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報告書&レポート

2017年10月20日 調査部 北良行・白鳥智裕
17-25

中国の銅資源確保とDRコンゴの鉱業について

第2回:中国の銅関連鉱業での活動とDRコンゴ政府との関係について

<調査部 北良行・白鳥智裕 報告>

はじめに

2017年6月、DRコンゴ最大の非鉄金属鉱業地帯であるLubumbashi市でDRコンゴ Mining Week –Expo & Conferenceが開催された。JOGMECからも2名が参加しDRコンゴでの銅鉱業関連の情報収集を行い、3回に分けて報告している。第1回ではMining ConferenceとKamoa銅鉱山プロジェクト視察について報告した。第2回は展示会その他の機会に収集した情報並びにDRコンゴにおける中国の銅関連鉱業での活動とDRコンゴ政府との関係について報告する。

1.DRコンゴ鉱業における中国の活動

1.1.既存の銅鉱山

第1回でお伝えしたとおり、DRコンゴはザンビアと並びアフリカにおける重要な銅生産地で2014年以降100万t/年を越える生産を続けている。生産の8割がSxEwによる銅地金で精鉱は2割程度であることが特徴である。この国の鉱業活動状況を精緻に把握することは困難である。しかし、民間調査機関の情報を紹介すると、SNLによればDRコンゴの銅関連権益が79件、CRUによれば26社(DRコンゴ国営鉱業企業Gecaminesは1つにカウント、小規模プロジェクトは含まない)がリストされている。また、今回DRコンゴ鉱山省カタンガ局で入手した情報では当局に登録する鉱業者は52社であった。

CRUによるとDRコンゴの銅生産は2001年5万tに満たなかったが10年後の2010年にはほぼ10倍となり、この数字は同国内政混乱以前の最大生産量をしのぐ値となった。主な生産者による2016年までの銅生産推移は表1のとおりである。CRUの情報では2016年時点DRコンゴで活動する中国企業はChina Molybdenum(洛阳栾川钼业集団公司)、Minmetals(中国五鉱集団公司)、Jinchang(金川集団公司)、CNMC(中国有色鉱業集団公司)、China Railway Group(中国鉄建股份有限公司)、Sicomines(中国鉄建股份有限公司と中国水電建設集団公司)、China Gold(中国黄金集团公司)である。この情報によると中国が関係する鉱山等での銅生産総量は2006年から上昇しはじめ、2016年のChina MolybdenumによるTenke Fungrume鉱山獲得で461千tに達し、DRコンゴ全体の46%を占めるに至った。

表1.DRコンゴにおける主な生産者による銅生産推移

(単位千t)

表1.DRコンゴにおける主な生産者による銅生産推移

(出典:CRUより抜粋)

1.2.開発中の案件

SNL、CRU、安泰科、BGRIMM(中国の民間調査機関)等のデータから、DRコンゴにおける中国が関係する鉱業案件を整理すると表2に示すとおりとなる。

現地未確認情報によると中国関連で大規模な開発案件は中国有色鉱業公司Likasi-3プロジェクト(3万t)、中国有色集団Kolweziプロジェクト(10万t)、中国有色集団+雲南銅業Kolweziプロジェクト(12万t)、金川集団Kolweziプロジェクト(5万t)、万宝(KolweziプロジェクトWambao)(5万t)、Metalkol Col(ERG社+NFC(中国有色金属建設公司))(10万t)があり、他に1万t規模の案件として騰遠(TLC)、盛屯矿业集团公司など多数が進められている。

前述の既存銅鉱山の増強だけで2020年にはDRコンゴ全体の生産は135万tに達し、このうち中国関係の案件から生産される銅は50万t程度になると見られる。中国関連の新プロジェクトで生産に近い案件は紫金集団のKamoa-Kakula(8万t)プロジェクトとKolwezi(5万t)プロジェクトがある。中国はこの他さらにERG社やTiger Resources社に対しても深く関与していく可能性が高い。ただし、これらの開発案件の進展はインフラ整備状況に大きく左右される。

表2.DRコンゴにおける中国が関係する主なプロジェクト

(単位千t)

表2.DRコンゴにおける中国が関係する主なプロジェクト

(JOGMEC作成)

