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報告書&レポート

2018年5月18日 金属企画部 国際業務課長 久保田博志、 ボツワナ・地質リモートセンシングセンター所長 長江晋
18-10

セミナー報告:ボツワナ・地質リモートセンシングセンター10周年記念セミナー

<金属企画部国際業務課長 久保田博志、ボツワナ・地質リモートセンシングセンター所長 長江晋 報告>

はじめに

ボツワナ・地質リモートセンシングセンター(以下、「センター」)は、2007年11月にJOGMECとボツワナ鉱物エネルギー水資源省(現鉱物資源・環境保全技術・エネルギー安全保障省)との間で署名した「鉱物資源分野の協力に関する基本合意書」に基づき、2008年7月にボツワナ地質調査所(現ボツワナ地球科学機構(BGI:Botswana Geoscience Institute))内に開所した。以来10年間、南部アフリカ各国のリモートセンシング人材育成と共同解析・共同調査を実施してきた※1

記念セミナーの様子

記念セミナーの様子

2018年3月13日、JOGMECは、10年目の事業の節目を捉え、センター事業参加国との更なる関係強化を目的として、ボツワナの首都ハボロネにおいて、これまで事業に参加した南部アフリカ開発共同体(SADC:Southern African Development Community)加盟国から11か国の地質技術者及び歴代センター所長など約50名が参加するセミナーをBGIと共催した。

セミナーでは、有吉勝秀JOGMEC特命参与、Tiyapo Hudson Ngwisanyi BGI CEOの挨拶に続き、歴代のセンター所長によるセンター事業の10年間の回顧が行われた後、長江晋センター所長が第3期事業期間※2(2018~2022年度)における事業の方向性を説明した。また、各国地質調査所からは、それぞれが進めている鉱業投資促進等に資する地球科学データ整備事業の実態やセンターとの共同事業の成果等が紹介された。以下、その概要を報告する。

※1 第1期事業期間は、2008年度から2012年度までの5年間、リモートセンシングの基礎的技術の移転と解析結果を検証するための現地調査を重点的に実施した。第2期事業期間は、2013年度から2017年度までの5年間、リモートセンシングの高度な技術移転と参加国の自立した人材育成を目指した指導者育成と探査有望地の抽出を意識した共同調査を重点的に実施した。

※2 第3期事業期間は、2018年度から2022年度までの5年間、探査プロジェクトの組成により重点を置いた活動を行う。

1. セミナーの概要

(1) 有吉勝秀JOGMEC特命参与挨拶

有吉勝秀特命参与挨拶

有吉勝秀特命参与挨拶

センターは、2008年7月の開所から今年で10年目を迎えた。その間、SADC加盟国を中心とした、アフリカ16か国から延べ1,000名以上の地質技術者等への研修と研修で身につけた技術を駆使した共同解析・現地調査を行ってきた。人材育成では、指導者レベルの技術者(インストラクターやマスターインストラクター)が育ち、共同解析では、抽出した有望地域からJV探査プロジェクトも形成されている。10年間センター事業が継続できたのは、参加各国の協力と事業への高い評価を得ることができたからと考えている。

(2) 各国からの報告

各国地質調査所のミッション、地質データ整備事業・計画及びセンター事業との関わりについてプレゼンテーションが行われた。以下、各国の発表概要を紹介する。

1) アンゴラ:Dr. Canga Xiaquivuila, Director General, Management office, Geological Survey

アンゴラ:Dr. Canga Xiaquivuila, Director General, Management office, Geological Survey

アンゴラ:Dr. Canga Xiaquivuila, Director General, Management office, Geological Survey

ミッション:短期的には第1期国家地質計画(PLANAGEO:National Geological Plan)の完了、中期的には投資家に魅力的な地質データセット作成、そのための詳細な地質調査、物理探査、地化学探査の実施、長期的には国内の鉱物資源ポテンシャルの把握と調和のとれた管理、ダイヤモンド以外の鉱物資源探査の促進を活動目標としている。

