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報告書&レポート

2018年10月31日 金属企画部 久保田博志、シドニー事務所 山下宜範
18-23

第6回APEC鉱業担当大臣会合等報告

<金属企画部 久保田博志、シドニー事務所 山下宜範 報告>

はじめに

第6回APEC鉱業担当大臣会合(6th Ministers Responsible for Mining Meeting)が2018年8月23日、PNGの首都Port Moresbyにおいて開催された。アジア太平洋経済協力(Asia-Pacific Economic Cooperation:APEC)メンバーの国と地域(APECエコノミー)から豪州、カナダ、チリ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、PNG、ペルー、台湾、タイ、米国が参加し、このうち、豪州、PNGは大臣が、ペルーは副大臣が出席した。日本からは、竹谷資源エネルギー庁国際資源エネルギー戦略統括調整官が出席した。

本稿では、第6回APEC鉱業担当大臣会合の概要を報告するとともに、それに先立って8月21日、22日の両日開催された第12回APEC鉱業タスクフォース(12th APEC Mining Task Force Meeting)についても併せて報告する。

写真1.APEC会場 PNG国際会議場(ICC)

写真1.APEC会場 PNG国際会議場(ICC)

1. 第6回APEC鉱業担当大臣会合

1.1 APEC鉱業担当大臣会合とは

APEC鉱業担当大臣会合では、世界の金属鉱産物の生産量及び消費量の約70%を占めるアジア・太平洋地域が世界の鉱物及び金属市場において主要な位置を占めていくためには、域内の鉱業分野のハイレベルな枠組みの構築や今後取り組むべき課題や方向性についてAPECエコノミー間で議論していく必要があるとの背景から、チリ政府(鉱業省)の提案により2004年に設立された。APECの21の国・地域(エコノミー)から構成され、不定期的に開催されている。

今回は、鉱山会社CEOと鉱業担当大臣が参加する官民合同会合(Combined Forum of Industry CEOs and MRM)が8月23日午前に、鉱業担当大臣のみが参加する会合(Ministers Responsible for Mining Meeting:MRM)が同日午後、いずれもPort Moresby市内の国際会議場(International Conference Centre:ICC)において開催された。

写真2.APEC鉱業大臣会合(MRM)

写真2.APEC鉱業大臣会合(MRM)

1.2 官民合同会合

官民合同会合では、「鉱業への更なる投資をどのように促進するか(How to Promote Further Investment in Mining?)、イノベーションによる成長障壁の克服と包括的な開発‐価値の共有(Overcoming Innovation-driven growth barriers & Inclusive Development – shared values)」をテーマとして、基調講演に続き、PNGで鉱山を操業する鉱山会社、加Barrick Gold社、豪PanAust社、豪Newcrest社のプレゼンテーションの後、鉱業担当大臣及び鉱山会社による対話が行われた。以下、概要を紹介する。

(1) 基調講演(John Strongman氏、International Mining Specialist)

APECは、長年、一貫して鉱業投資の促進とそれによる地域の発展に焦点を当ててきたが、近年、デジタル化によるイノベーションを鉱業に如何に取り込んでいくかが課題となっている。世界的に投資を惹きつけるためには適切な財政、規制、立法環境を構築してそれを実施すること(“Good outcomes of mining achieved Good rule and Good capability”)、長期間にわたり投資を保証する安定的で予測可能な法制度とその運用が重要である。投資環境は国際的な競争の中にあることを認識する必要がある。

持続可能な鉱山開発には、鉱山開発からの価値の共有(share value)が重要である。価値(利益)とは収入と雇用であるが、従来、これを享受できたのは男性のみであり、女性の鉱山開発に関連した経済活動への参画が課題となっている。その点で、全てのステークホルダーとの協議を早期かつ継続的に行うプラットフォームを提供するPNGのユニークな開発フォーラムから他のAPECエコノミーは学ぶべきである。

(2) Barrick Gold社(David Forestell氏、Vice President Corporate Affairs)

PNGでは多くの鉱山投資が行われているが、鉱山会社は、技術・税制・資金調達法・法制度とその長期安定性と予測可能性、政府との鉱業契約などの観点から投資対象の国や地域を選択する。従って、資源を保有する国・地域は投資環境の競争下にある。

(3) PanAust社(Glen Connell氏, General Manager External Affairs)

