の基調講演内で鉱業界が冬の時代にあると言及したことを踏まえて、2016年末から見られる石炭、鉄鉱石、フェロマンガン、亜鉛といったコモディティ価格の回復によりIndaba2017では鉱業界に春の兆しが訪れていると述べた。また、鉱業が南ア経済成長の支柱として同国GDPの約8%を占め、46万人の直接雇用を生んでおり、持続可能な鉱業を目指すために今後も投資家に操業を通して黒人、コミュニティ、労働者とパートナーシップを結んでほしいとした。講演内では、同国鉱業動向で最も注目を集めている鉱物石油資源開発法改正案(MPRDA、Mineral and Petroleum Resources Development Act)及び鉱業憲章(Mining Charter)の改正スケジュールを発表し、以下の課題について言及した。

  • 鉱業憲章(Mining Charter)
    現在鉱業界と密に交渉しており、2017年3月には公表することを予定している。ステークホルダーの意見を取り入れながらも同国の利益を取り入れた見直しがなされており、投資家に確実性をもたらす鉱業憲章となるだろう。我々は、投資家に対し今後も解放政策を続けていく。
  • 鉱物石油資源開発法改正案(MPRDA、Mineral and Petroleum Resources Development Act)
    現在、法案最終化のプロセスに入っており、公聴会後の2017年6月までに結論を出す方針である(MPRDAは、2015年1月にZuma大統領によって差し戻され、現在も国会で審議中である)。
  • ステークホルダーとの関係向上
    更なる共栄環境の確保と労使関係の安定のために、ステークホルダーとの関係に焦点を置いている。2013年にZuma大統領の元で、南ア鉱業協会、鉱山会社、労働組合、関係省庁が労働問題について話し合いを行い、「持続可能な鉱業のための枠組み協定(Framework Agreement for a Sustainable Mining Industry)」を結んだ。2016年には白金及び石炭セクターで給与交渉が行われたが、平和的な終結を迎えることができたことを歓迎しており、ステークホルダーとの関係性が強化され、システム導入が進んでいることの表れだと見ている。全てのステークホルダーが、交渉時に同枠組み協定の精神を持ち続けてくれたことに感謝する。
  • 鉱業投資環境整備
    好ましい投資対象として同国の評判を保つべく、政府主導による投資促進のための環境整備を行う。我々は鉱業及び関連権利の申請、水利用、環境許可の申請を統合し、規制効率化の向上を図っている。投資に関するアドバイス提供、ビジネス遂行に当たり妨害となっている事象の識別といった多様なサービスを提供する投資One Stop Shopを設立している。また、鉱物資源の選鉱の高度化、インフラ整備等を含む経済発展のために導入されたNine-Point Plan1の発展、リンポポ州Musina地銀複合向上にみられる税及び投資インセンティブ、インフラ整備がされた経済特区プログラムの発展、また、同国の世界的な研究機関であるMINTEKは、選鉱、製錬、材料工学といった生産技術に係る調査研究を行っており、選鉱技術発展におけるビジネスパートナーとなることができる。
  • 中小鉱山企業に対する支援強化
    我々は、雇用機会のほとんどは中小企業にあると見ている。2017年は、中小鉱山企業に焦点を当てた投資促進を行っていく。
  • 鉱業安全衛生への取り組み
    我々は、今後も安全衛生を重点分野として留意していく。2016年2月にMpumalanga州のLily鉱山で起きた従業員3名が行方不明になった事故は大変遺憾であり、政府は引き続き捜索に注力していく。同省は今後も法律規制を強化し、ゼロハームの目標達成にむけて尽力していく。また、過去12か月間に一名も死亡者を出さなかったすべての鉱山会社に賞賛を送りたい。さらに、政府は違法採掘の防止にも厳格に対処していくために、ステークホルダーと共に違法採掘における適切な法案を導入していきたい。

2. Anglo American、Mark CutifaniCEOによる講演「弾力性を強化し、鉱業の現在そして未来を再定義する」

Anglo AmericanのMark Cutifani CEOは、基調講演内でコモディティ価格のボラティリティの増加、中国の経済成長鈍化、不確実性の高まり、劇的な社会政治及び経済変化は鉱業セクターにおいて“New normal”とみるべきであるとし、鉱業の未来においてイノベーション、持続可能なステークホルダーとの関係構築、弾力性のある鉱業の構築が必要であると発言した。