1.3.中国の権益確保の手法

中国は色々な方法でDRコンゴでの鉱業案件に関与している。ここでは①中国企業が100%運営するプロジェクト、②既存のプロジェクト権益買収、③海外企業買収及び④小規模採掘業者から鉱石の買い付けなど4つのタイプに整理して説明をする。なお、④小規模採掘業者からの買い付け(コバルト)については次回紹介する。

はじめに中国がアフリカに進出してきた背景を簡単に紹介したい。東西冷戦終結後、中国は日本のアフリカ援助政策であるTICADに対抗し2000年に第1回Forum on China–Africa Cooperation(FOCAC)を開催した。このフォーラムの主な目的のひとつは政府主導の援助等を介して中国によるアフリカの資源確保を推進することである。そして2006年に北京で開かれた同フォーラムで対アフリカ投資促進のための追加融資を提供するため、中国アフリカ開発基金(CADF)の設立を決定し、同基金は2007年3月14日発足した。中国はこれを背景に内戦終結直後で投資を必要としたDRコンゴに援助という形で進出を始めた。これが政府や大企業レベルでの活動である。その後中国商工業銀行(ICBC)が南アのStandard Bank Group Ltd.株の20%を購入するなど中国による投資環境はさらに整っていった。一方、小規模鉱業で生産を続けていたコバルト業界には中小の中国人業者が参入してきた。

このように中国側の投資環境が整い多くの案件が進められた。その中で金川集団が13億C$で買収したMETOREX案件は、実際には5億C$程度の価値しかなく、国営企業によるプロジェクト評価の甘さが招いた失敗のケースとして指摘されている。

1)中国企業100%運営タイプ

SICOMINESプロジェクトが代表例で資本構成は中国側68%、Gecamines32%のプロジェクトである。中国輸出入銀行(EXIM)からの融資を受けて中国鉄建股份有限公司と中国水電建設集団が運営している。中国側がインフラ関連で60億US$、鉱山開発関連で30億US$の融資を行いDRコンゴ側は鉱山収益でこれを返済するシステムである。タイド援助であるため上記2社が工事の全てを請け負うことになる。IMFから、開発する鉱山の規模に対してプロジェクトの融資額が大きすぎると指摘され現在の規模に修正された経緯がある。Dima(Dikuluwe)鉱床とMashamba West鉱床を開発し当初年産5万t、最終的には40万tを計画している。2016年にカソード銅44,000tを生産した。

2)プロジェクト権益買収タイプ

Tenke Fungurume鉱山、Kaloa-Kakulaプロジェクトなどがある。

Tenke Fungurume鉱山は1970年代日系企業がAnglo Americanとともに開発に関与したことがある案件で長い間塩漬けとなっていた。2000年に入りLundin社、BHP、Phelps Dodge社がオーナーとなり2009年にFreeport-McMoRan社他が生産を開始した。2016年China Molybdenum社が権益の56%、2017年BHR社(中国の投資会社)が24%を取得し現在に至っている。残りの20%はGecaminesが所有する。埋蔵量は銅2.6%、コバルト0.4%の品位で1億4,400万t。露天掘り鉱山で年産Cu22万t、40年の山命での操業が計画されている。2017年INDABA Mining Conferenceで得た現場担当者の情報によると、①従業員の98%はDRコンゴ人である、②鉱山の所有権がFreeport社からChina molybdenum社に移ったが上部層に少し変化があった他は以前と変わらない、③銅鉱石の品位をさらに向上することを目指しており志気は衰えていないと前向きの姿勢がうかがえた。また、同鉱山は資機材をフィンランドなどから調達しているが、すでに中国企業からの販売アプローチがある。

3)海外企業買収タイプ

中国企業が海外企業を買収することでDRコンゴの鉱業権益を得た例としてはAnvil Mining社、METOREX社などが挙げられる。

中国五鉱集団公司はAnvil Mining社を買収しKinsevere銅鉱山、Mutoshi銅コバルトプロジェクト、Mawson West鉱山(28%)、Dikulushi銅銀鉱山の権益を得た。