鉱業は、適切に行われれば、社会経済開発に大きく貢献する。豪州やカナダなどのAPECエコノミーは鉱業が如何に広範な経済成長に貢献したかの良い例である。高品質で持続可能な鉱業投資を促進するようAPECエコノミー間で知見や経験が共有されることは重要である。

(4) Newcrest社(Ian Kemish氏, Executive General Manager, Public Affairs & Social Performance)

アジア・太平洋地域は鉱業の主要地域であり、鉱業投資の増加は社会経済的に大きな利益がある。将来の鉱業投資のための安定した基盤を地域に醸成するため、鉱山会社は、鉱山開発を受け入れる地域の社会開発と繁栄への投資に無関心ではいられない。また、自分たちのプロジェクトからの実質的かつ永続的な価値(利益)を期待している。

(5) 質疑応答等

1) 豪州資源大臣

鉱業を取り巻く環境は、10年前、5年前と変化し続けており、その中で、魅力のある鉱業投資先となるべく様々な施策を講じてきたが、他方で資源開発に際しては環境保護を訴えるグループが過度なキャンペーンを展開する状況にあり、その対処が課題となっている。

鉱業は、電気自動車の電池材料となるリチウム、コバルト、ニッケル、黒鉛等の鉱物資源やイノベーションなど新たな投資機会が生まれている一方で、様々な課題があり、それを特定して対応していくことが必要である。ソーシャルライセンス(Social License;鉱山開発に対する地域社会による許容)、地球環境の観点からの石炭鉱業への批判、中小鉱山支援、地域社会の経済活動への参画の機会創出など様々な課題がある。豪州においては、これらに対応して鉱業投資の呼び込むためのタスクフォース(Resources 2030 Taskforce)を設置して戦略ビジョンを策定している。

2) PanAust社

事例として、ラオスではNGO・国・地域との議論によって、鉱山開発における欠点(downside)を最小限に抑えた。そのためには法制度の支援や制度の安定性が不可欠である。政府や鉱山会社は正しい情報・クリアなメッセージを発していくことが重要である。

(モデレーターのどのような地域を探鉱ターゲットとしているかとの質問に対して)鉱山開発は、以前よりより大変困難になっている。多くの資金も必要になっている。

3) Barrick Gold社

PNG、アルゼンチン、チリなどで中国企業等とのパートナーシップのもと鉱山開発を行っている。鉱山の操業は長期間に及ぶものであり、事業をより価値のあるものにするにはパートナーは重要である。

4) Newcrest社

当社は、PNGにおいて鉱山操業等の多くの活動を行っているが、その際に重要なことはソーシャルライセンスを得ることである。そのためには透明性、技術移転、女性や先住民(indigenous)の支援、地域の利益の確保が重要である。地域との関係は、鉱山会社による学校等の社会基盤整備やトレーニングのような古典的なものから、国とのパートナーシップによる地域社会(経済活動)への機会創出へと発展している。

5) PNG政府

(地域の鉱山開発への関わりの事例として)Ok Tedi鉱山では、これまでに多くの投資が行われ、地域とのパートナーシップも築かれてきた。その結果、同鉱山は労働者にとって魅力的な職場となっている。

(モデレーターからPNG鉱業の今後について問われ)各政府と共に労働者にとって魅力的な環境を作ろうとしている。鉱山会社は、労働者をまずは鉱山地域から雇用し、その次に当該地方、全国に求めていく。教育は重要であり、イノベーションにより更に大学等の高等教育も必要となっている。

6) ペルーエネルギー鉱業副大臣

(ペルーにおいては)鉱業に対する不信感が増大している。ソーシャルライセンス、信頼の醸成が必要である。これまでは鉱山から得られる全ての利益を鉱山会社が享受してきたが、ステークホルダーの全てが鉱山開発に関わり、鉱山から得られる価値の分配が必要である。価値の分配は新たな概念であり、(大きさの決まったパイを分割するのではなく)パイ(そのもの)を大きくすることである。

しかし、地域社会には技術がない。地域と鉱山会社は永久に協力していくべきであり、国にはそれを支援することが求められている。

7) モデレーター(John Strongman氏)

政府には、正しい法規制(rule)を作り、それを正しく実施するグッド・ガバナンス(good governance)が求められており、価値の分配にはよき対話が不可欠である。

