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報告書&レポート

2017年5月11日 金属資源技術部 特命調査役 阿部幸紀 生産技術課 大久保聡
No.17-06

TMS2017 参加報告(1)-製錬・リサイクル技術の最新動向-

はじめに

TMS(The Minerals, Metals and Materials Society)は米国に本拠を置く、その名のとおり選鉱・製錬から素材の基礎研究及び先端的な利用技術に関する専門家のための国際学会であり、年1回例会を開催している。

本例会は鉱物・金属・材料に関する科学的・技術的な専門家が集まる国際的な会議で、例年約4,000 人が参加し、技術的な意見交換を行う場である。今年は、サンディエゴのSan Diego Convention Center を会場に2 月26 日から3 月2 日にかけて開催された。

本例会は乾式-湿式製錬の最新技術動向、金属系廃棄物の有効利用、レアメタル抽出・精製、金属・材料を巡る環境問題・リサイクル(持続可能性)などの他、合金・化合物の精製・利用、鉱物・金属・材料の特性、先端的永久磁石材料なども含む多岐にわたる分野につき全部で約100 のセッションに分かれ、発表件数は延べ約3,000 件に及んだ。

今般、レアメタルを含む非鉄金属全般の生産技術・リサイクル技術などの知見を深めるため、本例会に出席し、情報収集を行った。特に興味深いセッションの概略について記す。

TMS2017 会場

TMS2017 会場

1.Advances in Environmental Technologies: Recycling and Sustainability Joint
Session:

レアメタル等のリサイクルに関する取組及び持続可能性に関するセッションで、金属リサイクルと環境問題の関係やレアアースの戦略的なリサイクル、レアアース生産のライフサイクル分析、廃プリント基板の低温処理、廃プリント基板からの金属回収などのテーマに沿って講演があった。その中でとりわけ興味深いものを紹介する。

 

<プリント基板リサイクル技術の現状>

「廃プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)からの金属と非金属の回収技術」と題してEskisehir Osmangazi University より廃電気/電子機器(WEEEs)のプリント基板の物理選別・回収による有価金属の回収技術について紹介があった。

プリント基板のリサイクル技術の開発は技術革新、社会的・環境的な配慮、総合的な廃棄物管理政策、リサイクルプロセスの経済性といった要素により推進されるが、とりわけ、

  • 廃プリント基板は大きさ、形状、使用部材、含有成分からみて多様かつ複雑である。また廃プリント基板の含有成分は変化し続け、安定したリサイクル原料を得ることは困難である。
  • 廃プリント基板にプラスティック、セラミック、金属が複雑な状態で共存することはそれぞれの成分に分離することを非常に困難にする。
  • 多種の金属が含まれることは回収プロセスを複雑にする。各元素がppm 単位で含まれる場合、より複雑となる。
  • 廃プリント基板リサイクルを推進させるのは、その重量全体の30%含まれる金属の価値で、残り70%の非金属材料は経済的価値が小さい。
  • ほとんどのリサイクルプロセスは金属の価値を最大限回収することを目的としているが、時折、プロセスは環境に優しくないことがある。

という点につき着目する必要がある。参考まで一般的なPCB の組成を図1 に示す。

図1.PCB の組成(出典:Eskisehir Osmangazi University の講演内容よりJOGMEC 作成)

図1.PCB の組成(出典:Eskisehir Osmangazi University の講演内容よりJOGMEC 作成)

PCBの内、約1/3が金属であり、金属の内50%弱が銅、その他は鉄、アルミニウム、錫、鉛、ニッケル、亜鉛の順となり、微量成分の中にはアンチモン、銀、金、パラジウムが含まれ、各微量成分は最大で数千ppm含まれる。また、クロム、水銀、カドミウムといった有害元素も含まれる。セラミックはシリカ、アルミナが主成分でアルカリ土類酸化物、雲母、チタン酸バリウムも含む。プラスティックは臭素系難燃剤(BFRs)を含み、燃焼させると有毒なガスが発生する。その他、塩化ビニール(PVC)、ABS樹脂、ポリスチレン(PS)といった樹脂を含む。

PCBをリサイクルする方法は解体(手作業、自動、半自動)、金属・非金属部の分離のための小サイズ化(シュレッダー、破砕)、ふるい分け、比重選別、磁選、静電選別といった物理的プロセスを経る。

自動解体(部品の分解採取)は選択的な分解と「同時」分解がある。選択的な解体では、ある部品のPCBへの接続方法、接続の方向を目標にして、個々の部品を分解採取する。「同時」分解ではPCB全体を錫溶鉱炉の中で熱し、はんだを外して部品を同時に拭い取るというものである。その後、形状や物理特性で分別される。「同時」分解は効率が良いものの、部品を傷めやすいという欠点がある。

