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報告書&レポート

2018年5月21日 シドニー 事務所 吉川竜太
18-11

Minerals & Investment Week 2018参加報告

<シドニー事務所 吉川竜太 報告>

はじめに

Minerals & Investment Week 2018は、2017年まで個別で開催されていた「21st Global Iron Ore & Steel Forecast Conference」と「19th Mineral Sands Conference」に加え、「Lithium & Battery Metals Conference」と「Pilbara Conglomerate Gold Conference」の合計4鉱業大会が、2018年から同期間同施設で「Minerals & Investment Week」という名称のもとに開催されたものである。初開催となったこの鉱業大会は2018年3月21日と22日の2日間、西オーストラリア州パースで開催され、鉄鉱石、ミネラルサンド、リチウムやコバルト等のバッテリーメタル、金など幅広い分野に関する市場の状況やプロジェクトの進捗報告などが4講演会場に分かれて実施され、企業や投資家など350人程度の出席者があった。本稿では、本鉱業大会の講演内容に関していくつか報告する。

写真1.講演会場(Pilbara Conglomerate Gold Conference)

写真1.講演会場(Pilbara Conglomerate Gold Conference)

講演の内容

1.<Lithium & Battery Metals Conference>

(1) Mr. Andrew Latham – Managing Director Ventures, Energy & Minerals, Rio Tinto:「Rio Tinto Ventures and Rio Tinto’s Jadar Project」

セルビア共和国においてJadarリチウム探鉱プロジェクトを推進する、Rio Tintoのベンチャー部門トップであるLatham氏による講演。

・Rio Tintoによる活動の根幹を支えるのは職員の安全と健康であり、常に改善を実施してきた結果、2017年の従業員20万人当りの負傷者率は0.42と業界平均の半分以下の数字となった。2017年のRio TintoにおけるEBITDAマージンは鉄鉱石部門が68%、アルミニウム部門が35%、銅・ダイヤモンド部門が39%、エネルギー・鉱物部門が36%。フリーキャッシュフロー額では鉄鉱石部門が7,265mUS$と他の部門よりも飛び抜けて高い状況である。

・Rio Tintoが、技術革新に対応して需要が高まることが予想される金属の調査をマサチューセッツ工科大学に委託したところ、新技術により最も影響を受ける金属は錫であることが判明した(図1)。その理由は、①電子分野及び電気自動車、再生可能エネルギー分野で需要が伸びる可能性があること、②現在の市場の大きさと比較すると、その需要の変化が特に大きいと考えられること、である。錫以外でも、リチウム、コバルト、銀の順番で大きな影響を受けることが予想されるという結果となった。

・Rio Tintoがセルビアで推進するJadarプロジェクトの主要なリチウム新鉱物であるJadariteはホウ素を伴うため、副産物として経済性良化の材料となることが期待される。今後、ホウ素資源に関するマーケティングの研究が必要となる。

図1.「新技術により影響を受ける金属」図

図1.「新技術により影響を受ける金属」図

出典:Rio Tintoプレゼン資料, March 2018

(2) Mr. Toby Green – Senior Consultant, CRU Group:「Lithium Market Analysis」

コモディティのリサーチ企業であるCRU社より、リチウムの市場予測に関して講演。

・コモディティの市場予測は、多種多様な要素が関係してくるため非常に難しいということを理解しておく必要がある。特に生産者の立場で市場を予測しようとした場合、供給→コスト→価格→需要という順番で生産者が関与できる領域が少なくなり、予測が困難になる。特に、エンドユーザーやバイヤーの挙動を理解することは不可能に近いと言える。

・CRU Group社は世界のリチウム生産量は2025年には2017年比で225%増となると予測しており、豪州がそのうちの36%を占める。中国は生産量拡大の余地が最も大きいと考えられ、2025年には世界生産量の23%を占めると予測されるほか、アルゼンチンは13%、カナダも6%を占めることとなり、プレゼンスを拡大すると考えられる。一方、チリは様々な問題があり生産量の増加幅は限定的と考えており、2025年におけるチリの生産量は世界生産量の13%を占めるにとどまると予想している。