(会議後のモデレーターとの会話から)地域の鉱山開発への参加(inclusive、engagement)に関して、古いモデルでは地域と鉱山会社の二者間の関係が中心であったが、新しいモデルでは地域、鉱山会社に加え政府、更に、社会開発に関わる様々な関係者を含む複雑な関係が考えられている。

また、操業の効率化や安全対策は重要であるが、自動運転トラック等の導入によって雇用が奪われる恐れがある。また、自動技術の導入は当該地域ではなく外部の労働者が雇用され地域内ではなく地域外の経済にも貢献するが、技術導入には雇用喪失が伴うというジレンマもある。

8) Ok Tedi Mining社

イノベーションによって安全性が向上し災害も減少する。また、モニタリングにドローンを導入して365日の監視が出来るようになった。しかし、同時に注意も必要であると理解している。どのような技術を導入していくのか、そこにどのように労働者を参画させていくのかを考えていくことが重要である。

9) カナダ政府

技術向上と効率化は重要であるが、コミュニティとの関係も重要。このような事例を共有するためにもAPEC鉱業タスクフォース(MTF)のような場は必要である。

10) ペルー政府

鉱業セクターにとって地域コミュニティは重要であり社会的受容が必要とされる。特にペルーでは地域コミュニティとの関係が重要であると認識している。本件について他国との間でグッドプラクティスの共有を図っていきたい。

1.3 鉱業担当大臣会合

鉱業担当大臣会合では、午前中の官民合同会合における鉱山会社と鉱業担当大臣との対話をもとに、更に鉱業担当大臣による意見交換が行われ、最後に共同声明がとりまとめられた。

(1) モデレーターによる官民合同会合の報告(John Strongman氏)

鉱業を取り巻く環境(探査、投資、資金調達、技術移転、ソーシャルライセンス、地域との関係等)や地域社会の様相は変化している。この変化にどのように対処していくのか、知識や経験の地域社会や地方政府への移転などが課題である。財政面などに関しては地方政府レベルに重点を置く必要があるのではないか。

イノベーションは、鉱業の安全の向上、情報収集の向上、競争力向上、政策変更の促進、パートナーシップの促進などを起こし、より多くの利益を生むと期待されている。しかし、一方で地域コミュティの喪失、自動運転の導入による熟練(skill)の低下などが懸念される。

鉱業の未来は、非再生資源から持続可能な発展への移行にかかっている。魅力的な鉱業投資環境とは、良い政府、良いガバナンスであり、これらが投資を呼び込む。鉱山会社もそれに反応するだろう。

(2) 各国大臣(代表)のコメント

1) PNG

PNG国内の鉱山で働く労働者の90%はPNG国民であり、イノベーションによる先端技術の導入に先住民労働者は対応できなくなる恐れがある。それを緩和する方法を地域とともに考えなければならない。先端技術の導入に伴う中小鉱山への支援、利益の確保も必要になる。

2) カナダ

イノベーションによって、国際規模での鉱業分野における多角化が進み、どのパートナーを選ぶかが重要になり、途上国の鉱山生産が増加し、国際競争が激しくなる可能性もある。また、政策変更、労働者への再訓練、科学技術教育の充実なども必要になる。

鉱物資源開発による利益の確保が重要であるが、国際的に女性の経済活動への参加が課題である。カナダが中心となって国際的な協力のもと閉山チェックリストを完成させた。これは環境面からの地域社会への貢献であり、プロジェクトを採択・支援してくれた鉱業タスクフォースには感謝している。

3) 日本

持続可能な鉱山開発には、当事者間のコミュニケーションが不可欠である。対話、議論の継続が重要である。日本は鉱物資源の生産国というよりは消費国としての立場であり、その立場から安全な投資環境に重大な関心がある。

4) ペルー

イノベーションが鉱山や地域社会にもたらす影響に対する認識に鉱山会社と地域社会との間にはギャップがある。そのギャップを埋めるためには地域社会に対するトレーニングが必要である。新たな技術は雇用を削減するかもしれないが、地域住民のために新たな技術に係るトレーニングを実施し新たな雇用を生み出していくことが重要。新たな時代のために我々は新たな雇用の促進を考えていく必要がある。

5) 中国

中国は、2014年に北京で開催された第5回APEC鉱業担当大臣会合で確認されたアジア太平洋地域の鉱業分野の緊密な協力に沿って、国際化の流れの中で鉱業投資先の国に対して、コンサルテーション、貢献、協力を実践して相互利益を追求してきた。

