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報告書&レポート

2018年3月19日 シドニー 事務所 吉川竜太
18-06

豪WA州ピルバラ地域における礫岩中のナゲット金鉱化について

<シドニー事務所 吉川竜太 報告>

はじめに

2017年7月、カナダのジュニア探鉱企業であるNovo Resources Corp.(以下、「Novo社」)が豪WA州ピルバラ地域において、礫岩の露頭中に金ナゲットが産する状況を市場に報告し、話題となっている。この礫岩層は既存の地質図などに記載のない新しい含金礫岩層であり、同礫岩層の分布が予測される地域のジュニア探鉱企業の活動が活発化したことから、豪メディアは「ピルバラ・ゴールドラッシュ」などと称して報道し、現在も注目を浴びている。本稿では、豪州において新規に広く知られることになったこの金鉱化に関して報告する。

1.「礫岩中のナゲット金鉱化」について

2017年7月12日、カナダ・バンクーバーに拠点を置くNovo社は探鉱を実施していたWA州ピルバラ地域のPurdy’s Reward鉱徴地(図1)において、礫岩を対象として掘削したトレンチ内で、礫岩の露頭中に存在する「スイカの種状」の金ナゲット(図2)を発見したと発表した1。Purdy’s Reward鉱徴地は、Novo社が豪Artemis Resources社と50:50でJV探鉱を実施しているArtemis JVプロジェクトの一部で、2017年5月26日にArtemis Resources社が保有する鉱区に参入したと、Novo社により発表されていた2

図1.Novo社がピルバラ地域に保有する鉱区図

図1.Novo社がピルバラ地域に保有する鉱区図

(出典:Novo社ホームページの図に一部加筆)

図2.トレンチ内の礫岩露頭中に産する金ナゲット

図2.トレンチ内の礫岩露頭中に産する金ナゲット

最大4cmの「スイカの種状」の金ナゲットが、礫岩中に含まれている様子が分かる。

(出典:Announcement, Novo Resources Corp., 12/07/2017)

Novo社による発表を契機にして、ピルバラ地域で金を対象とした鉱区を保有するジュニア探鉱企業が、自社鉱区内でも金ナゲットや礫岩層を確認したと相次いで発表した。例えば、DGO Gold社は2017年10月24日に金ナゲットと礫岩層の発見3、10月31日付の7~9月期四半期報告において礫岩分布域を中心に新規鉱区の申請を実施したことを発表4し、またDe Grey Mining社も2017年9月26日に自社鉱区内で金ナゲットと礫岩層の発見を発表5した(図3)。このほか、Kalamazoo Resources社やMinRex Resources社のように、既存鉱区保有者とJV契約等を締結して本地域における金探鉱に新規に参入するジュニア探鉱企業も存在しており、2017年11月時点で25社以上のASX上場ジュニア探鉱企業がピルバラ地域で礫岩中の金鉱化をターゲットとして活発に探鉱しているとされている。このような状況は地元メディアで2017年10月頃から「Pilbara Gold Rush」と命名され、現在もメディアで頻繁に見掛けるようになった。

図3.De Grey Mining社が発見した礫岩層(左写真)と地表で採取された金ナゲット(右写真)

図3.De Grey Mining社が発見した礫岩層(左写真)と地表で採取された金ナゲット(右写真)

(出典:ASX Announcement, De Grey Mining Limited, 26/09/2017)

2.鉱化発見とその後の経緯

Novo社のホームページによると、金属探知機を片手に地表の砂金や金ナゲットを探索する「金属探知者(metal detectorists)」が、2016年9月頃にPurdy’s Reward鉱徴地やComet Well鉱徴地周辺で金ナゲットを発見したことが、ことの始まりのようである。この動きをいち早く察知して市場に報告していたのはNovo社のJV相手方であるArtemis Resources社で、2016年11月16日には自社鉱区内のPurdy’s Reward鉱徴地において地表の金ナゲットのほか、細粒の苦鉄質岩中に金ナゲットが産する初成鉱化を発見したと発表6。2017年2月20日には始生代堆積岩中の礫岩に金ナゲットが産する新しいタイプの初成金鉱化を発見したと発表7したものの、この時点では市場の反応はまだ限定的なものであった。

