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報告書&レポート

2017年7月13日 前リマ事務所長・現備蓄企画部特命調査役 迫田昌敏
17-16

最近のペルー鉱業法制の改正動向

はじめに

Pedro Pablo Kuczynski政権が発足して1年弱が経過した。ペルー鉱業における課題として、新政権発足以前から、①行政手続きの簡素化・迅速化と規制緩和、②争議対策、③違法・インフォーマル鉱業対策、が挙げられてきた。これらの課題に対する新政権の取り組みを、法制改革の観点から以下概観する。

1.行政手続きの簡素化・迅速化と規制緩和

1.1.探鉱段階での環境評価に関する規制緩和

探鉱段階での環境評価に関しては、これまで2008年の大統領令第020-2008-EMにより、次の2つのカテゴリーに分けて、それぞれエネルギー鉱山省(MEM)による環境関連要求事項の遂行確認が必要とされてきた。すなわち、環境に対する影響が小さいカテゴリーⅠと、影響の大きいカテゴリーⅡである。

  1. カテゴリーⅠ

    調査により影響を受ける範囲の面積が10㏊未満、試錐座数20ヶ所以下、坑道探鉱50m未満の探鉱計画。自然保護区に近いなどの特殊事情が無い限り、MEMへの環境影響報告(Declaración de Impacto Ambiental、DIA)の提出と受理のみで承認される。

  2. カテゴリーⅡ

    調査により影響を受ける範囲の面積が10㏊以上、試錐座数21ヶ所以上、坑道探鉱50m以上の探鉱計画。計画が実行される地域の詳細な環境及び社会情報を含んだ環境影響概要調査(Estudio de Impacto Ambiental Semi-Detallado、EIA-sd)が要求され、MEMにより評価され承認を得る必要がある。

上記に関し、2017年5月6日、エネルギー鉱山省は、同日付で、探鉱申請の際に必要となる環境影響評価に係る新たな規則の案文を発表し、パブリックコメントを要求した。新規則案では、活動エリア100㏊、試錐座数40ヶ所、探鉱坑道100mまでの探鉱活動をカテゴリーIと定め、その実施に必要とされる環境影響申告書(DIA)の審査承認を申請後60日後までに行うことや、カテゴリーIを超える規模や自然保護区における活動等をカテゴリーⅡと定め、その実施に必要となる環境影響概要調査(EIA-sd)の審査承認を最大90日後までに行うこと等が示されている。一方、試錐座数が20ヶ所以下で一定の条件を満たす探鉱活動を低リスクプロジェクトとし、DIA申請後10日以内に審査承認を行うことが提案されている(PDF版 表1~3参照)

新規則の提案の根拠と目的について、エネルギー鉱山省は、本案冒頭において次のように述べている。

2008年に大統領令020-2008-EMによる「探鉱活動に関する環境規則」が公布された後、環境影響評価やその許認可に関する法的枠組み改定や、環境監査を管轄する政府機関の変更が行われたことから、探鉱活動に関しても新たな規則を制定する必要性が生じた。同令の適用期間中に施行された法制度は、環境影響評価システム法(法律第27446号)、同法施行規則(大統領令019-2009-MINAM)、環境評価(SEIA)監査法(法律第29325号)、同法施行規則、行政プロセス実施特別措置法(大統領令054-2013-PCM)である。

この法案に対する業界関係者や専門家の意見は以下のとおり。

元鉱山大臣のMucho氏は、これまで不明だったEIA-sdやDIAが承認される時期が、審査日数が明示されることによって、鉱業事業融資にもアクセスし易くなるとの考えを示した。

コンサルタントFerrari氏は、投資家は長い間待ってはくれず、手続きの遅延が鉱業以外の分野に投資を逃がす要因となっていると意見した上で、審査期間の短縮や諸手続きの削減を評価した。また、同法案において、各省庁間の手続きの迅速化や透明性を促す審査のデジタル化が提案されていることにも触れ、時間短縮によって探鉱を実施する企業は鉱区料や人件費等のコストを削減できるとの見通しを示した。

