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報告書&レポート

2017年9月29日 調査部 調査部 北良行・白鳥智裕
17-23

中国の銅資源確保とDRコンゴの鉱業について

第1回:DRC Mining Week -Expo&ConferenceとKamoa銅鉱山プロジェクト視察

<調査部 北良行・白鳥智裕 報告>

はじめに

アフリカの中央部にはカッパーベルトと呼ばれる鉱床地帯がある。この鉱床地帯はザンビア北部とコンゴ民主共和国(以下DRコンゴ)南部にまたがっており、現在両国で年間200万t近い銅を生産している。かつてこの地域は北米銅生産者と肩を並べ銅の生産者プライスを発表するほど銅市場において存在感が大きかった。しかし1980年代からの銅価格の低迷期に、ザンビアでは国営による鉱山運営の失敗が、またDRコンゴでは独裁政権と引き続く内戦による国内疲弊が原因で銅産業は壊滅状態となった。21世紀に入ると中国の経済成長による銅需要の拡大で両国とも息を吹き返し始めた。

中国は改革開放以来急速な経済成長を遂げ、21世紀に入ると多種の市場で世界に大きな影響を与える存在となった。金属資源についても同様で、たとえば銅地金の消費量は2015年時点世界の49.8%と卓越している。しかしながら、中国は銅資源を自国内で十分手当てできず消費に対する自給率は十数%である。このため中国は銅資源を海外に求め周辺アジア、南北アメリカ、オーストラリア、アフリカ等から輸入している。ところが中国は海外での銅開発分野では後発で、いわゆる非鉄メジャーによる資源権益独占下、十分な鉱山権益を有していないのが現状である。このため中国は国策として積極的な権益取得に取り組み自主調達率の上昇を目指している。その一つとしてDRコンゴでの活動がある。

2017年6月、DRコンゴ最大の非鉄金属鉱業地帯であるLubumbashi市でDRC Mining Week -Expo &Conferenceが開催された。JOGMECからも2名が参加しDRコンゴでの中国の活動状況把握を目的として、銅鉱業の関連の情報収集を行った。今回この機会に得られた情報を3回に分けて報告する。第1回はMining ConferenceとKamoa銅鉱山プロジェクト視察について報告する。

1.DRC Mining Week -Expo&Conference-

1.1.概要

同会議は6月22日から開催され、Kamoa鉱山プロジェクトの視察、22日から24日の電力関連、鉱業案件他のセッション並びに企業等による展示会から構成された。初回の2005年は小規模であったが、近年参加人数が伸び、主催者側の発表によると2017年大会では、2,691人の参加者と131社からの出展があった。

特に開催地のDRコンゴ及び南アからの参加が多く、鉱業、EPC(設計・調達・建設)・インフラ・輸送、マテリアル・ハンドリング・鉱業機械、探鉱・操業関連企業、政府関連団体、投資・金融関連など多岐の業界にわたった。

1.2.投資関連の議論

会議中はキー・スピーチやパネルディスカッションなどを通して、稼行企業によるプロジェクトの現状、DRコンゴの投資環境と改善点などの報告・議論が交わされた。

プロジェクトの現状についてはIvanhoe社のKamoaプロジェクト、Tenke Fungrumeプロジェクト、Rand Gold社のKibali金山の紹介があった。特にRand Gold社は税制などDRコンゴ政府の対応の不安定さへの苦慮、インフラ整備の困難さをアピールしながらも今後も増産に取り組むとしていた。

投資の現状については、例えば、Haut-Katanga州知事によれば、Haut-Katanga州では、50社以上が活動しているが、投資資金の不足で開発が進んでいないため更なる外国からの投資増を望むことが、また、アフリカ最大の民間銀行であるStandard Bankには中国資本が20%入っており、インフラなど活発に活動する中国とうまく連携しDRコンゴの鉱業開発を支援しているなど、更なる投資へのアピールがあった。