・リチウムの需要は電気自動車への供給量の高まりから2025年には炭酸リチウム換算量で約700 ktに達することが予想される。リチウム供給のサプライチェーンの中で、特にリシア輝石精鉱から炭酸リチウム・水酸化リチウムへの処理能力が不足すると予測されており、リシア輝石精鉱の在庫増加を避けるため、速やかな投資が必要と考えられる。次世代のリチウムイオン電池素材として様々な候補が挙げられているが、技術的な要素だけでなく、各国の政策、素材の調達状況、主流となる電気自動車の種類など、様々な要因が素材選択の鍵を握るであろう。

2.<19th Mineral Sands Conference>

(1) Mr. John Sykes-Strategist, MinEx Consulting Pty Ltd:「The current investment landscape for mining, exploration & mineral sands」

探鉱活動の経済性の観点から鉱山企業に対して戦略的・経済的助言を行っているMinEx Consulting社による、ミネラルサンド産業の概況に関する講演。

・今日までの世界における政治動向の流れを眺めてみると、冷戦中いわゆる西側諸国の政治は、「保守的国際派(Conservative globalist)」である右派と「革新的反国際派(Progressive localist)」である左派が対峙する比較的単純な構造であった。ところが、冷戦後に左派の多くは「革新的国際派」に方針転換し、「保守的国際派」の右派と対立した。今日では、右派や左派の中に「反国際派」が生まれる流れにあり、政治的対立構造が非常に複雑化している。鉱業は長期的な視野が必要なビジネスであり、政治の短期的な揺らぎに過度に反応することは必要ないが、国際政治情勢の構造的シフトには対応が必要となるであろう。

・豪州におけるミネラルサンドの探鉱支出額は、2012年をピーク(約45mA$)に減少に転じ、2016年は約20mA$と、ここ20年で最低を記録。全鉱種を含めた豪州における探鉱支出額に占めるミネラルサンドの割合も、2002年以降下落の一途を辿っている状況。世界におけるミネラルサンド資源量50mt以上の大規模鉱床の発見も、この10年で1件のみと非常に少ない状況が続いている(図2)。他の鉱種では、世界的に新鉱床発見時の鉱化深度は増大傾向にあるが、ミネラルサンドは地表近くでないと恐らく経済的に成り立たず、今後豪州では経済性を持つミネラルサンドの新鉱床を発見するのは難しいかもしれない。ともかくも業界の将来のためにインド、東アフリカ、グリーンランドなど、地政学上のリスクがより高い地域での探鉱を継続するしか無く、地元住民との融和のためのSocial Scienceと、地道な調査であるLocal Geologyの融合が今後益々重要となろう。

・中国と北米における鉄鋼・銅・チタンの消費量の比を取ると、銅消費量と鉄鋼消費量の北米:中国比はいずれも1.0:1.8程度であるが、チタン消費量の比は2.5:1.0程度と中国における消費量の割合が少なく、今後まだ消費量が増大することが期待される。チタンは多くを顔料(酸化物)で利用され、金属チタンの利用は2012年時点で全体の7%しか無いが、金属チタンは軽量で強靭な金属であり航空産業などで需要がある。しかしながら、現状チタン酸化物から金属チタンを生成する過程におけるエネルギー消費量及び二酸化炭素排出量は他の金属に比し非常に大きく、今後消費量を拡大するためには、技術的ブレークスルーが必要となろう。

図2.豪州のミネラルサンド探鉱費の推移(左)と世界におけるミネラルサンド新鉱床発見数の推移(右)

図2.豪州のミネラルサンド探鉱費の推移(左)と世界におけるミネラルサンド新鉱床発見数の推移(右)

出典:MinEx Consulting社プレゼン資料, 22/03/2018

(2) Mr. Cameron Perks-Industrial Minerals Consultant, CPIM Consulting:「Mineral Sands from Industrial Mineral’s Perspective」

ミネラルサンドを含む工業原料鉱物(Industrial Minerals)の市場調査を実施しているCPIM Consulting社による講演。

・イルメナイトに関しては、過去には54%TiO2のCIF及びFOBで価格動向を調査していたが、昨今取引されているイルメナイト精鉱の実情を鑑み、47~49%TiO2の中国CIF価格での分析に変更予定。なお54%TiO2のイルメナイト精鉱中国CIF価格は2017年11月には200~230US$/tで、今後緩やかに上昇することが期待される。

・ルチルは中国などからの需要が堅調で、トレーダーや生産者は今後価格は上昇すると予測している。豪Iluka社は、2018年前半のルチル販売価格を2017年後半から70US$値上げした895US$/tで顧客と契約していると発表した。CPIM Consulting社は、95%TiO2以上のルチル精鉱中国CIF価格は2018年2月の時点で850~950US$/tと評価している。