金川集団は南アのMETOREX社を買収することでRuashi Mining社(Cu 38千t、Co 4.4千t)、Musonoiプロジェクト(Cu 31千t、Co 10千t)、Kinsendaプロジェクト(Cu 20千t)の生産能力を獲得した。前述のとおりこの買収は13億C$で行われたが5億C$程度の価値しかないと指摘されている。

1.4.DRコンゴ政府と中国の関係

1)内戦終結後すぐの中国参入

中国は内戦終結後大挙してDRコンゴに乗り込んでいる。この動きはDRコンゴだけでなく資源豊富なアフリカ諸国、例えばアンゴラなど他の国でも同様に見られる。中国の援助によるインフラ工事は資源を担保とした融資で、いわゆるタイド援助の形で実施される。このため、融資した金額の多くが中国の建設関連企業にわたり、地元に落とされる金額は少なくなる。更に工事の際に搬入された建設重機は近隣で再利用できるため、その後の同様な入札競争に極めて有利に働く。中国はこのシステムをうまく活用し土木工事を破格な価格で落札しアフリカ各地を席巻していると言われている。

このような活動では政府と密接な関係にあることが事業を進める上で有利となる。特に大統領が直接関与した包括的な合意が結ばれており、中国企業が容易にプロジェクトに投資・進出できる環境にある。

2)軍需企業の関与

密接な関係の例としてChina North Industries Corporatio(CNGC社。いわゆるNorinco。)とのつながりが挙げられる。Norincoは軍需企業で、NorincoのWebサイト英語版には「develop and manufacture weapons and military equipment」と記載されている。またInternational Peace Information Service (IPIS) & Omega Research Foundationのレポート「Working paper 2 China North Industries Corporation」によると、Type 56 85mm field gun、Type 82 130mm multiple-launch rocket systemなど武器をDRコンゴに輸出していると記載されている。現地の複数の情報によると、カビラ大統領は2つの鉱業案件を担保に武器を購入しており、武器の購入は複数回にわたり、債務返済が無いまま要請が続けられCNGC社は一度は武器の追加購入を拒否したものの現在でも関係を継続しているという。

CNGC社の鉱業関係子会社であるWanbao Mining Company Ltd.(万宝矿产有限公司)はDRコンゴではFeza Mining sprl、Kambove Mining sprlが、またジンバブエではGlobal Platinum Resourcesが孫会社として活動している。今回情報交換をしたManagem社はKolwezi周辺のPunpiプロジェクトでWambao社の下請けをしている。

IPISの同レポートによると、同社はミャンマーでもMonywaプロジェクトを運営している。

3)DRコンゴ政権交代

カビラ大統領は2016年12月19日、憲法規定2期の在任制限を迎えたが予定の総選挙実施を拒否し政権を保持している。有権者登録名簿の更新が終わる2017年末までには選挙を実施するとしているが、準備に進捗がないことから再び与野党間の緊張が高まっている。以来DRコンゴでは反政府武装勢力と政府軍の間で衝突が相次いでいる。

2018年に政権交代が起きた場合でもDRコンゴは外国資本、特に中国が必要であることに変わりは無く路線は踏襲されると言われている。また、中国側も政権安定後大挙して乗り込み、すでに多くの投資をしているため逃げられない状態である。次期大統領として、Kasai地域出身で民主社会進歩連合(UDPS)党首であった故Étienne Tshisekedi氏の息子Tshisekidi氏と元カタンガ州知事で再建民主人民党(PPRT)党首であったKatanga地域出身のMoise Chapweの二人が有力な候補となっていたが、Tshisekidi氏は本年1月に療養中のベルギーで亡くなっている。

2.現地インタビューから垣間見えたDRコンゴの現況

2.1.DRコンゴ政権への市民感情

現地在住の企業関係者によれば、大統領の任期切れに伴う大統領選が延期されているにも係わらず、ジョセフ・カビラ大統領は依然として強い権限を有しているとのことである。

DRコンゴMining Week –Expo & Conference-でも政府の鉱業法改正案に対して多くの反対意見が出ていた。活発な議論が行われているように見えるが、その後何かをするという段階になると、恐らく何もしないだろうという見解もあった。DRコンゴ人は良くて言ったことの50%程度しか実行しないという意見もあった。

