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報告書&レポート

2018年2月20日 ロンドン 事務所 吉益英孝・ザボロフスキ真幸
18-05

Mines and Money London 2017参加報告

―鉱業における資金調達の変化と技術的な変化―

<ロンドン事務所 吉益英孝・ザボロフスキ真幸 報告>

はじめに

2017年11月27日から30日にかけて、今年で15回目となるBeacon events主催の「Mines and Money London 2017」が英国ロンドンで開催された。事務局によれば、75か国から約2,000名が参加し、そのうち鉱山会社は253社と昨年より25%増加したとされ、展示ブースは約130社であった。昨年は比較的活気が無かったと言われていたMines and Money Londonだが、2017年は金属価格回復に伴う業界の回復の兆しが見えるとともに、鉱業界の新たな挑戦としてMines and Technologyを同時に開催した。以下、主な講演を抜粋して内容を紹介する。

講演会場(左)と展示会場(左)

講演会場(左)と展示会場(左)

1.鉱業・金属産業のトレンド

(講演者:World Economic Forum、Head of Mining and Metals, Christian Spanoklein氏)

鉱業・金属産業は、マクロ経済、地政学、人口統計学、規制、社会トレンドの影響を受ける。2017年現在、鉱業・金属産業に影響を及ぼしている主要トレンドには以下(表1)のようなものがある。

表1.鉱業・金属産業に影響を及ぼしている主要トレンド
トレンド 牽引役 鉱業・金属産業への影響/課題
グローバル需要 ・緩やかなグローバル経済成長の継続
・都市化の進行及び発展
・地政学的不安定
・エンド・マーケット需要拡大
・資源確保における競争加速
・グローバル経済成長率は、スーパーサイクル程ではないという保守的な見解
・業界成長率は、中期的には緩やかで、より不安定になると予測
産業 ・資源枯渇
・資源確保における競争激化
・鉱物品位の低下
・コスト拡大
・鉱業プロジェクトの減少
・存続能力のある企業の減少
労働力 ・高齢化
・ミレニアム世代
・世界的な技術スキルの差
・テクノロジー技術に長けた若い世代を採用する必要性
・ミレニアム世代を引き込むことができるような産業にする必要性
政府及び社会 ・資源ナショナリズムの増加
・環境規制の増加
・コミュニティ・エンゲージメントといったステークホルダーとの関係性
・メディアからの注目度の高さ
・コスト増加
・透明性を高める必要性

(講演資料より作成)

鉱業・金属産業は、従来からテクノロジー対応、順応が遅かった。その結果、その他の産業(特に消費者産業)と比較するとデジタル利用が低水準となっている。World Economic Forumでは、鉱業・金属産業には2025年までに、①操業自動化、3Dプリントやスマートセンサーの利用といった自動化、ロボット化の加速、②コネクテッド・ワーカー、遠隔操業といった労働力のデジタル化、③企業、プラットフォーム、エコシステムを統合することで鉱山操業におけるサイバーセキュリティの強化、ビッグデータ利用の促進、④AI、先端分析、シミュレーションモデルといった次世代分析及び意思決定サポート、といった4つのテーマが重要となると考えている。業界が考えなければいけないのは、これらのデジタルツールを自社操業、労働力へ適用した時、自社のビジネスモデルはどのような形態になっているかということである。

鉱業・金属産業のリーダーは、今後のビジネスモデルはデジタル戦略に焦点を当てること、既存のビジネスに固執せず他産業を参考にすること、データ取得法を改善させること、雇用だけではなくインフラ開発、スキル開発といったその他の利点に投資していくことで政府及びコミュニティとのパートナーシップを強化していくことを推奨する。また、仕事に価値を求めるミレニアム世代を鉱業セクターに呼び込むことは容易では無いため、鉱業のイメージを改善するために、テクノロジー、イノベーションを通じた労働力のダイバーシティ、多様性が鍵となるだろう。

2.鉱業における資金調達方法の変化

(講演者:Sandstorm Gold社、Nolan Watson氏)

鉱業にとってエクイティ・ファイナンス(新株発行による資金調達)の方法の構造は永続的に変化してしまった。現在鉱業セクターにおけるファイナンス構造は以下の状況となっている。

(1) 資金がアクティブインベスター1からETF、インデックス・ファンドといったパッシブインベスター2へ移行している。Sandstorm Gold社の株式基盤を例にとって考えても明らかだが、2017年の株主構成は約50%が機関投資家、約50%がプライベート及びその他となっている。そのうち、アクティブ及びパッシブの割合をみると、2014年には0%であったパッシブインベスター率が、2015~2017年にかけて増加し、2017年の現在は30%を占めるようになった。これは、同社のみではなく業界を通して起こっていることである。一たび去った30%のアクティブインベスターは戻ってこない。

(2) 鉱業に焦点を当てたブローカー及び銀行家が急速に減少している。技術的な変化が一部理由となり、ブローカーは銀行家より早く減少しているが、銀行家も一部構造変化に伴い減少し始めると考えている。資本調達にエクイティを得るための従来のメカニズムが崩壊してきている。