Pembrook Copper社の地質専門家Medrano氏は、EIA-sdやDIAの承認期間短縮だけでは不十分だと意見した。

SNMPE前会長Galvez氏は、案件によってはEIA-sd、DIAの承認だけではプロジェクトを開始することはできず、これら以外にも先住民事前協議等、政府が実施する諸プロセスを経なければならず、プロジェクトが行き詰る要因となっていると説明した。さらに、役所手続きの効率化・審査期間削減に対するインセンティブが存在するのと同様に、期限の不履行や遅延に対しては罰則を適用すべきだと意見した。

1.2.最低生産不履行時の罰金規定の緩和

鉱業権所有者の義務のひとつとして最低生産不履行時の罰金規定が鉱業一般法第38条、第40条、第41条などにおいて定められている。同法第38条では、生産開始期限や年間最低生産量が、同第40条では最低生産不履行時に鉱業権維持手数料(または有効証明料とも、Mining Good Standing Fee、金属では3.00US$/㏊/年)に加算される罰金額が、第41条では鉱業権失効の制限が、それぞれ規定されている。

直近の改正である2008年6月の行政立法第1054号において、鉱業権者は、鉱業権を取得した翌年から起算して10年目満了時までに生産を行わなければならないとされ、年間最低生産量として、金属の場合、1㏊につき1UIT(課税単位、当時約3,500ソーレス、現在のレートで1,000US$強)が定められていた。仮に10年目満了時までに年間最低生産量をクリアする生産活動がなされなかった場合、11年目から鉱業権維持手数料とは別に、年間最低生産量の10%(すなわち金属は当時350ソーレス/㏊/年、非金属は当時35ソーレス/㏊/年)の罰金が課され、16年目には鉱業権が失効することになっていた。

2008年6月の行政立法第1054号においては、当時すでに取得済の鉱業権に関しては、鉱区期限の年数は2009年1月1日からカウントされるものとされていた。すなわち、現行法では、2009年から11年目の2019年に、最低生産不履行時の罰金を科される鉱業権者が大量に出ることになり、その大多数は罰金の支払ではなく、鉱業権の放棄に走るものと予想された。新しく出された行政立法第1320号の施行日が2019年1月1日とされたのもここに理由がある。

新たに改正された当該条文では、鉱業権を取得した翌年から起算して10年目満了時までに生産を行わなければならないとする第38条はそのままに、第40条の最低生産不履行時の罰金額が、11~15年目の場合、年間最低生産量の2%(81ソーレス/㏊/年、約25US$/㏊/年)、16~20年目の場合、同5%(202.5ソーレス/㏊/年、約61US$/㏊/年)、21~30年目の場合、同10%(405ソーレス/㏊/年、約123US$/㏊/年)と緩和され、31年目で鉱業権が失効するとされた。また、第41条では、罰金額の10倍以上探鉱投資している限り、30年目まで罰金支払いが免除される規定も残されている(PDF版 表4参照)

1.3.環境基準の緩和

2017年3月から4月にかけて、ペルー環境省は、水質と大気に関する新しい環境基準案を公表した。特に、La Oroya精錬所の入札・存続問題に密接に関係する大気環境基準案は衆目の注意を引いた。

本案は、SO2、二酸化窒素、鉛、PM2.5、PM10、一酸化炭素、オゾン等合計10項目のパラメータの改正を含んでいるが、特に大気に含まれるSO2の排出許容量を20μg/㎥から250μg/㎥へと緩和すること等が提示されており、これはLa Oroya精錬所の入札・存続問題を十分に意識した改正案と言える。一方でペルー環境省は、今回の改正はあくまでも大気の質の向上を目的としたものであり、鉛の排出許容量は変更されていないほか、PM10に関しては150μg/㎥から100μg/㎥へと厳格化されたこと、SO2に関しては、ペルーにおける現行の20μg/㎥は世界保健機関(WHO)が理想値として示す値だが、実際の排出許容量として適用している国は他に存在しないとコメントした。新たな排出許容量となる250μg/㎥は、周辺のチリ、コロンビア、メキシコと同等の排出基準となっている。

