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報告書&レポート

2019年1月9日 金属企画部 調査課
19-01

2018年 金属鉱物資源をめぐる動向

<金属企画部調査課 報告>

はじめに

2018年は米中貿易摩擦が激化するとともに米中の対立は覇権争いの様相を帯びてきた一年であった。JOGMEC金属企画部調査課では、2018年の金属鉱物資源分野における主な出来事を振り返り、以下の通りまとめた。

◆ 資源価格、米中貿易摩擦に揺さぶられる

2018年の資源価格は、3月の米トランプ大統領による通商拡大法第232条に基づく鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限措置発動、6月以降3回に亘って中国に対する追加関税措置を発動した米国とそれに対抗する中国との間のいわゆる米中貿易摩擦に揺れた。米中貿易摩擦は世界的な経済減速懸念とこれに伴う各非鉄金属の需要減退が懸念され、資源価格を下落方向へと導いた。また、中国が発表する経済統計が中国経済の減速傾向を示したことも資源価格下落の材料となった。しかし、これらの実際の需給に対する影響を確認することはできていない。

鉱種別に見ると、銅は6,800US$/tから7,000US$/tを中心に横ばいに推移したが、チリEscondida銅鉱山の労使交渉に伴いストライキが発生した場合の供給懸念で6月8日に2014年1月以来の高値となる7,262.5US$/tとなった。7月以降は米中貿易摩擦の激化と中国経済減速懸念により、急激に価格が下落、6,000US$/tから6,200US$/t前後を推移した。亜鉛はドル安の進行とLME在庫の減少により、2月16日に3,618.0US$/tと2007年7月26日以来高値となったが、その後は下落傾向となり、9月17日に2,287.0US$/tにまで下落。11月にはLME在庫の10年振りの低水準等の需給タイト感を背景に2,700US$/t前後まで持ち直した。ニッケルはLME在庫の減少(5月には約4年ぶりの低水準)、米国による露Rusal社制裁に起因して、同社が株式を保有する露ニッケル生産大手Norilsk社への制裁の波及懸念(4月)などで6月7日に15,750.0US$(2014年12月16日以来高値)となった後、下落傾向となった。

表1.2018年ベースメタルLME(settlement)価格概要(US$/t)
  年初価格 12月31日時点価格 最高値 最安値
7,181.0   5,965.0   7,262.5  
(6月8日)
5,823.0  
(9月4日)
2,544.0   2,009.0   2,683.0  
(2月2日)
1,867.0  
(10月31日)
亜鉛 3,377.0   2,510.5   3,618.0  
(2月16日)
2,287.0  
(9月17日)
ニッケル 12,690.0   10,595.0   15,750.0  
(6月7日)
10,595.0  
(12月31日)
図1.2018年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

図1.2018年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

(2018年1月=1.00)

◆ 貴金属市場:パラジウム価格急伸、金価格を超える高値

貴金属市場においては、金は1月25日に1,357.6US$/ozにまで上昇したが、4月以降好調な米国経済・ドル高により価格が下落した。

パラジウム価格(LBMA)は、年初1,079.0US$/ozから1,272.5US$/oz(2018年12月20日)まで高騰し、史上最高値を更新した。2017年9月以降、パラジウム価格はプラチナ価格を上回る高値で推移していたところ、2018年12月5日には16年ぶりに金価格を超えた。

ガソリン車の排ガス浄化触媒材料であるパラジウムの需要は拡大しているものの、露Norilsk社では銅・ニッケルの副産物、南ア・米国ではプラチナと共生して生産されるため急な増産は難しく、また、PGMの生産はロシア、南アが大半を占めており、供給元が限られていることも価格が高止まりしている要因の一つである。一方、ディーゼル車向け触媒材料であるプラチナは、1月25日に1020.0US$/tにまで上昇したが、脱ディーゼルの流れで需要が減少しており、価格は軟調に推移した。

表2.2018年貴金属LBMA価格(AM/PM平均)概要(US$/oz)
年初価格 12月31日時点 最高値 最安値
1,312.4   1,281.7   1,357.6  
(1月25日)
1,177.6  
(8月17日)
プラチナ 936.5   794.0   1,020.0  
(1月25日)
774.5  
(9月5日)
パラジウム 1,079.0   1,263.0   1,272.5  
(12月20日)
869.5  
(8月15日)
図2.2018年貴金属(LBMA)月平均価格の指標推移