なお、大統領が軍を掌握しているので、小規模な暴動などがDRコンゴで発生していても、本格的な戦争状態にはならないというのが現地在住の企業関係者の見方である。

2.2.DRコンゴの投資環境

DRコンゴの投資環境は、少しずつだが外国投資家にとって良くなってきているようだ。というのは、DRコンゴの経済は、鉱物資源などの輸出に頼るところが大きく、外国からの投資を呼び込むために法令順守、事業の透明性の確保など外国企業が投資環境としての適切さを判断するさまざまな投資環境要因を無視する事が出来ないからだ。しかしながら、DRコンゴも他の国同様、政府関係機関等との業務の進め方を熟知していないとDRコンゴでビジネスを行うことは難しいと言う印象がある。

今回情報交換した企業関係者やコンサルティング等は自分たちが如何に長くDRコンゴで事業を展開し政府や関連機関との強い関係を構築しているかをアピールしていたが、そこからは関係者との強いコネクションがDRコンゴでプロジェクトを展開するのに必要だという事が伺える。

長くDRコンゴでビジネスを行っている企業関係者によれば、彼も当初は政府関係機関等にビジネス関連の届出等を直接出向いて行っていた。しかし、物事は動かなかったようである。ここでは、1人の信頼できるDRコンゴ人を仲介役として、各関連機関との交渉等を行わないと物事は進まないとのことである。

DRコンゴに限ったことではないことはもちろんだが、投資等に関する法律など整備されているとしても、それに従っただけではDRコンゴでの事業を実施していくのは難しいだろう。

2.3.益々増える中国人

もともとDRコンゴは、1908年から1960年までベルギーの植民地であったこともあり、今もDRコンゴにベルギー人は6,000人が住んでいるという。その中には、ベルギーから移住してきたというより、生まれも育ちもDRコンゴというベルギー人も多くいる。中央アフリカを中心に多角的なビジネスを展開しているベルギー系企業Forrest Group社長のGeorge Arthur Forrest氏もLubumbashiで出生している。DRコンゴでのベルギーによる植民地時代の影響力は大きく、生活様式などもベルギーの影響を受けていると思われる。

他方で、最近は中国人が多くなっている。中国のアフリカ外交による影響と中国国内での生活が行き詰ってアフリカに新天地を求めて来た者もいる。現在DRコンゴには2~3万人、あるいは4万人の中国人が居住しているようである。

中国のアフリカ外交など衰えない中、今後もDRコンゴでの中国企業、中国人の進出は進むと思われる。

2.4.Lubumbashi市内について

Lubumbashiを中心として地域の治安環境については、リスクマネジメント関連企業の情報によるとDRコンゴの他の地域と比較して全般的に安全ということであった。特にHaut-Katanga州を中心とした銅とコバルトの鉱業プロジェクトが集中している地域については、政府が積極的に安全を確保しようとしているため、軍隊や警察がよく機能しているという。また、鉱業エリアに至れば、その内にいる限りは安全に生活ができる。しかしながら、鉱業エリアから離れれば離れるほど、危険は大きくなる。

すりや引ったくりなどの軽微な犯罪について注意を払う必要はあるが、Lubumbashiで生活している外国人に聞いても、特に身の危険を感じて生活していると言うわけではないようだ。しかしながら、ラジオで常に治安情報を常に確認しており、例えば市内中心部で暴動が発生しそうな時など今日は外に出るなといった警告がなされているようだ。そのような場合、Lubumbashi在住の企業関係者は外に出ないようにしているとのことであった。

ただし、Lubumbashi市内でも市の中心部の人が多いところになると、DRコンゴ政府の案内人でさえカメラの撮影やカメラそのものを周囲に見せない方が良いと指摘する等、安全に対する注意の必要がある。

写真1.Lubumbashi市内の様子

おわりに

鉱物資源開発では地下にある資源はもとより“地上環境”すなわち政情やインフラも重要であることは言うもでもない。DRコンゴは銅の供給国として益々重要となりつつあるが未だ政情もインフラも十分な環境にあるとはいえない。同国における中国の活動はかなり活発であり政府機関との関係も親密なものになっている。そしてその関係は更に強化・継続されると思われる。年末に予定される選挙とDRコンゴの政情に注目する必要がある。なお、鉱産物の生産に不可欠なインフラ整備に関しては次回紹介する。

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