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報告書&レポート

2019年1月10日 ロンドン 事務所 福田光紀、吉益英孝、ザボロフスキ真幸
19-02

2018年LMEウィークを振り返る

<ロンドン事務所 福田光紀、吉益英孝、ザボロフスキ真幸 報告>

はじめに

2018年10月8日の週にベースメタルの市場関係者、生産者及び需要家等が英国ロンドンに一同に集い、多くのセミナー、レセプションが開催されるLMEウィークが開催された。例年通り、銅、ニッケルを中心としたベースメタル市場の見通しや世界経済動向が各社から発表されたが、今年は米中貿易摩擦に話題が集中し、マクロ経済下での金属市場の見通しに注目が集まった。本稿ではLMEウィーク期間中に開催されたLME主催のLME Metals Seminar(10月8日)、Macquarie社主催のLME Base Metals Summit(10月8日)、CRU社主催のCRU Breakfast(10月9日)、Wood Mackenzie社主催のLME Forum 2018(10月10日)で議論された動向についてまとめた。

1.LME Metals Seminar

2018年10月8日(月)、LME主催のLME Metals Seminarが開催され、LME ウィークがスタートした。午前中は、非鉄金属市場におけるマクロ経済及び金属価格動向の講演や「責任ある調達」をテーマにパネルディスカッションが開かれ、午後はChina Seminarと称して中国の経済見通し、米中間の貿易摩擦動向が説明された。以下、鉱種別の専門家による講演「The Metals Debate:Speed and analysis and debate」から金属セクターにおける見通し、責任ある調達に関してのパネルディスカッション「Action on responsible sourcing – how the metals industry is addressing the issues」の内容をまとめる。

1.1 金属需要見通し

銅市場見通しを発表したCRU社のVannessa Davidson氏は、2018年第4四半期は銅カソード在庫の減少傾向や中国の銅スクラップ輸入禁止など銅価格においてポジティブな要因があるとし、2019年もそれは続くとした。2019年の世界の銅消費は、中国からの需要増(前年比3.5%増)が牽引し、前年比2.9%増加と堅調な成長をすると予測。鉱山生産量においては、2019年は新規プロジェクトの欠如及び既存鉱山ではGrasberg鉱山が坑内掘りへの移行に伴い大幅な減産を予定していることから成長率は鈍化するとした。また、2019年の地金生産量は中国の生産量が前年比2.3%増となることに加え、アフリカを中心とするその他地域でも生産増が見込まれることから、世界全体では前年比2.9%増と予測。地金市場はバランスに向かうとし、2019年の銅平均価格は6,420US$/tと予測した。

鉛市場見通しを発表したBank of American Merrill Lynch社のMichael Widmer氏によると、鉛市場は安定しており、在庫も不足する兆しはなく、鉛スクラップの供給は増加傾向にあるとした。一方、需要サイドでは、中国需要が鈍化している。過去数年E-bike向けの鉛電池需要は安定していたが、中国でのE-bikeの生産量の減少及び利用率の低下が起因し、鉛電池需要を鈍化させているとした。2019年の鉛平均価格は2,150US$/tと予測。

亜鉛市場見通しを発表したMacquarie社のVivienne Lloyds氏によると、2018年の亜鉛価格は米中貿易摩擦の影響を受け下落したが、中国の製錬所が利益減及び環境規制の強化の影響で閉鎖したことにより地金生産量が減少し、需給がタイトになることで2018年末の亜鉛価格は3,000US$/t近くまで回復するとした。2019年は新規鉱山による生産開始が相次ぐことから市場がバランスし、価格は軟調に推移するとした。

ニッケル市場見通しを発表したArgus社のMark Seddon氏は、中国及びアジア諸国におけるステンレス鋼の堅調な需要増および電池向けニッケル需要拡大に加え、ニッケル鉱山への投資の欠如が、EVバッテリーに必要なClass1ニッケル及び硫酸ニッケルに影響を与えるとした。2019年は供給不足が継続し、2019年のニッケル平均価格は17,000US$/tと予測した。