各APECエコノミーの鉱業における競争力の観点からもイノベーションの鉱業への導入には賛同する。社会基盤整備や情報共有により地域社会の開発に貢献することが求められる。

6) タイ

2017年に新鉱業法を施行した。これは地域社会の鉱業活動への参加をより増やすことを目指している。他方で、漂砂鉱床の違法採掘者が法律の枠外で活動しているなど、持続可能な鉱業には課題もある。

1.4 共同声明の採択

鉱業担当大臣会合の最後に、共同声明(Statement of the 6th Meeting of the APEC Ministers Responsible for Mining Meeting)が採択された。

共同声明では、APEC鉱業政策10原則※1を支持し、「鉱業へのさらなる投資促進」、「イノベーションに基づく成長障壁の克服」、「包括的な開発‐価値の共有」を会合のテーマとしてあげ、鉱業分野における持続的な成長を達成し、環境への影響を最小限に抑え、地域社会の生計の向上等を確認している。

また、昨今の鉱業を取り巻く変化に対応して、リチウム、グラファイト、コバルトおよびニッケル等の新たなコモディティの出現および重要性の増大に伴い、鉱業セクターが引続き世界貿易に貢献する上で大きな可能性を持っていること、デジタル時代への移行に伴い将来の鉱山を確立するための技術革新とそれを実践・採用した革新的なビジネスの出現が産業革命を起こし、鉱業に大きな進展をもたらす可能性があることが盛り込まれた。

また、APECは鉱業タスクフォース(MTF)の実用的かつ実質的な作業を評価し、鉱業に関係する諸問題を民間と協力していくプラットフォームを継続することが確認されている。

2. 第12回APEC鉱業タスクフォース(12th APEC Mining Task Force Meeting;MTF12)

写真3.鉱業タスクフォース(MTF)

写真3.鉱業タスクフォース(MTF)

2.1 APEC鉱業タスクフォースとは

鉱業タスクフォース(MTF)は2007年9月の第15回APEC閣僚会議で決議・設立された。「タスクフォース」は恒常的組織である「ワーキンググループ」設立までの暫定的組織で活動期間は2年間と限定されていることから2年ごとに延長されてきた。

今回は、APEC鉱業大臣会合に先立ち、8月21日、22日の両日、APEC加盟11エコノミーが参加してPort Moresby ICCにて開催された。

2.2 各プロジェクトの報告

今年度、MTFで実施された以下のプロジェクトについて報告があった。

(1) 閉山チェックリスト(カナダ)

世界銀行など各機関や各国による閉山に関する既存の指針には様々なものがあり、これらを実際の閉山手続きに適用するには困難なものもある。このような実際の手続きとの乖離を埋めて、閉山に関わる当事者や協力者と政策とを結びつける必要がある。そのためカナダ政府が中心となってチェックリスト(Mine Closure Checklist for Governments)が作成され、鉱業会議等を通じて世界にこのチェックリストを広め、二国間或いは多国間での議論を深めていくことを目指している。その一環として、PNGにおいて先行的にワークショップが開催されたとの報告があった。

出席者からは、閉山は鉱業政策の中でも優先度が高く、特に中小鉱山の閉山対策が課題、閉山計画は重要であるが、他方、放棄された鉱山の対策が課題などの意見が出された。

(2) 鉱業の競争力:生産性改善、投資誘致のためのデータ(チリ)

チリ政府は、鉱業の生産性の向上のための情報提供等を行うため、21のAPECエコノミーから鉱業が盛んなチリ、ペルー、米国、露、PNG、カナダ、中国等の十数エコノミーを選び、銅、亜鉛、コバルト、鉄等の13鉱種について、生産・エネルギー消費・労働力、非流動資産の観点から、生産量・鉱石処理量・電力使用量・燃料消費量・労働時間・女性参加数・非流動資産を指標として、生産性を比較した調査(Mining Industry Competitiveness : Improving Productivity and Data to Attract Investment)の結果を報告した。データには推計や欠落が多いため、今後は情報の充実を図り、調査結果に基づいた施策の作成を進めるとの説明があった。

