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報告書&レポート

2017年11月10日 調査部 北良行
17-28

中国の銅資源確保とDRコンゴの鉱業について

第3回:運搬ルートと電力供給並びにDRコンゴのコバルト生産

<調査部 北良行 報告>

はじめに

2017年6月 DRコンゴ最大の鉱業地域であるLubumbashi市でDRC Mining Week -Expo & Conference-が開催された。JOGMECからも2名が参加しDRコンゴでの銅鉱業関連情報収集を行った。第1回はMining ConferenceとKamoa銅鉱山プロジェクト視察について報告した。また、第2回は展示会その他の機会に収集した情報並びにDRコンゴにおける中国の銅関連鉱業での活動とDRコンゴ政府との関係について報告した。第3回目となる今回は鉱業に重要なインフラとなる鉱産物の運搬ルートと電力供給並びにDRコンゴのコバルトについて報告する。

1.DRコンゴからの鉱石運搬

DRコンゴのKatanga地域から鉱産物を搬送するルートとしては、DRコンゴの南部からザンビア、ジンバブエを通過して南アフリカのDurbanに至るNorth-South Corridor、アンゴラのLobitoに至るWestern Rail Corridor、タンザニアのDar Es Salaamに至るTazara Corridor、ナミビアのWalvis Bayに至るルートがある。現在、Katanga地域からの鉱産物の積み出しはDurban港までの3,500kmをトラック・鉄道輸送するか、又はDar Es Salaam港までトラック輸送するのが主流である。これらの輸送路を利用するには経済的負担が大きく国際競争での足枷となっている。Lobitoへの鉄道ルートはアンゴラ側が開通しているがDRコンゴ側は未整備である。図1にNorth-South Corridorの模式ダイアグラムを示す。

図1.North-South Corridorの模式ダイアグラム

図1.North-South Corridorの模式ダイアグラム

出典:OreWin社Kamoa-Kakula Project調査報告書2017

現在再整備が注目されているのはアンゴラのLobitoに至るWestern Rail Corridorである。図2にBenguela鉄道の位置をしめす。このルートでは、アンゴラ中部Lobito港と内陸部を結ぶBenguela鉄道がDRコンゴのKatanga州国境まで延伸され、2013年11月7日に運行を開始した。同鉄道(1,300km)は1922年に建設されたが、アンゴラ内戦激化に伴う施設破壊により1984年から運行が休止していた。内戦終結後、アンゴラ政府が中国の融資により20億US$を投資し、中国中鉄(China Railway Group)が工事を請け負った。新しく整備されたDRコンゴの国境Dilolo/LulaとLobito間の鉄道は年間20Mtの輸送能力があるといわれる。同鉄道はアンゴラ内陸部の開発のみならず、さらに南東部のDRコンゴやザンビアからの新たな鉱石積み出しルートとして期待が高い。しかし、Benguela鉄道に接続するDRコンゴ側Katanga州内では現在軽量の車両しか運行する事ができない。しかも所々寸断され、状態が良くないため正常運行には大規模な修繕が必要である。世銀による280百万US$の支援とDRコンゴ政府による200百万US$の自己負担で整備される予定であったが、DRコンゴ政府負担分の原資予定であった中国援助が見直され資金拠出できなくなった。このためDRコンゴ政府は民間資金で200百万US$を調達すべく出資者を募っている。一方、運行主体となるDRコンゴ国営鉄道会社(SNCC:Société Nationale des Chemins de Fer du Congo)には225百万US$の負債が重くのしかっており財政の健全化が喫緊の課題となっている。現地情報ではSNCCの負債はすでに300万ドルに達する。以下のような複数の現地情報から察し、正常な運行にいたるには多難な問題が蓄積している。

・DRコンゴ国内の鉄道は国境からKolweziまで170kmほどある。線路は一応敷設されているが所々通行できない。SNCCは多額の負債があり運営が成り立っていない。10年間賃金支払の遅滞が常態化しており労働者は仕事に身が入らない。更に、従業員が鉄道建設資材を盗みザンビア等へ売却しているともいわれている。

・アンゴラ側の線路は1,300kmほどあるものの正常に運行されているとは言えない。14か所の検問所があり、都度種々の理由で金銭の支払いを要求される。検問所は金曜日の午後から休みとなり月曜日まで貨物がとまる。極端な場合、職員は私用で職場を離れることもある。問題は小さく見えるが、積み重なると大きくなっている。結局(国境から)ロビトまで荷が到着するには2週間はかかる。

図2.Western Rail Corridor

図2.Western Rail Corridor

出典:OreWin社Kamoa-Kakula Project調査報告書2017

2.DRコンゴの電力問題

2.1.現状

世銀によればDRコンゴの水力発電ポテンシャルは中国及びロシアに続く3位に位置する。しかし90%が未開発で6,500万人が電気のない生活を余儀なくされている。このため鉱業界でも電力不足はDRコンゴの重大な問題となっている。