・ジルコンは供給が不足しており現時点でもタイト感が生じており、Iluka社など主要生産者は顧客に対して販売価格上昇を通告している状況である。66.5%ZrO2以上のジルコニウム精鉱中国CIF価格は2017年12月に1,200~1,320US$/tであったものが2018年3月15日には1,350~1,500US$/tに上昇しており、今後も価格上昇が予想されるが、代替品の導入による価格下落のリスクが存在することに留意する必要がある。

・モナザイトは、Kenmare社がモザンビークで操業するMoma鉱山のモナザイト精鉱生産プロジェクトが2018年後半から稼働する予定で、モナザイトに含まれるレアアースを回収することに興味を示すトレーダーもあるようであるが、この技術は環境負荷が大きく中・印・マレーシアの3か国のみで実施されている。豪州には大量のモナザイト貯鉱も存在しており、今後の価格動向に関して注視が必要である。

3.<21st Global Iron Ore & Steel Forecast Conference>

(1) Ms. Tracy Liao – Asia Commodities Strategist, Citi Research:「Iron Ore and Steel Market Outlook」

Citiグループのリサーチ部門に属するリサーチャーによる、鉄鉱石と鉄鋼市場の需給予測に関する講演。

・2017年の鉄鉱石価格は、鉄鋼価格の回復と高品位鉄鉱石への需要が高まったことにより50~90US$で推移したが、高品位鉄鉱石への需要の偏りは長期的な鉄鉱石価格には悪影響を与えると考えられ、2018年はやや値下がりすると予測している。中国における鉄鋼需要や鉄鋼生産量は、2018年も依然堅調であると予想されるが、鉄鉱石市場全体は供給過剰の傾向にあり、鉄鉱石の港湾在庫量が増加傾向にある。中国向けの鉄鉱石海上輸送量の増加幅は2018年には50~60mt/y、2019年には30~35mt/yとなる見込みでピークを過ぎた感があり、中国国内における鉄鉱石生産量も、投資の減少や環境問題により漸減する見込みである。

・近年話題となっている低品位鉄鉱石価格のベンチマーク価格からの値引きに関しては、中国鉄鋼メーカーの高品位鉄鉱石への志向が維持されることから、当面継続すると思われる。恐らくFe品位58%粉鉱のベンチマーク価格からの値引き幅は20US$/t以上となるであろう。現状では鉄鉱石生産企業による生産調整は実施されていないが、今後鉄鉱石価格が値下がりするとともに、特に低品位鉄鉱石生産者により実施される可能性がある。

(2) Mr. Ivan Vella – Managing Director, Supply Chain & Services – Iron Ore, Rio Tinto:「Iron Ore and Steel Forecast Conference 2018」

Rio Tintoによる、同社の鉄鉱石生産部門に関する現状報告。

・様々な指標を俯瞰してみると、世界マクロ経済の成長は今後も中長期的には堅調であると思われるが、一方で変動も大きいという可能性が示唆されている。低品位鉄鉱石への値引率拡大が続く中、高品位かつ低不純物鉄鉱石を志向する各鉄鋼メーカーからの支持もあって、2017年のRio Tinto鉄鉱石部門のEBITDA FOBマージンは68%となった。今後も操業の柔軟性確保に重点を置いた「value over volume」戦略を続けていく。特に、Rio Tintoは鉱業テクノロジーのイノベーションを推し進めており、鉄道や港湾作業の自動操業化やITを利用した情報の一元管理化、効率化を継続する予定である。

(3) Mr. Edgar Basto – Asset President – Iron Ore, BHP:「Global Iron Ore and Steel Forecast – Unlocking value across our portfolio」

BHPによる、同社の鉄鉱石生産部門に関する現状報告。

・今後の鉄鉱石需要を担うキーとなるのはEmerging Asiaと呼ばれるインド、ASEAN及びその他南アジア諸国である。BHPの鉄鉱石事業の拠点であるWA州はこれらの国への鉄鉱石供給元として、良いロケーションにある。2000年以降、世界の全鉄鉱石生産量に対する低品位(Fe品位60%以下)粉鉱の生産量比率の増加が著しいが、中国の鉄鋼業界の構造変化に基づいた高品位鉱石への需要は高いレベルを維持しており、その結果低品位鉱石との値差が拡大している(図3)。BHPがWA州に保有する鉄鉱石鉱山は低コストかつ高品位であるという地位を確立しており、安全性と生産性の向上を目的として技術革新、特に操業の自動化を押し進めているところで、今後も鉄鉱石生産量の拡大と生産コストの低減に努めていく予定である。