図2.2018年貴金属(LBMA)月平均価格の指標推移

(2018年1月=1.00)

◆ 電気自動車需要拡大を見越したリチウムイオン電池素材金属供給網拡大

2018年、2017年に引き続き電気自動車(EV)に注目が集まり、リチウムイオン電池(LiB)に使用される素材金属の需要拡大が意識された。具体的には、リチウムプロジェクトの生産開始、中間製品・リチウムイオン電池部材の生産能力拡大などが世界的に伸展した。

日本企業については、住友金属鉱山株式会社が車載用LiB正極材に使用されるニッケル酸リチウムを増産し、豊田通商株式会社は参画するアルゼンチン・Oraloz塩湖プロジェクトの生産能力を2020年までに約2.5倍に拡張することを決定する等の動きがあった。中国や韓国のLiBメーカーも欧州・米国自動車メーカーとの電池売買契約を拡大しており、LiB部材生産体制を増強している。各社、調達リスクの低減及び性能向上に注力しており、今後LiB生産の競争はより激しくなるものと予想される。

なお、LiB素材価格についてはEV市場に対する過度な期待感が薄れたことから概ね下落傾向を辿った。正極材・電解質に使用されるリチウム(炭酸リチウム・中国現物価格)は年初170,000元/tだったところ軟調な値動きを辿り、12月は80,000元/tを下回る水準で推移した。コバルト(LME)は3月に年初比3割高の94,500US$/tの値をつけたものの、6月以降は下落傾向へ転じ、12月は55,000US$/t台の4割安となった。ニッケル価格(LME)も、6月には15,000US$/t台の高値をつけたが、12月は10,000US$/tの水準に下落した。

◆ 資源国の動向

2018年の資源国の主だった動きとしては以下のようなことがあった。

・インドネシア:PTFI問題、株式譲渡実行でPTFIに正式IUPK付与

2018年7月、Grasberg銅金鉱山を所有するPT Freeport Indonesia(PTFI)の鉱業事業契約(CoW)から特別鉱業許可(IUPK)への切替条件およびインドネシア資本への株式譲渡の交渉に関して、Freeport McMoRan社(FCX)、インドネシア政府及びRio Tintoが三者間での基本合意書を締結した。基本合意には、PTFIに2041年までのIUPKの付与、5年以内の新規国内製錬所建設義務、鉱山のオペレーターは引き続きFCXが務めること等が盛り込まれた。基本合意の結果、PTFIの株式保有率はインドネシア国営鉱山会社PT Inalum 51.2%、FCX 48.8%と定められた。

2017年1月の政省令制定以降、PTFIに関する鉱業契約の改定交渉が難航していたが、この基本合意締結で一応の決着をつけ、9月には三者間で正式契約が締結された。その後の株式譲渡実行に向けた交渉では、PTFIの環境違反問題等をめぐり協議が難航していたが、12月21日、インドネシア政府及びFCXはそれぞれ株式譲渡の実行を発表した。株式譲渡実行を受けてインドネシア政府からPTFIに正式にIUPKが付与されることとなった。PTFIに付与されるIUPKは2031年まで有効で、5年以内の新規国内製錬所建設や財政上の義務の履行を条件に2041年までの延長が認められること等が付帯条項として盛り込まれた。

・DRコンゴ:2018年鉱業法改正

DRコンゴでは、2018年6月に改正鉱業法が施行された。改正鉱業法にはロイヤルティの引上げ、鉱業プロジェクトにおける政府持分の増加、安定化条項の縮減等が盛り込まれ、政府による鉱業への関与が強まった。ロイヤルティに関しては、非鉄金属・ベースメタルは2.0%から3.5%に、貴金属は2.5%から3.5%に引き上げられ、戦略鉱物(コバルト、コルタン、リチウム、ゲルマニウムが含まれる)については10.0%が新たに設定された。また、2002年の鉱業法では10年間保証されていた安定化条項について、改正鉱業法では5年間と短縮された。この安定化条項の縮減は既存の鉱業権者にも適用されるとしていることから、鉱業界からの反発を招いている。