地質データ整備事業・計画:中核事業のPLANAGEOでは、国土全体をカバーする空中物理探査、25万分の1縮尺の広域地質図及び広域地化学探査図の作成を実施し、地質情報の更新、データ取得コストの削減、投資誘致、地質データベース(BADAGEO:Base de Datos Geológicos)の構築、3か所の試料分析所の設置、人材育成等の成果を期待している。

センター事業との関わり:2011年から2014年にかけて、地質調査所の若手地質技術者がリモートセンシング及び野外調査に関する技術を学び、これらの技術者とともに実施した現地調査等及びアンゴラ国内の地質及び鉱物資源ポテンシャル評価によって、銅及びカーボナタイト(レアアース)鉱床等の可能性を見出した。

2) ボツワナ:Mr. Akanyang Puso, Director, Science Delivery, Botswana Geoscience Institute BGI)

ボツワナ:Mr. Akanyang Puso, Director, Science Delivery, Botswana Geoscience Institute

ボツワナ:Mr. Akanyang Puso, Director, Science Delivery, Botswana Geoscience Institute

ミッション:地球科学分野の調査研究とデータの提供、鉱物資源探査・調査の促進である。具体的な活動としては、基盤岩層(プレ・カラハリ層:Pre-Karahari Formation)の地質図の3回目の更新を2018年から2021年で計画している。

地質データ整備事業・計画:基盤岩層の地質図は1997年までに2回更新されている。ボツワナ国内では鉱物資源の賦存が知られているプレ・カラハリの地質は国土の25%で岩石が露出しているが、露出していない75%の地域では地質や鉱物資源ポテンシャルが更新されていなかった。今回の更新では、高分解能空中磁気探査、重力探査、民間の探査レポート、大学の論文等の整理・解釈、100万分の1縮尺の地質図の編纂、これまで地質図が作成されていなかった地域の12.5万分の1及び25万分の1縮尺の地質図の作成、BGI技術者の広域地質図作成訓練、GISデータベースの構築等を行う計画である。

センター事業との関わり:2008年にロバッツェにある地質調査所(現BGI)内にセンターを設置して以来、地質調査所の地質技術者等のリモートセンシング等の技術移転、共同調査、SADC加盟国から地質技術者等を招いていたSADCリモートセンシングセミナーを2009年から同地質調査所においてJOGMECと共に開催している。これらの成果として、国土全体にわたるASTER※3画像解析による地質・鉱物資源ポテンシャルを評価し、JV探査案件を1件形成した。また、人材育成面では、指導者レベルの技術者育成を達成した(インストラクター3名、うち2名は更に上級のマスターインストラクターに認定)。

※3 ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer)画像データは、可視から熱赤外領域までに14バンドを有する高性能光学センサで、鉱物資源探査などに多く用いられている。

3) レソト:Mr. Ngakane Pius Ngakane, Director, Geological Survey Ministry of Mining

レソト:Mr. Ngakane Pius Ngakane, Director, Geological Survey Ministry of Mining

レソト:Mr. Ngakane Pius Ngakane, Director, Geological Survey Ministry of Mining

ミッション:ダイヤモンド以外の鉱物資源探査が課題である。同国では、鉱物資源のポテンシャルがあると考えているが、地質データはダイヤモンド 関連のものに集中している。

地質データ整備事業・計画:政府は地質インフラストラクチャ(地質データ)の整備を進めており、沢砂地化学探査のデータベースの構築に着手している。また、地下を探査するための物理探査やボーリング調査が必要であるが、地表の特徴から地下の地質を解釈する有効な方法の一つとして、リモートセンシング技術があり、JOGMECとのリモートセンシング技術協力は重要と考えている。