また、DRコンゴ鉱業法及び税制の改正が政府から提案されたことも議題となった。政府はかねてより2002年に制定された鉱業法の下では鉱業が政府に十分な歳入をもたらしていないことから、鉱業税の引き上げ及び鉱業プロジェクトにおける政府の最低権益比率の拡大を目的として、鉱業法の改正を目論んでいた。現在提案されている主な改正事項はロイヤルティを2%から5%へ、法人税は30%から35%に引き上げ、生産移行時の政府の権益取得率を5%から10%に拡大することである。この改正は、一度2016年2月に提案されていたが、低コモディティ価格、同国の電力不足といった環境下で投資家が撤退する恐れがあるなど業界からの強い反発があり見送られていたものである。今回も例えばDRコンゴ商工会議所(Federation des Enterprises du CONGO(FEC))を始め産業界から投資活動を後退させるなどの指摘があった。

写真1.セミナー会場の様子

写真1.セミナー会場の様子

1.3.インフラ関連等の議論

今年の本大会では、特に電力を中心とした鉱業インフラ、鉱業関連法、若者や女性の鉱業関連雇用問題にも関心がもたれた。

電力関係では、エネルギー省からの民間投資の状況の周知、民間からエネルギー省へのプロジェクトの現状報告など各機関での情報の共有が提案された。

なお、電力供給増については、国営電力会社(SNEL)の南ア電力公社(ESCOM)との電力購入契約、民間業者の電力生産量20%引き上げの取り組みがなされている。

鉱業関連の法律に関しては、鉱業法の見直しだけでなく、法律と税制が適正に運用されることが必要だとの認識が確認された。鉱業裨益は州政府、民間部門、市民団体や民間の政策研究機関等と議論を尽くし、公平にDRコンゴで分配されるべきであり、その使途は、DRコンゴのインフラの発展や人々の生活の改善に当てるべきと提案された。

鉱業分野での雇用問題では、DRコンゴ人自らが法律によって保証された裨益を認識し、現地のコミュニティや団体とともに活動を始めるべきで、そのためには、企業や銀行は若者や女性を活用するための商業的教育プログラムを創設したり、小規模融資やマイクロファイナンスへのアクセスを容易にする事が出来るようにするべきとの提案がなされた。また、女性に関しては、その雇用状況を反映し、雇用や昇進の機会を増やし、活躍の場所とより大きな責任を与え、女性の登用を進めるためのアファーマティブアクションを取る事が要請された。

1.4.企業等による展示

写真2.屋外の展示会場

写真2.屋外の展示会場

会場となったPullman Lubumbashi Grand Karavia Hotelには大規模な仮設テントと屋外の展示会場が設けられ、鉱業関係企業、団体、政府関係者によるブース出展が行われた。ブース出展は、探鉱関連、鉱業機器関連、輸送機器、ロジスティックス・サービス関連等鉱業に係わる多くの業種が参加していた。DRコンゴの電力事情を反映してか、他で参加する国際会議のブース出展と比較して、小規模の発電所関連事業者が目立つように感じた。

DRコンゴでは中国の進出が進んでいるので、中国人が多く参加しているだろうと考えたが、参加してみると今回見受けられた中国企業によるブース出展は煙台興業機械股彬有限公司、漢盛集団の重機関連企業2社のみであった。また、会場内で見かけた中国人も数十人程度と存在感は大きくなかった。昨年の本会議参加者によれば、2016年はかなり多くの中国人が参加していた模様。中国はすでに必要なネットワークを作りあげたため、本大会に参加する必要が無くなったのではというコメントであった。

他方で、会議では南ア関連企業の存在感が大きかった。例えば、エンジニアリングサービスのAZMET社、地層圧制御製品の販売やソリューションを提供するFabchem Mining社、電力インフラサービスを提供するTshwalec Power社などの南アに本社を置く企業が見られた。これはDRコンゴにおける鉱業部門と電力部門においてDRコンゴでの南アがリーディング・プレイヤーとなること、南ア企業がDRコンゴでの存在感を高めること、DRコンゴに未進出の企業がDRコンゴでの足がかりを作るという思惑から、南ア資本設備輸出機構(The South African Capital Equipment Export Council(SACEEC))が主導し、南アの関連企業の派遣団を引き連れてきたことによるようだ。主催者発表によればブース出展の21%が南ア企業で62%のDRコンゴ企業には及ばないものの大きな存在感があった。

