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報告書&レポート

2018年1月10日 調査部 金属資源調査課
18-01

2017年 金属鉱物資源をめぐる動向

<調査部 金属資源調査課 報告>

はじめに

世界の金属鉱業界全般にとって2017年は、米・中経済の先行き懸念等から一時は低迷したものの、年央以降は底堅い需要を背景に回復基調を辿った年であった。また、自動車業界のEV化進展への期待から関連資源の需要増加見通しが声高に叫ばれた年でもあった。JOGMEC調査部では、2017年の金属鉱物資源分野における主な出来事を振り返り、その動向を以下のとおり取りまとめた。

◆資源価格、ベースメタルは回復基調、プラチナとパラジウムの価格が16年ぶりに逆転

2017年の資源価格は、米国や中国の経済動向が市況全般に影響を与え、年初は米国トランプ政権や中国経済への期待感からベースメタル価格は全般に上昇した。その後は、米中経済の先行き懸念等から下落傾向を辿ったものの、年央からは中国経済に対する期待感や同国環境規制による供給不足見通し等から再度上昇傾向へと転じた。銅は12月28日に7,216.0US$/t(2014年2月19日以来高値)、鉛は12月18日に2,586.5US$/t(2011年8月1日以来高値)、ニッケルは11月6日に12,830.0US$(2015年8月16日以来高値)と2017年の最高値を付け、亜鉛に至っては10月4日に3,370.0US$/t(2007年8月3日以来高値)と記録的な高値を付けた。

個別にみると、銅はインドネシアGrasberg鉱山での輸出禁止に伴う減産示唆・ストライキ懸念(1月)、チリEscondida鉱山での長期ストライキ(2月)、ペルーCuajone銅鉱山、Toquepala銅鉱山でのストライキ(2月)、中国の銅スクラップ輸入規制(7月以降)やLME在庫の減少などが価格を押し上げる要因となった。鉛・亜鉛は、供給不足懸念に加えLME倉庫でのキャンセルワラント増加や在庫減少を受け価格が高騰した。ニッケルは、フィリピン天然資源省による国内鉱山の閉鎖・操業一時停止、同国環境規制等の影響による生産減(8月)、EV向け需要拡大への期待感(11月Tafigura社の硫酸ニッケル需要見通し等)、冬季の中国の電力・エネルギー不足によるニッケル銑鉄生産減少によるステンレス原料供給ひっ迫懸念(11月)などが価格上昇の要因となった。

貴金属市場においては、金は緩やかな上昇を見せたものの、プラチナは横ばい若しくは下落傾向を辿り、9月以降は年初より低い価格で推移した。これに対してパラジウムは、1年間を通して価格が上昇した。

ディーゼル車の排ガス触媒向けとして使用されるプラチナは、欧州市場での環境規制によるディーゼル車の需要減退見通しから価格は低迷した。一方、ガソリン車の排ガス触媒向けとして使用されるパラジウムは、ガソリン車の需要好調により価格が高騰した。この傾向により9月28日には、これまで割安とされてきたパラジウム価格がプラチナ価格を上回り、12月28日には1,072.5US$/oz(AM/PM平均価格)に達し、2001年2月7日以来の記録的高値となった。

安全資産としての投資先ともなる貴金属は、ドル為替変動の影響を受けるだけでなく、米国政府・経済の先行き、シリア・北朝鮮情勢の緊迫化等の地政学的リスクの影響を度々受けることとなった。

表1.2017年ベースメタルLME(セツルメント)価格概要(US$/t)
年初価格 12月21日時点価格 最高値 最安値
5,574.0 6,970.0 7,216.0
(12月28日)
5,466.0
(5月18日)
2,007.0 2,491.0 2,586.5
(12月18日)
2,007.0
(1月3日)
亜鉛 2,552.0 3,223.0 3,370.0
(10月14日)
2,434.5
(6月7日)
ニッケル 10,205.0 12,000.0 12,830.0
(11月6日)
8,715.0
(6月2日)
表2.2017年貴金属LBMA(AM/PM平均価格)価格概要(US$/oz)
年初価格 12月21日時点価格 最高値 最安値
1,149.83 1,265.20 1,348.58
(9月8日)
1,149.83
(1月3日)
プラチナ 917.5 915.5 1,029.5
(2月27日)
877.0
(12月13日)
パラジウム 695.0 1,031.0 1,072.5
(12月28日)
695.0
(1月3日)
図1.2017年ベースメタル(LME)・貴金属(LBMA)月平均価格の指標推移

図1.2017年ベースメタル(LME)・貴金属(LBMA)月平均価格の指標推移

(2017年1月=1.00)