センター事業との関わり:2013年に鉱物資源分野の協力に関する基本合意書(MOU)に署名した後、2014年から衛星画像解析と現地調査により共同調査の対象地区を選定し、2015年には対象地区において試料採取を実施し、レアアース及び銅‐ニッケル‐白金族の鉱化の可能性を評価した。2017年にはそのフォローアップとして追加試料の採取と分析を行い、銅‐鉛‐亜鉛の地化学異常を捉えた。

4) マラウイ:Mr. Kondwani Dombola, Deputy Director, Geological Services Division, Geological Survey

マラウイ:Mr. Kondwani Dombola, Deputy Director, Geological Services Division, Geological Survey

マラウイ:Mr. Kondwani Dombola, Deputy Director, Geological Services Division, Geological Survey

ミッション:鉱物資源開発を通じた社会経済の発展に資するための地質データの取得・モニタリング・保管・提供であり、系統的な地質図及び文献資料の管理、鉱物資源ポテンシャルを明らかにするための探査の実施、小規模採掘者への技術支援等、国内外の研究機関との協力事業等を行っている。

地質データ整備事業・計画:進行中の事業には次のものがある。MGGSP(Malawi Governance and Growth Support Project)は、世界銀行とEUが資金援助し、2018年3月に終了、地質データ(国土全土をカバーした空中磁気・放射能探査=GTK、BRGM等)取得と解釈、地質データセンター(GDMIS:Geological Data Management Information System)の設立からなる。地質図作成及び鉱物評価プロジェクト(GEMMAP:Geological Mapping and Mineral Assessment Project)はフランス政府の資金援助により2015年から2020年にかけて実施、地質及び鉱徴地データの取得のための地質図、鉱物資源ポテンシャル図、自然災害図の作成、小規模採掘者への技術支援、人材育成、資料センター建設からなる。鉱物資源分野の人材育成では、JICAによる地質技術者4名の長期研修、同5名の地化学探査研修、地化学探査11地区の抽出、地化学探査の実施がある。

センター事業との関わり:2010年の基礎研修後、毎年地質技術者がSADCリモートセンシングセミナーに参加するなど人材育成を継続している(そのほかにも、日本の大学院への留学制度「資源の絆」への技術者の推薦や学位取得後のインターンの受入れ等)。また、共同解析・共同調査の結果、レアアースJV探査案件を2件形成している。

5) モザンビーク:Mr. Candido Acacio Sebastiao Rangeiro, Deputy Director, Directorate Geological Survey

モザンビーク:Mr. Candido Acacio Sebastiao Rangeiro, Deputy Director, Directorate Geological Survey

モザンビーク:Mr. Candido Acacio Sebastiao Rangeiro, Deputy Director, Directorate Geological Survey

ミッション:鉱物資源の持続可能な利用のための政策の着実な実施及び戦略的鉱物資源の探査である。

地質データ整備事業・計画:国内で採取した試料の保管、探査及び地質調査のモニタリング、地質調査・探査・埋蔵量計算の基準、国内の鉱床及び鉱徴地図の更新(西部地域の鉱床成因調査、中・北部のベースメタルのポテンシャル抽出調査等)、空中物理探査(高分解能磁気探査・放射能探査)データの編集及び解釈、鉱物資源情報システムのオンライン化のための再構築・更新、5万分の1縮尺の同国北部地域の詳細地質図の作成等である。

センター事業との関わり:センターの研修事業により、15名が基礎研修を、10名が上級者研修を修了し、5名がインストラクターに認定された。毎年開催されるSADCリモートセンシングセミナーに参加した。レアアース及びベースメタルを対象とした共同現地調査を3シーズン実施した。

6) ナミビア:Ms. Anna-Karren N. Nguno, Deputy Director, Regional Geoscience, Geological Survey

ナミビア:Ms. Anna-Karren N. Nguno, Deputy Director, Regional Geoscience, Geological Survey

ナミビア:Ms. Anna-Karren N. Nguno, Deputy Director, Regional Geoscience, Geological Survey