  • イノベーション:鉱業の将来を確保するための必須事項
    Anglo Americanでは独自のアプローチである“FutureSmart”マイニングを展開し、学界、鉱業界及び原油・ガス、テクノロジー、航空宇宙産業を含む他の産業界の専門家を集めたオープンイノベーションを用い、変化に対応する考え方、技術、プロセスを発展させている。“FutureSmart”マイニングでは、技術を用いてイノベーションをしていくことだけを意味しているのではなく、安全性、環境、社会的期待、政府との関係性の築き方に対するアプローチの仕方も構築していき、以下4分野に焦点を当てている。
  • The Modern Mine:岩石採掘法を転換する。坑内採掘鉱山で岩石切断機を用い、発破することなく、安全、迅速かつコスト効率の良いマイニングを推進する。南アTwickenham白金鉱山では、岩石採掘に安全なトンネルを開発し、The Modern Mineを推進している。
  • Concentrate the Mine:廃棄岩石を減らし、抽出する鉱石の割合を最大限にしながら、同時にエコロジカル・フットプリント、操業及び資本コストを最小限に抑えることを目的とした生産最適化プログラム。KumbaのSishen鉄鉱石鉱山で同アプローチを導入し、生産性が向上した。
  • Water-less Mine:鉱業用水に再利用水を用いる。イノベーション技術を用いた節約、汲み置き水の利用を削減する手段に投資している。本社では、2015年の全操業用水量の内64%が、再利用水となった。
  • Intelligent Mine:ビッグデータ、ロボティックス、機械学習を利用してコネクテッド鉱山を構築する。既存データを用い分析した上で、鉱業器具の故障確率を予測し、メンテナンス費の削減、安全性リスクの低減を可能とする。
  • 我々はイノベーションに注力し始めてから生産性が向上しており、“FutureSmart”マイニングの導入により2020年には現時点より約40%以上生産性が向上すると予測している。
  • 持続可能な鉱業
    Anglo Americanは、鉱業セクターに対する評判を新たに変え、持続可能な産業としていくために今後数年、いくつもの目標を掲げ、安全性、教育、生物学的多様性、エネルギー効率、雇用創出といった分野に尽力していく。持続可能な鉱業発展のためには、従業員、コミュニティ、政府、NGOといったすべてのステークホルダーとの関係を築くことが重要だが、政府及び規制機関による協力が必要不可欠であり、規制の確実性、憲法下の私有財産の権利は投資家において最重要である。また、長期間に渡りビジネスがしやすい環境であり、明確、公正かつ合理的な鉱業法が整うことは南アの投資環境をより拡大することに繋がる。さらに、本社は操業する鉱山の64%が南ア人によって直接及び間接保有されており、そのうち黒人直接保有率は27%になると推定している。
  • 弾力性のある企業
    鉱業セクターは最悪の時期を過ぎたかもしれないが、まだ厳しく不確かな時期が続くと見ている。その時期を生き残るためにも弾力性のある企業になる必要がある。一年前、Anglo Americanは、コモディティ価格の下落によりブラジルのニオブ及びリン酸塩事業の売却や、コスト削減など厳しい経営決断を迫られたが、一年経った今、現状は回復し、資産数は68から42資産まで減少したにも関わらず、2016年の生産性は2012年時より約40%も向上した。
    同社は今後もポートフォリオの質を向上させ、コスト削減をする中で、大規模かつ生産性の高い資産により集中していく。弾力性のある企業になることは最終目標であり、支柱となる資産が必要となる。堅実な資産を持ち、適切なビジネスモデル及び戦略を持つ企業は、イノベーション文化を作り、持続可能な鉱業界のために考え方を変えていくことができる。イノベーションは弾力性の基礎となり、生産性の向上、これまで抽出不可能であった鉱体へのアクセスを可能とし、活発に市場を発展させていくことができる。
    また我々が天然資源、鉱山保安及び責任を十分に管理し、ステークホルダーとの関係を築きながら操業をしていくことで持続可能な鉱業へと繋がり、結果として繁栄する企業になることができる。

3. Sibanye Gold社、Neal Froneman CEOによる講演「アフリカの可能性を最大限に実現する」

Sibanye Gold社のNeal FronemanCEOは基調講演の中で、アフリカは鉱物資源埋蔵量として、白金95%、クロム鉄鉱90%、リン酸塩80%、ダイヤモンド60%、コバルト50%、バナジウム28%、マンガン25%、チタン23%、金20%を保有しているが、政府及び鉱山企業の信頼度の欠如が根付いているため鉱業セクターは危機的状況であるとし、ステークホルダーと共通のビジョンを探し、関係を再構築する必要があると伝えた。また、鉱業の将来はビジネス、政府、コミュニティ、従業員、労働組合といったすべてのステークホルダーが協調、提携することが必要であるとし、それぞれの役割について説明した。

    • 南アの鉱業状況
      加シンクタンクのFraser Instituteが、鉱山会社を対象に毎年鉱業国世界109か国・州における鉱業投資環境に関する意識調査を行っており、結果をランク付けした「鉱山会社調査(Survey of Mining Companies)2015」を見てみると、南アは、資源の潜在性と鉱業政策を考慮して評価する投資環境評価において、ボツワナ、エチオピア、マダガスカル、DRコンゴといった多くのアフリカ諸国よりランクが低く、規制枠組みの不確実性が投資環境にネガティブな影響を与えていることが分かる。
      また、南アは労働争議の勃発、コミュニティ・センチメントも投資懸念となっている。南アは109か国66位に位置しており、アフリカ諸国で最も鉱業投資環境が優れていると評価されているのは、上位からモロッコ(24位)、ブルキナファソ(29位)ガーナ(31位)、ナミビア(33位)、ボツワナ(39位)、エリトリア(41位)、アイボリーコースト(42位)、エチオピア(51位)、マダガスカル(54位)、DRコンゴ(60位)となっている(南ア以下は、ザンビア68位、タンザニア69位、アンゴラ70位、マリ83位、モザンビーク84位、ニジェール90位、ジンバブエ98位、ケニヤ102位、ギニア103位)。
図1 Fraser Survey 2015 投資環境評価