(3) 資本が、その他のロイヤルティ、ストリーミング3といった資本構造に移行した。大型ファンド、直接ファンド、ペンションファンド、ソブリンファンドの多くは、現在プライベート・エクイティファンドに投資している。貴金属産業のストリーミング及びロイヤルティによる資本調達は全体で2004年に20億US$であったが、2011年には240億US$に拡大し、2017年現在では350億US$にまで拡大し続けている。

鉱業市場は、これまでアクティブインベスター及び機関投資家による多くの株式引き受けを通して資金調達をすることができた。そのため、良いCEOとは(株式の引き受け手である)ブローカー及び銀行家と良い関係を築くことが最重要であったが、それはもはや通用しない。このような形態は変化してしまい、鉱山会社は資金調達法を再考しなくてはならない。

Sandstorm Gold社では、68の鉱山会社を対象に調査を実施した。このうち14社のみ計画通りに生産を開始することができたが、全体のうち79%は資金繰りの困難等で予定通り生産開始をすることができず、予定されていた生産のうち57%が遅延となった。生産が遅延することで、同時にコストも予定以上に拡大する。これまでの資金調達方法からの変化により、今後より多くの鉱山会社は鉱山プロジェクトを進めることが難しくなるだろう。そのために、CEOの役割は、株式発行に頼るのではなく自ら資本を作っていくことができる資金オーガナイザーになる必要がある。従来通りのやり方で資金調達を試みるCEOは、5年後に資金調達が更に厳しくなっていることに気が付くだろう。

Sandstorm Gold社は、鉱山会社に対して、ストリーミング融資を行い、鉱山の将来的な金生産量に関して、生産の何パーセントかを固定価格で購入することを条件に、鉱山会社に対して前払いで金額を支払っている。資金が必要な鉱山会社にとってストリーミングは、借入れによる資金調達よりも低リスクであり、また新株発行による資金調達による株式の希薄化を避けられる、といった利点がある。今後、特にジュニア企業、探鉱会社はストリーミング、ロイヤルティといった形態が増えていくだろう。

3.EUにおける技術開発への取り組み

3-1. EU Raw materials policy and initiatives

(講演者:European Commission、Milan Grohol氏)

EUは2010年ごろからEUにとって供給懸念のある原材料について供給源の確保のための取り組みを行っている。EUの原材料・資源政策としてRaw Materials Initiativeを策定し、非エネルギー、非農業向け資源の供給確保のため、①第三国での資源へのアクセスの競争の場の確保②持続可能な欧州内供給源の育成③資源の効率化とリサイクルを3つの柱とした。

必要不可欠な原材料のうち、特に重要な原材料をCritical Raw Materials(CRM)として選定、リストは2011年に導入され、その後2014年、2017年にアップデートしている。現在は供給懸念がある78の原材料についてFact Sheetが作成・更新され、ウェブ上に公開されており、そのうち“Critical“として2017年には27種が指定された。昨今のEVシフトの動き等もあり注目されているコバルトやレアアースも含まれている。なお、リチウムは資源量が多いことなどを理由にCRMには指定されていない。まずはその資源がどのような状況にあるのかを把握することが供給源の確保のために重要なこととして認識しており、Fact Sheetの作成は情報をできる限り集めて統合しておきたいとの意図がある。EUはCRMの多くを輸入に依存しており、例えばレアアース類などは中国から、タングステンやバナジウムなどをロシアから輸入している。

表2.2017年指定Critical Raw Materials
アンチモン 蛍石 軽希土類 リン
バライト(重晶石) ガリウム マグネシウム スカンジウム
ベリリウム ゲルマニウム 天然黒鉛 金属シリコン
ビスマス ハフニウム 天然ゴム タンタル
ホウ酸塩 ヘリウム ニオブ タングステン
コバルト 重希土類 白金族 バナジウム
原料炭 インジウム リン鉱石  

(講演資料もとに作成)

供給懸念のある原材料は欧州内から調達できることが安全であり、欧州内の資源の潜在力へのアクセスへの取り組み、またフレームワークを立ち上げている。潜在力へのアクセスとして、MINATURA20204、MINELAND5などの取組を行い、欧州内の鉱山開発だけでなく、CRMに貢献する潜在的な製品、サービスも含めた調査を実施している。たとえば、探鉱活動のリアルタイムモニタリングや環境モニタリング、リスク低減技術、閉山対策等が含まれている。フレームワークとしては、MIN-GUIDE(資源政策のガイド)6、MINLEX(法的枠組み)7、MIREU(EU内の鉱業・冶金業のネットワーク)8、REMIX(スマートでグリーンなEU鉱業)9などが作られた。