ミッション:科学的な調査を通じた地質情報の強化及び提供及び鉱物資源・地質エンジニアリング・環境・土地利用に関する調査と評価の実施である。具体的な活動は、持続可能な開発のための投資促進に資する地質情報の提供、土地利用へのガイダンス、経済発展のための鉱物資源投資のシミュレーション、地質環境や生活環境に関する一般への啓蒙活動などである。

地質データ整備事業・計画:100万分の1縮尺の地質図は国土全体を、100万分の1縮尺以下の地質図は国土の65%をカバーしているが、最近の調査結果を基に更新が必要な地域がある。鉱床地質図は100万分の1縮尺のみである。高解像度空中磁気・放射能探査等は1994年に開始して2009年に国土の98%をカバーして完了した。リモートセンシングは地質の基本図や地質図の編纂図作成に有効であると考えている。

センター事業との関わり:ASTER画像の主成分分析(ASTER-PCA:Principal Component Analysis)を基に有望な地区を選定、サンプル採取と携帯型蛍光X線分析装置(XRF)とスペクトルメーターによる分析を実施した結果、銅‐銀鉱徴地を抽出したほか、SAR※4データを用いた地質情報の抽出に関する技術開発を実施した。

※4 合成開口レーダー衛星データ(Synthetic Aperture Radar)

7) 南ア:Dr. Abraham Thomas, Specialist Scientist, Geophysics and Remote Sensing, CGS

南ア:Dr. Abraham Thomas, Specialist Scientist, Geophysics and Remote Sensing, CGS

南ア:Dr. Abraham Thomas, Specialist Scientist, Geophysics and Remote Sensing, CGS

ミッション:鉱物エネルギー資源等の開発・評価・持続的管理・インフラ開発、国家的環境対策、国土開発等への助言に資する調査に基づく地質データの統合的・系統的な主題図の提供である。リモートセンシングは、地質図作成における諸問題への対応(対象範囲選定、インフラ整備状況、アクセス等)、地質構造・境界の特定、鉱物資源探査、地下水・環境・防災等に有効である。ASTERデータやSAR-PCAは地質図作成の岩相区分に有効であるほか、ALOS-2干渉のSARデータ(PALSAR-2 Interferometory)は、地表面の変化(地盤沈下等)の把握や防災等に活用している。

地質データ整備事業・計画:100万分の1、25万分の1、5万分の1、1万分の1縮尺の地質図は、編纂されているが、国土全体をカバーしているのは25万分の1縮尺であり、5万分の1縮尺の地質図のカバー率は低い。10年計画で学際的な5万分の1縮尺の主題図の作成を進めている。また、地化学探査図の作成も行っている。

センター事業との関わり:他のSADC加盟国とは異なり、リモートセンシングの基礎研修には参加していなかったが、近年、SADCリモートセンシングセミナーに参加している。リモートセンシングは地質図や主題図の作成に有効であり、JOGMECのワークショップ等は技術者のリモートセンシング技能等の向上に非常に役立っている。

8) スワジランド:Mrs. Winnie Stewart, PS, Overall Administration, Ministry of Natural Resources and Energy , Ms. Ncamsile Sigwane, Geologist, Geology, Ministry of Natural Resources and Energy

ミッション:地質データベースの構築とそれによる鉱物資源の探査及び開発の最適化により、鉱物資源から得られる富の極大化を図ることである。

地質データ整備事業・計画:投資を呼び込むため地質データ整備は不可欠であり、リモートセンシングは有効かつ重要なツールである。

センター事業との関わり:2012年に基礎研修へ5名、それ以降、SADCリモートセンシングセミナーへの参加を含め、計15名、2017年には上級者研修へ5名を派遣し、1名がインストラクターに認定された。ASTERデータの共同解析ではデジタル標高モデルの斜度解析(DEM Slope)を行い、現地調査により、カルー(Karoo)堆積岩中※5のレアアースや銅(IOCG型鉱床)の鉱徴や熱水変質をとらえた。