2.Kamoa-Kakula鉱山プロジェクト視察

アフリカンカッパーベルトはDRコンゴ側ではKatanga州の州都であるLubumbashi市の南部から北西方向Kolwezi市の西側まで400km以上にわたり連なっている。現在稼行中の鉱床としてMutanda、Kamoto、Tenke Fungrume、Frontierなどが知られている。1960年代日本鉱業株式会社(現JX金属株式会社)がMusoshi鉱山を探鉱・開発1970年代に日本に精鉱を輸出した実績がある。

今回参加したDRC Mining week conferenceにはKamoa-Kakula鉱山プロジェクト(以下Kamoa-Kakula)視察が企画されておりこれに参加した。

2.1.Kamoa-Kakulaプロジェクト

写真3.今回搭乗の小型機

写真3.今回搭乗の小型機

Kamoa-KakulaはLubumbashi市から北西250kmにありKolwezi市の西30kmに位置する。Lubumbashiからはチャーター機でKolweziへ移動するのが一般的である。

空港からKamoa-KakulaまではバスでKolweziの街を横断し移動するが、一部舗装されているものの道路は必ずしも良好な状態とは言えず、Kamoa-Kakulaまでの30kmを移動するのに2時間程度を要した。

Kamoa-KakulaはIvanhoe社(カナダ)、紫金集団(中国)並びにDRコンゴ政府とのJVである。このプロジェクトは当初Ivanhoe社が開始したものだが2015年12月に中国の紫金集団が参画し、現在鉱業権益はDRコンゴ政府20%、Ivanhoe社39.6%、紫金鉱業39.6%、その他0.8%となっている。

Kamoa-KakulaはKamoa鉱体とKakula鉱体からなる潜頭鉱床である。現在Kamoa鉱体を中心とした開発ではFSが終了し開発準備中で、未開発案件としては世界最大級である。鉱区は400km2あり最浅部は地表下250mで鉱床に達する。鉱量は739百万t(銅品位2.67%)。採掘粗鉱量初年21.7万t(3.8%)、5年後に410万t(4.07%)での粗鉱生産開発を計画している。(埋蔵量などの数字は鉱山での説明や資料により若干異なるが今回はそのまま掲載する)

ちなみにIvanhoe社はKamoa-Kakulaのほかアフリカ南部では南アのPlatreef PGM、DRコンゴのKipushi銅鉛亜鉛の各プロジェクトを、また紫金集団はDRコンゴでKolwezi銅プロジェクトを進めている。

図1.Kamoaプロジェクト位置図

図1.Kamoaプロジェクト位置図

(出典:Kamoa-Kakula Project June 2017 Job No.17001)

2.2.地質・鉱床と開発状況の概要

アフリカカッパーベルトの金属鉱床は新原生代Katangaベーズンの堆積岩起源の変成岩を母岩とし大部分がKatanga累層群に胚胎している。Katanga累層群は下位よりRoan、NGuba、Kundulunguの各層群に分けられKatanga地域のKolweziやTenke-Fungurumeなど多くの鉱床はRoan累層のMine層群に胚胎する。しかしKamoa-Kakulaはその上位のKundelungu累層に胚胎している。前者の鉱床は酸化鉱が主体でコバルトに富んでいるが後者は一次硫化鉱でコバルトに乏しい。Kamoa-Kakulaの鉱石鉱物はAzurite、Bornite、Chalcocite、Chalcopyrite、Chrysocolla、Cuprite、Malachiteである。

Kamoa鉱床にはすでに斜坑の掘り下げが開始され、現在は西部にあるKakula鉱床が鉱量調査の中心となっている。Kakula地域の開発は紫金集団のプロジェクト参加が決まった後で開始され、2017年5月には新しい鉱床が走向方向7.7kmに渡ってKakulaの西側に確認された。これによりKakulaには2016年10月発表の数値より75%の概測資源量が追加され3億49百万tとなった。現在の資源量はKamoa鉱床の7億52百万tと合わせ概測資源量11億tで、銅量は3,100万t、予測資源量を加えるとCut offを1%として3,650万tに達する(図3参照)。この様に未だ鉱量確認の実施中のため選鉱施設建設地点は未定でKakula鉱床の状況が把握されてから建設場所を決める予定で、2鉱床の中間地点のMuvundaあたりの可能性が高い。製錬所の建設は鉱石生産が銅含有量で8万tに達するころに検討する予定である。