自動解体の内、熱によるものはリサイクル全工程の中の最初の段階で最も重要である。200~230℃とはんだが溶ける温度にしてせん断力を加えることにより解体が進む。ただし、はんだの回収技術は未開発である。破砕・粉砕ではエネルギー消費の削減だけでなく効率的な選別に資することが重要である。この工程では、150μm以下にすることにより金属成分と非金属成分が絡み合うことを防ぐことが出来る。破砕・粉砕工程で多段破砕、微粉砕、ふるい分けといった機械的な方法をとった後、比重選別、磁選、静電選別といった物理的な選別方法が取られる。物理選別ではコロナ静電選別分離(Corona Electrostatic Separation:CES)が有効であり、その方法はプラスティックと金属、セラミックの密度と電気伝導度の差により分離され、相互的なコンタミネーションを防ぐことが出来る。

WEEEsリサイクルでの主な有害物質は分離のための小サイズ化の工程で発生する。シュレッダーはプラスティック、セラミック、金属からなる微細なダストを発生させ、BFRsといった添加化合物もシュレッダー工程から放出される。そのため、優れた集塵機を使用する必要がある。ベースメタルや有用金属の一部は小サイズ化工程で失われる。

現状、WEEEsは最大の有価金属資源の一つであるが、効果的な収集・再利用・リサイクルシステムを持たない。物理選別によるリサイクルは比較的簡便で環境的に安定で初期設備投資やエネルギーコストも安価である。また適用され得る製品も多岐にわたる。しかしPCBからの金属成分と非金属成分の分離には改善の余地がある。

概して従来型のPCB処理技術は環境汚染、高コスト、低効率といった理由により、将来求められる性能を満たすことが出来ないと考えられる。そのため、PCBからの有価金属回収の分野での更なる研究が必要とされる。

2.Deriving Value from Challenging Waste Materials: Recycling and Sustainability Joint Session:

金属精製の過程で発生する廃棄物(スラグ、ダストなど)の有効利用に関するセッションで鉄鋼スラグの価値を最大化にする研究、電炉ダストからのNi-Znフェライトを直接調製する手法、Tiを含む電炉の溶融スラグからの有価金属の総合的な利用と分離につき発表があった。

その中でもArcelorMittalから報告があった「鉄鋼スラグの価値を最大化にする研究」では、鉄鋼スラグを鉄の含有率、粒径によりAスクラップ(85%以上の鉄を含み、粒径は75㎜以上)、Bスクラップ(60%以上の鉄を含み、粒径は12.5~75㎜)、Cスクラップ(40%以上の鉄を含み、粒径は12.5㎜以下)、非金属スラグ(鉄の含有量20%以下)に分類し、まず価値を算定した。

スラグ中で見ると鉄分の価値が非金属成分である石灰石などのフラックス、珪石などの石材に比べ高いため、これらの分類の中でAスクラップが最大の価値を持つ。また、非金属スラグについては、骨材としての価値を勘案するに粒径が大きい方が価値が高くなる。そのためスラグの鉄分・粒径を最大化し、非金属スラグの発生量を最小化することが重要となる。鉄鋼スラグの処理法は①従来型の空冷プロセスの後に鉄分を回収するもの、②高熱でのスラグ改質、③溶融スラグの乾燥粒化の3つの代表的プロセスがある。

従来型空冷プロセスに対して、②高熱でのスラグ改質、③溶融スラグの乾燥粒化では、流動性が高い溶融スラグのみが対象となる。高熱でのスラグ改質は鉄の回収に適さず、製品は価値が低い骨材の代替材である。溶融スラグの乾燥粒化の製品は、鉄含有コンクリートと砂で5㎜以下の粒径なこともあり価値が低い。

以上から、現状では3つの代表的プロセスの中で従来型空冷プロセスがスラグの価値を最大化させるものであるが、非金属スラグへの鉄分の損失を減らす必要があり、高熱状態でのスラグからの鉄分の分離、高熱状態でのスラグの適切な粒径への分解、高熱状態での硫黄、リンといった不純物の除去という手法により最適化が図られる。

3.Applications of Process Engineering Principles in Materials Processing, Energy and Environmental Technologies:

主に先端的な金属等の材料の精製(製錬)手法についてのセッションで、クロマトグラフィー技術を用いたPGM精製、銅電解でのAs、Sb、Biを含むアノードと電解液の反応メカニズム、SxEwでの硫酸塩-塩化物系溶液からの銅回収、塩化物からのレアアース、ニッケル、コバルトの湿式精製プロセス、イオン交換による銅電解スライムからの金・PGMの回収などにつき講演があった。

(1)新規PGM分離回収技術について

 「連続環状クロマトグラフィー技術(Preparative Continuous Annular Chromatography:P-CAC)によるPGM分離」と題してRio Tintoより、バイオ・テクノロジーや製薬技術で用いられるP-CAC技術を銅製錬工程(電解スライム)に適用し、白金族を分離する試みについて発表があった。

P-CAC技術は主に内部-外部の同時に回転する固定相を形成するシリンダーから成り、クロマトグラフィーの原理により分離された白金族と銅、銀がカラムに分配されるというものである。シリンダーは420㎜程度の長さで外部シリンダーは3気圧に耐えうる高精度ガラスからなる。内部シリンダーはチタン製で10気圧に耐えうる。