※5 カルー堆積岩:南部から東部アフリカ地域に広く分布する堆積岩層。石炭を胚胎することでも知られている。

  • スワジランド:Mrs. Winnie Stewart, PS, Overall Administration, Ministry of Natural Resources and Energy

    スワジランド:Mrs. Winnie Stewart, PS, Overall Administration, Ministry of Natural Resources and Energy

  • スワジランド:Ms. Ncamsile Sigwane, Geologist, Geology, Ministry of Natural Resources and Energy

    スワジランド:Ms. Ncamsile Sigwane, Geologist, Geology, Ministry of Natural Resources and Energy

9) タンザニア:Mr. Maruvuko Elisamia Msechu, Director, Geology, Geological Survey

タンザニア:Mr. Maruvuko Elisamia Msechu, Director, Geology, Geological Survey

タンザニア:Mr. Maruvuko Elisamia Msechu, Director, Geology, Geological Survey

ミッション:持続的な鉱物資源の利用及び社会経済発展のための政府等の戦略的判断に資する高品質で低コストな地球科学的データ及び情報を提供すること。

地質データ整備事業・計画:様々な縮尺の地質図が国土の94%を、地化学探査(多元素)は国土の約20%、空中磁気探査(測線間隔1km)は国土全土を、高解像度空中物理探査は国土の16%をカバーしている。また、全ての地球科学データのデジタル化及びGIS化を進めている。

センター事業との関わり:2009年以降、地質調査所と国有鉱山会社STAMICO(State Mining Corporation)から計18名が基礎研修や毎年実施しているSADCリモートセンシングセミナーに参加し、インストラクターに3名が認定されている。また、共同解析及び共同現地調査の結果、有望値が抽出され、マンガン・レアアースと銅の2件のJV探査プロジェクトが形成された。

10) ザンビア:Mr. Alphet Phaskani Dokowe, Chief Geologist, Geological Survey Department

ザンビア:Mr. Alphet Phaskani Dokowe, Chief Geologist, Geological Survey Department

ザンビア:Mr. Alphet Phaskani Dokowe, Chief Geologist, Geological Survey Department

ミッション:政府を代表した地球科学的調査及び鉱物資源探査である。

地質データ整備事業・計画:地質図は国土の約60%をカバーしているが、予算の制約があり、地質図、物理探査図、地化学探査図の作成の進捗は遅れている。政府はこれらの整備に海外の支援を求めている。近年は中国からの支援を積極的に受け入れている。

センター事業との関わり:2010年からリモートセンシング技術の移転を受けている(センター事業ではボツワナの次に協力事業を開始した)。リモートセンシング技術は、地質図作成等に積極的に活用している(既存の10万分の1縮尺の地質図を用いた25万分の1縮尺の地質図の編集、岩相境界の見直し、地質図間の境界問題の解消、構造規制型金鉱床の探査、不法金採掘の監視等)。

11) ジンバブエ:Dr. Mabasa Temba Hawadi, Director, Zimbabwe Geological Survey, Ministry of Mines and Mining Development

ジンバブエ:Dr. Mabasa Temba Hawadi, Director, Zimbabwe Geological Survey, Ministry of Mines and Mining Development

ジンバブエ:Dr. Mabasa Temba Hawadi, Director, Zimbabwe Geological Survey, Ministry of Mines and Mining Development

ミッション:国内の地質資源の把握を促し、科学的調査、データの活用及び普及を通じて、調査の企画、鉱物資源の評価、地質工学、土地利用、持続可能な開発、環境保全に貢献することである。

地質データ整備事業・計画:国土の約60%を10万分の1縮尺の詳細地質図がカバーしており、それには地質調査所が作成した解説書がついている。

センター事業との関わり:2015年の共同事業を開始以降、リモートセンシング基礎研修、SADCリモートセンシングセミナーに参加するなど人材育成及び共同解析等を実施している。人材育成ではインストラクターが育成されている。