1.2 LMEの責任ある調達に関する方針説明書(ポジションペーパー)の概要

LMEは、LMEウィークに先駆けて10月5日(金)に責任ある調達に関する方針説明書(Responsible Sourcing:LME Position Paper)を発行。方針説明書では、全てのLME上場ブランドに対し、責任ある調達に関するリスク要因を評価し、OECDガイダンスである“Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains of Minerals from Conflict-Affected and High-Risk Areas”に準拠したアセスメントの実施を求めている。LMEは、生産者と共に個々の商品の生産に対しOECDで定義されている“Red flag1”であるかを評価し、商品が「Higher」または「Lower」ブランドであるかを分類する。「Higher」ブランドとは、責任ある調達のリスクが高い商品を指し、OECDガイダンスに準拠する必要があることを意味すると同時に、Alignment Assessment及び監査を受け、商品がOECD基準を満たしていることを証明する必要がある。コバルト及び錫は、自動的に「Higher」ブランドに分類される。一方、その他のLME商品であるアルミニウム、アルミニウム合金、銅、鉛、モリブデン、ニッケル、亜鉛はOECDガイダンスに準拠する必要は無いが、“Red flag”セルフアセスメントを受け、責任ある調達リスクが低いことを意味する「Lower」ブランドであることを証明する必要がある。また、「Lower」ブランドは、毎年再審査を必要とし、「Higher」ブランドに認定された場合は、OECDガイダンスを満たす必要がある。さらに、LMEはOECDガイダンス以外に、上場商品がISO14001(環境マネジメント)及びOHSAS18001(労働安全衛生マネジメント)にも準拠することを求め、LME商品が包括的に責任ある調達を遵守している商品であることを目標としているとした。(図1)

LMEが提案したこれらの規定のタイムラインでは、コバルト及び錫ブランドが2019年第4四半期までに“Red flag”アセスメントの完了、2020年末までにはOECDガイダンスを遵守することが求められている。その他の「Higher」ブランドについては、2020年第4四半期までに“Red flag”アセスメントを完了し、2021年末までにOECDガイダンスを遵守することが求められている。適正な調達を証明できず、遵守していないブランドは上場廃止の対象となるとされた。LMEは、2018年11月30日まで同方針説明書の市場からの意見を募った。

図1.LMEが提案する行動指針:アセスメント及びネクストステップ

図1.LMEが提案する行動指針:アセスメント及びネクストステップ

(出典:Responsible Sourcing: LME position paper October 2018)

1.3 責任ある調達についてのパネルディスカッション
“Action on responsible sourcing – how the metals industry is addressing the issues”

パネルディスカッションには、OECDのTyler Gillard氏、業界団体Responsible Business Alliance(RBA)のMichele Brulhart氏、国際銅協会(International Copper Association)のAndrea Vaccari氏、国際NGOのGlobal WitnessのSophia Pickles氏が登壇し、責任ある調達の最新動向について語った。

OECDのTyler Gillard氏は、責任ある調達とは、紛争地域及び高リスク地域からの鉱物(主に(タンタル、錫、タングステン、金:3TG)のサプライチェーンにおいて人権、環境を尊重するとともに、紛争や不正への関与を回避するためのリスク管理のみを指すのではなく、鉱山操業における環境破壊、人権侵害、労働問題、健康及び安全性の課題を克服し、汚職やマネーロンダリングといった不正行為に関与しない調達を目指すという意味が含められていると説明。OECDでは、鉱物調達に関わる企業に対し、標準となるOECDガイダンスを提供し、企業がサプライチェーンを可視化するシステムを導入するように促しているとし、OECDガイダンスに沿ったLMEの方針説明書は業界に良いインパクトを与えるだろうと評価した。

国際銅協会のAndrea Vaccari氏は、既存の責任ある調達に関する枠組みが多すぎる点、枠組みによってカバーする範囲が広く持続可能な調達を意味している場合や、紛争鉱物に絞っている場合等多岐にわたる点が、枠組みを遵守しなくてはいけない業界側としては非常に難しいと指摘。また、銅はエンドユーザー数が多く、サプライチェーンが複雑であることから、現在、3TG金属業界がすでに実行しているデューデリジェンスの成功例及び課題から銅業界は学ぶことが多々あるとした。現在はサプライチェーン、エンドユーザー、OECD、RBA、NGOといった多くのステークホルダーと責任ある調達のコンセプト及びニーズに関して対話を重ね、より透明性の高いサプライチェーンを目指しているとした。