La Oroya精錬所の入札・存続問題と大気環境基準の関係については、カレント・トピックスNo.17-15をご参照ありたい。

1.4.探鉱活動中の付加価値税の払戻

法制度が改訂されたわけではないが、2015年12月30日に公布された法律第30404号により、探鉱活動中の付加価値税(Impuesto General a las Ventas、IGV、現在18%)の払戻制度が、2018年12月31日まで延長されることになった。本制度は、2002年1月公布の法律第27623号により制定され、2006年12月公布の行政立法第963号(2007年1月施行)、2010年1月公布の法律第29493号(同月施行)、2012年12月公布の法律第29966号(2013年1月施行)により、順次延長されてきた。法律第27623号第1条によれば、本制度を利用するためには、鉱業権者は、エネルギー鉱山省が省令に定めた一定の様式により、国と投資契約を締結する必要がある。

本制度を活用した事例として、最近、下記のケースが公にされている。
2017年5月25日、Bear Creek Mining社(本社バンクーバー)は、Corani銀・鉛・亜鉛プロジェクト(Puno州)の開発中に生じる工事及び建設費に適用される付加価値税18%の早期払戻契約を、エネルギー鉱山省及び国家民間投資促進庁ProInversion(政府代理人)と締結したことを明らかにした。契約によると、同社は、同プロジェクトの詳細設計、許認可、建設、試運転、立ち上げなどの開発期間3年間にわたり、初期資本支出(設備投資)に関連する一定の税金を回収することができる。また、この契約は、2016年11月以降に発生した費用に遡及的に適用される。2015年7月のFSによると、同プロジェクトの初期設備投資額は625百万US$と推定されている。同社は、現在、同プロジェクトの詳細設計のフェーズ1プログラムが2017年6月完成予定に向け順調に進行中であり、完成後の2017年第3四半期中に、主だった建設許可申請書類を当局に提出することができるだろうと述べている。さらに同社は、同プロジェクトの建設を2017年末までに決定したいと述べた。

同プロジェクトは、世界最大の未開発銀鉱床の一つと言われ、SNL社データによれば、2015年6月現在の鉱物資源量は275.76百万t、銀品位40.48g/t(銀金属量約11千t)、鉛品位0.67%(鉛金属量約1.8百万t)、亜鉛品位0.45%(亜鉛金属量約1.2百万t)。年産銀金属量13百万oz(約400t)が想定されている。

本制度に対する専門家の意見として、弁護士Salinas氏は、鉱業投資の回復には優遇税制も有効だが、付加価値税還付の場合、税金の還付が短期間内に行われなければ魅力がないと意見している。

2.争議対策

Kuczynski大統領は、2016年8月、就任直後の施政方針演説で、同政権がまず取り組むべき課題として、資源開発に絡む社会争議の解決と市民の治安安全対策を挙げた。また、2016年11月、Zavala首相は地元紙のインタビューにおいて、鉱業プロジェクト地域において、探鉱・建設・開発段階を踏む鉱業活動に先立って、当該地域における社会・公共投資を行う、前倒しの社会・公共投資実施の制度を策定中であることを明らかにした。

以上の趣旨により制定されたのが、2017年1月に公布された行政立法第1334号である。本法では、経済開発地域における格差解消に向け、鉱業プロジェクトを含め、エネルギー鉱山省、経済財政省、首相府が優先性を認める経済活動・プロジェクト地域における、上下水道、環境、教育、医療、運輸・通信、農業関連の公共事業への融資を目的とした事前社会投資基金(Fondo de Adelanto Social、FAS)の設立が制定された。FASの業務は上記のプロジェクトへの資金調達で、資金源として、国内外からの寄付金や各セクターからの移転資金などを期待している。

2017年5月、エネルギー鉱山省のLabo鉱山副大臣は、鉱業におけるFASの対象となるのは、FS実施中又は探鉱ステージの進んでいるプロジェクトのほか、投資が決定済みのプロジェクトなど探鉱ステージの進んだプロジェクトで、初期段階の探鉱案件や、既にCanon税の還付を受けている地域は対象とならないと述べた。また、FASのプロジェクトは、企業が個別に行う社会的投資とは別であることも併せて明らかにしている。

2017年6月、Tamayoエネルギー鉱山大臣は、Cajamarca州において、事前社会投資基金(FAS)の初めての運用が行われたことを明らかにした。同大臣によれば、同州が実施する道路整備や農業プロジェクトに対し、同地域の社会的格差縮小を目的として、FASの制度を通じて100百万ソーレス(約30百万US$)が融資された。同大臣は、今後も他州において、本制度の適用を行う見通しを示したほか、その際には各自治体の資金調達能力等を分析し、鉱山開発が実現した場合、将来的に自治体に配布される鉱業Canon税の還付金から融資額を差し引く可能性等が検討されること等を説明した。