(3) 歴代センター所長による10年間の回顧

1) 鈴木哲夫初代センター所長(現金属資源技術部長)

鈴木哲夫センター初代所長(現金属資源技術部長)

鈴木哲夫センター初代所長
(現金属資源技術部長)

センターは、2007年12月の甘利経済産業大臣(当時)のボツワナ訪問の際にJOGMECとボツワナ地質調査所との間で署名された基本合意書に基づき、2008年7月にロバツェにある同地質調査所内に設置された。2008年はアフリカ開発会議(TICAD)が横浜で開催されるなど我が国のアフリカへの関心が高まり、レアメタル資源確保などアフリカにおける資源外交を積極的に展開しようとしていた時期であった。ボツワナの地質技術者5名に対する研修から始まったセンター事業は、その後、ザンビア、モザンビーク、タンザニア、マラウイ、アンゴラ、DRコンゴ等の国々に拡大していった。

2) 久保田博志第2代センター所長(現金属企画部国際業務課長。筆者)

センター事業が、地理的にはボツワナからSADC加盟国へ広がり、事業内容としては基礎研修から共同解析・共同調査へと発展するに伴い、2013年、より利便性の高い首都ハボロネに拠点を置くこととなった。また、研修で身につけた技術を維持・向上することを目的とした競技会を2013年度からSADCリモートセンシングセミナー(毎年実施の短期研修)において開始した。

3) 大岡隆第3代センター所長(現石炭開発部長)

大岡隆センター第3代所長(現石炭開発部長)

大岡隆センター第3代所長
(現石炭開発部長)

センターの第2事業期間(2013~2017年度)は、各国とも概ね基礎研修が終わり、より高度で実践的な技術移転と持続可能な人材育成のプログラムを充実させた時期であった。具体的には、指導者養成のためのインストラクター及びマスターインストラクター認定制度、毎年実施しているワークショップへの実際の探査活動に近いフィールドワーク(野外調査)の導入、競技会の内容の高度化などがあげられる。また、センター事業に鉱物資源だけではなく、モザンビークの石炭研修が加わったのがこの時期である。

(4) 第3期事業期間(2018年~2022年度)のセンター事業方針

長江晋センター所長

長江晋センター所長

長江晋センター所長(筆者)から、センター事業ではこれまでSADC加盟国を中心に、地質技術者等に対するリモートセンシング等の鉱物資源探査に関する技術移転及び共同解析・共同調査等を実施してきたこと、2018年度以降は、①SADCリモートセンシングセミナーを通じた人材育成、②共同衛星画像解析と現地調査の継続、③探査プロジェクト形成を目指した共同地質調査(地質図作成、空中物理探査、広域地化学探査等)の3つを柱としてセンター事業を展開する方針が示された。

表1.本セミナー各国のJOGMECとの協力事業と地球科学データ整備状況
JOGMECとの協力事業 地球科学データ等整備状況
アンゴラ

・2011~2014年、地質調査所の若手地質技術者に対する人材育成。

・共同調査等によるアンゴラ国内の地質及び鉱物資源ポテンシャル評価によって、銅及びカーボナタイト(レアアース)鉱床等の可能性を見出した。

・PLANAGEOの実施
-空中物理探査、全体
-25万分の1縮尺の広域地質図
-25万分の1縮尺の広域地化学探査図
-地質データベース(BADAGEO: Base de Datos Geológicos)の構築
-3か所の試料分析所の設置等

ボツワナ

・2008年から、技術協力(センター設置、研修、共同調査)を開始。

・研修成果、研修者数23名、指導者レベルのインストラクター2名、マスターインストラクター1名

・国土全体にわたるASTER画像解析による地質・鉱物資源ポテンシャルの評価

・ハイパースペクトルによる解析(20km×8km)