◆ インドネシア 鉱石輸出再開

2017年1月、インドネシア政府は政令No.1/2017やエネルギー鉱物資源大臣令No.5/2017等一連の政省令を発布し、これにより、2014年1月以降輸出が禁止されていた鉱石のうち、品位1.7%未満のニッケル鉱石、及び洗浄工程を経た品位42%以上のボーキサイト鉱石について、輸出が許可された。また銅精鉱の輸出も2022年1月まで継続できることとなった。なお、これらの輸出に際しては、CoW(鉱業契約)からIUPK(特別鉱業許可)への移行、国内製錬所建設、輸出税の支払い、国内処理義務量の充足などが義務付けられる。

これら政省令の改正・公布・施行により、CoWからIUPKへの移行に関して、PT Freeport Indonesiaとインドネシア政府との鉱業契約の改定交渉が本格化した。2017年8月末の共同記者会見では、CoWからIUPKへの移行に合意がなされたことが発表され、移行後直ちに2031年までの延長申請が可能であり、2041年までの延長も前倒しで交渉が可能であるとされた。また、国内製錬所は5年以内に建設されることや、株式の51%をインドネシア資本に売却することも同時に発表された。しかしながら、株式売却方法・時期・金額等の具体的な手続きについては、依然として交渉が継続している。

なお日本への影響については、本政省令は発布されたものの、2017年11月時点でインドネシア産ニッケル鉱石の日本への輸入はゼロである。銅鉱石の輸入については、Grasberg銅鉱山の操業をめぐる混乱を受けたものとみられ、2017年1~11月の累計輸入量は前年同期比39.7%減となっている。

◆ フィリピン 鉱山操業停止命令や露天掘り採掘禁止令の発布

フィリピンでは、2016年5月にDuterte大統領が就任し、環境天然資源大臣に環境活動家として知られるLopez氏が任命されて以降、フィリピン全土の鉱山に関して監査実施が通告され、新規鉱山プロジェクトのモラトリアムが実施された。本監査では、各鉱山において鉱業法及び関連規則の順守がなされているかどうかの審査が行われた。

2017年2月に本監査の最終的な監査結果が発表され、23鉱山が閉鎖命令を受け、5鉱山が操業一時停止命令を受けることとなった。監査結果や処分の内容については、透明性・妥当性に欠けるとの批判が鉱業界から挙がる中、Lopez氏は4月末に国内の露天掘り採掘を禁止。その翌月、フィリピン閣僚の資格を審査する任命委員会がLopez氏を不承認としたことで同氏は失職し、Cimatu氏が環境天然資源大臣に就任した。

フィリピン鉱業調整協議会は2017年10月、露天掘り採掘禁止令について内閣に撤回勧告を行ったものの、Duterte大統領がこれを拒否。これに伴い、フィリピンの露天掘り採掘禁止令は存続することとなった。

◆ EV化進展により使用素材金属(Co, Li, Ni)の価格に影響

前述のとおり、2017年は資源全般で価格上昇が見られたが、その中でもリチウムイオン電池に使用される素材の価格上昇は格別であった。

電解質や正極材料となるリチウムは6月より価格上昇の速度を速め、最高値は年初比5割高まで達し、その後値を戻すも依然として年初比3割高以上の価格レベルを維持。正極材料のコバルトに至っては2月単月で3割以上の価格急騰を記録、その後も程度は弱まるも上昇傾向は継続し、年初の倍以上の価格レベルに到達した。

この背景には、二酸化炭素の排出削減を推進する世界的な潮流の元、ディーゼルエンジンの排気ガス規制に関する不正発覚によるディーゼル車離れに加え、自動車販売の主要市場である①英仏両国の2040年までの内燃機関車の販売禁止、②中国の2019年からの一定量の新エネルギー車の製造・販売の義務付けが相次いで発表されたことがある。EVへのシフトが加速、各国の主要自動車メーカーが軒並みEVの販売比率拡大や販売台数目標を発表している状況である。リチウムイオン電池はEV用電池として現状及び今後少なくとも近い将来は主流であり続けると想定されているため、その素材であるこれらの鉱種に、これまで以上の関心が集まった結果と考えられる。

なお、同じく正極材料となるニッケルも上記リチウムやコバルトの様な一本調子ではないものの細かい高下を繰り返しながら緩やかに上昇。11月には2年振りに12,000US$/tを超えるレベルで推移している。

◆ 世界初、海底熱水鉱床の連続揚鉱に成功

経済産業省及びJOGMECは、沖縄近海において、海底約1,600mの海底熱水鉱床を掘削・集鉱し、水中ポンプで海水とともに連続的に洋上に揚げることに世界で初めて成功した。