一方Novo社は2011年以降、一つの産金地域としては世界最大の金埋蔵量を誇ると言われる南アフリカのWitwatersrand Basin(一説によると、これまで6万tもの金が生産され、未だ3万t以上の埋蔵量があるとされる)における礫岩中の金鉱化作用を参考とし、同じ時代の堆積岩が広がるピルバラ地域において類似した金鉱化を発見することを目的として探鉱を実施していた。ピルバラ地域西部に位置するComet Well鉱徴地やPurdy’s Reward鉱徴地(同社では、これら2つの鉱徴地周辺を「Karrathaプロジェクト」と呼称)の周辺で金属探知者が金ナゲットを発見したという情報をNovo社が得たのは2016年11月頃で、その後現地調査で礫岩中の金鉱化を確認。2017年2月には自社鉱区取得の申請を始め8、2017年11月のプレゼンテーション資料では約7,000km2という広大な範囲の鉱区を、Karrathaプロジェクト地域に申請あるいは取得している(図1)。同社は2017年4月11日にComet Well鉱徴地を含む48km2の鉱区群への参入を発表9、同年5月26日にはPurdy’s Reward鉱徴地を含む1,536km2の鉱区に関するArtemis Resources社とのJV組成を発表2しているが、これらの発表に関しては市場はあまり反応を示さなかった。前述の通りNovo社は、2017年7月12日にトレンチ内の礫岩露頭において初成金鉱化を発見したことを市場に報告しているが、そのニュースリリースでは削岩機を使って割った礫岩露頭中に金ナゲットが含まれる様子の動画がYouTubeを利用して紹介されており、ソーシャルメディアを利用した発表が市場の大きな反応を得る結果となった。また、Novo社が早期に自社鉱区の取得申請を進め、Comet Well鉱徴地やPurdy’s Reward鉱徴地の周辺に広大な自社鉱区を押さえたことも、大規模な鉱床発見への期待に対して、市場の注目を得ることとなったと言える。

3.現状における地質的解釈

このピルバラ地域の礫岩中の金鉱化は、金属探知者により発見されるまで既存の地質図などに記載がなされていなかったため、全く新しい鉱化層準の発見であるとされている。その詳細に関しては調査研究中で未だ不明瞭なところが多い状況であるが、各社がホームページ等で公開している情報をまとめると、概ね以下のような鉱化の特徴があることが分かる。

  • Novo社によると、Karrathaプロジェクトにおける鉱化層準は始生代Fortescue層群中のMt Roe Basalt(約27.7億年前)の下部に存在する、これまで既存の地質図では認識されていなかった礫岩層である(図4)。礫岩中の礫の多くは玄武岩で、砂岩層が狭在する。ごく少量の石英脈が産するが、金鉱化との関係は不明である。De Grey Mining社、DGO Gold社が地表で発見した金ナゲットも、Mt Roe Basaltの露頭周辺で発見されている。
  • Novo社の現状での解釈によると、Karrathaプロジェクトの含金礫岩層は、もともとは海岸沿いの漂砂金鉱床で、海水面の変動による削剥・再堆積により金が濃集したものが埋没し、礫岩化したものと考えられる。参考となるWitwatersrand Basinの金鉱化作用は熱水起源説も存在するが、漂砂鉱床起源説も存在する。
  • 金ナゲットは数mm~数cm大。多くは「スイカの種」のような扁平な形で円礫状を呈していること、ナゲット表面に、続成作用中に砂質物質から圧力を受けることにより形成される「dimpled surface」が見られること(図5)、また金ナゲットの金品位は95-98%と非常に高く、周辺の熱水性鉱化で形成される金粒子の金品位が70-95%であることと比較すると異なる性質を示していることから、Novo社は漂砂金起源である証拠の一つと考えている。
  • 礫岩中の金ナゲットの辺縁部に、再移動した細粒の金ハローが1-2mmの幅で形成されている事がしばしば認められる(図5)。
図4.Karrathaプロジェクトにおける地質断面推定図