供給懸念のある原材料の確保の取り組みの一環として、HORIZON 2020の下にEuropean Innovation Partnership on Raw Materialsを2013年に立ち上げた。原材料の確保に資する調査研究・技術開発に対し、民間企業、公的機関、大学、研究機関、NGOなどは資金的な支援が受けられる。EUへの供給に資すればEU外のプロジェクトも対象となる。2014年から2020年に渡って総額6億ユーロの支援額が予定されており、2016年までに2.11億ユーロが40プロジェクトに対して供給されている。

図1.European Innovation Partnership on Raw Materialsによる支援内訳

図1.European Innovation Partnership on Raw Materialsによる支援内訳

(講演資料より作成)

Mining Projectには90百万ユーロが予定され、Intelligent Mining(賢い鉱山開発)、Sustainable Selective Low-Impact Mining(低負荷な鉱山開発)、Exploration and mining in deep sea and flooded mines(深海底鉱山の探査・開発)、Alternative Mining(代替的鉱山開発)が対象として支出される。Processing projectsには45百万ユーロが予定され、Flexible processing technologies(柔軟な選鉱技術)、New metallurgical systems(新冶金システム)、New technologies for the enhanced recovery of by-products(副産物の回収率向上の新技術)が対象として支出される(後述するFAMEプロジェクトも本制度により支援を受けている)。2018年から2020年にかけては、調査よりはイノベーションに比重をおき、CRMへも特に注意を払っていく予定となっている。

3-2. The EU FAME Project – Developing innovative processes to enable the optimal exploration of smaller European deposits

(講演者:FAME Co-ordinator, WAI Research Director, Dr Chris Broadbent氏)

FAMEプロジェクトはFlexible And Mobile Economic Processingの略でHORIZON 2020の下でEuropean Innovation Partnership on Raw Materialsとして7.4百万ユーロの支援を受けた鉱石処理技術開発プロジェクトである。7か国16のパートナーを迎え、2015年よりスタートし、2018年末に完了予定となっている。

対象となるのはEU内で産出されるSkarns、Greisens、Pegmatitesの3種類を母岩とする鉱石で、これにはCRMに指定されている物質の他に、リチウムを含んでいる。リチウムはEV化のトレンドの中で注目されており、CRMではないが重要な鉱物である。3種類の鉱石は複雑な組成をしていることに加え、1鉱山からの産出量が少ないケースが多く、大きな鉱石処理のデザインには適さない場合が多い。本プロジェクトではポルトガル、ドイツ、フィンランドで採取された鉱石を処理技術の研究に使用している。FAMEプロジェクトの目標は、新技術によって市場価値を持った精鉱の生産を効率化し、新規の鉱山開発・投資を促進することにある。

Work Program(WP)は8つの段階に分かれており、WP2で経済的な潜在性について調査を進めるにつれ、本プロジェクトの対象鉱石にはリチウムが多く含まれることがわかり、WP3、WP4で鉱石処理の基礎的なエンジニアリングとリチウムの精鉱の品質向上と副生産物の回収について研究を進めた。WP5としてパイロットテストを実施するまでに至り、電気フラグメンテーションを取り入れるなど、処理に係るエネルギー節約についても配慮した。テストでは4段階の浮選を使用して高リチウム濃度の精鉱にアップグレードすることができた。

次の段階として、市場規模での鉱石処理の適用を目指しており、2018年にはパイロットスケールでのテストを継続し、ポルトガルのFELMICA、ドイツのTELLERHAUSERで行う予定としている。2019年にはEU発のリチウム生産プロジェクトとして期待されているフィンランドKELIBERリチウム鉱山プロジェクトでは実際の生産への適用を予定している。

将来的には小規模の鉱山が多いEU内でも、本プロジェクトで開発した鉱石処理の手法でEUの鉱山開発を刺激し、CRMの供給減の確保に貢献したいと考えている。

おわりに

今年は、鉱業セクターの回復に伴ってか参加者も多く、賑わっている印象を受けた。またテーマも、従来のマクロ、コモディティ、ファイナンス動向に加え、アフリカ諸国、テクノロジー、バッテリー金属、再生可能エネルギー動向等多岐に渡った。自動車のEV化の流れが後押しし、リチウムに関しては、欧州でのリチウム鉱山プロジェクトが今後増えると予測されており、同時に欧州でのバッテリー工場設立も発表が相次いでいる。EU政府としてもリチウム生産に関する支援策を講じており、欧州がバッテリー市場で存在感を示したいという意気込みを感じられた。しかし、パネルディスカッションでも議論されていたが、バッテリー市場は日・中・韓ですでに生産体制が出来上がっており、欧州が注力し始めたところで追いつかないのではという意見も聞かれた。欧州以外の他国でもリチウム生産拡大の機運は高まっており、欧州で実際にどれだけのリチウムプロジェクトが進むかは慎重に見る必要があると感じた。

資金調達の中心地であるロンドンで開催されているカンファレンスだが、Brexit後のロンドンの役割については国際市場であることに変わりは無く、London Stock Exchangeの代替は無いことからメカニズムは代わることは無いと楽観的な見通しであった。

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