自動車企業、大手電子機器、IT会社等を中心とする約125社によって構成される業界団体RBAは、企業に対して責任ある調達を可能とするための監査を含むリソースやツールを提供している。RBAのMichele Brulhart氏は、EV需要の高まりによりバッテリー向けに使用されるコバルトの責任ある調達が注目され、コバルト製錬所からのニーズが高まっていることから、これまで3TGの紛争鉱物に適用してきたRBAの監査ツールをコバルトの調達に適用しようとしているとした。また、責任ある調達において様々な枠組み及びイニシアチブが多々存在することは必ずしも悪いことではなく、各業界、各金属の焦点及び主要課題の差異の表れでもあると言及した。これに対しRBAでは、各スキーム及びイニシアチブとの対話を促進することを目的とした“Mining engage team”を設立し、それぞれのスキームの把握、または提携の可能性を模索するためのオープンスペースを作っているとした。

NGOのGlobal WitnessのSophia Pickles氏は、金属業界の責任ある調達におけるコミットメントを歓迎し、OECDガイダンスを共通のベンチマークとして遵守していくことに同意しているとしたが、企業が責任ある調達の業界イニシアチブに参加することや、監査を受けるだけでは不十分であると指摘した。また、重要な点は、OECDガイダンスを満たし、市場に適切な保証を提供するために、全ての企業が毎年サプライチェーンのデューデリジェンス活動をアニュアルレポートで公に報告することであるとした。LMEの方針説明書に関しては、上場ブランドの全ての生産者に報告を行うことを明確に要求しておらず、改善の余地があるとした。

責任ある調達の次のステップとして、企業は扱う金属が紛争鉱物のリスクが低い金属だったとしても、その他のリスクである水利用、化学物質利用、地域コミュニティとの連携、気候変動、賄賂、マネーロンダリングといった課題に取り組んでいく必要があるとした。欧州紛争鉱物規制が2021年に適用されることも踏まえ、企業は紛争鉱物に限らない企業全体の活動としての責任ある調達を遵守していくことが求められる。

2.Macquarie社による2019年金属見通し

2018年10月8日(月)に開催されたMacquarie社主催のLME Base Metals Summitでは、米中貿易摩擦に注目し、その影響も含めた世界経済動向、金属需給動向が発表された。以下、講演内容と配布された資料からMacquarie社の金属セクターにおける見通しをまとめる。

中国の産業再編の動き(鉄鋼、ベースメタル、電力、石炭の生産量の調整)と大気汚染防止を始めとした環境規制の強化、米国主導の中国との貿易摩擦と対ロシアも含めた各種の制裁措置は短期的なコモディティ価格の上昇を招いたが、その影響は徐々に薄れつつある。中国の産業再編についてはコモディティ投資家の理解が深まり、対露制裁については解決の方向に向かいつつある。米中貿易摩擦が両国のGDP成長に与える影響は0.25%程度と考えており、2019年には正常な状態に戻ると見ている。一方で、それまでの堅調な市場とは変わり、米中貿易摩擦の影響を受けて2018年初めからベースメタルの市場は低調であったが、ファンダメンタルズでは堅調な兆候があるものの、この奇妙な弱気の市場は続くと見ている。鉱山上流事業への資本投資のサイクルは2012年をピークに下落していたが、2016年に底を打ち、上昇基調に入ったと考えており、26~27bUS$程度の投資が2020年まで毎年続くと見ている。

銅については、昨今はマクロ経済の影響を強く受けるようになってきたと考えている。鉱石生産については大きな伸びは見込めず、2019年の伸びは1%程度と見込む。銅需給は2019年には2018年同様にバランスした状態が続くと見ているが、中国の電力網向けの需要が堅調であることから、銅価格は7,000$/t台には戻らないものの2019年は6,000$/t台中盤で推移するとみている。中国の需要の伸びは、インフラ分野での需要回復と消費財分野での伸びが好調なことから2019年には3.3%を見込んでおり、2020年は減速するものの成長は継続、わずかな供給不足の水準で需給はバランスした状態が続くと予想する。