沖縄近海等に分布する海底熱水鉱床は、わが国固有の資源であり、鉱物資源の大部分を海外に依存している我が国とって、新たな鉱物資源の国内供給源として期待されており、この試験の成功は海洋鉱物資源開発に必要となる技術の確立に向けた大きな一歩となる。

本試験では事前に試験サイトの地形や環境の特性を調査し、周辺環境への深刻な影響が生じないことを確認した上で、試験機で掘削・破砕・集鉱(吸引)した鉱石を水中ポンプ及び揚鉱管を用いて海底から洋上まで連続的に揚鉱し、一連のシステムの技術的検証やデータの取得を行った。

今後は採鉱・揚鉱技術に係る商業化に向けた課題を抽出し、平成30年度に本試験成果の他、資源量評価、環境調査等の調査結果を踏まえて経済性検討を含めた総合評価を行い、海底熱水鉱床の商業化に向けた取組を総合的に推進していく予定。

◆ JOGMEC、南アフリカ共和国ウォーターバーグ白金族プロジェクト、開発に向け前進

JOGMECは、本年10月、南アフリカ共和国ブッシュフェルド地域北部で、カナダのPTM社と共同で実施するウォーターバーグ白金族金属JVプロジェクトにおいて、白金族金属生産大手のインパラ・プラチナム社と提携したことを発表した。

JOGMECは2011年11月にこの地域で初めて白金族金属鉱床を発見。2016年11月には、良好な評価を得たプレ・フィージビリティ・スタディの結果を発表した。今回、新たに開発パートナーとして、南アフリカ白金族金属生産量第2位のインパラ・プラチナム社を迎え入れ、本プロジェクトを推進していくこととした。同社の参画により、南アフリカにおける鉱山操業の豊富なノウハウと、地金への精錬能力が本プロジェクトに付加され、開発に向けさらに前進することとなった。同社の参入完了後、同社がプロジェクトのオペレーターを担うこととなる。

本プロジェクトは現在、最終フィージビリティ・スタディの実施に伴い鉱量計算の確度を高めるための追加試錐を実施中であり、今後は採掘法や鉱石処理法、社会環境対策、インフラ施設、経済性などの定量評価を加速させる。

また、JOGMECは本プロジェクトからインパラ社が生産する地金の購入権を確保しており、これは将来の日本の白金族金属の安定供給に資するものとなる。

◆ 資源メジャー各社の動向

2017年に入っても資源メジャー各社は、いずれも2016年までの支出抑制/財務改善優先路線を引き続き踏襲。Rio Tintoは豪州の石炭子会社Coal & Allied社を中国国営の兗州煤業社の在豪子会社であるYancoal Australia社へ売却すると発表した(1月)。Anglo Americanも豪州のMoranbah North原料炭炭鉱の売却交渉を継続するも買収候補者と条件が折り合わないでいたところ、前年11月の米国大統領選挙後の資源価格の上昇傾向への反転の影響もあってか、2月にはリストラのためのこれ以上の資産売却は不要とMark Cutifani CEOが宣言、同炭鉱も継続保有することに方針転換した。Valeのみ、一部ニッケル資産の売却を模索中にて現在に至り緊縮体制を継続している感があるが、BHPは豪州のOlympic Dam銅・ウラン鉱山の拡張(6月)及び同じく豪州のSouth Flank鉄鉱石プロジェクトの開発決定(7月)を相次ぎ発表、GlencoreもDRコンゴのMutanda及びKamotoの両銅・コバルト鉱山の権益買い増し(2月)、豪州のHunter Valley Operations炭鉱への投資(7月)、ペルーの鉛・亜鉛・銀の大手生産者であるVolcan社へのTOB(11月)等を実施した。

注力領域は各社各様なるも、将来に向けた積極的な”攻め”の姿勢への転換が見られ、潮目が変わったことの実感できる一年であった。

おわりに

長らく続いた価格低迷期を脱し、漸く回復基調を辿り始めた感のある金属資源業界ではあるが、海外資源関連各社は引き続き財務改善に努めるとともに、事業の選択と集中を推し進め、事業拡大/推進に舵を切り始めたところと言えよう。一方、長期的な周期で変動を繰り返す資源業界において、中長期的視点に立った対応は金属資源の安定供給上、不可欠である。このような状況下、継続的な資源確保への取り組みが必要であり、JOGMECとしても様々な支援を進めて行く必要があるとともに、調査部においては、2018年も安定供給確保に資する情報提供に引き続き努めて参りたい。

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