DRコンゴの主な発電ユニットはINGAⅠ(1972年に完成351MW)、INGAⅡ(1982年完成1,424MW)で合計1,755MWの発電能力を持つ。しかし、現在その半分しか稼働していないといわれる。DRコンゴ内の銅鉱山だけでおよそ750MWの需要があり鉱業生産量にも大きな足枷となっている。

この国で電力開発が進まない第一の理由は開発資金が無いことであるが、SNEL(LA SOCIETE NATIONALE D’ELECTRICITE,国営電力会社)によると電気公定料金が0.06USD/kWhと極めて低く設定されており、生産コストはおろか修繕費などにも事欠く状態で、投資意欲がわかないことも原因の一つという。このためこの地域では必要な電気は当面自己調達する必要がある。

2.2.対応策

慢性化する電力不足対策としては以下のようなことが考えられる。

  1. 1)国家プロジェクト
  2. 2)外国からの電力購入
  3. 3)ディーゼル自家発電
  4. 4)新たな水力発電の自己建設、既存の設備修繕への投資

1)国家プロジェクト

DRコンゴにはGrand Inga開発計画といわれる大構想がある。全体で7フェーズからなり総予算額は800億US$、総発電能力は40,000MWとなる。これは世界最大の水力発電所中国三峡ダム22,500MWを大きく凌ぐ。INGAⅢはGrand Inga開発計画の第1ステージで4,800WMの規模がある。このプロジェクトは民生用1,000MW、鉱業用1,300MW、南ア輸出用として2,500MWの配分が想定されている(南アからの資金提供の見返り)。しかし、プロジェクトは遅々として進まず、いまだ建設は始まっていない。従ってDRコンゴには政府が進める電力開発マスタープランが機能していない状態といえる。図3にIngaダムの位置を、図4にGrand Inga開発計画の各ステージを示す。

図3.Ingaダムの位置

図3.Ingaダムの位置

出典:OreWin社Kamoa-Kakula Project調査報告書2017

図4.Grand Inga開発計画の各ステージ

図4.Grand Inga開発計画の各ステージ

出典:OreWin社Kamoa-Kakula Project調査報告書2017

2)外国からの電力購入

①ザンビアから

DRコンゴは国の公定料金のほぼ2倍でザンビアから100MWの供給を受けている。ザンビアには4つの水力発電所と1つの石炭発電所があり2,400MWの発電能力を持っている。ザンビア国内では50~60%が鉱業で使用されるという。2014年、2015年は水不足で発電に支障があったが2016年は順調に回復した。しかし未だ自国内の鉱山への電力供給も不安定である。現在300MWの能力を持つ石炭火力発電所Maambaが2020年には600MWに拡張となる計画でDRコンゴへより多くの電力供給ができる可能性がある(ZCCM職員談)。

②南アEskom

南アEskomはDRコンゴと500MWの電力供給の契約を進めている。しかし、南アからDRコンゴまでの送電設備が整っていないため、まず200MWで開始することを検討する模様。南アからはジンバブエのZESA社(Zimbabwe Electricity Supply Authority)、Zesco社(Zambia Electricity Supply Corp)並びにザンビアのCopperbelt Energy社などの配電網を介してDRコンゴに配電される。Copperbelt Energy社は既存の配電網に200MWを加えるのは困難だとしている。DRコンゴ国内でも200MWを受け入れるためにはInga、Kolweziなどの電力基地とSNELの配電網を修繕する必要がある。

3)ディーゼル自家発電

GlencoreのMutanda鉱山、中国五鉱集団公司関連で不足分補給のため実施されている。月によっては300万US$ほどかかり1,000US$/tの生産コスト加算となるという。

4)新たな水力発電の自己建設、既存の設備修繕への投資

①Glencore社はFleurette社と3.6億US$を投じて既存のInga水力発電所(出力1,424MW)の2つのタービンと送電網の改修工事を行う。発電施設の改修作業と引き換えに、電力の連続供給が保証され、費用のうち2億6,180万US$は電気料金請求から回収の予定。

図5.DRコンゴ内の水力発電所位置

図5.DRコンゴ内の水力発電所位置

出典:OreWin社Kamoa-Kakula Project調査報告書2017

②Ivanhoe社とSNELは、SNELがKatanga地域に所有する4発電所のうち3発電所Mwadingusha、Koni並びにNzilo 1の修繕事業にIvanhoeが資金手当を行い、その引き替えにIvanhoe社は電力供給を受けることで合意した。MwadingushaとKoni発電所は113MWの能力がありこの内Kamoa-Kakulaプロジェクトには100MWが供給される。Nzilo 1は108MWの能力で100MWが供給されその他合わせて220MWが供給され30万tの銅生産の必要な電力が確保される。