亜鉛については、最近の下落基調なベースメタルの動きに影響を受け、更なる価格下落の可能性もあると見ている。複数の新規鉱山が鉱石の供給を開始し市場が緩和されることから、亜鉛価格の下落とスポットT/C上昇の負の相関関係は継続、需給は緩む状態が続くと予想している。Glencoreの増産が緩やかであることや中国の環境規制の影響もあるものの、Dugald River鉱山、Castellanos鉱山、Empire State鉱山、Century鉱山が新規に生産を開始し、全体の鉱石生産量は堅調な伸びを見せると予想しており、2019年には3.5%の成長を見込む。需要についてはアルミニウムなどの代替品に押され大きな増加は期待できず、2019年は供給の成長が需要の成長を上回る形となり、2020年以降は供給過剰に転じるとした。

ニッケルについては、2018年1月から9月までに160千t以上の在庫の減少(LME在庫以外の未報告在庫60千t以上を含む)が報告されているにもかかわらず、価格の下落が起きている。2017年から続いているインドネシアの鉱石輸出の緩和によって、中国への鉱石供給の流れは安定しているが、インドネシア政府はニッケル処理施設・製錬所の建設が遅々として進まない輸出許可者から、許可を停止し始めている。フィリピンの鉱石輸出に関しては、品位の低下によって中国との取引量は落ちていると見られる。一方でインドネシアのNPI生産能力は継続的に増加しており、2018年には前年比37%上昇し年産253千t、2022年には2倍の年産508千tに達すると予想している。ニッケル価格は2017年に比べれば高い水準にあり、生産設備への投資が戻ってきている。中国とインドネシアの企業はHPAL設備をインドネシアで建設し、電池市場向けにニッケル化合物の供給を近いうちに始める予定としている。2022年までに電池市場向けのニッケル生産量は269千tに達する見込みであり、一部では電池市場向けニッケルの不足が懸念されている。

コバルトについては、現在価格の下落に直面しており、中国の需要家は資金難と多くの在庫を抱えており、鉱山生産も増加が見込まれることから、更なる価格の下落を予想している。Glencoreは既にDRコンゴの2Kamoto鉱山での年産34千tまでの増産を発表しており、着実に生産量は増加していると見られる上、MetalkolプロジェクトやMutoshiプロジェクトからそれぞれ年産10千t以上が供給される見通しであることから、DRコンゴでは大きな増産が見込まれている。これらの状況により、鉱山生産量は2018年に前年比12%、2019年には前年比27.5%の増加、それ以降も8~9%の成長が予想されている。そのため需給バランスは供給過剰に陥ると見られ、2019年のコバルト価格は20$/lbを下回ると見ている。EV市場に関しては、OEMメーカーが電池におけるコバルトの少量化を目指して動いており、NCMリチウムイオン電池(LiB)の正極材構成比率を532から811へと転換する研究開発を進めているが、SK Innovation社とLG Chem社の韓国勢は既に811の開発の遅れを発表しており、コバルトの少量化の動きは当初の予想よりは遅く、早くても2020年以降に811電池の供給が始まると考えており、コバルト需要に与える影響は限定的と見ている。

表1.Macquarie社によるコモディティ予測
亜鉛 ニッケル コバルト
2019年需要 2.7%増 1.5%増 2.2%増 7.7%増
2019年供給 2.4%増 3.5%増 6.6%増 13.1%増
需給バランス ▲20千t ▲212千t ▲50千t 9.07千t
予想在庫量 7.7週分 4.1週分 12週分 23.4週分
2019年価格予想 6,500US$/t 2,338US$/t 15,000US$/t 約44,000US$/t

(出典:Macquarie社資料よりJOGMEC作成)

3.CRU社による2019年金属見通し

2018年10月9日(火)に開催されたCRU社主催のCRU Breakfastセミナーにおいても、米中貿易摩擦に焦点が当てられ、そのような世界環境下での世界経済動向、金属需給動向について発表があった。以下、CRU社の金属セクターによる見通しをまとめる。