図4.Karrathaプロジェクトにおける地質断面推定図

(出典:Presentation File, Novo Resources Limited, November 2017に加筆)

図5.Karrathaプロジェクトの金ナゲットの様子

図5.Karrathaプロジェクトの金ナゲットの様子

露頭から掘り出された金ナゲットの表面に認められる「dimpled surface」の様子(左写真)と礫岩中の金ナゲットの周辺に認められる細粒の金ハロー(右写真)。

(出典:Presentation File, Novo Resources Limited, November 2017)

4.今後について

2017年11月までは、未だ試錐の結果が公表されていない極めて初期段階の探鉱プロジェクトへの期待から市場の注目を集める結果となったが、今後は鉱化規模の把握を目的とした試錐調査などを伴う探鉱結果が重要になると考えられる。試錐調査や試料採取・分析などの実施にあたり、各探鉱企業や投資家が注意を払わなければいけないものとして「ナゲット効果」の存在が、鉱業コンサルタントの指摘としてメディアで紹介された10。ナゲット効果とは、大きな金ナゲットが分析試料中に含まれていた場合、そのナゲットの存在により分析結果がその地層を代表しなくなり、分析により推定される「本来の金品位(真値)」より高い見かけ分析結果が得られてしまうというものである(図6)。含まれる金粒子が十分に細かく均質に含まれていれば、分析の結果が真値から大きくずれることは無いが、金粒子が大きくなればなるほどナゲット効果が大きくなり、真値からのずれが大きくなる可能性があるため、鉱床の品位や規模の評価が難しくなるという問題がある。

図6.ナゲット効果について

図6.ナゲット効果について

分析試料が十分に均質であれば、試料分割の方法に関わらず分析結果は真値からずれないが(下段)、粒子の大きなナゲットが分析試料中に存在する場合、ナゲットが入った試料の分析結果は真値より高く、ナゲットが入らなかった試料は真値より低くなる(上段)。

(出典:https://www.911metallurgist.com/blog/gold-nugget-effect-definition-in-sampling)

前述の通り、ピルバラ地域の含金礫岩鉱化に含まれる金ナゲットは数mm~数cmと大きく、大きなナゲット効果が予測される。例えば、通常のダイヤモンド試錐で得られる試錐コアは最大でも直径8.5cm程度であるが、この中に例えば1cm大の金ナゲットが入るか入らないかで分析結果が大きく影響を受け、その試錐によるポテンシャルの評価結果が大きく異なってしまう恐れがある。これを防ぐためにはなるべく多量の分析試料を採取し、十分に均質化した後に分析を実施する必要があるが、試料採取と調整にコストと手間がかかり、多量の分析試料を地表下から採取することは一般に難しいことが深部の評価の問題点として挙げられ、関係各社の今後の検討課題であると言えよう。

おわりに

ここまで、2017年にWA州ピルバラ地域を舞台として話題となった、礫岩中のナゲット金鉱化の概要に関して報告した。金属探知者による地表の金ナゲットの発見から、Novo社による礫岩中の金ナゲット発見に関する報告とそれに引き続く周囲のジュニア探鉱企業の活動活発化まで1年程度しか経過しておらず、スピード感を伴って事態が進行したことが分かる。今後は、如何にナゲット効果に留意しながら適切な鉱化ポテンシャル及び規模の把握を各社が実施するかが注目点となり、21世紀のWA州ピルバラ地域において、南アフリカのWitwatersrand Basinに匹敵するような大鉱化帯の発見となるかどうか、引続き各社による探鉱の推移を注視する必要があろう。

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