・南ア:鉱業憲章改正

南アの鉱業憲章は、歴史的に不利益を被ってきた鉱業セクターでの黒人、カラード及びインド系南ア人への鉱山権益の移行を目的に、2002年に制定された鉱物・石油資源開発法(MPRDA)で導入され、2010年に改正された。

2016年4月にZwane前鉱物資源大臣が全ての鉱山会社の権益の内最低26%以上を恒常的にHDSAs(Historically Disadvantaged South Africans)に付与すること等を規定した新鉱業憲章案を発表すると、鉱業界が懸念を示した。その後与党党首交代を経て2018年2月にMantashe氏が鉱物資源大臣に就任すると、鉱業憲章に関する議論が活発になり、ステークホルダーとのコンサルテーションや公聴会が実施され、6月には鉱業憲章の新案が公表された。

2018年9月に鉱業憲章改正案が閣議で承認・公表され、新規に鉱業権を取得する場合、BEE(Black Economic Empowerment)企業株式保有率については30%以上とすること等が定められた。なお、既存の鉱業権保有者で過去に26%を満たしていれば、鉱業権の移転あるいは更新時まで30%への引き上げが猶予されることとなった。

・チリ:労使交渉、Escondida銅鉱山のストライキ回避

チリでは、2017年11月~2018年12月の間、鉱山と労働組合の間における30件以上の労働協約更新が予定されていた。

特に世界最大の銅の産出量を誇るEscondida銅鉱山労働協約更新は、銅供給の世界への影響、チリの他鉱山への影響から注目された。Escondida銅鉱山は、本来2017年3月にそれまでの労働協約を終了、4月に更新となっていた。しかし、2017年4月にチリの労働法が労働者に有利に改正されたこともあり、労働協約交渉が難航、Escondida銅鉱山第1労働組合(2,500人)が2017年2~3月に44日間のストライキを実施した。結果として、合意に至らず組合は2018年7月31日まで労働協約を延長して、再度交渉となった。このストライキにより2017年第1四半期の銅生産量は対前年同期比63%減となり、BHPの損失は1.84億US$(対前年同期比169%減)となった。

2018年の労働協約交渉は、3月より開始するも労使の合意には達せず、6月に再度交渉を開始した。交渉は難航し、7月31日の期限を迎えても合意には達しなかった。8月2日に労働者側はストライキ権を確立したが、チリ労働省も仲裁に入り、17日BHPは最終合意に達したと発表した。合意内容は非公開である。

なお、銅価が回復して間もない2017年の労働協約交渉は、給与・ボーナス額据え置きの条件が目立ったが、2018年は賃上げや一時金の支払い等での合意が目立った。また、労使協約の更新に関しては、Andina銅鉱山等一部でストライキはあったが、多くはストライキを回避して労使協約の締結に至った。

◆ 資源企業の事業の選択と集中の更なる進展

資源企業各社の動向は、昨年来の選択と集中の方針が継続された。Rio Tintoは残るHail Creek及びKestrelの両原料炭炭鉱を含む石炭資産を売却(3月)し、資源メジャー5社で唯一、石炭事業から完全に撤退した(他4社はBHP、Vale、Anglo American、Glencore)。また、Rio TintoはナミビアのRössingウラン鉱山の全保有権益を中国核工業集団の傘下企業に売却(11月)、他のウラン資産の売却も模索中との情報もある。一方、BHPもかねてより対応が注目されていた米国の全陸上石油・ガス資産(Eagleford, Haynesville, Permian, Fayetteville)を売却した(11月)。

その他資源企業の選択と集中においては、最近のEV需要拡大の気運に伴い需要の拡大が期待される二次電池用金属素材(バッテリー・メタル)に注力する動きが複数見られた。Rio TintoはセルビアのJadarリチウム・ホウ酸塩プロジェクトを、BHPは豪州のVenusニッケルプロジェクトをそれぞれ引き続き推進している。

新規の買収/投資案件として最も多くの動きが見られたのは銅で、BHPはエクアドルのCascabel銅プロジェクトを保有するSolGold社の株式を買収し(9月)、中国の紫金鉱業は欧州・アフリカの銅プロジェクトを保有するカナダのNevsun Resources社及びセルビアの国営産銅企業のRTB Bor社を買収(いずれも9月)した。本邦企業においても三菱商事のペルー/Quellaveco銅プロジェクトの権益追加取得(6月)、住友金属鉱山と住友商事の共同によるチリ/Quebrada Blanca銅鉱山の権益取得(12月)の大型投資が発表された。