図2.Kamoa並びにKakula鉱床位置図

図2.Kamoa並びにKakula鉱床位置図

(出典:Kamoa-Kakula Project June 2017 Job No.17001)

図3.アフリカンカッパーベルト地質並びに鉱床分布概念図

図3.アフリカンカッパーベルト地質並びに鉱床分布概念図

(出典:Kamoa-Kakula Project June 2017 Job No.17001)

表1.Kamoa-Kakula Project 資源量

表1.Kamoa-Kakula Project 資源量

表1.Kamoa-Kakula Project 資源量

(出典:Kamoa-Kakula Project June 2017 Job No.17001)

2.3.電力と輸送

写真4.Kamoa 斜坑口にて (中央はIvanhoe Freer氏)

写真4.Kamoa 斜坑口にて
(中央はIvanhoe Freer氏)

プロジェクトを進めるに当たり重要なインフラとなる電力と輸送関連の現状は以下の情報のとおりであった。

プロジェクトは国営電力会社Société Nationale d’Électricité(SNEL)からの電力供給を念頭に置いているが、SNELの電力発電・送電システムは欠陥が多く実際には十分機能していない。

SNELはKatanga地域に4つの発電所を有する。そのうち3つの発電所Mwadingusha、Koni並びにNzilo 1の修繕関連の資金手当てをIvanhoe社が行い、それと引き替えに電力供給を受けるという合意がなされている。MwadingushaとKoni発電所は113MWの能力があり、この内Kamoa-Kakulaプロジェクトには100MWが供給され、立ち上がり時には十分な量である。Nzilo 1は108MWの能力でここからも100MWが供給され30万tの銅生産に必要な電力が確保される。なお、同時に電圧仕様は120kvが220kvにアップグレードされる。

DRコンゴのKatanga地域から鉱産物を搬送するルートとしてはDRコンゴの南部からザンビア、ジンバブエを通過して南アのDurbanに至るNorth-South Corridor、アンゴラのLobitoに至るWestern Rail Corridor、タンザニアのDar Es Salaamに至るTazara Corridor、ナミビアのWalvis Bayに至るルートがあるが、現在有力な候補は前2者である。Lobitoへのルートはアンゴラ側が開通しているもののDRC側は未整備で、現状はNorth-South Corridorが現実的な選択である。

2.4.Kamoaと中国

写真5.中央が紫金集団から派遣の女史

写真5.中央が紫金集団から派遣の女史

見学終了後の昼食で紫金集団から派遣された中国女史職員と同席する機会を得た。

女史によると紫金集団は1名の役員、4名の職員を送り込んでいる。女史はfinance担当で、そのほか地質などの技師がいる。9週間DRコンゴで働いて3週間中国に戻るパターンを繰り返している。紫金集団はKamoaへ39.6%出資しているがIvanhoe本社にも10%出資している。またKamoaのほかDRコンゴでMusonieプロジェクトを行っている。後者は外国資本中国100%のプロジェクトで短期間にて生産まで漕ぎ着けた。今年から年50,000tで生産が始まっているとのこと(なお、紫金集団51%でKolweziというプロジェクトはあるがMusonieは見当たらないのでKolweziのことを指すと思われる)。これは中国が単独で事業を実施すればもっと早く開発が進むとの女史の暗のアピールと受け取れる。

おわりに

第1回はDRコンゴMining Conferenceでの地元鉱業界や国外企業の稼働報告セッション、関連企業等による展示とIvanhoe社と中国の紫金集団が実施しているKamoa銅鉱山プロジェクト視察について概要を報告した。Conferenceは千名以上の参加と出展も100社を超える規模になっており関心の強さを感じた。一方でその主題は政府の鉱業行政やインフラの不備など旧態依然のものであった。Kamoaプロジェクトは将来中国側の強い関与の懸念があるものの現状ではIvanhoe社主導で進められていることが確認できた。

次回はDRコンゴにおける中国の活動状況、特に銅産業と政府との関係を紹介する。

注)図表は全てプロジェクト報告書KAMOA-KAKULA PROJECT JUNE 2017 JOB NO.17001から引用

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