この事例から、同基金の適用は、適用されるプロジェクトが所在する地方政府の資金調達能力に大きく影響されるものと考えられる。

また、社会争議に関する制度的な改革として、政府は2017年3月、大統領令022-2017-PCMにより、首相府の下に、社会争議対策を担当する副大臣ポストを設置した。同副大臣ポストは、地方分権(Descentralización)、社会マネジメントと対話(Gestión Social y Diálogo)、領土設定と管理(Demarcación y Organización Territorial)の3事務局を担当する。

3.違法・インフォーマル鉱業対策

2012年3月に公布された大統領令第006-2012-EMにおいて、鉱業活動が禁止されている地域で活動している鉱業活動が「違法鉱業」(Minería ilegal)、鉱業活動は禁止されていない地域だが法的手続きを踏まずに行っているものが「インフォーマル鉱業」(Minería informal)と定義された。現状では、大まかに言えば、違法鉱業は厳しい取り締まりの対象である一方、インフォーマル鉱業に対しては、飴と鞭を使い分け、合法化(Formalización)の対象となっていると言える。以下、インフォーマル鉱業合法化に対する法整備と、違法鉱業対策としての水銀規制を主として概観する。

3.1.インフォーマル鉱業対策

2012年4月に施行された行政立法第1105号では、インフォーマル鉱業者の合法化手順を規定した。新政権は基本的にこの方針を受け継ぎつつも、2016年12月、(インフォーマル)小規模・零細鉱業合法化を国益に資する事業と位置付けることや、2012年の行政立法第1105号に定められる合法化プロセスの再編を目的とした行政立法第1293号を公布した。

新たなこの法令では、州政府エネルギー鉱山局の管轄による包括的な合法化プロセス導入や、エネルギー鉱山省内における合法化包括登録システム、合法化に係る行政メカニズムの簡素化などが定められている。なお、本合法化包括登録システムには、これまでに2014年の大統領令029-2014-EM等に基づき合法化登録を行った事業者は既に含まれている。

一方、現在まで合法化登録を行っていない小規模・零細鉱業事業者に関しては、単一の鉱区で活動し、納税者番号(RUC)を有する事業者は、2017年2月6日から、土日祝祭日を除く120日の期間内に合法化登録を行うことが定められている。さらに、行政立法第1150号や同第1293号に定められる合法化プロセスや登録を行わずに活動を続ける事業者に対しては罰則が適用されること、合法化プロセスそのものの期限は、登録受付期限の終了後から36ヶ月までとすることが定められている。エネルギー鉱山省によると、2016年10月までの4年間に合法化された労働者は、7万人とみられているインフォーマル業者全体のうち4千人とされる。

さらに、2017年1月に公布された行政立法第1336号では、手続きの簡素化のため、合法化終了の要件と提出すべき書類としての環境マネジメントツール(Instrumento de Gestion Ambiental para la Formalización de Actividades de Pequeña Minería y Minería Artesanal、IGAFOM)を定めている。また同法では、合法化インセンティブのため、合法化登録済のインフォーマル鉱業者に対し、鉱業活動実施地域における一定の優先権(例えば鉱区授与)を与えている。

3.2.違法鉱業対策(主に水銀規制に関して)

2016年5~9月、ペルー政府は、違法金採掘業から流出している水銀により人体や魚が汚染されているとして、Madre de Dios州のTambopata郡、Manu郡、Tahuamanu郡内の計11区に対して、環境緊急事態宣言を発令した。Pulgar-Vidal環境大臣(当時)は、違法鉱業者がアマゾン川に流す年間約40tの水銀により、同州住民の41%が水銀汚染にさらされていると述べていた。金採掘をメインとする違法鉱業における水銀使用は一般化しており、2016年8月1日付け地元紙によると、Arequipa州の小規模鉱山労働者(合法化プロセス中約9千人及びインフォーマル鉱業従事者5万人以上)の95%以上が水銀を使用しており、この水銀は隣国ボリビアから、1㎏当り700ソーレス(約209US$)で闇市場を通じてもたらされていると報じられている。