図1 Fraser Survey 2015 投資環境評価(参照:Sibanye Gold社プレゼンテーション資料)

  • 各ステークホルダーの役割
    南アの鉱業セクターの将来を改善するには、ビジネス、政府、労働組合、従業員、コミュニティといった全ステークホルダーが協調、提携する必要がある。まず、鉱山企業等ビジネス側は、事業の透明性を高め、模範となるべきガバナンス、環境、社会責任基準をもつべきである。次に、政府側は、明確な政策及び規制枠組みの構築、民間セクターとの提携、公平で効率的な手続き、投資インセンティブ、公平な税制が求められる。労働組合側は、組合メンバーの関心を産業の経済安定といった観点に焦点を当てるように促進する必要性があり、労働争議を避け、産業の発展と成長がすべてのステークホルダーの利益に繋がることを認識することが大事である。従業員側は、自身がステークホルダーとして事業に影響を与えているということを認識することが大事であり、最後にコミュニティ側は、産業の経済サイクルを理解し、操業において建設的で持続可能な関わりを持っていくことが必要である。
  • アフリカ鉱業の近代化
    また、アフリカ鉱業は直面している課題に対応するためには近代化が必要となってくる。国の天然資源の生産最適化、地域コミュニティ及び国の経済に利益をもたらす鉱業事業であること、現地での調達を促進すること、投資家に適切なリスク調整後利益を提供すること、一貫性、透明性のある規制、税制及びインセンティブの導入等が求められる。そのためには経済不況時も従業員と利益を共有すること、先端技術及びR&Dを発展させることでより安全で生産性の高い鉱業を発展すること、鉱業協会のような産業団体に活動的に参加することで産業の政策転換を促進させることが重要である。

4. 日本側からの講演等

写真2 井原政務官による講演

写真2 井原政務官による講演

  • 井原巧経済産業大臣政務官による講演「アフリカと日本のWin-Win関係の構築」
    井原政務官は産業における鉱物資源の重要性を明らかにした上で、日本の取り組みを紹介し、鉱物資源の分野において日本がアフリカ諸国とどのようにWin-Winな協力関係を築いていこうとしているのかについて講演を行った。講演の模様は以下のURLをご参照。
    http://www.meti.go.jp/main/60sec/2017/20170222001.html
  • JOGMEC主催アフリカ鉱業大臣フォーラム
    JOGMECのINDABA参加は今年で14回目となり、例年同様、経済産業省、JBIC及びJOGMECの3者合同で展示ブースを出展し、日本によるアフリカ鉱業投資について展示を行ったほか、世界銀行、アフリカ開発銀行と並びJOGMECがアフリカ鉱業大臣フォーラムの進行役を務めた。
    詳細については、以下のURLをご参照。
    http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_06_000234.html
写真3 JOGMEC濱野副理事長による講演写真4/展示ブース

写真3 JOGMEC濱野副理事長による講演写真4 展示ブース

おわりに

Mining Indaba2017は、昨年から来場者数は横ばいであったが、市場の回復もありアフリカ諸国が投資に対して積極的に働きかけている印象を受けた。特に、南アは2016年度注目されていたMPRDA改正及びMining Charterの見直しの時期が会議初日の基調講演で発表されたことにより、他の基調講演でも多くの鉱業会社がその動向に言及し、メディアでも大きく取り上げられていた。

しかし、世界的な地政学的な不確実性の高まり、価格ボラティリティは継続するという見方が強く、そのような市場情勢の中でアフリカ諸国は投資を呼びこむためにも信頼確保に繋がる法整備の安定化が必要である。また、日本の展示ブースは政府関係者、鉱業会社、関連企業の注目が高く盛況であり、JBIC、JOGMECを通してアフリカへの投資を望む声が多く聞かれた。今後も南ア政府の鉱業動向をはじめとしたIndaba参加国の取り組みを注視していきたい。

1 鉱物資源の選鉱の高度化・鉱物資源への価値の付与、農業・農産品加工バリューチェーンの再活性化、産業政策行動計画(Industrial Action Policy Action Plan(IPAP))の実施、中小企業・共同組合・地方企業の潜在能力の解放、エネルギー課題の解決、労働市場の安定化、民間投資の拡大、海洋経済の拡大、科学技術・水衛生・運輸インフラ・ブロードバンド及び公営企業についての横断的分野の改革・促進・多様化の9点。南アフリカ政府HPより。http://www.gov.za/issues/nine-point-plan

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