リチウムでは中国のリチウム生産最大手の天斉リチウムによるチリの同業大手SQM社の株式買収(12月)や、世界最大のリチウム生産者である米国のAlbemarle社による豪州のWodginaリチウム鉱山の権益取得(12月)等、大手企業の動きが顕著であった。

一方、JX金属はドイツのタンタル・ニオブ製品メーカーのH.C. Starck Tantalum and Niobium社を買収(2月)、事業領域及び取扱商品の両面で既存事業を補完しシナジー効果を追求する戦略に独自性が見られた。

◆ JOGMEC、海底熱水鉱床の開発に向けた更なる進展(新鉱床発見・鉱石からの亜鉛地金製造の成功)

JOGMECは、伊豆諸島青ヶ島沖において高品位の金・銀を含む銅・鉛・亜鉛を主体とした海底熱水鉱床(「東青ヶ島鉱床」と仮称)を確認した(採取した33試料の平均品位:銅1.00%、鉛6.21%、亜鉛23.91%、金17.02g/t、銀1,300g/t)。今後、引き続き調査を行い、その広がりを明らかにしていく予定である。

また、10月には、沖縄海域の海底約1,600mに存在する海底熱水鉱床の鉱石から、国内製錬所の実操業炉を用いて亜鉛地金を製造することに成功した。平成29年度に世界で初めて海底熱水鉱床の鉱石の採鉱・揚鉱に成功したことに続き、この度、鉱石から地金製造ができることを実証した一連の成果は、国内で産出する鉱物資源として産業に利用できる可能性を示すものであり、資源の安定供給につながる大きな一歩である。

同じく10月には海底熱水鉱床開発に関する総合評価を実施し、これまでの取り組みに対する技術的評価と経済性検討を行っており、当該評価で整理した様々な課題や提言を踏まえて、今後は国が定める「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」が改定され、海底熱水鉱床の今後の取り組みに関する方向性や具体的な計画が示される予定である。

◆ 企業によるSDGsを意識した取り組みの強化

2018年は、企業や政府によるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)※を意識した取り組みに注目が集まった。

特に、鉱物のサプライチェーンにおいて人権問題や労働環境の問題、汚職等の不正行為への取り組みとして責任ある調達(responsible sourcing)が注目された。世界のコバルトの6割近くを生産するDRコンゴにおける違法採掘や児童労働が大きく問題視される中、採掘過程において人権侵害や過酷な労働環境での採掘等の問題がないかに対する注目が集まっている。

金属取引所や金属鉱物を原料として用いるエンドユーザーもこうした責任ある調達への取り組みを強化している。ロンドン金属取引所(LME)は、上場する商品の基準として、品質だけではなく調達段階で責任ある調達を行っているかを重視する方針を打ち出し、2018年10月には責任ある調達に関するポジションペーパーを発行した。また、金属鉱物を原料として用いる電池メーカー等のエンドユーザーも原料調達の過程で不正や問題が生じていないかを重視し、サプライチェーンに人権問題や金融犯罪等の可能性がある鉱物を扱う会社とは取引を控えるという潮流が生じている。

責任ある調達以外にも、鉱山開発や閉山後の周辺環境への配慮や気候変動への取り組み、職場でのジェンダー平等の実現等、企業によるSDGsを意識した活動が目立つ。企業のコンプライアンスや社会的責任(CSR)が重視される中、企業に対して事業の透明性の発信が求められる潮流は今後も継続するとみられる。

  • ※ SDGsとは、2015年9月に国連総会で採択された17の国際目標。2030年までを年限として「誰一人残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指し、貧困や飢餓の撲滅・ジェンダー平等の実現・気候変動対策等の目標が定められている。

おわりに

中国経済の減速懸念及び米中貿易摩擦により金属価格は上値の重い展開が続いている。先行き不透明な中、資源獲得のため積極的に海外鉱山投資を続ける中国企業に加え海外大手資源企業や日本企業も海外鉱山投資に動き始めている。このような状況の下JOGMECとしては本邦企業の資源確保に向けた様々な支援を進めていくとともに、金属企画部においては2019年も金属資源の安定供給確保に資する情報提供に引き続き務めて参りたい。

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