このような状況に対し、これより先の2015年10月、ペルー国会は法律第30352号により、水銀に関する水俣条約を承認し、同年11月、ペルー政府は大統領令第015-2015-EMにより批准、2016年1月、批准書を国連本部に寄託した。同条約は、水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する国際条約で、2013年10月、熊本市で開催された全権委任代表者会議で採択され(ペルー代表もこのとき署名を行っている)、2017年8月16日に発効する。

水俣条約批准を受け、ペルー環境省は、同条約実施のために、2016年5月、マルチセクター行動計画を設定するとともに、2016年7月、大統領令第010-2016-MINAMにより、この計画をオーソライズした。マルチセクター行動計画には、水銀供給源の確定と採掘防止、水銀製品の流通規制、水銀又は水銀化合物を使用する製造過程の規制、水銀排出源の特定と排出規制、水銀及び水銀化合物の一次保管や移動、水銀汚染地の改善措置などの行動内容、担当機関および期限が盛り込まれているが、小規模・零細鉱業における金採掘業関連では、2017年12月までに、エネルギー鉱山省、環境省、保健省、経済財政省、国税庁及び首相府が、零細及び小規模鉱業のための行動計画案を作成すること、2017年12月以降、水銀の使用、販売、流通、貯蔵が禁止されることになっている。

以上の水銀規制のほかに、現政権は、2016年10月、違法鉱業を組織犯罪対策法(法律第30077号)の対象と位置付けることで、国家捜査における盗聴や検閲等の手法の適用を可能とする行政立法第1244号を公布した。

4.所感

探鉱段階での環境評価に関する規制緩和に関しては、これまでも、DIAやEIA-sd申請後1年以上も待たされる場合があるなど、評判が悪かっただけに、承認期間明示(実は旧令でも承認期限規程はあったがほとんど守られていなかった)やカテゴリーの緩和は評価できる。ただ、エネルギー鉱山省からの環境影響評価の認可が得られたあとも、ボーリングに必要な水の利用に関しては農業省管轄の許可が必要であり、さらなる行政手続きの削減が求められるところである。

最低生産不履行時の罰金規定について、10年間の探鉱期間経過後の鉱区維持料が数十倍になることに対し、投資の継続の観点から持続不可能であるとの議論があり、今回の緩和措置は一定の前進と評価できる。ただし、探鉱活動の開始に必要な住民合意形成に時間がかかるようになっており、10年間の探鉱期間が現状において適切なのか、さらなる検討が必要と考えられる。

環境基準、特に大気環境基準の緩和は、La Oroya製精錬所の存続問題を契機にクローズアップされた。SO2の日平均基準に関して、ペルーにおける現行の20μg/㎥は世界保健機関(WHO)が理想値として示す値だが、実際の排出許容量として適用している国は他に存在しない。ペルーにおける環境基準制定は国会における審議を経ることなく、環境省内手続きのみで制定できることも問題の一因ではないかと考えられる。

探鉱活動中の付加価値税の払戻制度も、有用な制度ではあるものの、実際の運用面においては、還付対象となるのかならないのか、不透明な部分が多い。行政手続きの簡素化の観点から改善が求められる。

社会争議対策として提案された事前社会投資基金(FAS)については、まだ実体がどのようなものになるかわからないが、新政権がプロジェクトエリアでの争議対策を意識し、積極的に関与しようとしているものとして、一定の評価はできる。ただし、運用面においては、初期段階の探鉱案件や、既にCanon税の還付を受けている地域は対象とならないなど、実施が限定的になる可能性もあり、今後の推移を見守る必要があろう。

違法・インフォーマル鉱業対策について、違法鉱業に対しては、浚渫船の破壊などのハードな実力行使のほかに、水銀規制を通じたソフトな締め付けツールを通じて、その撲滅を志向している一方、インフォーマル鉱業に対しては、合法化プロセスの簡素化や、鉱区付与などで優先権を与えるなど、より合法化インセンティブを強化した対応策をとっているようにみえる。しかしながら、納税の義務を負いたくないインフォーマル鉱業事業者がそもそも合法化を志向するか疑問であり、むしろ規制を強化し、生産物を購入している違法買取業者を含めて、インフォーマル鉱業事業者を排除してゆくのが鉱業先進国として本来あるべき姿なのではなかろうか。

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