・SADCリモートセンシングセミナーを毎年、JOGMECと共催

・基盤岩層の地質図作成事業(2018~2021年)
-1997年に次ぐ3度目の更新
-地質調査、空中物理探査、重力探査、民間探査レポート、論文等を取りまとめ
-高分解能空中磁気探査

レソト

・2014年~ 衛星画像解析と現地調査を実施

・2015年   試料採取、レアアース、銅-ニッケル-白金族の鉱化の可能性を評価

・2017年には、追加調査を行い、銅-鉛-亜鉛の地化学異常を得た。

・地質インフラストラクチャ(地質データ)整備として、沢砂地化学探査データベース構築に着手。

・リモートセンシングの活用

マラウイ

・2010年の基礎研修後、毎年地質技術者がSADCリモートセンシングセミナーに参加。

・共同解析・共同調査の結果、レアアースJV探査案件を2件形成している。

・MGGSP(世界銀行・EUが支援、~2018年3月)
-空中磁気・放射能探査(GTK、BRGM)、国土全土が対象(測線間隔250m、対地高度60m)
-地質データセンター設立(GDMIS:Geological Data Management Information System)

・GEMMAP(仏政府が支援、2015~2020年)
-地質図、鉱物資源ポテンシャル図、自然災害図の作成、小規模採掘者の技術支援、人材育成、資料センター建設

モザンビーク

・センターの基礎研修に15名、上級者研修に10名が参加、インストラクター5名を認定。

・SADCリモートセンシングセミナーに毎年参加

・レアアース及びベースメタルを対象とした共同現地調査を3シーズン実施

・西部地域の鉱床成因調査

・中・北部のベースメタルのポテンシャル抽出調査

・高分解能磁気・放射能探査データの編集・解釈

・鉱物資源情報システムのオンライン化

・Lurio Belt地域地質図(5万分の1、65枚)

ナミビア

・ASTER画像の主成分分析(ASTER-PCA:Principal Component Analysis)を基に22地区を選定(2017年)

・サンプル採取と携帯型蛍光X線分析装置(XRF)とスペクトルメーターによる分析を実施した結果、銅-銀鉱徴地を抽出したほか、SARデータを用いた地質情報の抽出の技術開発を実施(2017年)

・地質図(100万分の1)は全土をカバー

・地質図(詳細図)は国土の65%をカバーしているが、最近の調査結果を基に更新必要地域あり。

・鉱床地質図は100万分の1縮尺のみ

・1994~2009年、高解像度空中磁気・放射能探査は国土の98%をカバーして完了

・測線間隔200m、対地高度80~100m、空中電磁探査は測線間隔250~4,000m

南ア

・センター事業の基礎研修には参加していなかったが、近年、SADCリモートセンシングセミナーに参加している。

・リモートセンシングは地質図や主題図の作成に有効であり、JOGMECのワークショップ等は技術者のリモートセンシング技能向上に非常に役立っている。

・地質図(100万分の1、25万分の1、5万分の1、1万分の1縮尺)、25万分の1縮尺が全土をカバー、詳細図(5万分の1縮尺)のカバー率は低い。

・10年計画で学際的な5万分の1縮尺の主題図500枚を作成中

・地化学探査図(土壌:1km×1kmグリッド)

・沢砂(高解像度):測線間隔200m等)

スワジランド

・2012年の基礎研修へ5名、それ以降、SADCリモートセンシングセミナーへの参加を含め、計15名、2017年には上級者研修へ5名を派遣し、1名がインストラクターに認定された。

・ASTERデータの共同解析(デジタル標高モデルの斜度解析:DEM Slope、と現地調査により、カルー堆積岩層中のレアアースや銅(IOCG)の鉱徴や熱水変質をとらえた。

・探査及び開発の最適化により、鉱物資源から得られる富の極大化を図るための地質データベースの構築(リモートセンシングは有効かつ重要なツール)