図3.品位別の鉄鉱石生産割合の図(左)と高品位・低品位鉄鉱石価格の推移(右)

図3.品位別の鉄鉱石生産割合の図(左)と高品位・低品位鉄鉱石価格の推移(右)

出典:BHPプレゼン資料, 21/03/2018

(4) Mr. Li Xinchuang-President, Deputy Secretary General, China Metallurgical Industry Planning and Research Institute:「Development Trend of China’s Steel Industry」

中国政府の鉄鋼関連シンクタンクである中国冶金工業計画研究院による、中国鉄鋼業界の状況に関する講演。

・中国は世界で生産される鉄鉱石の60%を消費しており、その内の60%はここWA州から輸入している。昨今米トランプ政権が米国への鉄鋼輸入に関して高関税を課す政策を導入したが、中国から米国へ輸出している鉄鋼はそう多くないため影響は限定的で、むしろ他の国に大きな影響を及ぼす可能性がある。一方で、同政策は国際化・グローバル化が進んだ鉄鋼業界においては非常に大きな問題であり、米国がこの政策を通じて成功を掴むとは考えられない。中国は鉄鋼産業の競争力強化と環境規制遵守を目的に過去2年間で140mtの鉄鋼生産能力削減を実施し、2018年には更に30mtを削減する計画で、これ以上生産能力が拡大することはない。特に中国の環境規制政策は今後も継続することから、鉄鋼企業の合併等の鉄鋼産業の再編が進行することとなるであろう。

・鉄鉱石市場は2020年までは供給過剰が予測され、一時的な値上がりを除けば価格は55~75US$/tで推移すると予測。2018年の平均価格は、65~70US$/tとなるのではなかろうか。高品位鉄鉱石に対するプレミアが高くなりすぎた場合には、中国の鉄鋼メーカーは利益率確保のため低品位鉄鉱石の購入にシフトすることとなるだろう。現在、中国は鉄鋼原料につき生産量の80%を鉄鉱石に依存しているが、今後は鉄スクラップの重要性が増して鉄鉱石需要が減退し、長期的には鉄鉱石産業に影響を与える可能性があると考えられる。

写真2.講演会場(Global Iron Ore & Steel Forecast Conference)

写真2.講演会場(Global Iron Ore & Steel Forecast Conference)

おわりに

バッテリーメタルに関するRio Tintoの講演の中で、マサチューセッツ工科大学への委託研究の成果として、今後の新技術により影響を最も受ける金属として、錫が一番に挙げられているのが意外であった。現状ではRio Tintoから研究内容の詳細は公表されていないようであるが、今後いずれかの段階で詳細が明らかになることを期待したい。

豪州に限らず世界の鉱物資源探鉱全体の傾向として、ここ数年の新規鉱床発見のペースが落ちていることがよく話題となるが、ミネラルサンドではそれが特に顕著であると思われる。豪州地質調査所(Geoscience Australia)が毎年出版している「Australia’s Identified Mineral Resources 2017」によると、2016年の生産ベースで、豪州はイルメナイト:33年分、ルチル:18年分、ジルコン:21年分の資源量を、また休山中鉱山や未開発案件も加味した鉱石埋蔵量はイルメナイト:44年分、ルチル:22年分、ジルコン:33年分を有しているため、新鉱床発見ペースの低下の影響は暫くは現れないかもしれないが、今後も豪州のミネラルサンドが世界的な競争力を維持するため、既存鉱床の周辺探鉱を継続して優良な資源量・鉱石埋蔵量を確保することや、より高効率な探鉱・生産技術の研究開発が重要であると考えられる。

鉄鉱石に関しては、各社・各リサーチャーとも鉄鉱石価格は短期的には緩やかな下落傾向であり、中国鉄鋼メーカーの高品位鉱石に対する志向が衰えないため、鉄鉱石ベンチマーク価格に対する低品位鉱石の値引きが今後も継続するであろう、という見方が大勢であった。

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