閉じる

報告書&レポート

2018年8月7日 ロンドン 事務所 吉益英孝
18-19

DRコンゴの2018年鉱業法改正のポイント

<ロンドン事務所 吉益英孝 報告>

はじめに

コンゴ民主共和国(DRコンゴ)の鉱業法改正案が2017年5月に議会に提出、2017年12月に国民議会、2018年1月に上院を通過、3月9日にKabilla大統領署名の後、6月8日にTshibala首相が署名して発効となった。2002年以来の改正となり、ロイヤルティの引上げや政府持分の増加等を含む大幅な変更が含まれている。同国の鉱業法は2015年に改正案が議会に提出されたが、2016年2月に業界からの反発を受けて撤回された経緯がある。銅・コバルトを中心に多くの鉱山が同国で運営されているが、鉱業界からの反発も強く、政府はコンサルテーションの場を設けたが、結局鉱業界の要望はほとんど反映されていない模様と報道されている。EVの進展に伴いリチウムイオン電池に使用するコバルトの生産で注目されている同国における大幅な鉱業法改正であることから、本稿では今回の改正のポイントをまとめた。

1. 政府持分(第71条(d)、第80条(h)、第182条(2))

2002年鉱業法では政府持分は5%と定められていたが、改正鉱業法では10%に引き上げられた。この持分はフリーキャリー(コスト負担なし)であり、希薄化しない。既存の鉱業権にも適用され、ライセンス更新の際に権益の移転が行われる。

2. 入札権利金(Pas de Porte)(第1条(36bis)、第33条、第33条bis(1))

鉱区の入札時に課される返還不可の国税であり、サインボーナスとは別に支払う必要がある。課税額は埋蔵量の価値の1%であり、入札時の資源価格に応じて計算される。

3. ロイヤルティ(第1条(48quarter)、第8条bis、第241条、第242条)

今回の改正によるロイヤルティは以下の通り。

  • ・建設用原材料:0%で変更なし
  • ・鉄鉱石・合金鉄:0.5%から1.0%へ
  • ・非鉄金属・ベースメタル:2.0%から3.5%
  • ・貴金属:2.5%から3.5%へ
  • ・宝石類:4.0%から6.0%へ
  • ・戦略鉱物:10.0%が新たに設定

戦略鉱物は「経済環境に基づいた地理的、戦略的に重要な性質を持つ鉱物であり、政府が特に関心があるもの」とし、鉱山省が決定する。現在これにはコバルト、コルタン、リチウム、ゲルマニウムが含まれる。

ロイヤルティ収入から得られた資金のうち、その資金の10%が新たなファンド設立のために振り分けられることになった。このファンドは「未来の世代への鉱業ファンド(Fonds minier pour les generations fotoures)」と名付けられ、運営などの詳細は首相と閣僚によって定められる。

4. 税金および関税(第219条(2)、第232条、第247条、第251条bis、第251条bis(1))

事業収入税は30%で不変であるが、新たに「超過利潤税」を導入し、その時の鉱物価格がプロジェクトのフィージビリティスタディ時に比べ25%以上上昇した場合に事業収入税を50%にするとしている。詳細については別途定める予定。

サブコントラクターがDRコンゴ資本である場合は税金と関税の優遇措置を設ける。

資器材輸入時の関税は、生産開始後5%としていたが、改正鉱業法では生産開始後3年間は5%と期間が限定された。なお生産開始以前の2%については変更なし。消耗品などについては10%、燃料・潤滑油については5%としている。

5. 資金の国内返還(第269条、第71条(b))

改正鉱業法は資金のDRコンゴ国内留保を強化し、プロジェクトの投資償還期間中には輸出収入から得た資金の60%はDRコンゴ内に留保し、海外債務への返済等の国外への送金を40%まで認めるとした。投資回収後はDRコンゴ国内に資金を100%留保しなければならない。

また、鉱山開発事業には参入者に最低40%の出資を義務付けている。

6. DRコンゴ国民の権益参加(第71条bis)

新たに10%のDRコンゴ企業の権益参加を義務付けた。DRコンゴ企業はDRコンゴ国民によって保有される会社とするが、既存の鉱業権について適用されるかどうかは不明である。

7. 国内選鉱・処理(第71条(h)、第108条bis(2)、第108条ter(1)及び(2)、第342条)

改正鉱業法ではAfrican Unionの定めたAfrica Mining Visionに倣い、鉱業権付与の際に、DRコンゴ国内の選鉱・処理能力が評価され、DRコンゴ国内の選鉱・処理について宣誓書の提出を義務付けた。

生産権者は、国内で処理を行うか、承認を受けた国内の業者を使用し、鉱業省に選鉱・処理についての計画書を提出する必要がある。

国外の選鉱・処理については、1年間の期間毎に認められる可能性があり、経済性に困難がある場合と特別な納税と義務の履行を行った場合とされ、詳細は別に定めるとした。

既存の鉱業権者については、条件を満たすための3年間の猶予期間を与えた。

8. 地域開発への貢献(第285条、第285条octies)

鉱業権者は毎年、その年の売り上げの0.3%を地域の開発に拠出することを新たに導入した。地域開発のためのファンドを設立し、地域の代表が独立して運営する。詳細については別途定めるとした。また、社会経済、産業開発の促進についても貢献を義務付けた。

9. 権益の移転等(第171条(1)、第185条ter、第276条bis、第276条ter)

改正鉱業法では権益比率の変更、権益の買収、合併に関しては、政府の事前の許可が必要になり、また権益の取引に関して取引金額の1%を政府へ支払うこととした。

鉱業権の移転等に関する権利の政府への登録の手数料が、以前はわずかな固定額であったが、改正鉱業法では取引金額に応じて0.1%から0.5%に引き上げられた。

10. 法律の変更と安定条項(第342条bis)

2002年鉱業法には安定条項が存在し、法律改正による変更は10年間の猶予期間が付与されていた。改正鉱業法施行後、国内選鉱・処理に関する一部を除き、直ちに新条件が既存の鉱業権者にも適用されるとした。改正鉱業法が5年以内にさらに変更される場合は、既存の鉱業権者はこの改正鉱業法の条件が適用されるとしている。この条項については2002年鉱業法における安定条項と矛盾しており、大きな混乱を招く要因として鉱業界からも大きな反発が出ている。

おわりに

本改正は同国で操業する鉱山会社には厳しい内容となり、また新規の鉱業投資にも影響することが確実と見られる。特に安定条項の排除に対する鉱山会社の反発は強く、鉱山会社が法的手段に訴えるとの報道もあり、今後も動向が注目される。

なお、原文は仏語であることから機構が翻訳を依頼し、仏英翻訳された文章を基に本稿は記述されていることから、正確な理解に当たっては原文を参照されたい。

ページトップへ