図2.PCAC技術によるPGM等の分離の様子(出典:Rio Tinto講演資料)

図2.PCAC技術によるPGM等の分離の様子(出典:Rio Tinto講演資料)

各成分への分離は各元素の固定相での極性とともに溶液の投入量と排出量、シリンダーの回転速度に依存する。試験の結果としては、図2に示すとおり外部シリンダーにカラフルな分離パターンが現れ、黄色の帯がプラチナ、茶色の帯がパラジウム、緑の帯が銅・銀にはっきりと分かれた。処理原液でのPd/Pt比37に対して、パラジウム濃縮カラムでのPd/Pt比が最大7,040となり、Pdの純度が十分上がって、単体分離ができたと判断された。この分離能ではPdが99.95%の地金製造に資する。P-CAC技術はPGM元素ごとの分離に安全で効率的で利潤を生むプロセスとして適用可能なことが分かった。今後は実規模へと分離能力を上げることが課題となる。

(2)新規ニッケル・コバルト分離精製技術について

「湿式精製法による塩化系溶液からのレアアース、ニッケル、コバルトの回収」と題してProcess Research ORTECH Inc.より大気圧下での塩酸浸出-溶媒抽出による鉱石からのレアメタル分離につき発表があった。

同社はアルミ-ケイ素系鉱石から革新的な混合塩化物浸出によるレアアース元素(REEs)分離法を開発している。この分離法はコストが安価で環境配慮型とのことである。混合塩化物は塩酸、塩化マグネシウムを含み効果的な浸出剤である。そのため大気圧、90~95℃と比較的低温の条件下で、高い金属回収率が得られる。この浸出法を低品位ラテライト鉱からのニッケル・コバルト回収に適用した。その結果、Niを0.74%、Coを0.1%含むラテライト鉱でNiの回収率98%、Coの回収率93%が得られ、Niを4.02%、Coを0.1%含む精鉱でNiの回収率99%、Coの回収率86%が得られた。この浸出法は塩酸に酸化マグネシウムを少量添加することで浸出を促進させるものである。Ni-Coを含む浸出液は多段の溶媒抽出工程に持ち込まれ、多量に含まれる鉄分が除去される。使用される抽出剤(有機溶媒)は選択的にNi、Coを抽出可能である。反応式としては、

R3N+HCl=R3NHCl
2R3NHCl+CoCl42-=(R3NH)2CoCl42-+2Cl
2RH+NiCl2=R2Ni+2HCl

となる。ここでRは抽出剤を示す。本研究で使用した抽出剤は鉄、ニッケル、コバルトをそれぞれ、33,150㎎/ℓ、3,331㎎/ℓ、58㎎/ℓ含む処理原液(酸浸出後液)から鉄濃度を5㎎/ℓ以下に削減することが可能で、3段階の抽出処理を経てまずコバルト、次にニッケルが抽出される。

図3に本分離法による処理フローを示す。

図3.PRO's混合塩酸塩プロセスによるラテライト鉱からのNi,Co回収フローシート (出典:ORTECH講演資料よりJOGMEC作成)

図3.PRO’s混合塩酸塩プロセスによるラテライト鉱からのNi,Co回収フローシート
(出典:ORTECH講演資料よりJOGMEC作成)

この混合塩化物プロセス(PRO Process)は従来法に比べ、①塩化マグネシウムの添加によりH+イオンの活性が増し低い塩酸濃度で金属回収率が高くなる、②塩酸の浸出工程へのリサイクルによりコスト削減につながる、③塩化マグネシウムと有機溶媒抽出剤LIX63の使用により、中和が不要なpH0.5-2.5でNi2+が分離可能であるという特徴があり、今後益々厳しくなる環境対策の要件を満たし、CAPEX、OPEXを削減可能な、従来法の代替技術になりうる。

おわりに

本例会では発表内容が多岐にわたったが、発表テーマの傾向としては、乾式・湿式製錬の基礎的研究や金属素材の製造・利用技術といった従前からの研究テーマに加えて、リサイクル・廃棄物利用といった持続可能型社会に適応したテーマが目立つようになったことが挙げられる。

例年、開かれた場所での活発な議論が行われており、特に製錬・素材系の若手技術者・研究者の発表の場として機能している。参加者は場所柄、米国、カナダが大勢を占めていたが、欧州からの参加もあり、またアジアからはとりわけ中国からの参加も目立った。

会場では、その他、ポスターセッションやブース展示も行われ、ポスターセッションでは主に若手研究者同士の意見交換がなされており、ブース展示では素材系メーカー、エンジニアリング会社、分析機器メーカーなどが出展しており、活況を示していた。

今回は特にプリント基板からの金属回収、廃棄物の有効利用、先端的な金属抽出技術に関して、有益な最新の知見が得られた。

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