3.1 マクロ経済動向及び米中貿易摩擦による金属への影響

2019年の世界成長見通しは、全体的に堅実だが、僅かに鈍化するとし、それぞれGDP成長率は、2019年に世界で2.9%、中国6.0%、ユーロ圏1.7%、米国2.0%、インド7.0%、中南米2.4%、東南アジア4.9%と予測。米国は、トランプ大統領による税制改革によって消費者支出が拡大するため2018年のGDP増加率は2.8%になると予測。しかし、2019年は税制改革の影響が安定してくることに加え、約2,000億US$相当の中国製品への関税措置は米国経済に打撃を与えると予測。一方、中国は、政府が経済減速のバランスを取り戻すと発表している通り、2017、2018、2019年のGDP成長率は、約6.0%~6.5%に留まっており、持続的で安定した成長を保つという目標を実現している。

2018年3月にトランプ大統領は米通商拡大法232法に基づき鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品には10%の関税を課すと決定。アルミニウムは、10%の関税が課されることで2019年末までには生産コストが24億US$に増加すると見積もられ、著しい影響が加わるとされた一方、亜鉛及び銅への直接的な影響は限定的だとした。特に銅は、2017年における米国による中国からの銅製品輸入価値は12億US$と少なく、また、輸入品目は、主にワイヤー及びケーブル、エアコン及び冷蔵庫といった下流製品が占めており、銅精鉱及びカソードといった上流銅製品は輸入していない。また、米国から中国への銅製品輸出価値は23億US$となっており、その大半をスクラップが占める。中国は米国の銅スクラップ製品に25%の関税を課しているため、今後影響が表れると予測。米中貿易摩擦は、鉄鋼及びアルミニウム製品には直接的な影響があるが、銅及び亜鉛といったその他の金属への影響は貿易摩擦によるGDP成長率の鈍化による消費量の減少に繋がるといった間接的な影響に留まるとした。

米中貿易摩擦というマクロトレンドは、2019年の金属価格に影響を与える主要因になると考えられる。2019年は、アルミニウムが価格不確実性、亜鉛が短期的な供給過剰、銅が6,500US$/t以下だと利益を生み出さないことから投資が難しいと予測。また、資源メジャーも新規投資には未だ積極的ではない。BHPは、新規投資は現在アジェンダには無いとしており、Rio Tintoは量より質を掲げている。

表2.CRU社によるコモディティ予測
亜鉛 ニッケル コバルト 鉄鉱石
2019年需要 2.8% 1.2% 4.1% 7.9% 1.0%
2019年供給 2.7% 6.1% 7.5% 8.6% 2.4%
供給不足になるか No No Yes No No
在庫は少ないか No No No No No
2019年操業コスト 11.3%増 12.1%増 0.7%増 3.4%増 6.2%増
2019価格予想 6,420US$/t 2,450US$/t 14,500US$/t 88,200US$/t 61US$/t

(出典:CRU社講演資料よりJOGMEC作成)

4.Wood Mackenzie社による金属見通し

2018年10月10日(水)に開催されたWood Mackenzie LME Forum 2018においては、バッテリー原料や中国の動向に重点を置きつつ、世界経済動向、金属需給動向予測が示された。以下、Wood Mackenzie社が示した見通しをまとめる。

4.1 マクロ経済・バッテリー原料動向の見通し

世界成長見通しは、好調だった2018年の勢いが継続されるが、経済の成熟局面に入ることにより、今後3年以内に減速することが見込まれる。将来に対するリスクが高まっており、次に訪れる危機に対して各国政府は策不足の状況。特に貿易の保護主義化は今後も終結しそうになく、中国側の反応が極めて重要となる。

バッテリー原料の見通しについては、まず、2025年までに電気自動車の販売割合が10%を超えることは相当難しく、2025年で6%未満、2030年でも11%未満と予想する。そのような中、世界の多くの自動車メーカーはリチウム-ニッケル-コバルトを用いた電池を採用している。コバルトについては、中期的に供給過剰状態になると見込まれ、価格の下げ圧力につながるが、一時的なものと予想される。引き続き供給についてはDRコンゴへの依存は避けられない。また、LiBの技術は理論限界に近づきつつあり、エネルギー密度のブレークスルーが必要とされている。長期的な探鉱プロジェクトにおいては既に問題が顕在化しているが、今後、リチウムとコバルトへの投資の妨げになる可能性がある。