出席者からは、鉱業の競争力とその要因である生産性を経済学的に評価することは重要であると評価する意見や、複数の鉱種を産出する鉱山の場合は生産性をどのように評価するのか等の質問があった(回答:本調査は個別の鉱山ではなく巨視的に評価している)。

(3) 中小鉱山の鉱業開発ためのモデル(チリ)

中小鉱山は、鉱業の持続可能な発展に不可欠な、地域・環境・経済・社会発展・女性の社会進出等の重要な役割を担っているが、チリ政府はこれまで大規模鉱山を中心とした政策を実施してきたため、中小鉱山の技術、各種情報やファイナンスへのアクセス、社会的ライセンスの対策、労働力対策などは十分ではなかった。

そこで、チリ政府は、米国、チリ、ペルー、豪州等と協力して中小鉱山を支援するプロジェクト(Identify Good Practices in Policies/Models for SME Mining Development)を開始した。オンラインによる情報アクセスや分析、ワークショップ等を通じ、中小鉱山向けの支援政策の策定と関係者への共有を目指している。支援策としては、補助金等によるものではなく、中小鉱山が自立して健全な経営を行えるよう生産性・競争力を高めることが考えられている。

(4) APECエコノミーの小規模金採掘の水銀使用削減を促進するためのトレーニング教材の開発(米国)

小規模金採掘(Artisanal and Small scale Gold Mining:ASGM)は、世界の金生産の15~25%を占め、一部のAPECエコノミーにおいては経済発展においても重要であると認識されている。環境、健康及び安全問題から、水銀に関する水俣条約(2017年8月発効)を批准し、水銀を使用しない金回収がAPECエコノミーには奨励されているが、簡便な方法であるため小規模採掘者は水銀による金回収を続けている場合が少なくない。

そこで水銀による金回収が健康や環境への影響を考慮すれば経済的に安価な方法ではないことを啓蒙し、代替法による回収を進めるためのトレーニングキットを米国地質調査所(USGS)等が中心となって開発した(Developing Training Materials to Reduce Mercury Use and Improve Gold Recovery in Artisanal and Small Scale Gold Mining in APEC Economies)。

(5) 鉱山設備・技術・サービスの開発(豪州)

豪州は、チリ、ペルー、PNGと鉱業、設備、技術、サービス部門を比較して、鉱業の生産性向上にはAPECエコノミー間の類似点・相違点を考慮したMETSの発展が必要であるとの報告があった(Mining Equipment, Technology and Services (METS) Sector Development)。民間の出席者からは、METSの開発と技術移転のためのトレーニングの重要性が指摘されたほか、チリ代表からはチリのMETSは豪州のそれに倣ったものであり、先行事例はチリにとって有益であり、技術の導入を容易にしているとの意見が述べられた。

(6) 包括的な鉱業の推進(PNG)

政府は、鉱業における包括的開発(inclusive development)の重要性を認識し、民間部門やその他利害関係者が地域の社会・経済開発を促す適切な施策を講じなければならない。そのためには、ステークホルダーの包括的な参加、特に地域社会や女性の参加が重要であることを認識しなければならない。その事例として、PNGが取組んでいる「鉱業プロジェクトにおける先住民コミュニティと女性を含む地元の利益を扱う相談モデル(Consultation Model for dealing with local interests including Indigenous communities and Women presented by Papua New Guinea)」が紹介された。

2.3 各国からの鉱業に関するアニュアルレポートの報告

鉱業に関する経済、投資、競争力、人材と鉱物資源、地域と鉱業、新政策、APEC鉱業政策10原則の評価、その他関心事項の各項目に従い、豪州、カナダ、チリ、中国、マレーシア、PNG、台湾、タイ、米国、日本(その他関心事項として電動自動車の普及に伴う新たな鉱物資源の確保を説明)が報告を行った。中国は、余剰生産能力の調整や南シナ海における海底資源開発(メタンハイドレートの連続産出試験)について言及し、これに対して他のエコノミーからは、余剰生産能力の調整に対する雇用対策や海底資源開発による雇用創出の可能性に関する質問があった。