タンザニア

・2009年以降、地質調査所と国有鉱山会社STAMICOから計18名が基礎研修に参加。

・毎年実施しているSADCリモートセンシングセミナーに参加

・インストラクターに3名が認定されている。

・共同解析及び共同現地調査の結果、有望値が抽出され、マンガン・レアアースと銅の2件のJV探査プロジェクトを形成

・地熱調査(遠隔地・無電化地区の電化)、National Academy of Science of USA

・戦略鉱物調査(地質図・報告書)、BRGM(仏)

・Musee Royal del Afrique Centre:活火山モニタリング(レーダー干渉波解析技術)

・地質調査・小規模採掘者支援(特定地域の金鉱化作用の評価)、世界銀行:SMMRP(Sustainable Management of Mineral Resources)

・地質調査・地化学探査(Mbeya地域、Morogoro地域)、中国地質調査所

・地質調査(Mtwara地域)・土壌地化学探査、GTK & GST

ザンビア

・2010年から、センターの技術移転を受けている。

・リモートセンシング技術は、地質図作成等に積極的に活用している(既存の10万分の1縮尺の地質図を用いた25万分の1縮尺の地質図の編集、岩相境界の見直し、地質図間の境界問題の解消、構造規制型金鉱床の探査、不法金採掘の監視等)

・北部地域の地質図及び地化学探査(低密度)、中国地質調査所、2013~2015年

・北東部の地質図及び地化学探査(高密度)、中国地質調査所、2016年

・北部の空中物理探査(磁気・放射能)、中国政府資金援助、2017年

・2018~2021年、鉱業多角化のため、工業原料、宝石、砂金(小規模採掘者)の管理

ジンバブエ

・2015年から共同事業を開始し、以降、リモートセンシング基礎研修、SADCリモートセンシングセミナーに参加するなど人材育成及び共同解析等を実施している。

・人材育成ではインストラクターが育成されている。

・詳細地質図(10万分の1縮尺)と解説書が国土の60~65%をカバー

・地上物理探査(JICA、1986~97年頃)

・Mobile Oil、“Special Grant 1100”(詳細不明)

・重力探査(1測点/1km2、範囲100km2

・空中物理探査(CIDA:Canadian International Co-operation Agency、3フェーズに分けて国土全土をカバー、測線間隔1km、対地高度300m、1980~1990年代頃)

・電磁気(EM)・磁気探査(CIDA、中央部地域、1980~1990年代)

・地化学探査(南部・東部地域)

出典:セミナーにおける各国の発表をもとに作成

(5) Tiyapo BGI CEO挨拶

Tiyapo Hudson Ngwisanyiボツワナ地球科学機構(BGI)挨拶

Tiyapo Hudson Ngwisanyiボツワナ地球科学機構(BGI)挨拶

Tiyapo CEOはセミナーの閉会の辞において、センター開所以来10年間でボツワナや各国への技術移転が進み、各国でインストラクターが育成されれたことなどセンター事業の成果を評価した。一方、本事業が継続されることは歓迎しつつも、次の5年間は人材育成以上に、その人材による地質調査等を通じた探査案件の形成が重要であることを強調した。

おわりに

今回のセミナーは、各国地質調査所がセンターとの協力事業に大きな期待を寄せていることを感じさせるものであった。アフリカの多くの国では鉱業分野をはじめ人材育成による国造りを目指しているが、センター事業が、10年間一貫して探査技術者の経験に基づく事例研究や現地調査等の実務的なものであったことが評価されていると認識した。

センター事業は、2018年度から始まった第3期事業期間において、従来の人材育成、共同解析に加え、探査プロジェクト形成をより強く意識して各国地質調査所との共同地質調査を計画している。この方針は、各国地質調査所のミッションや計画・実施中の地質データ整備事業等に沿った時宜を得たものであることが本セミナーの各国地質調査所の発表で示された。

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