4.2 金属需給動向の見通し

銅については、市場が大きく揺れ動いており、米国や中国等の政策動向がサプライチェーンや短期的な消費傾向に影響を与えている。鉱山からの供給は2018年に大きな混乱も生じておらず、予想を上回る増加となる見込み。長期的には依然として新たな供給源が必要。既にいくつかの新たなプロジェクトが認可されているが、さらなる新規プロジェクトが必要な状況。しかし、短期的な市場の不確実性が新たなプロジェクトに対する投資を妨げてしまうリスクが存在している。

ニッケルについては、今後も継続的な供給不足、在庫の減少、価格の上昇が見込まれる。しかし、更なるフェロニケッルの生産、そして青山集団のバッテリー向けニッケルの生産におけるHPAL技術の積極的活用により、中長期的には需給が逆転する可能性がある。青山集団がHPAL技術の導入に成功すると、他の中国企業も同様のプロジェクトを進めることになり、長期的に見ると、供給不足問題の解決につながる可能性がある。

亜鉛・鉛については、2023年までに新規プロジェクト及び既存鉱山からの生産により亜鉛:300万t/年、鉛:100万t/年の増加が見込まれる。なお、亜鉛生産時の環境対策についてはリスクが顕在化しているが、十分管理可能な状況である。今後亜鉛精鉱は供給過剰が見込まれる状況であり、製錬所の稼働率を上げることが必要。ただし、世界の製錬所は既に余裕がない状態であり、中国の製錬所の生産能力引上げが期待される。もし2019年の地金生産量が9%増に留まるならば、地金市場は供給不足状態のままとなり、在庫が減少し、価格上昇により資金が流入することになる。鉛の価格については、米ドルの動きを追随しているだけであり、大きな動きはない。LME在庫も低水準で安定している。急成長している中国を除けば、供給はスクラップ由来の再生鉛の方が支配的である。今後の鉛の需要の伸びは、自動車所有率が低い発展途上国の状況に依存している。

アルミニウムについては、2019年は価格の変動が予想される。さらに、将来的な供給逼迫を避けるためには、新たな製錬能力の増強に向けた早急な投資決定が必要となっている。UC Rusal社については顧客との関係でビジネスを継続できるものと期待。米国の貿易政策は2019年も引き続き注目を集めることとなり、市場も感情的に反応すると考えられる。中国は中期的にアルミニウム産業が形成されようとしており、これまでの製錬所の優位性が失われることが予想される。

所感

今年のLMEウィークにおいては、米中貿易摩擦の影響評価や中国の産業・環境規制動向が特に注目を集めたが、欧州側の話題としては、紛争鉱物に関するEUの規制が2021年から開始されることも踏まえ、LMEにおける責任ある調達についての新たな取り組み案の発表が行われるなどの特色が見られた。LMEウィークのみならず、責任ある調達については最近の大きな話題であり、各種のカンファレンス等でも議論されている。イギリスのEU離脱に関する話題も触れられたが、LMEは引き続きロンドンにて業務を継続できるような対策をEU側と共に進めている旨の説明があった。引き続き各国の政策動向は市場関係者の注目を集めることになると見込まれる。


  1. OECDガイダンスでは、紛争地域及び高リスク地域からの鉱物、またはその鉱物から生成された金属副産物を利用する企業に対し、“Red flag(危険信号)”をいくつか列挙し参照することを推奨している。鉱物が(1)紛争地域または高リスク地域を原産地とするもしくは輸送の際に経由しているか(2)企業のサプライヤーまたはその他の上流の企業が、紛争地域や高リスク地域で操業もしくは鉱物を調達している企業の株式を保有しているか等が参照ポイントとして挙げられている。
  2. Katanga Mining社は、2018年11月6日付けで、輸出許容限度を超える放射能を検出したとし、DRコンゴのKamotoプロジェクトからのコバルト輸出及び販売の一時停止を発表した。これまで検出された放射能は低レベルで安全衛生上のリスクは無いとしているが、ウラン除去のための設備建設を2019年第2四半期末までに行い、輸出を再開したいとしている。その間Kamotoプロジェクトのコバルト生産量は維持される見込みだが、未処理のコバルト製品は現地で保管される見通し。また、同プロジェクトについてはDRコンゴの税関当局から輸出税の未申告を指摘され、銅製品の輸出制限を受けていたが、これは11月16日には解除された。
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