③中国のSinohydro and China Railway Groupによる資金手当でKatangaのBusanga Stations(240MW)、Sonbwe Station(130MW)の発電所建設計画がある。

3.DRコンゴにおけるコバルト生産

コバルトはGlencore、Vale、Norilsk社、Sherritt社、Freeport社などが生産している。最大手のGlencoreは世界の供給の1/3を賄っているがその2/3はDRコンゴでの生産である。世界全体でもDRコンゴがコバルト鉱石の64%を供給している。なお、金属コバルトの57%は中国で生産されている。

USGSによるとDRコンゴは世界一のコバルト生産国で2016年には全世界の半分以上に当たる66,000tを生産した(表1)。DRコンゴのコバルト生産はTenke Fungrume鉱山とMutanda鉱山(Glencore)が最大で、多くは銅鉱山の副産物として産する。そのほか小規模採掘業者からの生産がある。

表1.世界のコバルト生産量と埋蔵量(USGより)

DRコンゴの鉱業はかつてGECAMINESが支配していたが、現在は種々多彩な企業が関わってその規模も幅広くなった。1990年代にGECAMINESが破綻して以来、コバルトでは鉱山労働者たちによる手掘り採掘が始まり彼らの生業として定着していた。第二次コンゴ内戦(1998~2003年)中、カビラ大統領が政府による鉱業再興が困難であると判断し労働者たちの自主的な手掘り採掘を奨励したため、小規模採掘はさらに拡大していった。この活動に中国人が関わるようになった。現在では小規模採掘鉱業活動はコバルト生産の10%を占めると推測されている。DRコンゴ政府の調査ではカタンガには11万人の常時小規模採掘業者がおり、季節的には15万人にもなるという(Amnesty International)。

DRコンゴのコバルト生産・搬出は4つのルートに整理される。
最大の生産はコバルトを含むSxEw沈殿物をフィンランド等に送るルートである。Tenke Fungrume鉱山、Mutanda鉱山やその他の企業が実施している。2つ目は沈殿物をザンビアに送るルートである。EGR社はザンビアにChambishi精錬所を有している。

更に、3つ目のルートとして小規模鉱業活動者らが手選された鉱石を買い集め、半加工して南アもしくはタンザニア経由で中国に送るルートがある。地元情報ではコバルト採掘には500社程の中間業者がいる。これら業者らから鉱石を回収している中国のコバルト企業としてMetal Mine社(寒鋭)、MJM社(径遠・人遍)、CDM社(華友)が知られている。

Metal Mine社(寒鋭)のホームページでは、国家戦略である海外進出を積極的に実行し2007年DRコンゴに鉱業支社を設立、銅・コバルトの開発・加工を開始、韓国、日本、ドイツ、スイス、イスラエル、インド、米国を含む数か国に販売ネットワークを持つと記載されている。

4つ目は小規模採掘業者から手選された鉱石を現地の大手企業が購入し加工する方法である。現地情報では、複数の外国企業は自社銅鉱山から推定される生産量よりはるかに多いコバルトを出荷しているという。なお、SNL情報ではDRコンゴでコバルトを主とした生産企業としてOM Group Inc、Eurasian Resources Group、Cape Lambert Resources Limited、Katanga Mining Limited、Zhejiang Huayou Cobalt Co.Ltd(華友)、Prairie International Ltd、Managem Société Anonymeなどをリストしている。

上記4ルートのうち小規模採掘関連業者の生産でDRコンゴのコバルト生産の10% 7,000tほどを占める。そのうち3,500tは児童労働がらみの生産といわれDRコンゴ生産量の5%に達する(Amnesty International)。

おわりに

今回の訪問では久しぶりにかつてのアフリカにあった光景を思い出すことになった。ホテルからKamoaプロジェクトまでの移動で利用したLubumbashi空港では検査官が搭乗者一人ずつの名前と不必要そうな事項を淡々と大学ノートに書き込む作業が続く。我々30人分の作業を終わらせるまで小一時間はかかった。最終日DRコンゴからの帰途同空港国際線ターミナルに入ってから搭乗するまでの手続きでも、何度となく荷物検査があり、検査官から所持品の提供を所望される。私の前の婦人はブランド品サングラスを取られた。幸い私は会議でもらったボールペンを提供するのみで済んだ。30年も昔にはアフリカの地方空港ではよくあることだった。

写真1.幹線道路脇の市民市場

写真1.幹線道路脇の市民市場

Kolweziの街には騒然とした露天市場が至る所に残っていた。市場には付近で収穫した野菜や粗悪な日用品などが並んでいる。市場に通じる道沿いには、真っ黒な薪炭を山のように積んだ使い古された自転車を押す現地人が市場を目指して移動している。こちらも数十年前にアフリカでよく見かけた光景である。

中国を中心とした資源開発が引き金となり国民全体の生活レベルが向上することが期待されるが、以上のような光景を見るとそれにはしばらく時間がかかりそうな気がした。

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