2.4 MTF継続の議論

鉱業タスクフォース(MTF)は、活動期間2年間の暫定的組織であることから2007年に設立されてから、2年ごとに延長されてきたが、2018年12月で満了を迎える。MTFに対しては、資源ナショナリズムへの対応や環境・地域対応などの資源国が直面する諸課題の対応や資源国と輸入国の議論の場として必要と考えその継続を支持する我が国のようなAPECエコノミーがある一方、APECの業務指示書(Terms of Reference:TOR)で定めた定足数14 APECエコノミーに達しないことが続いている現状から存在意義を疑問視し、廃止や鉱業ワーキンググループへの格上げを主張するなどAPECエコノミーで意見が分かれて議論が継続されていた。

今回のMTFでは、MTFの継続等が議論され、出席したAPECエコノミーの総意として、官民の対話(Dialogue)の重要性を認識し、それを継続していく方向性が示され、APEC鉱業担当大臣会合の共同声明には、「APECは鉱業に関係する諸問題を民間と協力していくプラットフォームを継続することに合意した」と記述された。

おわりに

鉱業担当大臣会合では、従来のAPECの鉱業政策の方向性(APEC鉱業政策10原則)を支持して、鉱業へのさらなる投資促進、地域社会の鉱業プロジェクトへの参加とそこから得られる利益の分配(包括的な開発)を重視する方向性が確認されたことに加え、昨今のデジタル化を中心としたイノベーションの鉱業分野への適用による持続可能で包括的な開発や、電気自動車市場の拡大に伴うリチウム・コバルト・ニッケル・黒鉛などの新たなコモディティの出現による鉱業の更なる発展の可能性等新たな方向性も示された。

他方、鉱業担当大臣会合やMTFが資源の供給側を中心とした意見交換等の場になっており、鉱物資源分野の主要な部分を占める消費側の参加意義が薄れつつある印象は否めない。資源ナショナリズムへの対応、新たなコモディティの登場、閉山後も見据えた地域開発などの課題への対応は、資源を保有する側(国・地域)だけではなく、開発側(鉱山会社)や消費側(製錬所・製造業等)も含めた対話の機会が不可欠であろう。

本会合で採択された共同声明には、APECはMTFの実用的かつ実質的な作業を評価し、鉱業に関係する諸問題を民間と協力していくプラットフォームを継続することも確認されている。このプラットフォームを活用して、資源の供給側と消費側との対話が進み鉱業セクターがより発展することが資源の安定供給の面からも望まれる。

※1)APEC鉱業政策10原則は、2007年2月14日豪州、パースで開催された第3回APEC鉱業担当大臣会合(MRM3)で採択された。

1. 鉱物及び金属の持続可能な生産、貿易、消費を強化する政策を遂行し、それにより、APEC域内の人々の経済的、社会的福利(wellbeing)を改善する。

2. 各エコノミーの鉱物及び金属分野における規制、政策、実践に関する経験や重要な開発について加盟エコノミー間で定期的な交流を促進する。

3. 市場透明性、貿易の円滑化を支援することを通じて、鉱物及び金属の世界市場が実現しうる最高の形で機能するよう推進する。輸出制限は、例外的な場合にのみ課され、WTOルールに基づく。

4. 自由な鉱物及び金属市場の追求、明確で予測可能な投資政策の遂行により、APEC鉱物分野における投資の確実性を促進する。

5. 経済的、環境的、社会的開発の成果を導くため、鉱業界の規制において効率性を向上させる費用効果的で証拠に基づく透明性のある目的に基づいた政策を促進する。

6. 国内、国際的な持続可能な開発目標に貢献する鉱物・金属業界、ステークホルダーによるイニシアティブを強化、支援、促進する。

7. 更に費用効果的で、効率的で、経済的に健全で、環境的に責任を有し、社会的に容認された新たな鉱物探査、採鉱技術、鉱害防止技術を開発し利用するための調査を促進する。上記技術に関して情報交換及び協力を促進する。

8. ライフサイクルのすべての関係者と協力して、鉱物及び金属から製造された原料及び製品が、責任をもって生産、消費、リサイクル、廃棄を確実にされるようにする。

9. 鉱物原料及び鉱物製品のライフサイクルにおいて、すべての関係者が、該当する行動分野において直接責任を取り、更にライフサイクルの他の段階においても共有の責任を取るよう促す。

10. すべてのAPECエコノミーが、鉱物資源開発による利益を最大化し、負荷を最小化することができるように持続可能な開発のための能力開発活動を支援する。

(引用)植松和彦「Mining & Sustainability(13)第3回APEC鉱業大臣会合」『金属資源レポート』2007.5、P70

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